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ミオとトール


 ライファー王都。その城下町にミオはいた。

 今は焼き鳥をトールに買ってもらい、それをほうばる姿は中々に可愛らしい。

 頬をいっぱいいっぱいにし、リスのようなその姿は周囲の者を魅了した。

 しかし、声を掛けようとする者はいない。


 理由は二つある。


 一つは、彼女が魔王であるから。

 魔王とは人魔対抗大運動会に参加したブライファーの最優秀選手を指すことである。

 人魔対抗大運動会は世界手競技であるため、その人気は計り知れなく最優秀選手となった人物など先一年は各地に引っ張りだこ。例え一年が過ぎようと、その姿を覚えている者は少なくないほどだ。

 故に姿を見る者は多いが狼藉を働こうものなら、即種すべてが動くと言っても過言ではないほど大掛かりな報復措置が取られる。


 そしてもう一つが、共にいる兄トールである。

 彼は軽度のシスコンであり、常に妹に手を出すようなやつがいないか目を配っている。

 彼はブレイファーで開かれる大決闘大会において7年拳闘王を守り抜いてきた男でもあり、その強さは吟遊詩人が一部の戦闘を物語にするほど。


 そんな強者二人がそろっていては少しおじけずいてしまうのは仕方ないことで、彼らの歩く道は人が道を作るかのように別れてゆく。


「ねえ、兄さん。あの城から面白そうな殺気感じない?」


「ああ、片方はあの聖女の者で間違いなさそうだが、もう一つがわからねえ。噂の勇者ってやつか?」


「それあるかも・・・あ、消えた。でも、この距離で私たちに向けられたわけじゃないのにの感じる殺気ってことは、かなり期待してよさそうだよね」


「そうだな、少なくとも八龍クラスじゃないか?」


「あー、彼ら?確か上から5番目の称号だっけ?」


「おいおい、わすれてやるな。そうだな、うえから魔王、双帝、四天王、六刃将、八龍だからな。ミオ、お前もう少し魔王の自覚持て」


「しかし、トール。いつまで4天王でくすぶっているつもり?双帝くらい軽いんじゃない?」


 ミオがそういうとトールは頭を掻きながら言う。


「・・・おまえな。あの二人やお前は別格なの。まあ、手が届かないわけじゃないが一対一でお前さんに傷つけられるブレイファーなんてあの二人しかいないだろう?」


「うーん、たしかに。ライファーは二人・・・あ、3人いる」


「うん?3人?聖女とあの獣王だろ?もう一人は?」


「レンジ君」


「レンジ?聞いたことねえな」


「あの森に棲んでるって言ってた」


「あの森に!?常にAランクモンスターの出現するあの森にか?聖女が別荘持っているってのは知っていたが住んでるやつがいたのか」


「そうなのミレイの別荘があるんだ?彼はね、少なくともSランク風魔法使いで体術は相当切れる。監査右岸もすごくて知識もいっぱい持ってそう。でも、あまり一般常識と言うか外のこと知らなそうだった」


「へえ、どのくらい?」


「私が素顔で名乗ってもスルーされるくらい」


「ふ、はははははは。そうか、そうか。そりゃあ恐ろしく常識知らねえな・・・ぐぉ」


 トールが腹を抱えて笑っていると、トールの腰ほどしか身長ないミオの裏拳が入る。

 そこはちょうど溝内があり、トールは一瞬で顔面蒼白になる。


「ば、ばかやろう。俺じゃなかったら吹き飛んでいたぞ!」


「笑うのが悪い」


「そうだけどよ・・・」


 そうこうしているうちに城の下までつき、魔王の印出る魔王紋の施された右手の甲を見せる。

 衛兵は取次の為来訪要件を聞くと、トールが勇者に挨拶と謝罪に来たと言って城内一階の応接室へととおされる。


「兄さん、わたしちょっと外出てくる」


「どこへ行く?」


「女の子に聞いちゃいけないところ」


「・・・すなまい」


 トールは顔を真っ赤にしてそう言うと、ミオは後で腹パンと言って部屋を出て行った。

 ちなみにこの後、この部屋の中でトールが自分に自己修復魔法、自動回復魔法、防御力上昇、防御力極地上昇、肉体強化、身体強化のスクロールをすべて使って、さらに回復ポーションをのめない時用のスプレーポーションをテーブルに置いておきミオの腹パン対策をしたのは言うまでもない。



 ※※※



 ミオはトイレを終え、応接室へと戻ろうとしていた。

 そして先の兄の失言に対し、制裁の腹パンのためのシャドーボクシングを少しする。


「脇を締めて、腕をひねるようにすると、パンチの威力は上がりますよ」


 そう言われたとおりにすると、少し威力が上がった気がした。

 そして気が付く。シャドーボクシングを見られたと。

 彼女がそっちを見ると、メガネをかけ、不思議な口あてをしているスーツを着た男が立っていた。

 しかしその身のこなし、自分位気づかれずそこに立っていたことより彼女は彼を只者ではないと判断、警戒を示した。


「格闘少女ですか・・・ってミオさん?」


「?・・・だれ?」


「あ、僕です。レンジです」


 そう言って目の前の男はメガネとマスクを外す。


 そこには彼女の心に秘かに住み着いたレンジがいた。








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