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レンジのタオル

 

 ミオはレンジが去った後、侍女の一人に許可をもらいシャワーを借りた。

 レンジと会ったことで体が火照りすぎて大量の汗をかいてしまったからだ。

 ミオはアイテムボックスより服を探し、ちょうどいいのを見つけた。


「・・・まあ、これでミレイちゃんと戦闘になったら負けちゃうかも」


 元の応接室に戻ると同じくシャワーを借りたトールがいる。

 服は一応新しいもの着かえてあるようだが、前と変わらない服だった。


「ミオ、まさかその服で行くつもりか?」


「・・・だめ?」


「いや、だめというか・・・、動きにくそうだと思ってな。ここは一応ライファーの代表の城だから用心のため、な?」


「大丈夫。これでもミレイ以外には負けないから」


「・・・はあ、そうかい」


 ミオが来ている服はゴシックロリータ(黒)と言う服だった。

 その姿まるで人形のようですれ違う人物、男女問わず視線を奪った。


 ・・・今度、これでレンジ君にあってみようかしら?


 周囲の反応とレンジを重ね、それを想像したミオの頬が少し赤く染まる。


「ミオ、どこまで行く気だ?」


 後ろからトールの声が聞こえ、足を止めると謁見の間を彼女は通り過ぎていた。


「ごめん、考え事していた」


「・・・それはいいのだが、ミオ。なあ、そのタオル掛けたまま入るのか?」


「大丈夫、賢者さんと王様とミレイちゃんと勇者だけにしてもらっているから」


 ミオはレンジから借りた(もらった?)タオルをストールのように使い肩にかけている。


「まあ、タオルくらいゆるしてくれるか・・・」


 ・・・この時はまだ誰も知らなかった。このタオルが歴史上最高の人魔対抗大運動会となるきっかけになろうとは。





 ※※※





 謁見の間にて綾香は苛立ちを隠せなかった。

 お父さんのいる世界に来て、さらにその日にお父さんに会えた。

 それはアヤカによって最高の出来事だったし、お父さんはがんばる人や一生懸命な人が好きだ。だから勇者と言う大役に選ばれ、お父さんに「お前にしかできない、期待している」と言ってくれた。


 これはもう頑張ったらお願いを何でも聞いてもらうしかないし、一日の終わりにはマッサージ、いや一緒に風呂に入ってマッサージ、手が疲れたのであーんを、いや口で咀嚼するのも疲れたと言って口移ししてもらうのもありかもしれない。


 ・・・それなら私にとって一番の栄養素ファザニュウムも摂取できる。唾液と言う最高のドリンクと一緒に!


「うふ、ふふふふふふふふ・・・」


 その事を考えたアヤカは表情が緩み本来ならひどい顔になろうと思われるが・・・それでもなお美人であった。

 隣のミレイはそんなアヤカをよそに扉に注目していた。


 ・・・うん?私の家の洗剤のにおいに、ダーリンの匂いがちょっと?でも、あの子に匂いが一番強い。じゃあ、気のせいかな?あの洗剤は有名だし・・・ダーリンのは気のせいかなと思うほど薄いし。


 その扉の向こうにはミオがおり、彼女がシャワーを浴びたことで薄まっているはずのレンジのにおいを今、ミレイは嗅ぎ取っていた。


「ミトル、この場に侍女も騎士もおらん。おぬしの魔法であけてくれ」


「了解です。闇魔法〈影の手〉」


 すると賢者から黒い影の手が伸びたかと思うと、扉を開けた。

 そこにはかわいらしさにその少し小さめの身長と相まって、高名な人形師の作りし自動人形かと思うほどの多くの女性と一線をしく女性に、それを守るワイルドな戦士と言うかのように膨れ上がった筋肉に少し小さめの服なのか、ぴちぴちの服。背中には大剣を2本背負い、その肉体より溢れるオーラによって戦士は本来の何重にも大きく見える。


 二人を並べるなら、姫と騎士と言う言葉が良く会う事だろう。

 そして、だれ一人として二人が兄妹であることを瞬時に見抜くことはないだろう。

 しかし、二人とも頑として近寄りがたい強者の風格を纏っている事。それだけが瞬時に見抜ける唯一の共通点とも言える。


「よく参った、魔王ミオリレーゼ。その兄、拳闘王トールレイバー」


 王がそういうとアヤカが二人を見て驚く。・・・これが普通なのだ。馴れたというかのようにミオとトールの二人は無視する。


「かあさん、ほんとうに?」


「本当よ、あーちゃん」


 二人は小さくそういうがそれは魔王と拳闘王の耳にと置いており、小さな混乱を起こしていた。


 ・・・あの少女が、ミレイの娘?


 ・・・二人は同じ年に見えるが片方が老けて見えるのか?それとも若作りなのか?


