2次試験直前
少し相手すみません。なかなか忙しいもので・・・
「二人とも早くいくぞ」
自分はそう言うと森の中の家のドアを開ける。
自分の服装は1週間前の試験を受けた格好に指輪を2つ。ペンダントを1つ下げている。
「待ってよ、ダーリン」
「お父さん、女の子は準備に時間が掛かるんだよ!」
バタバタと言うあわてる音が上の部屋のある階より聞こえてくる。
「レンジ君」
「ミオ、君はどうする?」
一方試験に参加しないミオは暇になる。
正直なことを言えばあのダンジョンでの訓練から時を立たずしてこうして出発なので、参加する必要のある自分たち3人は仕方ないとしてミオには休んでほしかった。
「一回家に帰ろうと思う・・・兄さんも心配しているだろうし」
「何かあれば連絡しろ。自分にできることならある程度はやってやる」
するとギルドカードが震える。
『行ってきますのチューは?』
それはミオからのメールであり、予想外の内容だった。
「ミオお前・・・」
「私もミレイちゃんと同じ考えだし、契約したからね♪」
「契約?」
「何でもない、こっちの話。それで、してくれる?」
「・・・」
「!」
自分はミオの額にそっと唇を当てた。
それは違和感を感じさせない静かに。
それによって反応に遅れたミオは顔を真っ赤にする。
「・・・ほ、本当に」
「本当に?」
「するとは思ってなかった―――」
彼女はそう言って奥の部屋に逃げてしまった。
「どうしたんだ?」
自分からすれば娘のような存在であるミオ。
家族のように接してきたゆえ、自分からすれば娘の額に口づけをするような感覚だった。
・・・しかし、忘れてはいけない。今のレンジは17歳。若返っている。
ミオも16才と思春期真盛り。
そこで不意打ちは彼女の心にクリーンヒットを与えてしまった。
その証拠に彼女は現在、今日は彼女が担当する食器洗いをする台所でレンジの使ったフォークをぺろぺろ中だ。
「ダーリン、お待たせ」
「お父さん、ミオさんと何か話してた?」
準備していたミレイとアヤカが降りてくる。
ミレイは神官の白い聖堂服。アヤカは動きやすそうな冒険者風の格好だ。
たがいに腰のアイテムポーチ(マジックバックの小型版)をつけており、胸元に呼び出しのペンダントと呼ばれる設定したマジックバックから音声認識で物を取り出すペンダントをつけている。
「うん?ああ、ミオはこれからどうするかって聞いたんだ。一回家に帰るらしい」
「・・・そうだった。ミオちゃん、一応魔王だった」
あやかは思い出したようにそう言う。
「・・・」
ミレイが少し険しそうな顔をする。
「ミレイ?」
「あ、いや。何でもないよ、ダーリン」
何か考えているようだったが、結局それが何かは教えてくれず、3人は家を後にした。
スキルの鉄壁を空飛ぶ絨毯にして都市近くまで飛んでくる。
「試験会場はお父さんが試験受けたところなんだよね?」
「ああ、そうだ。・・・と言ってもそこにいたのはほんの少しだけどな」
「たしかに。じゃあお父さんも地形に詳しくないのか・・・」
「ミレイは?来たことないのか?」
「ないわね。こんなところよりも普通にモンスター狩りはしていたし」
さすが、ミレイ。その野生児っぷり、マジ尊敬します。
・・・と、心の中でふざけたところでミレイが睨んでくる。
「なにかしら?ダーリン」
声が冷たい。ダンジョン訓練でこういったところも成長しているのか・・・
僕は正直、この面は育ったことに恐怖を覚える。
「何でもないよ。君がこの世界で元気そうだからうれしかったのさ」
「そう、ありがとう。ダーリン♪」
そう言ってミレイは自分の腕に抱きつく。
「・・・」
アヤカはそんなミレイを見て反対側の腕に抱きつく。
ミレイはちょっとした有名人なので外用の外套を着ており、アヤカも日差し対策に帽子をかぶっている。
親のひいき目を差し引いても、アヤカは美人だといえる。
そう言えば地球で今日は何人に告白されたと自分に自慢してきたっけ?
少しばかりいらいらしたが一月たつころには、誇らしく感じるようになってなぜかアヤカは不機嫌になって…懐かしいな。
「どうしたのおとうさん?」
アヤカは少し恥ずかしいのか顔を赤くしながら自分に問いかけてくる
「・・・いや、アヤカは美人さんだからいろんな人に嫉妬されそうだなと思ってね」
「美人・・・」
実の父親に美人と言われて恥ずかしいのか、腕に当たっているアヤカの胸の鼓動がはやくなるのをかんじた。
心なしか顔が先ほどより赤い。
「アヤカ?風邪でも引いたのか?」
「え?・・・あ、大丈夫。緊張しているだけだから」
アヤカは自らの状態に気づいていなかったのか疑問を浮かべた後、顔に手を当て相違自分言い訳をしてくる。
「自分譲りの肝の太さがあると言っていたのはどうした?・・・まあ、お父さんもこういう試験は緊張したりするんだけどな」
「そうなんだ。お父さんっていつも堂々している気がしたけど・・・」
「それは堂々としていない時が多いだけだよ。特に娘の前でおどおどしていてはカッコ悪いからね」
「フフ、ダーリンはポーカーフェイス得意だもんね。ある特定を除いて・・・ね?」
「まあ、そりゃあね・・・」
「そう・・・やっぱりお父さんはかっこいい」
「うん?アヤカ何か言ったか?」
「うんん、なんでもない。あ、ついたよ」
二人と話しているうちに試験会場へと到着する。
周囲には参加者の冒険者仲間と思われる冒険者風の男女、どこかの金持ちの使用人と思われる執事にメイド。アイドルの出町のように名前入りの横断幕を構える女性たち。
「すごいね・・・」
「そう?私は毎年だから慣れたけど・・・」
「これ予選だよね?すごいお祭りモード・・・」
周囲の人もそうだが、近くの屋台の種類や数もなかなかだ。
「・・・あと50分。少し腹ごしらえしていくか」
「賛成!」
「私、焼きそば!」
・・・日本の屋台で見たような食べ物が多くみられた。嬉しい誤算である。
調味料をそろえて自作しようと思うレンジであった。