戦闘終了後と時間切れ
『試練終了 ヘカトンケイルの消失を確認。聖書に追記開始。試練達成の報酬の授与・・・失敗。両者ともに特別個体と判明。神へ相談。報酬、後日授与。・・・特別措置、ケース5発動。神威魔石、神魔石、神水を授与する』
・・・そんな言葉が自分の頭の中にひびく。
少し離れた場所に2つの魔方陣が現れ、そこから袋を落とす。
「へへ、レン君。成長してかっこよくなったね」
今の自分は変装を解き、メガネもかけていない。
いまは知能特化の『僕』、戦闘特化の『俺』、万能型の『自分』の3つの内の「自分」モードだ。
その姿は前世の高校2年生くらい。彼・・・今は彼女、シオンが亡くなったのは小学六年生だったので確かにずいぶん変わったように見えるかもしれない。
「シオン・・・いや、今ルトーだったな。また君に会えるとは思ってなかった」
自分とルトーはヘカトンケイルの死骸の上で横になっている。
あちらこちらに戦闘の爪痕があり、かなりの戦闘だったことを物語っている。
島の大半の木々は戦闘の影響で傷又は倒れるなどしてしまい、島内の動物による血潮がそこらに見える。
『マスター』
4腕のヘカトンケイルの一体が先ほどの魔方陣より召喚された袋を持ってくる。
4腕と言っても自分が腕の一本を吹き飛ばしてしまったので光の治癒魔法で回復させ、ポーションと元の腕を贄に闇魔法で腕を再生させたためか腕が垂れ下がってしまっている。
こいつはヴァルキリーとなったルトーの新たな召喚獣として契約を果たし、『パール』と言う名を得ていた。
名を得たことにより、モンスターの存在強化(モンスターは自分より強い者に使役され、名を与えられると変化する)によって人の言葉を理解し、思念を送るようになった。
またヘカトンケイルとしての神祖の血を覚醒させ、デミゴットとなることが可能で今は不可能だが、伝承通りいけば怪力と50の顔、100の腕を操る巨神となれるようだった。また、その影響で人の姿を取ることもできるようだった。
人の姿は少し背の高い女性で黒髪のスレンダーだった。服はギリシャ神話の神のような服を纏っており、見る者が見れば神に見えるのではないだろうか?
「パール、人の姿になっておいてもらえる?その方が安心できる」
ヘカトンケイルの死骸の上でその仲間を見るのは少し心苦しく、ルトーがそういう。
『了解』
パールは口数が少なく、短文どころか単語で済ませることが多い。
彼女は体を光らせ、人の姿へと変わった。
「これでいい?」
無表情の中首を傾げる彼女はどこか可愛かった。
「さて、世界樹に戻るか・・・」
「この死体は?」
「内緒にしてくれよ・・・〈ストレージ〉」
ヘカトンケイル達の死骸はすべてきた。
ちなみにだが自分の魔法の影響で死んだ動物はストレージに自動回収されている。
「・・・レンくん、おんぶ」
「はぁ、・・・いいですよ」
僕はルトーを背負い、世界樹に向けて歩き出す。
「この島、ずいぶんと壊してしまったね」
「・・・ああ。ちょっともったいないな」
ヘカトンケイルはその六本の腕(一本切り捨てたので5本)で各種魔法を放つことができ、元英雄の召喚獣とだけあり、全属性はもちろんの事各属性を混ぜ合わせた高位技術・複合魔法まで使ってきたので戦闘は熾烈の一歩をたどった。
ルトーはヴァルキリーの最大の特徴である速度と攻撃力それに魔法同時展開能力を駆使して戦闘を行い、「僕」状態の自分は魔法でルトーの援護プラス、2体の4腕の足止めをしていた。
限界を超え、海を割り、大地にひびを入れ、天を割く攻撃を繰り返しようやくヘカトンケイルは倒れた。
・・・あと30分で仮想空間内での1日が終わる。
日はすでにのぼり、周囲は明るくなりだしていた。
その太陽によって照らされ、痛々しい傷のある島を横目にそう思う。
さらに、ずいぶんと自分のからだもボロボロになっている。
「レン君、今気が付いたけど絶対にこっち見ないで・・・」
「・・・あ、わかりましたよ」
自分はそう言い、どういう事か察する。
・・・と言うかさっきから背中かなりあったかいと思ったら、じかに当たっているところ多かったのね。
二人が頬を染める中後ろを歩くパールはそんな二人を不思議そうに見ていた。
※※※
世界樹に着き、中にあった服に着替える。
「・・・あと十分で強制転送のはずだ」
「レン君、あのヘカトンケイル君が持って行ってくれ」
「いいのか?」
「・・・僕にはパールがいるから」
「はい、マスター」
どこか錆びそうな笑顔でルトーがそういうと、パールがいつもの機械のような返事をする。
「そうか、また会えるといいな」
「うん、・・・と言うかたぶん会えるよ」
「ふーん、それは予言?」
「違う、確定事項」
彼女は小悪魔的笑顔でそう言った。
「確定事項か・・・ふふ、では楽しみにしているよ」
「あの・・・レンジ様」
「どうした、パール」
「・・・あなたをサブマスターとして登録したくあります」
「・・・どうしてだい?」
「ルトー様に何かあった際にサブマスターに連絡を取り協力を仰ぐことが可能です」
「そういう事ならいいよ・・・あ、でも」
「了解をいただきましたので登録します」
そう言ってパールは僕の口をふさぎ、舌を入れてくる。
これが登録方法らしい。
さっきルトーにもやって驚いた。
「登録完了。よろしくお願いします、サブマスターレンジ」
彼女はそう言ってお辞儀する。
「お、おまえな・・・」
「れ、レン君と、華、間接キス・・・(シュ~)」
「あ、おい、ルトー!」
自分はルトーを支える。
彼女は顔を真っ赤にして目を回してしまっている。
「仕方ないな、ベットに・・・」
運ぼうとして自分の体が青い光の粒となって転送され始めているのに気が付いた。
そして、ルトーも同じく金色の粒となって転送され始めている。
それと同時に彼女が向こうでどんな生活を送っているか考えた。
そして自分はパールの下までルトーを運び彼女に言う。
「パール、向こうに戻ったらできるだけ彼女の力になってやってくれ」
「無論です」
パールは表情を変えてないがその声音はどこか呆れたような感じが混ざっている気がした。
「・・・たのんだぞ」
自分はルトーをパールに預けると薄れかけていた意識に身を任せる。
※※※
「ダーリン!」
「お父さん!」
「レンジ君!」
意識を取り戻すと、そこにはミレイにアヤカ、ミオの姿があり、戻ってきたことを実感した。
そして3人に向けて自分は笑顔でとりあえずこう返すのだった。
「ただいま」




