傷着けたくない。もう離さない。
死神が消滅し他が彼女はその場に立ち尽くしていた。
その様子をレンジが怪訝そうに見る。
・・・主人格よ。さっさと声を掛けぬか
「・・・え?あ、ああ。わかっている」
レンジは驚いていた。
自分が様々な能力を使ってようやく足止めで来た存在を一撃で殺された。
その事実に僕はミオに対し、少し恐怖を抱いてしまった。
それでも、歩くのもやっとなその体をお越し彼女の下に歩み寄る。
「ミ――――「こないで!」」
歩み寄ったレンジにミオは拒絶を示す。
「・・・ディルキア。ううん、レンジ君。今、私がどう見える?」
彼女はこちらを向かずそう聞く。
「・・・」
レンジはその言葉に一つの推測へと行きつく。
「・・・ミオ、少し待ってくれ。創生魔法:鉄球。風魔法:加速!」
そして自分とミオの前に一つの鉄球を加速をを付与した状態で作り出す。
・・・ミオ、すまない。
レンジはその鉄球を――――――
ゴンッ!
――――自分の顔面にぶつけた。
「ふえ?」
大きな音がしたからか振り返った彼女は泣いていた。
「ぅう、痛い・・・でも、目は覚めたよ。ミオ」
「なに言ってるの!顔から血が・・・ッ!」
そう言ってミオはレンジに駆け寄り手を伸ばして・・・それを止めた。
僕はそれを見て推測が正しかったことを悟る。
「ミオ、絶対に君を一人にはさせないから・・・」
そう言って離れ行く手を取ったレンジにミオは目を見張った。
※※※
このブレイファーの世界は良くも悪くも実力至上主義。
その頂点たる魔王は尊敬すべき相手でもあり、畏怖される存在でもある。
幼き彼女がその重責に耐え、他の子供たち同様の成長ができるか?
・・・残念ながら彼女の場合、否であった。
親と言う絶対的存在を早くに亡くし、ブレイファーの中でも屈指の実力者あの集まる曾祖母の元に預けられ、高水準の力と知恵の中で育ち、なおかつ彼女にはとてつもない吸収力と言う才があった。
故に一歩外に出れば彼女は絶対的王者であり、幼い彼女の必要な同じ実力の者。己を超える何かを持つ者に会いことは困難を極めた。
ましてや、恋愛対象になる異性など夢のまた夢・・・だと思っていた。
けどそんな時、彼が現れた。
彼女の数少ない同い年の親友から多くの話を聞き、本人を見る前から恋心は芽生えていた。ただ、それは夢の域を出ない物だった。
しかし、その夢は現実となる。
そして、彼に私の魔王として培ってきた嘘は通じなかった。
それは何の肩書きもない自分を見てくれているようで嬉しかった。
けど、彼は親友の旦那さん。・・・それで諦められれば良かった。
そして親友は、旦那さんを共有したいと言ってきて・・・彼女は彼と体を重ねた。
その時、己が内に秘めた独占欲が膨らんでいくのがわかった。
・・・彼を独占したい。でも、無理やりでは彼に嫌われてしまう。
彼女のそれは日を追うごとに大きくなっていた。
そしてある日、彼と親友は多くな戦いを乗り越えることでそのきずなを一層深くしていた。
そしていつの間にか彼女はついに口実を作り彼を連れ出し、だまし、一時的だが自分のものとした。
けど、それを親友は許さなかった。
だから、彼女は彼女のこれないところに、そして彼女の手を彼に届かせないための力が欲しかった。
けど、力を得てはっきりとわかった。
・・・また、昔と同じで人が離れてゆく。
強すぎる力を持つ者はその怒りを買わないようにと弱者は避けゆき、孤独になる。
そして、ジルドニアが司る『浄化』の力を手に入れた彼女には彼が死神を一撃で倒した私に対して恐怖を抱いたことはすぐに分かった。
そして、あれほど歯が立たなかった死神をカウンターの一撃で殺したことで彼女はこの力で彼を傷付ける事を恐れた。
けれど、彼はすぐにミオが自分彼女に恐怖し躊躇したことに気づき。自らに喝を入れると、彼女の手を取った。
それは彼なりの意志表示であり、ようやく見れた素の彼女に惚れてしまった男のサガであることを理解していただきたい。
・・・そしてこの後、彼はおくさんへの言い訳を必死に考えるのだが、それはもう少し後のお話。
※※※
「『崩壊』がきえたか・・・」
この真っ黒な空間で彼は静香に笑みを浮かべ、手を伸ばす。
「転移:暗黒龍の守護聖域」
そう言って彼はその漆黒の空間から消えるのであった。