試験後の休息
「ダーリン、あーちゃん、ミオちゃん。お花見いかない?」
「お花見?・・・この世界にも桜があるのか?」
「へー、私も行きたい!お父さんお弁当作ろ!」
「お花見って何?」
ミオはお花見を知らないのか首をかしげる。
「桜って言ってもわからないか。春にだけ咲く花を見ながら食事をとるんだ」
「・・・あ、ミレイがこの時期になると一人で見ながらご飯食べてる、フォールスプリングフラワーのこと?」
「そうよ、ミオちゃん。あれを私たちの元いた世界で桜というの」
・・・ひとりで花見さびしいな。
と思っているとミレイに睨まれた。テレパシー!?
「・・・サクラ、いい響き。改名申請してみる?」
「改名申請?」
「フォールスプリングフラワーを含む植物などはギルドが勝手に決めた名前であり、教会、または聖女などの聖職者を通して神に花の名を変える申請ができます。神の許しが出ればその花は改名され世界各地の図鑑に改名現象が起こるんだよ」
ミレイがそう説明してくれる。
「じゃあ、ミレイがサクラで申請すれば通るかもってことだよな?」
「うん、でもいいの?ダーリン」
「うん?」
「わたしが直接申請してもいいけどその場合申請者が私になっちゃうよ?」
「構わない。許可する」
「・・・!はい」
ミレイは敬礼でそう返した。
学生の頃、ミレイの失敗で自分怪我した際にこういう強い口調で言って気を紛らわせていた。今でも覚えているか心配だったがちゃんと覚えているようだった。
「では、申請を始めます」
そう言ってミレイは手を合わせて窓から見える太陽に向かって祈り始めた。
※※※
「さて、あやか。弁当作るか」
「うん!」
「なにか手伝う?」
「お、手伝ってくれるのか?ありがとう、ミオ。じゃあ、そこの山菜を洗って水をふき取ってくれ」
「うん」
「じゃあ、私はお米炊くね」
「任せた、アヤカ」
そう言ってアヤカはお米を洗い、かまどで炊きだした。
「アヤカ、かまどの使い方わかるのか・・・」
「おばあちゃんにならった」
「アヤカのおばあちゃんと言うことはミレイちゃんかレンジ君の母親と言う事か」
「ちなみにおとうさんの母親よ」
「・・・そうか、もう帰れないんだったな。結局、実家に帰ることはなかったな」
自分は記憶の中にある大きな屋敷を思い出す。
「・・・なつかしいな」
「うん・・・」
ミオはそれを知らないのと、異世界に言ったことが無いので二人を見ている事しかできなかった。しかし、二人が悲しそうな表情なのに気が付く。
「大丈夫、いい子、いい子」
ミオはいつの間にか近づくとレンジとアヤカを抱きしめた。
俺には不思議な安心感があり、ミレイとは又違った暖かさを感じた。
普段の自分ならばこういったことを見ず知らずの人間やあまり好意的でない人物にされると不愉快になるのだが、ミオではそんな感覚が無かった。
自分がミオに少なからず好意を抱いていることと、そんなミオの意外な優しさの発見に少しだけミオのかおを見るが恥ずかしくなってくる。
しかし、自分はうぶな少年と言う歳では無い。
数回深呼吸し、顔色を元に戻す。
「大丈夫だ、ミオ。ありがとう」
「・・・ありがとう」
アヤカは顔を赤くして恥ずかしがっている。
「・・・元気になったならいい」
ミオはそう言って満足そうにうなずいた。
「・・・なにやっているの?」
「あ、あれ?ミレイ?30分くらいかかるんじゃ・・・」
「思いのほか早く終わりましたので・・・しかしどういう事ですか?なぜ澪に抱きしめられて?ダーリン」
この時のダーリンという言葉に僕が恐怖を覚えるのは至極当然であり、火を止めるなどの安全を期したうえで彼女の前にし正座しました。
僕はこの後、色々な言い訳をしてミレイをなだめた後、お弁当にミレイの好きなお稲荷さん(似たもの)を入れることで目を瞑ってもらった。
※※※
「うわー、きれいだね(チラっ)」
「・・・あ、君たちの方がきれいだよ」
この世界に桜の美しさに意識を持って行かれ、こういう場合の定番を言い損ないそうになるところだった。
今回はせっかく3人いるので君たちにしてみた。
3人はと言うと・・・
「むー、ダーリンのばか」
「え?」
「・・・(ぽっ)」
ミレイが頬を膨らませて怒っているようだが、顔はうれしいのか赤くなっている。
アヤカは不意打ちだったのか、何か嫌味を言うわけではなく顔を真っ赤に、ミオは何も言わずうつむき、頬を染めた。
意外な反応に自分も少し狼狽する。
「しかし、ここだれもいないな」
太陽も頂点に上り、ちょうどお昼時花見をするにはちょうどいい時間なのだが誰もないなかった。
「ああ、だってこれBランクモンスターだもん」
「は?」
「これはトレントの亜種だから」
ミレイは何でもないかのようにそういう。
「じゃあ、襲ってくるのか」
「うんん、力量差がわかるやつは来ないよ」
「その言い方だと何体かは襲ってくるという事じゃ?」
アヤカがそう聞くとミレイはとミオはかおを合わせてどうするかいう。
「まあその時は木材です」
「トレントはいい木材ですから、言い値で売れますよ」
「なんか、花見が台無しな気がする・・・」
自分はそう言いながらきれいな花をみながら食事する普通の花見が・・・できなかった。
木の知力に期待した自分がバカだという事だ。
結局、サクラトレントは全部で17体倒すはめになりましたとさ。
※※※
「サクラトレントは香木として高値で売れます。さすがブラックカードのXランクですね」
・・・ギルドからの評価が少しあがった。
少し複雑・・・
季節なのでお花見にしてみました。