割れたクリスタル、二人のレンジ(前半)
ちょっと短いです
「ミオ!」
ミオが動いたことによりミレイが声を上げると周囲の人たちが集まってくる。
「ミ、レイ?」
ミオの芽はまだ焦点が合っていないのかぼんやりとしており、どこか虚ろだ。
「ミオ!こんなになってどうしたの!?それに、ダーリン・・・レンジ君は!?」
「れ、んじ?・・・れんじ、レンジ君!」
ミオの虚ろだった目はしっかりと物をとらえるようになる。
それと同時に精神崩壊(HPをMPに変換すること)が止まったこととを確認し、回復薬のおかげで内部損傷もほとんどが治っている。
しかしそれは治癒を早めただけであり、蓄積したダメージ。
治癒を早めたことによる、ストレス、疲労。
それらによりしばらくは体が動かせないと思われる。
それでも彼女は自分の胸の上で閉じていた拳をゆっくりと開く。
「!!」
そして彼女の表情は暗い物へと変わった。
彼女の手の中にあったのはクリスタル。
つまり、レンジが封じられたクリスタルであった。
・・・そして、それは二つに割れていた。
「・・・は、かいし、しん、す、きる――――」
「ミオ!?だめよそんな状態でスキルなんて使ったら・・・!」
「安心しろ、『白蛇の討伐者』。我が彼女の使うはずだったMPと魂を使う」
「あ、あなたは・・・?」
「・・・黒、龍帝」
白蛇は幻を見ているかのようにそうつぶやいた。
「黒龍帝?・・・まさか、双盾の英雄を筆頭とした12英雄。当時の魔王、魔人:カイザーの契約獣。黒龍帝:ジルドニア様?」
「カイザーか。懐かしいな。思えば奴の仲間だったからこそわ、れは・・・?」
ジルドニアは何かを思い出したかのように目を見開き、割れたレンジのクリスタルとミレイを見て人の姿を取っていたジルドニアに一筋の汗が流れる。
「そうか、あやつがそれを見て真っ先に封印をその形態にしたのは・・・」
ジルドニアがそういうと同時にミオの持っていた石がそれぞれ白と黒に光りだす。
あの石に使われた能力は封印。それは元々大きすぎる力を部分的に削って行く力。
そして、あの邪神の脳裏に映る邪神となった今でも届かないかもしれない存在。
それと同じ容姿、戦闘能力を有する彼に使った封印。
・・・自分を危ぶませる存在かもしれないなら弱らせればいい。
どこからか邪神の声が聞こえた気がした。
「「どうなっている、これは?」」
そこには白いローブを羽織り、スーツのような服装に刀を下げた白いレンジと、黒のマントに紋章の描かれた仮面を手に持ち、軍服のような服を着たレンジ。
「「な、同じ顔の奴がいる!?」」
二人はかがみ合わせのようにそう言った。
しかし、その場にいる全員が違和感を感じていた。
その一方で二人のレンジは周囲を見渡す。
「ミレイ、アヤカ、エリーゼ。これはどういう状況だ?」
白のレンジが3人にそう聞く。
「えっと、それは・・・」
「ミオ様!」
黒のレンジは仮面をかぶり、ミオの元へと駆け寄る。
「・・・疲労よ。今は安静にさせてあげて」
駆け寄ってきたレンジにミレイがそういう。
「そうか。・・・少しばかりだが回復の手伝いをさせてもらおう。スキル:転輪〈陰〉」
そういって黒のレンジはミオの手を握る。
それにミレイは頬を膨らませると、白のレンジがミレイの手をつないだ。
「ほぉ・・・」
「あやつに教わらずにそれを・・・」
白蛇にジルドニアは感心した声を上げる。
彼女たちには見えていた。
黒のレンジから生命力、魂と言われるHP、MPとは違う治癒の能力を司るエネルギーが彼女の元に流れていることが。
転輪の陰は内部でエネルギーを回すもの。
自己完結系の効果が多いが、その一方で接触することにより相手の何かを促す、動かすなどの防御を無視したゼロ距離攻撃ができる。
今回は肉体修復の治癒能力を促進させるよう力を加えている。
「・・・ふう」
ひとまずできる限り彼女の自然治癒を促すために彼女のエネルギー循環を修正し終えた黒のレンジは後ろを振り向く。
「なあ、・・・」
そこには白のレンジがいた。
「お前、何者だ?」
白のレンジは黒のレンジの瞳をまっすぐにとらえ、そう聞いた。




