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次の日、朝目が覚めたらギルドにゴブリンの異常発生を伝えて無かった事に気付いた。
「一応話すだけでも話とか無いとな」
早々に朝食を頂きギルドに向かう。朝はやはりとても混んでいた。朝一は良い条件の物や値段の高い依頼が多いからな。
(今から待っても時間掛かりそうだしな。買い物にでも行くか)
もしかしたら掘り出し物があるかもと期待しながら市場に向かった。
……
イルステイの町はあくまで中継地点的な役割の町だ。特別な産業や名産品は無いが、この町は2つのルートが繋がっている為自然と中継地点になった訳だ。だから市場はそれなりに活気が溢れており見てるだけでも楽しい物だ。
「まあ、ぶっちゃけ唯の観光だけどさ」
そう呟きながら市場を見ていく。何処も客を呼び込む声を張り上げて煩いぐらいだ。中には魔道具も売ってたり魔石を売ってる所もあるし、アクセサリーや怪しい壺、はたまた宗教勧誘まである。
「自由な市場だから尚更活気があるんだな」
暫く見ていると広場に出た。そこには奴隷が売られていた。
「あれは、売ってるんだ」
檻に入ってる連中と檻から出されてる連中が居る。だが、全員首輪と鎖に繋がれてる。
(奴隷か…実際に見ると受け付けれんな。だって奴隷だぜ?彼等にも人権があるだろうに)
自分だって妄想の中ではあんな事やらこんな事を想像した事はあると断言する。だが奴隷を持てますかと聞かれたら無理と即答するだろう。
(価値観の違いなんだろうな)
奴隷を暫く見つめながらそう思う。幼い子供や美少女もいるし、中には獣人もいる。エルフは相変わらず見なかったけど、やっぱり少ないのかな?それとも居ないのか。
俺は歩き出す。これから先奴隷に関しては、何かしらの理由が無ければ持たんな。更に市場を歩くと少し人通りが少なくなって来た。それに伴い商品の質も下がってる様に見える。そんな中声を掛けられた。
「お!そこの冒険者さん!この古代兵器はどうだい?掘り出し物だよ?見てってくれよ!」
え?銃売ってんの?
俺は商品を見る。確かに銃だし外見は綺麗だ。だがコレは。
「これ中身ダメなやつだろ?」
「そ、そんな訳無いだろ?変な言い掛かりはよしてくれよ〜」
怪しい。どう見ても外見の割に値段が安い。
「諦めなよ。俺も銃使ってるし」
そう言ってニューナンブM60を見せる。
「けっ、鴨だと思ったんだがな。もう用はねえよ。商売の邪魔だシッシッ!」
何だこの野郎。俺は後で見回りしてる兵士に壊れた武器を高値で売ってる詐欺がいるとチクる事を誓った。
……
「そうそう銃は手に入らないんだな。古代兵器なんて呼ばれてるぐらいだからな」
そう呟きながらギルドに向かう。俺が行く頃には大分空いていた。
「すみません。東の森で報告したい事が」
「はい?報告ですか?」
今日の受付嬢は童顔な女性だ。そしてやはり美少女だったよ。
「東の森に入ったらゴブリンだけしか居なかったんですよ。昨日だけで確か50匹以上は討伐しましたし。他の魔物も見当たりませんでした」
「そうですか……」
流石ギルドの受付嬢、この報告について今考えてるのだろう。
「分かりました。でしたら今からギルドから調査依頼を出させて頂きますね!何でしたら受けますか?」
「え?良いんですか」
「この手の依頼は最低でもCランクからです。でも、中には誤って報告したかもと思う方もいます。そういう人が再度見てきて確認したいと言う事も有りますから」
成る程。つまり間違ってるかどうか自分で再確認したいと。
「依頼金は出るんですか?」
「はい、出ますよ」
なら受けてみるか。
「Eランクだけど受けさせて貰います。お願いします」
「はい、分かりました。少々お待ち下さい」
こうして俺は東の森の調査を開始した。
……
東の森に入り調査するも、やはりゴブリンしか居なかった。
「一体何が起こってるんだ?」
流石に俺でも異常だと理解出来る。しかし何故この状況かは理解出来ないけど。そもそも魔物の生態を知らないからな。暫く森の中を探索せる。すると小さな空洞を見つけた。ただ、どう見ても人1人がギリギリ入れる入り口だ。
「此処がゴブリンの巣?」
ライトを取り出し中を見てみる。すると。
「自販機か…え?」
何故か自販機が見えた。
……
ライトで見える範囲にはゴブリンは居なかった。だが、調べた方が良いだろう。シールドをPDAに一旦しまい、匍匐前進しながら中に入る。
「此処は、地下鉄か」
どうやら俺はゴブリンの巣では無く、地下鉄の出入り口を見つけた様だ。勿論、ゴブリンがいる可能性は高いけど。
先ず俺はヘルメットと左肩にライトを取り付ける。そしてニューナンブM60とシールドを構えながら前に進む。通路を進むと開設口があった。ただ、駅名は文字が剥がれてて分からなかった。しかし、通路の壁に白骨死体がそこそこ転がっているな。つまり何かがあって避難生活を送ってたのか?更に進むと電車が止まっていた。しかし、右側の路線が崩れており電車もそれに巻き込まれていた。
「あれ?この展開、もしかして幽霊とか出てくるパターン?」
一応ライトもう1つ出しとこう。シールドを左腕に固定して、左手にライトを握った。しょうがないじゃ無いか!だって怖いんだもん!
