また朝鮮人かよ! (4)
『リューイソウ』が、
私の靴を持って、
廊下を走って来ました。
話は最初からズレますが。
私は、
麻雀を覚えた時、
この女の事が、
頭に有って、
『リューイソウ』を上がってみたいと思ったのです。
理由は、
御想像の通りで。
でも、
麻雀歴四十二年なのに、
ダメで。
上がれるどころか、
テンパった事すら無いのです。
しかも、
サンマとか『フタマン』でさえも。
『フタマン』と書いてる時点で、
私が、
どれだけ雀卓を囲んで来たのか、
御理解頂けるかと。
話を戻すと。
その『リューイソウ』が、
走って来る姿を見て。
(なんて! かわいそうなんだ!)
と、
思ってしまったんですよ。
天然パーマをヒラヒラさせたチンチクリンな女を。
しかも、
その天然パーマも、
短くて薄かった様な?
(誰にもデートして貰えないから、
私の靴なんか運んで、
友達の相手の世話を焼いている!)
私の頭の中には、
『文化祭までに、
彼氏または彼女を作って、
文化祭では、
二人で過ごすのが常識』
『文化祭でデートが出来ない』 = 『惨め』
これしか無かったんですよ。
だから、
廊下で二十人以上の女に囲まれて、
キャーキャー騒がれながら、
結婚式の様に歩いたのも、
そういうイベントだと思っていたのです。
『時計店の娘』も、
それが当然、
みたいな雰囲気でしたし。
私は、
揺れる貧相な天然パーマを見ながら、
(俺が、もし、
カッコ良く生まれて来たのなら、
この不細工な女に、
「付き合って下さい」と言って、
彼女を幸せに出来たのに。
俺じゃあ、
役者不足で、
彼氏のいない惨めな女でさえも、
迷惑だよな)
と、
ウルトラ馬鹿な事を、
考えていました。
そして。
(俺は完璧な面食いだ。
女を容姿だけで、
判断している!)
私は、
自分が、
どういう人間なのか?
この時、
つくづく判りました。
ちなみに、
『俺が、もし、カッコ良く生まれて来たら?』
と思ったのは、
人生で、
これが最初で最後です。
その後は、
男子校人生だったので、
女にモテる必要が無くなったのですよ。
話は、
またズレますが。
それから一年後に、
「私の事、
覚えてますか?」
と、
その『リューイソウ』に話し掛けられました。
その時は、
彼女が魅力的に見えましたよ。
男子校に通っていたので。
話を戻すと。
脳天気な私に、
『リューイソウ』は、
こう言ったのですよ。
「『Y中の○○が来た!』って、
▲▲が、
人を集めているから、逃げて!」
私は、
(『木枯らし紋○郎』か!)
と思いましたよ。
その『木枯らし紋○郎』は、
私が小学生の時にテレビで見ていた時代劇で、
有名な紋○郎を狩って、
男を上げよう
と、
ヤクザ達が人を集めて、
たった一人の紋○郎を、
集団で追いかけ回すんですよ。
そして、
(えっ?
俺?
そんな大物じゃないんだけどな?)
これを読んで下さった方が、
勘違いすると、
いけないので。
私が通ったJ小学校の一学年上に、
『ケンカの天才』が、
いました。
その『ケンカの天才』は、
N中学へ進み、
柔道部へ入ったのですが。
私が中二の時に、
そのN中の柔道部が、
Y中へ、
練習試合に来る事になったのですよ。
その時は、
Y中に、
激震が走りました。
皆、
「『ケンカの天才』が、
土曜日に来る!
やべえよ!
どうしよう?」
土曜日が、
練習試合の当日だったのですが、
水曜日くらいから大騒ぎで。
「三年のMさんが、
『小学生の時に仲良かったから、
大丈夫だ』
と言ってる」
とか、
噂が立っていました。
それから比べれば、
私なんか、
小物で。




