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試験結果:後編

後篇です

 


「どういうこと?」


 ミレイは今にも炎が出そうな勢いですごい怒気を放つ。


「お父さんがすごいということはさっきの会話からわかっているよ?」


 アヤカはどす黒い怒気を放つ。


「意味不明」


 ミオはまったく表情を変えないが、静香に怒りの炎を燃やしている。


 そんな三人を自分は手で制して、聞く。


「・・・理由は教えてもらえませんか?」


「いいわ。理由は簡単・・・あなたは試験を受けてないから」


「・・・っ、そうですよね。確かにそれじゃあ、フェアじゃない」


「あら、物分かりがいいのね。駄々をこねる・・・ようには見えないから説得に掛かるかと思ったけど」


「それは試験を真面目に受けた人に失礼です。自分が行ったのは選抜試験ではなく、神の試練。例え、神の試練の方が必要とされる能力が高かろうと、試験官は見ていないので判断が抱きない。物的証拠だけでは、ギルド内の地位を上げることはできても種をかけた大型行事に口出しはできません。それは正しい判断です」


 自分はギルドマスターの意見を尊重した。


「ふふ、やっぱり面白いね。・・・ちなみに君の受けた試験、合格者は一人もいなかったわ」


「え?」


「2次試験参加者は予定では100名を予定していたんだけど・・・98名しか今いないの」


「・・・その中から決めればいいのでは?48名落とせばいいだけです」


 ギルマスは妖艶に、そして愉快そうに笑った。


「わかっているのでしょ?」


「どうしてですか?」


「・・・あら、だれがじゃなくて、どうして?」


「想像がつきます」


 自分は少し苛立ちを覚えた。


 ・・・施しは嫌いなんだけどな


「無理やり転送させたわびだそうですよ」


「・・・あれは事故じゃなかったと。そういうことですか」


 自分は苦笑いをする。ただ・・・そこに愉快さはなかった。


「おお、怖い怖い。でもね、2時試験からは1次免除の人たちも参加だから、聖女さんと勇者さんも参加するからね」


「・・・確かに参加できることに感謝はしましょう。でも、身勝手は嫌いです」


 自分はそういうと、ギルマスは困ったように「私に言わないでほしいな~」と言った。

 その後少し話をしてギルドを後にした。


「ダーリン?」


「お父さん、さっきのどういうこと?」


「誰が推薦したかわかるの?」


 アヤカとミオは先ほどの2次試験参加許可がだれか与えられたか分かっていないようだが、ミレイは気づいているのか別の事を気にしているようだった。


「アヤカ、ミレイ。自分は転移先でヘカトンケイルを倒したといったな?」


「うん」


「そう聞いた」


「・・・あれはこの世界で言うところの神の試練に値するらしい・・・というか、神の試練だった」

 この世界に神の試練と呼ばれるものはいくつか存在し、もっともの有名なのは『4方の最遠』と呼ばれる東西南北の最果てに壁にある試練。

 今だにクリアした者はおらず、確認のみされている。

 このような試練は神が何らかの力を与えようとするため与えられた固定試練であり、この間試験で使用したあの場所は元々設置されていた試練を古の英雄がクリアし、己が力を鍛える訓練場を所望したことで作られたものである。


「神の試練!」


「レンジ君、そんなものに巻き込まれて・・・」


「・・・でもその試練を二人でクリアしたんだよね?その戦い聞いた限りだとお父さん、なんか最初からすごい気がしたんだけど」


 確かにヘカトンケイルや取り巻きを倒すのに少々力を使った。

 でも、それは所詮ある程度の敵にしか聞かないものだった。

 その自覚があるからこそあれから許しを得ることは、まがいなりにも許せなかった。


「魔法と言うのはこの世界特有の概念であり、モンスターはこの概念を前提として生まれている。ゆえに有効打であり、弱点が顕著でもある。」


 ミオはその言葉に深い共感を感じた。それは魔王故にではなく。

 純粋に魔法に関しては絶対的な力もつ魔人故に行き着く答えであるからだ。


「今回のヘカトンケイル。確実に弱っていた」


「・・・どういうこと?」


「あれにもう生きる意思はなく、戦う理由もなしの人形だった。故にただ反射的な自己防衛を行っていたと思えるんだ。あれの攻撃を考えると」


「それでも・・・」


「あれおそらく全盛期はもっと恐ろしかったのだと思う。それこそ共闘したルトーから聞いた逸話内のヘカトンケイルは知恵もあり、戦術を使い、優しく、その上力を持っていたと聞く」


 レンジはそこで一拍おく。


「もしそれが事実であるならば、それは恐ろしく脅威であるといえるだろう」


「ダ―リン・・・」


 少し弱気なレンジにミレイはとてつもない心配を感じる。

 しかし同時に、話してくれることへの嬉しさといかにこの世界が地球と違うかを再確認させられた。


「・・・なあ、守りたいものがあるやつがどれだけ強いか知っているか?知恵を働かせるということがどれだけ大切で、強力なことか分かるか?優しい奴がどこまでも自分の心に素直で意見を曲げないか知っているか?自分はすべて知っている。あの世界で優しい奴はその志半ばで死んだ。知恵を持つがゆえに愚かな種族となりあまつさえ、大切なものを危険にさらすようなことしている。守りたいものがあるといって、自分の義弟は俺の予想をはるかに超える活躍を果たした」


「・・・おとうさん」


 アヤカは戦時中のレンジの活躍を一番見ている。

 ミレイが死んでしまった後のレンジについていったこともあった。

 アヤカはレンジの経験を多少なりとも経験しているゆえにわかるのだ・・・地球での経験で例えられたことにより、一層の事。


「話はそれたが、神の試練に強制的に自分を呼び込んだことで罪悪感を感じた生命神が信託でもくだしたのだろう・・・ミレイ違うか?」


「今回は私じゃなくて違う聖女みたいだから詳しく話わからないけどそう言う報告は受けているよ。・・・でもダーリンがそういう与えられる、許されるみたいなの嫌いだろうから今朝も困った。あの擬人化スキル、神様からだよね?その報酬があるのにさらに無断で与えられているってダーリン怒るの分かっていたから」


 ・・・それでさっきから心配そうな感じを


 自分はミレイがさっきの事を知っているだろうと思っていたがそれを知ったうえでミレイがどう考えるかと言う考えが甘かったことを認識する。


「・・・まあ、いまさらどうこう言うつもりはないし、これで全員で運動会参加できそうなのは嬉しい。まあ前向きにとらえるとしようか」


 そう言って自分は慣れないながらも笑顔を浮かべる。


「フフ、ダーリンの笑顔変なの・・・」


「お父さんに笑顔に会わないね・・・」


「きりっとした方があってる・・・」


 ミレイ、アヤカ、ミオは三者三様のことを言うがそのどれもが自分を励ましてくれていることは分かった。


 だから自分からは一言だけ。









「ありがとう」













 ――――――――――――そう伝えた。


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