 ちなみにそう考えたトールはミオに肘鉄を一発くらい、声を出すわけにもいかず小さく震えていた。


「ごほん、それで魔王に拳闘王よ。要件は勇者との面会でよろしいか?」


「うん」


「そうだな。まあ、もう一人気になるやつはいたが平民のようだからそっちは自分体で調べるから一時的のこの王都のどこかに宿を取ると思う。それを言っておこうと思ってな」


「・・・トールにいさん。言葉づかい」


「おっと、すまねえ。じゃなかった・・・すみません」


 テトレーンは苦笑いで言葉づかいを不問とすると、アヤカとミレイに目配せをする。

 ミレイは頷き、アヤカもそれに続いて二人の前へと出る。


「・・・ふーん」


「ほう・・・」


 二人は今の一瞬でアヤカの素質をある程度把握したと言って差し支えないだろう。

 アヤカは召喚されるだけあってかなりいい素質を持っている。

 彼を見る前であれば、かなりの驚きを示しただろう。

 しかしそれをテトレーンはブラフと考え、笑みを浮かべる


「魔王殿。勇者アヤカ殿の素質は中々なものだろう。それに今年は獣王が参加を表明しており、もう一人期待している人物がいる。去年まで出ていなかったゆえ、完全に無名だが中々に腕がたつ。なあ、ミレイ?」


「ええ、ミオちゃん。たぶん今年の最優秀選手賞はダーリンだから」


「ほう、それはおもし・・・・なに?」


「あの聖女に男!?」


 ミオにトールは耳を疑った。

 容姿もいい、頭もいい、ある一点を除けば正確になんもないし、家事も一般家庭クラスならできる。そのうえ運動ができ、魔法も使え、戦闘経験もなかなかである。

 それゆえに惚れる男は多いがそのすべてを蹴ってきたのが聖女である。

 彼女は好きな人物がいると言っており、のろけ話なら1日はしゃべれる。

 だが、その肝心の人物を見たものは一度もおらず、ミオと、トールはその者が異世界にいる事を知っている。


 異世界より来たのが女性である彼女であるということは彼女がダーリンではない。

 そしてダーリンは男に使う者。よって、この世界の私に匹敵する男。

 そのとき、ミオの脳裏に先ほどあった一人の男の姿が思い浮かぶ。


 ・・・彼なの?


 ミオはそう考えると胸の奥がチクリといたんだ。


「聖女ミレイ。失礼だが、そのダーリンはお前さんが良く話していた異世界の・・・前世の旦那の事か?」


「そうよ」


「そうか・・・じゃあ、あの人は違うよな。年齢合わないし」


 トールがそんなことをつぶやく。

 それと同時に、ミオもトールがなぜそんな質問をしたかわかった。

 この世界に存在する文献によれば、同列時間軸による転生、転移は可能だが過去、また未来の人物の召喚は不可能とされている。彼女の話によればミレイと旦那さんの年齢は同じ。

 そして、彼女が前世で死んだのは40歳。そして今は17才。さらに昨年の彼女の様子と現在の彼女の様子を比較して旦那さんの召喚に成功したのはここ最近。

 よって、現在前世の旦那さんを呼ぼうとしたら転生による0歳か転移による57歳のどちらか。

 しかし、王は大運動会に置いて戦力としてその人物を数えていることからおそらく転移による57歳と予測できた。


 レンジは見た感じ十台半ば。

 ならば、彼がダーリンではないだろうとトールは考えたのである。

 その事に気づき、ミオは肩のタオルで額の汗を拭う。

 その瞬間、開けたままとなっていた扉より風が吹き、ミオのタオルが飛ぶ。









 ・・・それは、アヤカの下まで飛び顔に当たる前に彼女はキャッチする。そして、タオルが風に揺れ彼女の鼻先をすぎる。





 そうこれだけ近い距離ならばわかるのだ。彼女たちは。どんなに匂いが薄れていようと・・・





「・・・すみません。取っていただきありがとうございます」


 そう言ってミオはアヤカの下まで行き、タオルを返してもらおうとタオルを引っ張るがアヤカはそれを放さなかった。


「・・・」


「・・・勇者殿?」


 ミオは不思議そうに聞く。タオルを返してくれないこともそうなのだが…


 ・・・なぜにそんな不機嫌なの?


 タオルをつかんでから彼女は・・・いや、加えて言うなら隣の聖女も目に見えて不機嫌だった。


「ねえ、みおちゃん」


「!!」


 ミレイに名前を呼ばれた瞬間、ミオはその場から後ろに飛びのいた。


 二人は光のともっていない目でミオを見つめ、歴代最強と呼ばれる魔王さえ恐怖を覚える殺気を放ちながらふたりは声をそろえて聞いてくる。














「「ねえ、なんで彼のタオル持ってるの?」」











 その声に城のガラスにひびが入り、トールは腰が抜けてしまった。

 魔王は冷や汗を浮かべ、息をのんだ。

 そして二人は、今まで受けてきた声の中でもっとも冷たい声音で言った。














「「答え次第じゃね?・・・やっちゃうかも♪」」








やっぱり親子ですね~

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