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美女な獣

 


 冒険者登録をしに来たギルドの二階に通され、椅子に座って待つ自分。


 ただ・・・すごく居心地が悪かった。


 階段を三分の二、登ったところで気が付いた。

 この階にいる人たちは受付、掃除係含めすべてが強者であると。

 そのため少しばかり足が止まる。

 すると、上から羽の生えた幼女が降りてきた。


「・・・うん?おお、君いい魔力だね。おいしそう」


「・・・はい?」


「あ、ごめん。ついね・・・。私、妖精族だから魔力が見えるんだ。君は風と・・・おお、すごい。これは逸材かもね」


「そう・・・なんですか?」


「まあ、ここから先に危機感を感じているようじゃまだまだかな?」


 そう言って彼女は僕の立っている段の一つ上を足で二度鳴らす。


「・・・あ、別にそういうわけではなくて。格好の問題と言いますか、ここより上にいる人の実力を考えますとおそらく装備もそれなりに・・・となりますとね?」


「・・・ぷプ。そういう事ね。あなた変わってるわ」


「そうですか?・・・でもまあギルド証はほしいので、行きますけど」


「そう、わたしシルフ。君は?」


「レンジです」


「じゃあ、また機会があったらね。レンジ君」


 そう言って彼女は下に降りて行った。


「・・・いきますか」


 そう覚悟を決めたはいいもの、・・・やはり注目されました。

 周りはすごそうな装備付けた人ばかり。

 自分の中で自分を殺せる人物に応じて頭に響く警告を知らせる鐘の音。

 鐘の音が大きければ、大きいほど危険と言うことになる。

 少なくともこの階に鐘が鳴らない人物はいなかった。ただ、自分を即死させるような奴がいなかったことも事実である。


 鍛冶の特殊スキル〈アイテム鑑定〉によって武器防具の性能はわかる。

 王都の冒険者とだけあってなかなか質も高いのだろうと思われる(比較対象がないため仮定)。


「あ、レンジさん。着いてきてください」


 自分はそう言われて奥の部屋へと連れて行かれる。

 扉を開けそこには二人の女性がいた。


「私はこのギルドのギルド長にしてライファーギルド副統括、マチルダという」


 自己紹介したのは50近いと思われる魔術師のローブを着て、あふれんばかりの強大な魔力を内に感じさせる女性。


「私はこのギルドの最高戦力 エリーゼ。これでもSSランク冒険者だよ。よろしくね」

 そう言った彼女は先ほどの酔った男との間に入った女性だった。


「あなたは・・・」


「うん、さっき会ったね。君の事、僕も興味があってね♪」


 彼女はそう言いながら唇を一なめした。

 その瞬間、自分に悪寒が走った。

 目の前の女性に別の意味で食われそう。感じたことに。

 そしてそのあとに待ち受けるであろうあの妻の愛の深さに死ぬんじゃないかと言う予感で。


「なんだい、獣王とも知り合いなのかい?すごいね。・・・しかし私やエリーゼの名前を聞いても驚かないなんて。まあうれしくも感じるのだが、寂しい気もするな」


 ギルドマスターはそういうと楽しそうな雰囲気を醸し出す。


「・・・田舎出身なもので」


 自分はそう言って謝っておく。

 ・・・二人に笑われた。


「そうか、私たちもまだまだと言うことだな。・・・さて、ここに君を呼んだ理由だがこれだ」


 先ほどまでもやわらかい空気が一変、張り詰めた空気になる。

 そんな彼女が差し出してきたのはブラックカード。

 僕と同じブラックカードだった。


 ・・・ただ、わかった。職業柄、奪われる際に瞬時に付けてしまう。


「それは渡したやつじゃないですよね?」


 自分は証を取られえる際、とっさに右上に自分の血の印をつけたのだ。


「ほう、・・・」


 だが、これにはついていなかった。


「・・・どこにあるんですか?」


「・・・光魔法〈雷撃〉」


 すると、マチルダが杖を振るう。

 僕は瞬時にバックステップを踏みこもうと・・・フェイントをかけ、マチルダとの距離を詰める。

 僕のいた位置に雷が落ちる。


「・・・なっ!」


 その声は背後の、扉の前に回り込んでいたエリーゼから聞こえた声だった。


「・・・やはりただ者じゃない」


 マチルダは瞬時に火系最速展開術式〈火矢〉を構築。

 さらに、改造杖の込められた魔法式を使用し、加速と追跡を付与。


「・・・おそい」


 自分は足に風魔法〈加速〉をかけ、ストレージから地龍の牙を取り出す。

 そのまま術式に誤作動を起こさせるために姿勢を低くし、接近。

 マチルダの視線が下に下がると同時に、〈空風〉によって一瞬、目つぶし。

 そのまま天井まで飛び上がり、天井を蹴って彼女の首に地龍の牙を当てる。


「付与:闇魔法〈影ぬい〉」


 そういてストレージからもう一本地龍の牙を取り出し、闇魔法影縫いという相手の影に触れるとその陰の持ち主を手を離してから最長5秒とめられる。また、ずっと触れていれば効果は永続だがMPを使い続ける。エンチャントなら込めた魔力(MP)量に左右される。

 とりあえず今は話を聞いてもらいたいので1分ほど止められるだけの魔力を込めておいた。


「・・・どういうことですかね?」


「こりゃあ、驚いた。私とエリーゼを抑えるだけの力があるのかい?しかもほとんど肉体能力。魔法も完全に扱いきれてないのにあの精度・・・面白い」


 ・・・じゅるるる


 何処から涎をすする音が聞こえる。

 それと同時にマチルダが少し青ざめ、大急ぎで机の中からブラックカードと一枚の説明用紙を取り出した。


「このカードはギルド内においてのランクを示すものだが特別なランクの物。この紙に説明書いてるから読みなさい。・・・そして早く逃げなさい」


「・・・はい?」


 自分はそう言われて後ろを振り返る。


 ・・・そこには獣がいた。


 獲物を見つけて今にもとびかかりそうな獣が。


「待ってて。これすぐに解いて君を持って帰るから。わたし、強い人好きなになちゃうの」


 そう言う彼女の目はとろけたように垂れ下がり、頬を朱に染め、息遣いはあらく、興奮しているようだった。

 これは捕まると、干からびるまで搾り取られるやつだ。

 昔ジャングルのアマゾネスに捕まった時と同じ雰囲気を彼女から感じた。


 僕は即座に帰還を決意、部屋の窓から飛び出す。

 その際に闇魔法〈目つぶし〉でエリーゼの視界を奪い、風魔法〈無音結界〉で脱出音をけし、闇魔法〈影の手〉で窓を閉めた。


 ・・・結局、換金できなかった。


 と僕は町に並ぶ欲しいものを眺めながら帰路に着くのであった






トール:「なあ、俺そんなに汗かいていたか?」

ミオ:「うん。・・・シャワー借りれて良かった」

トール:「なあ、そのタオルかけたまま入るのか?」

ミオ:「大丈夫、賢者さんと王様とミレイちゃんと勇者だけにしてもらっているから」

トール:「まあ、タオルくらい許してくれるか・・・」

次回、レンジのタオル(予定)

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