死神
「なぜ・・・泣くのです?」
涙を流す暗黒龍 ジルドニアにミオはそう聞いた。
「なぜ・・・か。その様子を見るに彼らはその名の真相を語らずに行ったと見える。・・・そうだな、彼らの最後は黒死病か?」
その言葉にミオは下唇をかみしめ、怒りをあらわにする。
「なぜおこ・・・ああ、そういうことか。結論から言おう。我に黒死病を操るすべはない」
「「!」」
衝撃の暴露に二人は驚く。
「私は黒死病の原体に呪われていた。それゆえにこのような地で終焉の魔物などと呼ばれ隔離されている。・・・だが、」
「お父さんとお母さんが、あなたを解放した」
「そのとおりだ。・・・だが、あれは正確には、ッ!」
その時、ミオも自分も感じ取った。強大な力。
自分はこの気配を知っている・・・これは、あの鹿と同じ。
「再び、来るのか!黒死の死神!」
ジルドニアの背後に十字の亀裂が現れ、それ頂点とした四角に空間を切り裂き、できた三角形を一枚一枚落として現れたそれは、まさしく・・・死神。
デスサイズを構え、骸の顔。ぼろぼろのローブ。下半身は無く、常時浮遊状態。
そして・・・黒死病の瘴気を放っている。
この様子・・・どこかで、読んだような・・・。
『・・・前の主はこれを敵と補足。そして前の主はその体にこれの半身を封じ私に主の寿命と非賭けにあれの半身を消滅させた』
霧咲が少し刀身を覗かせ、念話でそう声を飛ばしてくる。
「・・・あれは暗黒龍の、化身」
ミオがそうつぶやき思い出す。彼女の部屋で見た日記にあった、ミオのお父さんの話した試練に置いて最も警戒すべきもの・・・暗黒龍の化身。
それは、元神獣 ジルドニアに憑りついたこの世の負の塊。
転輪の守護者を終焉をもたらすものへと変えたこの世の悪意。
神獣をも犯し、狂わせる狂気の元凶。
それらを浄化する12能力こそ神獣の力。
・・・そして、自分にはある力が備わっていた。
スキル:転輪(NEW!)※
転輪・・・すべての概念を循環、還元、固定、反転能力。
そう、転輪の守護者の討伐として、転輪を継承した。
これはあらゆる概念を循環、還元、固定、反転できる。
そして、今回の事で終焉の魔物・・・つまり、神獣を犯す悪意は取り除くことができる。
そして、この転輪にはその能力があること。
霧咲の話を聞くに、ミオのお父さんは化身を自身の体に取り込むことでジルドニアを開放し、化身を弱体化、玄界させたと考えられる。
そのようなすべがあること。
そして何が彼をそこまでさせたのかが気になるが、今はそんなことを考える余裕ができる敵を相手にしているわけではないので一旦おいておく。
「奴は弱っているとはいえ、この世界の住民の負の塊!生半可では勝てん!我を殺し、帰還せよ!」
ジルドニアはそんなことを言うが自分たちにそんな考えはない。
ミオを見ると彼女は頷きで返してきた。
「ジルドニア、我々をなめてもらっては困るな」
自分は役者のようにマントをたなびかせる。
「我『転輪』を使い一時的に奴の瘴気を無効化する。ミオ、その間にジルドニアに回復を」
「わかった」
ミオはジルドニアに駆け寄り、光の回復魔法をかける。
一方、自分は死神を前にし、高らかに笑い、目を閉じて意識を切り替える。
『自分』から『我』に・・・。
「さて、『我』を呼び出したと思ったら何ともひどい光景を見せる・・・ふむ、確かにこれは『将』でも『軍師』でもなく、『王』である我の敵であろうな。その判断、間違っていはいない。それに、これが『共有』か。存外悪くもないな」
『『自分』としてはお前に7割乗っ取られている時点で最悪だ』
内部の『自分』が『我』にそういうと『我』は小さな声で「もうここまで・・・」と言った。
だが、それがどういう事なのかはいまだ支配権を取れない『自分』にはわからないことであった。
「さて、この転輪のスキル。いわば支配系統の神位にあると言えよう。それがどこまで汝に効くかわからぬが、試してみるのも一興。そしてこれを使うのは初めてゆえ、全力でゆく。覚悟しろ」
レンジがそういうと、死神は黒死病の瘴気を放ちながら迫りくる。
「では・・・廻れ、すべては循環する。死は生へと。我は循環させる、有害は無害へと。我は回す、すべては循環し〈逆転〉するために」
その瞬間、死神頭上に光に輪が現れ、その輪に瘴気はすべて吸われてゆく。
そして吸うのは死神の死の力。
死神は輪を壊そうと鎌を振うが、当たらない。
さすが神獣と言えよう。
しかし、あくまであれは現状維持。
奴を倒すほどの力は今は無い。
「ディルキア・・・おわったよ」
「ふむ、やはりおぬしには・・・」
ジルドニアは身を見てなにか思案顔だ。
「ふむ、どうしたジルドニア。ミオに何かあったか?」
「え?・・・あ、いや、なんでもない」
彼女は傷は消え元気そうだが、なんというか、服の所々が破れて妙に艶めかしい。
「ミオ、彼女にこのマント貸していいか?」
「え?」
彼女はそれを聞き戸惑ったようだが、古びたローブから素肌を所々晒すジルドニアに顔を真っ赤にする。
「・・・許す」
「我は別にきにせぬのだが・・・」
その言葉は見事に無視されるのであった。
自分は彼女にマントをつける。
「さて、ジルドニア。貴様は戦えるのか?」
「無論、しかしこの省エネ状態の人型ならと言う条件だ。まあそれでもその魔王より少し強いくらいだがな」
「ミオ、準備は?」
「終わってる」
「では、始めようか死神狩りを」
そう言って自分は左手に常々、右手に霧咲を持ち、戦闘を始めるのであった。




