VS転輪の守護者02
「ヴァエアアアアアアアアアアアア!」
光速の切り合い、突き合いは転輪の守護者が方向をあげながらレンジから距離を取ったことで一先ずの一息つく。
互いに少し呼吸が乱れる程度なのは余裕ゆえか、それとも意地か。
「ヴェ・・・アァ・・・」
転輪の守護者が低くうねりをあげると、無数の傷が現れる。
『・・・遅延式の光速の連撃。やはり、貴様は奴に似てる、―――癪に障る!』
転輪の守護者による光速の一撃を同じ高速の連撃の剣戟によって弾きながらダメージを与える。
散桜。その名の通り、散る桜。敵が気づけば地に伏せるその一切の無駄のない連続切りは一撃のダメージは低いものの、攻撃を捌くのに使われる。
無力化行動の多いSP時代に最も愛用し、全盛期は刀持ったヤクザ相手に爪楊枝でこの技を使い、捌き切ったほどだ
そしてそれともう一つ。
幼き親友。今のルトーが愛用した技。
「技、借りるぞ。我が親友」
互いに打ち合っていた攻撃の反動を利用し後ろへと下がり、たがに武器を構える。
『わが渾身の一撃を!今自身は神域へと至る、神速!』
「ヴァエアアアアア!」
角が周囲の魔力を吸収し、角を媒介として十分に魔力が体中に伝わって行く。
それが足へと収束し、足の破壊音と共に神速の突きが繰り出される。
「鉄壁」
レンジは瞬時に今展開できる最大最高の鉄壁を張る。
―――バリン、バリン、バリン
しかし、それは急ごしらえ。糸もたやすく破られてゆき、自分に迫る。
「高阪流 抜刀術―――」
しかし、レンジは刀を鞘にしまい、平然と歩き出す。
「―――陽炎」
レンジは刀を一線、横なぎに振るった・・・。
※※※
レンジが転輪の守護者と戦う間、ほかの3人は茨の対処、森より鹿が招集したと思われるモンスターの討伐におわれていた。
「数が多いのよ!」
「でもダーリンがあの鹿さんを抑えてくれているおかげで茨は動きが鈍いわ!」
「ぅう、獣王の血が騒ぐ・・・」
そう言いながらも次々と敵を倒すエリーゼ。
彼女の作ったモンスターの山は二人より圧倒的に多い。
さすが獣王と呼ばれるだけあり、狩りの仕方がベテランだ。
「ああもう、お父さんお恰好い戦闘シーン見れないじゃない!」
アヤカはモンスター5体をまとめて吹き飛ばしながらそう言った。
「アーちゃん、それはどうやっても無理よ」
「えー、そういうお母さんも見たいくせに」
「ええ、もちろん!」
ミレイは満面の笑みでそう返事する。
だが後ろを振り返ると・・・
―――――ガキンッ!キン!ピュン!
光速領域での戦闘が繰り広がられ、十分に手が出せない。
「・・・ああもう!せめて観戦させてほしかった!」
とアヤカが言うと、エリーゼが残念そうにそうに頷き同意を示した。
「アーちゃん、エリー。ダーリンに迷惑掛けないようにがんばるのよ!」
「わかってる」
「りょうかいしてます・・・」
二人は渋々戦線に戻る。
「戦闘の記録はとってるし、まあこれだけ頑張ったのだから後でダーリンと・・・うふふ」
ミレイは実はひっそりと記録アイテムを起動させ、レンジの戦闘を取っている。
さらに自分達の戦闘風景も撮っておき、後でレンジにいっぱいほめてもらおうと考えていた。
「お母さんお好きにはさせないよ・・・」
「・・・お覚悟を、ミレイ様」
ミレイは小さな声で言ったつもりだったが、レンジの事となると聴覚が物凄く良くなる二人にはそれが聞こえており、この戦闘後のことを考え、意欲の上がる3人であった。
※※※
『・・・ばかな』
転輪の守護者はそう言って息絶えた。
少し離れたところにはレンジの姿があり、刀を収め、深く息を吐くと膝から崩れ落ちた。
陽炎。刀身に光を反射させ、敵の目を一瞬くらませ、寸前をよけながらカウンターを決める技。
究極の返し技により、転輪の守護者は自ら刀身に突っ込み、首を落とされた死んだ。
実に呆気ない。
だが、神速の突きをかわし、レンジはそのままカウンターまで決めたことを忘れないでほしい。
「転輪の守護者・・・その突きに邪なものがなければより鋭く、早くなっていただろう。だが、そんな脆い付など我が前には日に飛びいる虫と同じ。この世に転生があるのならば、次ぎあうときは純然な意志を持って戦うことを望む」
転輪の守護者は魔石となり、指輪に回収された。
『緊急転移開始します』
頭の中にそんな声が聞こえ、力を使い果たした蓮二はそのまま意識を失った。