残り時間の方針
「拠点をつくろう」
「・・・はい?」
僕がメガネをクィッと揚げながらそう言うと、トルーは呆けた声を出した。
「この試験、依頼と同じ形式でポイントをつける言っていたよな?」
「…ええ、そうですけど」
「それなら依頼の種類とは?」
「採集、討伐、調査ですね・・・あ、もしかして」
・・・数分前
「エルダーエレファント、どうやって持ってきます?」
「安心しろ、このくらい軽い」
そういうとレンジはエルダーエレファントを買うがると持ち上げ水場へと戻った。
「うん?」
「あ!」
「「「「ガウッ」」」」
水場に戻った二人は血抜き中の鹿に群がる白い狼を発見した。
「・・・雪狼」
「知ってるのか?」
「はい。狼のモンスターで水魔法の雪属性を使います」
「なるほど面白いな」
「「「「グルルルルゥゥゥ・・・」」」」
雪狼は臨戦態勢だ。
「行くぞ」
「はい!」
「きゃん」「ひゃん」「きゃん」「わおーん」
二人であっという間に雪狼を倒す。
「やはりトルーは間の方があっているようだな。騎士を目指すからか?」
「・・・ですがやはり、双武の英雄にあこがれるので」
「双武の英雄?」
「知りませんか?古の時代に邪流を倒した7人の英雄の内、精霊の英雄である双の装備を扱う者です」
「へえ、その一人にあこがれていると?」
「はい。・・・ですがもう一人は偽りの英雄と言われているのであまり人気がありません」
「・・・それは、少し気に入らないな」
「え?」
「まあ、自分の考えでは歴史に名が残るならばそれだけの活躍があるということだ。多くの者は派手で見ごたえのある者を好む。しかしそれがすべていいとは限らない。彼らの裏では多くの者が動き彼らを支援しただろう。だが、その彼らは歴史に名は乗らず消えてゆく。・・・だが、歴史に名が残りそれが英雄と呼ばれるならばそれは何か意味有存在であったに違いない。僕はそう思うよ」
そういうとトルーは再び僕に輝きの目を向ける。
「そうですよね。・・・実はその英雄は最弱無敗の英雄と呼ばれているんです」
「最弱無敗?・・・あ、もしかして不殺の英雄ってことか?」
「おお、よくわかりましたね。もしかして知ってましたか?彼は双盾の英雄。防御特化の英雄です」
「へえ、それはすごいな」
「ですが、彼は最後の邪龍討伐にその名は出ませんでした」
「・・・ほお」
「故に多くの種族から腰抜けの英雄だの、最弱だの言われています」
「でも英雄なんだ」
「・・・はい。彼が救った者は多く、彼に守れぬ者はいないとまで言わしめました。それこそ万の敵からの一斉攻撃を全て防いだとも言われています」
「かっこいいな」
「ですが最後の邪龍討伐にかの者はおらず、3名の英雄が死に生き残った3名の英雄ももう武器を振えぬ体となってしまいました」
「・・・それでいろいろなところから」
「はい。・・・と言っても長命種の頭の固い連中だけですよ。古龍種、ハイエルフ、妖精王の3つですね」
「・・・精霊王は怒ってないんだ」
「・・・!よく気づきましたね。私も思うのですが・・・自分御考えとしては何か隠しているかと」
「へぇ・・・うん?今、トルー変なこと言わなかった?」
「へぇ?・・・!そ、そんなことありませんよ」
「そう?もう一回いって」
「・・・はい。たしか、よく気づきましたね。僕も思うのですが・・・自分御考えとしては何か隠しているかと」
「・・・うん?別におかしなところはないか」
「そうですよ・・・って、れんじさん」
「うん?」
「すごいですね・・・」
「そうか?」
そこには解体し、皮と骨と肉がきれいに別れた鹿とエルダーエレファントが置かれていた。
「こういうのは得意でね。大物借りが好きだからこういうのもできないといけないんだ」
「そうですか・・・でもこれどうしましょう?」
「・・・そうだな」
「あ、そうだ!」
「どうしました?」
「拠点を作ろう!」
「・・・はい?」
こうして冒頭へとつながる。
「雪狼のドロップ品見せて」
「え?ああ、このファイル+紙10枚×4ですか?」
そう、雪狼からドロップしたのは上質な・・・ではなく見た感じコピー用紙と同じような紙。この世界には一応会は存在している。
ブックイータと呼ばれる本のモンスターを倒すと内部から魔石が放出され残りが紙となる。
その中の高品質な数枚は魔法契約や、上位魔法のスクロールとして扱われある意味羊皮紙よりも高い効果が出ると人気のものであったりする。人気外の者は基本的にギルドに降ろされ学者やレポート作成、モンスター図鑑更新用や冒険者の話を聞く際のメモとして使われる。
「・・・そうか、この森の実態を調べれば調査依頼と同じ」
「惜しいな、トルー」
「え?」
「正確にはこの仮想世界をだ」
「なッ!」
「不可能だと思うか?でも、・・・面白そうだろ?じゃあ、やるしかない」
「ふふ、本当に面白いですねレンジさんは」
そう言って笑うトルー。
「お、おう」
その笑顔に不覚にもときめいてしまうレンジであった。