こんな時ソロは厳しいとつくづく思ってしまった。更に奥に進み左側の路線に進む。すると右側の壁にドアが見えた。ドアに近付き開けようとしたが鍵が掛かっていた。俺はシェルターで拾ったドライバーとピンセットを使い鍵穴を弄る…弄る…開いてください。願いが届いたのだろう。鍵は素直に開いた。そのまま中に入っていくと、1体の白骨死体を見つけた。たた、格好はしっかりした服装だった。
「何だろう、冒険者?」
しかしギルドカードは見つからなかった。しかし、新しい銃を見つけた!
ベレッタ・モデル92
装弾数15発
9㎜パラベラム弾使用
「おお、M92か。良いね」
状態も悪く無い。少し油が足りないかな?俺はその場で軽く整備して使える様にした。9㎜の弾も30発ぐらいあったのでM92を装備、更にライトを取り付ける。ニューナンブM60はサブにする。
「この銃使わせて頂きます」
俺は白骨死体に手を合わせて先に進む。暫く先に進むと今度は左側の壁にドアがあった。そのドアは鍵は掛かっておらず直ぐに開いた。ドアの中にライトを当てると、複数の人影が映った。しかし、そいつらは此方に視線を向けると
「ギジャアアアアア!!!」
襲ってきた。俺は入り口を塞ぐ様にシールドを構えM92を向ける。そして躊躇無く引き金を引く。
軽快な音を出しながらM92は問題無く動作する。しかし心臓や頭に当てても此方に突っ込んでくる奴もいる。だが、シールドでしっかり防御してゼロ距離から頭に向け撃ちまくる。装弾数の多いM92で本当に助かったと思い、あの白骨死体に改めて感謝しながら敵を倒していった。
……
動く奴が居なくなった為中に入る。そして、見た目グールみたいな奴を見る。
「こいつら、人間だったのか?」
多分そうなんだろう。でも人を襲うのだからグールになったのだろう。
ジ…ジ…ジジ……
「ん?あれ?放射能反応」
PDAから僅かであるが放射能を検知した。つまりこの部屋は放射能があり、それを受け続けてグールになったと?
「そんな事あるのか?」
幸い放射能は低いから短時間なら問題無さそうだった。俺はグールの死体を捌くり何か無いか探す。すると、M92を見つけた。全部で8体のグールの死体からM92と弾薬を見つけたのだ。
「何こいつらM92好きなの?」
確かに良い銃だと思うよ?でも他の銃を持っても良いんじゃ無いかな?それから部屋を探索するとヘルスチャージを数本と手榴弾5個に弾薬と銃のスペアパーツに日記を見つけた。所々破れたり文字がボヤけてたが、要約すると部屋の発電機が壊れかけた。仲間の1人が部品を探しに行った。更に仲間の1人が鍵の掛かった箱を開けようと躍起になっていたらしい。
鍵の掛かった箱ねえ…。
部屋の隅には確かに箱がある。蓋は閉じてる様だが、近寄らんどこ。俺は部屋を後にし更に奥に進む。しかし、先は崩れてておりこれ以上は進めない。
「仕方ない戻るか。それにゴブリンについて調査しないといけないし」
少なくとも、この地下鉄にはゴブリンは居なかっただけでも良しとしよう。M92も手に入れた訳だから寧ろ嬉しい状況だしね。俺は帰りで転けない様にライトをしっかり当て出入り口に戻ったのだった。