水羊羹!と脅威
一時間後―――
「しかし、どうするか・・・」
レンジはスキャンによる参加者の分布図を見る。
この森エリア。自分以外のほとんどが撤退している。
この森エリアの中央にいるレンジはその事に深い溜息を吐く。
・・・おそらくこの森を選んだのは戦闘力が低く、小回りや小手先の技を重視する奴らなのだろう。その証拠に正面から挑むやつは一人としていなかったしな。
レンジはエリアに陣を構ええている参加者はそれぞれ自分のバトルスタイルに合った環境を選択していると推測した。
そうでなければ、先ほどから軽装の盗賊や暗殺職のような人間しか見えないのに納得がいかない。
「・・・そうだ、湖まで行ってみるか」
湖の周辺は4つの気候が干渉してとてもすごしやすく見晴らしがよくなっている。
さらにどのエリアに行くにしても湖を渡れば最短である。
・・・ただ、湖に召喚された参加者3人・・・いや、二人だな。あのアルフレットと言う男は参考にならない。
そう思いながら、気になる二つのlogを見る。
『参加者:エンジ。死亡(溺死)失格』
『参加者:オリバー。死亡(溺死)失格』
あの湖で溺死しているのだ。アルフレットはモンスターに殺害。
これに違和感は少ない。
しかしこの試験に参加するようなものが誤って湖に足を滑らせそのまま脂肪と言うのは納得できなかった。
「・・・隠しボスか」
レンジはこの島に隠された3体の隠しボスのことを思い出す。
「いってみないことにはわからないよな・・・」
とりあえずレンジは行動を開始した。
こうした冒険に喜び、心ふるわせながら。
※※※
一方、看板前の二人はさらに直進することに決めた。
この先は湖である。
レンジはこの湖をはさんだ反対側にいる事のわかっている二人としては湖を横切りたいが、服がぬれたり、薄化粧が落ちて大好きな人の前に出るのはものすごくいやである。
それに先の看板。
まるで湖にかせないように左右の道は舗装されておる。
本来なら、湖に向かわず東西から蓮二へ向かうはずだったが、レンジが湖の近くにいる事に気づいた二人は看板よりさらに進む。
・・・いったいこの二人のレンジに対する感覚はどうなっているのか。ほとほと疑問である
※※※
「ここが・・・湖?」
森を抜けた先に会った湖。
レンジはその湖に違和感を感じる。
「…風魔法付与〈加速〉ダブル、スタンバイ光魔法――」
手に持った小石に加速魔法を付与する。
レンジはそれを投げると同時に後ろへ回避する。
「―――〈離脱〉」
小石は加速され亜音速で湖に吸い込まれる。
―――パシンッ
まるで地面が鞭に打たれたような音が鳴る。
「・・・はは、何が湖だ」
レンジはつい先ほどまで自分老いた場所見る。
そこには巨大な穴が開き、かなり深くえぐれている。
そう、あの音は湖に投げ込まれた石の音ではない。
それどころか、投げ込まれた石は小さな波紋をおこし、溶けて消えた。
「これは・・・スライムか?」
そしてその上空には湖から延びる水色の一本の触手がうねうねと動き、湖が盛り上がる。
「家事スキル発動。〈食物鑑定〉」
暴食のスライム王:スライム種 上位特異種(体表主成分:水)
1年を通して必要以上の獲物を毎日3割以上取り続けたスライムであり、多少の戦闘経験と知恵を持つモンスター。体を変化させて攻撃してくる。スライムは核を壊さぬ限り死なず、内部へ入ろうにも内部にはスライムの溶解域の為、来ている間は入れない。
スライムの核だけを殺し、スライムの生き締めと言う加工法があり、それはところてんのようでおいしいらしい。なお今回のドロップ品は水羊羹。
「・・・って、おい!」
説明呼んで思わず固まってしまった。
確かに家事スキルだからおすすめ調理法が乗っているのは分かる。
だが、それでドロップ品が水羊羹と聞くと・・・これもう水羊羹にしか見えないじゃないか!
自分は・・・お子様ランチに乗っているような食べ物とあんこが大好きなんだよ!
安上がり?何を言う!
あなたの考えるお子様ランチを想像しなさいしなさい。
高級専門店がないものがありますか?
・・・あ、おもちゃとか。ケチャップライスの上のグリンピースとかは無しですよ!
そうでしょ?
大人になっても美味しいあの料理達。
我々はあのプレートから卒業したわけではなく、量が足りないから違うのを頼むだけなのです。
そして自分は料理をすると言いましたが、それは自分の理想とする料理を作るため。
今ではハンバーグやエビフライなどは素材の扱い方(肉の解体・血抜きから)や火入れの加減などかなりを熟知し、COCOパットと呼ばれたレシピ紹介サイトで少しばかり有名になったり、アヤカのお弁当のささやかな自慢いさせてもらったり、アヤカの高校の文化祭で保護者のやる屋台・・・(と言ったはずなのに、家庭科室をなぜか与えられた。そして護衛対象になったことのある美食家とかなぜか来てた※ちなみに料金は1000円以下です)で料理をふるまったりとかしたぐらいだ。ちなみにデザートはどら焼きか羊羹か、おしるこだ。
「じゅる、水羊羹・・・」
自分は涎をぬぐうと、モードを『俺』に変える。
「さて・・・おっきな水羊羹・・・じゃなくてスライム。覚悟しろ」
俺は唇を一舐めしてつばを飲み込んだ。
目指すは・・・水羊羹!
「「さっさと、ドロップ品おいて消えな!」」
そう言って双方向から攻撃をくらったスライムは縦に伸びて砂時計のようになり、レンジは向こうがわで自分と同等の攻撃を放った人物を見つける。
その瞬間、レンジの背筋に悪寒が走る。
「・・・うん?あ、探したよ。転移寸前で影を攻撃なんてさすが―――」
「・・・う、うそだろ」
「―――私の・・・だ・ん・な・さ・ま・♪」
そこには・・・獣王:エリーゼがいた。
発情したように高揚した顔の口を三日月に歪めて・・・




