追いかける者達
「・・・、ではルトー。私も行こう」
瞳に光を無くしてのを見たセレビイはルトーにそう言うと、彼女はこちらに振り返る。
その顔には先ほど感じた闇が嘘であるかのように明るい笑顔を見せるルトーがいた。
その切り替えの早さに、セレビイは無意識に息をのんでしまった。
「セレビイ様?」
その様子にシルフが恐る恐る声を掛けてくる。
・・・シルフもルトーの異変に感づいているのか。
セレビイはシルフの心配する様子が見て取れた。
「・・・ああ、すまない。確認を取っていなかったな。だが、シルフも構わんだろ?」
「え?・・・ああ、そうだね。困っている人は助けないと!・・・でも、セレビイ様が興味を持つなんて珍しいですね」
「うむ、こやつから我が同胞の力を感じる・・・久しぶりに同胞にでも会いに行こうかの」
「同胞・・・?」
キンジがつぶやくも、他に気にする者はおらず話が進む。
「そう言えば、セレビイ様はこの世界樹から出ることができるのですね」
「あら、知らなかったの?結構な頻度でこの外に出ているわよ?」
「そうなんですか!?でも確かセレビイ様はこの世界樹の守護者って前に・・・」
すると、セレビイはどこか遠い目を指して錆びそうにつぶやく。
「ああ、まあ、確かに数千年前はね。でも、新たな神のシステムで私たちはいらなくなったの・・・まあ、そのせいであんなことになっちゃんだけどね」
「セレビイ様・・・」
「いいのよ、おかげでシルフに会えたのだからね」
「良き、友情だな」
キンジは二人にそういうと、二人(珍しくセレビイまで)頬を赤く染める。
「フフ、そうですね。お二方は本当に中いいですね。・・・さて、旅に出るために降りましょうか」
ルトーは早く出発したいのか了承を込めて旅への催促をする。
「うむ、・・・またあれと戦うのはつらいが、ここにいる者達ならば簡単言降りられるだろう」
「・・・え?」
「・・・あ!」
「そうだのう・・・」
キンジの言葉に3人は困惑と驚きとため息をつく。
「・・・?どうした?」
すると3人は世界樹の外縁部のほうではなく中央に向かってゆく。
「おい、3人とも?」
この瞬間、キンジは嫌な予感がした。
よく考えればわかることだ。
あの防衛線をあの気落ちしたルトーが無傷で超えられるのか。
さらに言えば、ここは人の手がかなり入っているように見える。そんな場所ならば、あれ(・・)ばあってもおかしくない。
――――――――チーン!
精霊樹の最上階。その中央には舞台があり、舞台を囲むように並ぶ6本の柱。
その柱こそ、この精霊樹最上階への出入り口だった。
そう、精霊樹にエレベーターはあったのだった。
ちなみに・・・キンジは膝から崩れざる負えなかった。
―――自分の苦労はなんだったのだと
※※※
エレベーターを降りると、そこにはフル装備の戦闘職に就く精霊たち。
「シルフ様!」
「ルトー様もおられるぞ!」
「あれは、・・・まさか、精霊神セレビイ様!?」
その声を聞き周囲に動揺が走る。
「・・・どうしたのだ?」
セレビイが周囲の精霊に問いかけると、この兵隊の代表者である男がセレビイの前に膝間づく。
それを見た周囲の精霊も膝間づく。
「恐れながら、此度族の侵入を許してしまいました。族は精霊樹最大警戒レベルにおける上位防衛機能を突破し、駐在されいた上位精霊近衛騎士を倒されてしまいした。彼らに目立った外傷はなく、意識を失っており、手加減されていることがうかがえることから軍を動かすことも考えられたのですが、精霊王さまが地上にて部隊を配置して待機と言われたのでこうして待っておりました」
「なるほど・・・ちょっとした手違いのせいでこうなっておったのか」
「はい?」
「キンジ」
「は!」
戸惑う代表者をよそにセレビイは一人の名前を呼び、横に立たせる。
彼は民族衣装の上に黄緑色の羽根をつけたキンジであった。
「・・・彼は?」
代表者殿はいぶかしげな表情を取る。
「あなたの言っていた族よ」
「なんと!?では捕まえなくては!」
代表者は予想通りなのか薄っぺらい驚きの声をあげる。
その瞬間、セレビイは氷の笑みと肌に突き刺さるような声音で話し出した。
「だけどね、彼は私の眷属のパートナーなの?わかる?」
「・・・ど、どなたのですか?」
「ルトーじゃ」
さらに周囲から声が上がる。
精霊にとってパートナーとは大きな意味を持つ。
まあ、今回はその話はどうでもよくてここまで予定通りのキンジはいろいろと言いたいことはあるが、あの時、ルトーの上目ずかいにやられて約束した以上破るわけにはいかなかった。
「―――と言うわけで、彼の身元はわしが保証しよう」
「・・・了解しました。王にも伝えますがよろしいですか?」
「構わない」
そういうと、セレビイは堂々と前へ歩く。
セレビイを戦闘にシルフ、ルトー、キンジの順に進む。
目の前にいた兵は避けるように弾き、一本の通り道を作った。
「さて、シルフの家にでも向うか」
「そうですね、持っていくものや行くべき場所を話し合いましょう」
こうして、数日後、ルトーたち5人は精霊の国を出発した。