狂気の刃~6
うへぇ、文才がほちいよぉ
まずは観察だ。
あいつがこれまでの人形とは強さが違う事は解った。
なら、何が違う?何が変わった?
『スキル 多数考察が発動しました』
口の部分に空洞。
腕が一回り、いや、腕だけじゃない。
全体的に大きい。
だが、大きくなった身体で俺に匹敵する速さもある。
それに、こちらを向いて動かない事から。
考える、考察する思考があるかも知れないと懸念する。
キツいな・・・今の俺じゃ勝てないかも知れない。
異能力を使うか?いや、宇津木達が居るし・・・あ。
山下さんの前で使ってたか・・・でも。
俺が考察していると、ゆっくりと。
人形が動き出した。
ゆっくりとだが、こちらへ歩き出している。
ちっ!向こうの方が頭が良いってか!
俺が身構えると、一気に距離を詰めてきた。
振り上がる人形の右腕。
そのまま振り下ろそうとしているが、悪いな。
がら空きだ。
そのままこっちも加速し、人形が振り下ろす前に懐に入る。
手を人形の胴体に密着させ、脚に力を込める。
タイミングだ。
脚にから腰に、腰から肩へ。
肩から腕に。
関節の連動するタイミングで手を拳に変える。
「喰らえやっ!」
ドンッ!と炸裂する俺の拳に、人形は堪らず吹き飛ばされる。
中国拳法の1つに崩拳と言う物がある。
これは脚を地面を踏む力を身体。
詳しくは関節をタイミング良く連動させ、その力を拳まで伝え、威力を発揮する技だ。
良くあるだろ?漫画とかで「はっ!」って相手が吹っ飛ぶアレ。
「密着した状態でこれ程のパンチをっ!」ってやつ。
あれの元の技だ。
ただ、難しい。俺も武術のスキルが無かったら出来ないだろう。
しかし、人形は吹っ飛んだのにも係わらず、平気な様子で起き上がり。
再びこちらを凝視・・・しているのか?
眼がないが、停まっているから合ってるよな?
なら、良いよ。停まってろ。
悪いが考える時間を与えてやらない。
今度はこちらから仕掛ける。
強化された脚力で一気に人形に接近すると、人形も動き出す。
正拳突きを1発。
だが、これは避けられる。
上体を捻り、回し蹴りを叩き込むが。
腕にガードされる。
人形が俺の脚を再び絡ませて掴もうとするが、すかさずジャンプして空中で2度目の蹴り。
頭部に蹴りが決まり、人形の重心がグラリと傾く。
ここだ!ここで決める!
着地した瞬間。
宇津木達にバレない様に人形の足に触り『雷の異能力』を発動。
バチンッ!と派手な音と共に紫電のスパーク。
人形から力が抜けたのを見逃さず。
拳に蹴りのラッシュを叩き込む。
ドゴ!バコッ!と殴り蹴りしているが。
駄目だ。装甲に亀裂すら入らない。
後ろから宇津木の「やれーっ!そこだー!いけいけー!」等と声援が聴こえるが、冷や汗が止まらない。
人形が動き出すのを確認すると、一旦。
距離を取る。
「っち~・・・こっちの拳がお釈迦になるな」
俺の両手は赤く腫れ上がり、所々だが皮膚が裂けて血が滲んでいた。
恐らくだが、脚も同じ様な状態だろう。
替わって人形だが、どこも壊れてないし。
むしろ亀裂すらない。
あれだけ攻撃したのに、目に見えるダメージが無いのだ。
軽くブルーになる。
「はぁ・・・打つ手なし・・・か・・・」
撤退を視野に入れ始めて考えていた。
その時。
後ろの宇津木達の声を拾った。
「ねぇ・・・なんかピンチっぽくない?」
「だな・・・あんだけ攻撃してんのに全く効いてる様子がないみたいだ」
「ふぇ・・・ど、どうするんですか?」
「大丈夫よ!こうゆう時って、何かこ~・・・未知なる力に目覚めるモンよ!漫画では!」
「・・・漫画だろ」
ははっ・・・確かに漫画ではな・・・?
未知なる・・・力?
そうか!あんがとな宇津木。
すっかり忘れてたよ。
有ったぜ。未知なる力。
「頼む神龍!俺に文才をくれぇー!」
「その願いは神の力を越えている・・・」
「・・・ぇー」




