復讐の戦乙女
「ルトー?」
書き出しに驚いたルトーは少しばかりの放心状態になったものの、シルフの声に意識を取り戻す。
そして続きを読んだ。
『『自分』はもう『自分』でなくなる。そうしたら、この世界を破壊する先兵となってしまう!・・・故に、不本意ながら分裂させられた人格とのつながりを切らせてもらった・・・』
レンジがだれかの支配を受ける?・・・とても想像できるものではなかった。
しかし、そう思って視界を上げた先にいたレンジを見て、ルトーは焦る。
分裂・・・させられた?
誰が、何のために?
・・・わかっている。個として大きすぎるレンジを支配するために。自らが支配できる力の大きさまで切り分けたのだ。
だが、そんなことできるのはこの世界でもかなりの上位者。
いいや、下手をするとできるのは神くらいではないのだろうか?
・・・じゃあ、これから神の先兵となった、レン君と戦わないといけないの?
元から、底知れぬ強さを持ったレンジ。
それを神が支配し、・・・おそらくだが何らかの改造をしていると思われる。
「・・・うん?ハクレン?誰だ?・・・ふむ、なるほど。ルトー、これはおそらく我同様今メッセージを送ってきた主人格から分れた者たちからのメッセージだ。・・・読むか?」
「ッ!・・・読ませて!」
・・・予想通りなら、他の人格の―――少なくとも一人には、ミレイが付いていると思っていた。おそらく、レンジ君は自分のことを奥さんであるミレイさん(モヤッ)に行っているはずだ。
・・・あれ?今、心が一瞬――――なんでもない。ちがう、そうじゃない。・・・落ち着こう。
それで、確かミレイさんの事だったか?
そう、彼女ならすぐに本当のレン君を取り戻そうと動くに違いない。
・・・それなら、僕の取る行動は一つ。
『いち早く合流』すること。
ルトーはそう考えて、キンジから見せられたメッセージに驚きを隠せなかった。
『『俺』は武将の人格。与えられた名はハクレン。同じわかれた人格である『我』に連絡する。・・・二か月先まで、接触を禁じる』
あのミレイが選んだ行動は、集合ではなく分散。
ルトーは彼女が何を考えているのかを考察できなかった。
「・・・戦いにおいて、最も最悪なことは敗北じゃ。ただ、戦によって、何が敗北かは変わる。ルトー、それを忘れるなよ?」
セレビイがそういうと、別にメッセージを見ていたわけではないはずの二人がルトーに助言をする。
「・・・送り主、とは別のものが考えた者の作戦。その者は切れ者であるのではないのか?ならば―――」
キンジはルトーに向かってそうい言おうとするが、ルトーの様子がどうにもおかしい。
「・・・ミレイさんは」
「うん?みれい?・・・ああ、聖女の。まあ、なら大丈夫じゃない?だって彼女、表のライファー最強――――――!?」
シルフはいつもの軽い調子でそういうと、ルトーがシルフを今にも殺さんといわんばかりの目線を送る。その殺気はいつもとは一味も二味も違う鋭い殺気。
正直、シルフは一瞬でも油断したことに後悔した。
―――やられる!
長い人生を生き、かなりの経験を積んだシルフとしては正直彼女のような若い子に後れを取るどころか、警戒を示す必要があるとはまたくもって思ていなかった。
それこそ、先のミレイだって彼女は取るに足らない相手と思っている。
事実、彼女にはそれだけの力がある。
だが、彼女は知らないのだ。
枷が外れたものの恐ろしさを。
愛する者を持つ者の強さを。
シルフは本能から少しばかり警戒を示す。
「・・・ミレイさんは、多分錯乱してるんだと思う。あの人はレン君が好きすぎるから」
ルトーはシルフに向けた殺気をどことも知れないレンジを乗っ取ったやつへと向ける。
「集まって・・・、全員で倒して、レン君を取り戻す」
そこにあるのは明確な決意。
その決意は殺気と嫉妬、闇にまみれた決意。その決意に世界は答える。
『戦乙女のニューフォルム解放条件クリア:復讐の戦乙女』
脳内に声が聞こえる。
昔本で読んだ。
愛する人に助けられ、戦場から逃がされた戦乙女は愛する人が敵に捕らわれていることを知り、助けることを決意する。
その時、戦乙女は漆黒のドレスに身を包み、戦場で死の舞踏を踊る。
「・・・絶対に助けるから。君の奥さんが君を見捨てようと、僕は絶対に」
そう言ったルトーの目に光は無かった。
もう一話ルトー側の話をやって、ミレイ側の話に戻ります




