叶わなかった同窓会~ありえない告白~
大学に入ってすぐの頃、高校時代の友人達と同窓会を計画したのですが、その結末が想像しないもとなりました。
実話を元にしたエッセイです。
ほのぼのとした話ですので、軽く読んでいただければ嬉しいです。
高校を出て半年くらいたったころ、僕は人生で初めての車を買った。
当時、もちろん新車を買えるような財力はないので、中古車を探していた。
中古車情報が載ってる本でめぼしい車を見つけたが、車買うの一人では不安だったので父親についてきてもらった。
お店に行き僕がトヨタのコロナエクシブという車の購入を決めた頃、付添いのはずの父親が新しいタイプのマーク?の購入を決めようとしていた。
「オカンに怒られんで」
というと、そやな、ちょっと電話するわ!といってお店の電話からオカンに電話し、新型マーク?の素晴らしさ、また、中古車市場でこのタイプのマーク?が出ている奇跡について説明した後、
「今もマーク?乗ってんのにアホちゃう」
という反撃をくらい撃沈していた。
父親の新型マーク?購入は叶わなかったが、僕は無事に車を購入できた。
この車を買った当初は、それはもう嬉しくて毎日のように乗っていた。
自分がアクセルを踏むと、周りの景色がそれに合わせて動いていく。速くも遅くもできる。これさえあればどこえへでも行けるような気がして、本当に毎日乗っていた。
車には一人で乗ることも多かったが、高校時代の友達を誘うことも多かった。
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その日は、夕方くらいから高校時代の友人IとKと僕の3人で集まり、車で大阪市内をブラブラしていた。
今だと、男三人が夜に集まって酒なしとか考えられないが、当時は普通に酒なしで楽しく過ごせてた。今から考えると凄いことだと思う。
高校の友達と話すとき、一通り大学生活の話が終わると高校時代の話になる。あいつ元気かなぁとか、久しぶりにあの子に会いたいなぁとか。
その日はいつもより昔話で盛り上がり、同窓会を計画しよう!ということになった。
卒業以来会えてない友達もいたし、仲の良かった女子友達には可愛い子が多かったので、久しぶりにみんなに会いたいって気持ちが強くなっていた。
Kは高校時代、一瞬だけ可愛い女子友達の一人と付き合っていた。すぐ別れてしまったみたいだが、Kは当時もまだその子のことが好きなようだった。
そしてKがその子に連絡して、お互いが男子、女子の幹事になって計画すると言い出した。
「おれ、電話番号わかるから今から電話するわ」
当時は携帯など普及してなく、やっとポケベルが出だした時代。なので電話=家の固定電話ということになる。
「夜やし家の人出るんちゃう?」
固定電話なので、本人が出るとは限らない。家の人が出たらつないでもらわないといけない。僕は一度、女子友達の家に電話してお父さんが出られて、名前を告げてつないでもらおうとしたところ、
「どういう友達か説明して」
と言われ一通り説明させられた経験があり、夜の電話がトラウマになっていた。当時ならではの心配である。
「オレ、家の人何回か話したことあるから大丈夫。」
「そうか、ほな頼むわ。」
僕はKに任せることにした。Iも同調する。
「しっかり同窓会のお願いするんやぞ!」
いつもあまり頼りにならないが、車から公衆電話に向かうKの背中がこのときは少し頼りに見えた。
このK、見た目はシュっとした男前だが、天然で抜けているところが結構あり、イケメンのくせにイケメンの雰囲気にならない、愛すべきアホだった。
こいつ黙ってればカッコええのになぁとよく思ったものだった。また、とっても良いやつなのだが、自分の感情のまま動いてしまうようなところがあった。
あまり後先を考えない。良く言えば情熱的、悪く言えばただの無計画な男だった。
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そんなKが電話ボックスに入った。同窓会計画開始。受話器を取り電話をかける。話出す。つながったようだ。
時折笑顔が混じるようになってくる。どうやら、本人と話せているらしい。
Iと、本人と話せてるみたいやなと話会い、安心していた。。。が、異様に電話が長い。
「同窓会を計画したいから、女子のまとめをお願いしたい。」
伝える内容はこれだけのはずだ。5分あれば十分である。しかし、10分。。。20分。。。30分経ってもKは電話ボックスから出てこない。
「長ないか?」
Iが心配そうに言う。
「うん。長すぎやろ。あいつ何話してんねん。」
僕も心配になった。
しびれを切らした僕たちは車を出て、電話ボックスへ向かった。僕たちが近づいていることにもKは気付いておらず、真剣な顔で話していた。電話ボックスのすぐ近くまでいき耳を近づける。。。
「やっぱり、あかんかな。。。オレじゃ、、、やっぱりあかんかな。。。」
こいつ。。。告白してるし。。。絶望的な気分になった。Kに任せてしまったことを激しく後悔したがもう遅い。ここでKが振られてしまったら終わりだ。
もう上手くいってくれることを願うしかなかった。が、Kの表情を見る限り、望みは薄そうだった。
しばらくしてKが出てきた。その表情から結果は聞くまでもなかった。
「あかんかった。。。」
「いや、あの、同窓会は?」
僕が聞く。
「やっぱり、おれやったらあかんみたいや。。。」
「いや、同窓会。。。オレらの同窓会は?」
Iが重ねて聞く。
「何が、、、何があかんねん!!」
「あの、、、どうそうかい。。。」
僕とIは絶望的な気分でそうつぶやいていた。。。
公衆電話から勢い余って告白してしまうほど情熱的な男、K。彼を交渉の場に立たせた時点で、この夜の僕たちの計画は破綻していたのかもしれない。。。
もう20年近くも前の話です。今は、SNSのおかげで高校時代の同級生何人かと再開できたので、毎年年末に集まれるメンバーで集まって飲み会をしています。20年前では考えられないことです。
SNSって凄いですね。ただ、Kとは誰も連絡がつかないようで、今も再会できずにいるのですが、最近一人の同級生から「近所のダイコクドラッグ店内で歌っていた」という目撃情報を入手したので、それを手がかりに探してみたいと思います(笑)
最後まで読んでくださりありがとうございました。