もし最優秀選手になったら・・・
『はは、そう固くなるな。まあ、身構えるなと言う方が無理があるか』
『しかし、まさかあれほどの空間歪曲を観測するとは思いませんでしたよ』
魔神と名乗る黒猫、生命神と名乗る小鳥はそう言って黒猫は魔王へ小鳥はミレイとアヤカの方へ顔を向けた。
「・・・空間歪曲?」
魔王含め全員がその言葉の意味を理解できなかった。
「・・・魔法使用における物理法則無視のため起こる揺り戻し現象」
いや、一人だけいた。
たった一人の男。忘れられぬあの人を呼ぶために神の力の一端たる異世界召喚を自力で完成させたものが。
『ほう、理解できるものがいたか。主、転生者か』
『あ、あなた覚えてますよ。転生特典に前世の旦那さんを要求した人ですね?』
黒猫はミレイの言葉に反応し、振り返ると小鳥は逆を向いてしまうので小鳥は軽く飛び上がり、向きを変えると、猫の頭をつつきながらそう言う。
『あの時は申し訳なっかたのです。でも、あなたに教えた通り、その方の現状を知れる窓は渡しましたし、方法も知らせましたら、許してほしいのですよ。あとは、最優秀選手になるだけですけど・・・』
小鳥はそう言って魔王に視線を送る。
『あれに勝つのはいくらあなたでも難しいかと、思います』
「大丈夫です」
ミレイはそうとだけ言った。
その事に違和感を感じたアヤカだがそれは後で聞けばいい事であり、優先すべきことが他にある現状では頭の片隅のいておくことにした。
『・・・そうですか。私としては悲しんでいるかと心配したのですよ。まあ、いいです』
『生命神、もうよいか?』
『はい』
すると魔神は両者を視界の端にとらえるあたりまで移動し、警告を放つ。
『汝ら三名は殺意と言うなの心の暴走によって、〈魔法の原点〉の手前、〈心の刃〉を生成して見せた。しかしそれはかなり不安定なものであり、揺り戻しの大きな力でもある。先ほどのぶつかり合いで次元に穴が開くことはなかったが、次元に亀裂が入ればそれは揺る戻しの力によって一時的に超重力球へと変わる・・・勇者に、聖女。その危険性はわかるな?』
「はい」
「知っています」
『我は警告した。私たち神はこうして世界に干渉するには力の大半を置き、何かの形を借りなくては満足に動くことすらできない。故に私たちでは塞ぐことができないことをゆめゆめ忘れないように』
魔神(黒猫)はそういうと扉へ向けて歩き出す。その上にはふねをこぐ生命神(小鳥)。
黒猫は魔王の横を通るときあることを耳打ちする。
魔王は頷くと黒猫はそのまま去って行った。
「「「「はぁ~。生きた心地がしなかった」」」」
王に賢者、拳闘王、魔王、勇者がそう言って肩の力を抜く。
「おかあさん?」
「・・・あれの件はばれていない。じゃあ、あれを使ったことは?黙認されていると思った方がいいのかしら?まあ、もう無用の長物だけど」
アヤカがそう言ってミレイの間で手を振るとミレイの意識が現実へと戻る。
「・・・あ、あーちゃん。ごめんね。ちょっと考え事していただけだから」
「・・・」
母が何かとんでもないことをしているんじゃないかと不安に駆られる娘をよそに魔王は先ほどの魔神の言葉を思い起こして、ある提案をする。
「・・・ミレイちゃん、勇者ちゃん。今度の運動会。最優秀選手になった人がレンジ君と1年間同棲できる権利にしない?」
その瞬間、二人に稲妻が走る。
・・・同棲、それはもはや恋人関係を内外に主張しているようなもの。間違いをおこし・・・間違えが起こりやすい状況でもある。
二人は考えた。・・・これはこの3年間歴代初の連続最優秀選手に選ばれた魔王だからこそいえる事でもある。
「わかった。私はいいよ。お父さんと『二人で』同棲生活」
「・・・勇者はレンジの娘?」
「前世でね・・・でもここなら関係ない」
「・・・そういうこと。ミレイちゃんは?」
「わたしも・・・その条件でいいわ」
女3人がそういうなか、男3人は集まってその様子を見ていた。
「あいつらすげーな。ほかの参加者眼中にねえのかよ」
「しかし、勝手に景品にされているレンジ殿は・・・」
「・・・もう知らない」
王様は再び空気へと帰り、同じく空気と化して二人に慰められるのであった。
※※※
「あ、この山菜食べれる。青紫蘇じゃん。ラッキー」
一方、景品はお金を獲得できなかったため、森の奥地で山菜を取っていた。
主人公・・・、貧乏ナウ。