ミオの心
二人の変わりようにミオは驚く。ただ、二人の言葉が自分の心に引っかかっていた。
・・・彼のタオル。つまりレンジ君のタオルの事だよね。
ミオがレンジに借りたタオルは今、アヤカの手の中にある。
アヤカはそのタオルの匂いを嗅いで、少し幸せそうな不快そうな相反する顔をしている。
しかしどうしてだろう。まるで宝物を取られたときのような苦しみがミオを襲っていた。
・・・返してほしい!
それは久しぶりに澪が心から思ったことであった。
『認証しました。対象:タオル。転送します』
ミオの頭の中でアナウンスが流れると、アヤカの手からタオル消え、ミオの事情に現れた。
「なにこれ?」
一番おどろいているのはタオルを引き寄せたミオだった。
彼女はそうは言いながらもタオルを先ほど同様ストールのように使う。
「おいおい、ミオ。お前さんが神よりの報酬を使うなんて珍しいじゃねえか」
「神よりの報酬?」
「・・・最優秀選手賞の景品にあるだろう?なんでもお願いできる権利。あれでミオはその転送能力をもらったんだぞ。滅多に使わないからどうしたかと思っていたが、まさか忘れて頂けとは」
トールはそう言って腰が抜けたまま肩を落とした。
「それ、私がもらってあげる。お父さんに関する者は私のもだから・・・返して」
「ミオちゃん、どうしてそれを取るの?」
ミオの転送の能力により、緩んだ空気はその転送したものの効果により先ほどよりも地獄になっていた。
この殺気は千単位の集団でようやく出せる殺気だった。
それを立った二人で起こすのはそれほどの殺意と言うことである。
「・・・ねえ、ミレイ。1つ聞いていい?」
「あら、私の質問には答えずそっちが質問?まあいいわ、でもくだらない質問したら…この場でぼこぼこにしてあげる」
それを聞いてミオは苦笑いになる。
正直、このゴシックロリータで戦闘になっても動きにくいこの服では戦うことができないのは目に見えているからだ。
「・・・あなたの言うダーリン?はもしかしてレンジという名前?」
「・・・へぇー、知ってるんだ」
ミレイはそう言うと、少し間を作り暖かさの微塵も感じない笑顔で言う。
「・・・どうして?」
ミオはその瞬間、彼女のダーリンがレンジであることを確信した。
少し前の考察と変わってしまうが、奇跡の聖女と呼ばれる彼女には転移者を若返るすべを持っていても驚かない。
ただ彼女の持つ天才的センスに舌を巻く。
だが・・・心が痛む。
彼女にさんざんレンジのいいところを聞かされたせいだろうか?
ミオにとって連は今日初めて会った人物ではなく、ひさしぶりに会った大切な人に近い感覚だった。
そして、・・・自分と同じ才能をもった年の近い異性。
それはミオにとって初めての相手だった。
ゆえに、惹かれた。欲しいと思ってしまった。ミレイから見たレンジではなく自分から見たレンジがほしいと思った。
これを恋というのかはまだわからない。
しかし、ミレイにレンジをダーリンと呼ばれるたび、ミオの欲しい、独占したいという気持ちはさらに膨れ上がる。
「ミレイちゃん・・・わたしね・・・」
ミオは口を開く。これは男性としてレンジを見て言っているのか、同じ実力いやそれ以上を持つレンジを見て抱いた感情かはわからない。
けど確信をもっていえることが一つだけあった。
決意は固まり、その目は嫉妬に沈み黒く光りない瞳はまさにミレイと同じ。
「レンジ君が欲しい。・・・だから、邪魔しないで」
その瞬間、母娘のすさまじい殺気と同等の殺気が正面からぶつかる。
それはぶつかると同時に空気を震えさせ、3人を反対側へ吹き飛ばす。
「うっ!」
「きゃ!」
「・・・」
全員が10m近く後退し、一旦落ち着きを見せる。
しかし、3人は互いの敵から視線を外さない。
『そこまでにしてもらおうか、我が眷属たる魔王よ』
『そうですね、異界との境界線を越え力を得た我が子らよ』
その瞬間、3人の間には一匹の黒猫とその上に乗る緑と白の小鳥がいつの間にかいた。
そしてこの場にいる全員が瞬時に気づく。
・・・敵対すれば死ぬ!
そう思い、3人は動けなかった。
「もしや、魔神様に生命神様でしょうか?」
もはや空気と化していた王はようやく回ってきたやくわりと言わんばかりに2匹の動物に聞く。
『お、わかるのか』
『そうですよ、我が子王のジョブを受け継ぎしものよ』
3人は思わぬ神の登場に3人は若干の焦りを抱えていた。