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「うおおおおお!!!貫けええええ!!!」


「こんな奴に!私の魔力が負けるのかああああ!!!」


ドゴオオオンッッッ!!! バギイイイイイン!!!


「ぐああああっ!?!?」


「ちっ!ズレたか。ならもう一撃だ!」


障壁が破れた今こそ、この戦いの終止符が打てる。もう一撃喰らわせようとした時だった。


《残弾0です。リロードして下さい》


「っ!?畜生、ミスったか!」


急いでリロードする。空のマガジンを外し、新しいのを入れる。しかし、その隙を見逃す程奴は甘く無い。


「ふんっ!」


「しまった!」


奴の蹴りがR-20パイルバンガーを吹き飛ばす。そのまま態勢を整えた後、奴の拳が俺の腹に直撃する。


「ぐおはっ!?!?」


「人間、この私アルヴァの攻撃を防いだだけで無く一撃当てるとはな。そこらの勇者より余程素晴らしいと言えよう。だが、所詮貴様は人間である以上ホグウ!?」


ボゴオン!!!


鉄と肉が打つかる音が聞こえる。それもその筈、俺がアルヴァの顔面を思いっきり殴ったからだ。


「悪い、何言ってるのか全然聞いて無かったわ」


アルヴァの口から白い歯が溢れ落ちる」


「……貴様」


「さっきより男前の面になってるぜ?」


「殺す。塵も残さずに殺してやる!」


「月並みの台詞だな。そんなつまら無い台詞を言うぐらいなら、さっさと来いよ!」


アルヴァの拳が、俺の拳がお互いの顔面にめり込む。その際バイザー部分がヒビ割れる。


「っ!?効いて無いんだよ!パワードスーツ舐めんな!!!」


「種族差としての格の違いを教えてやる!!!」


其処から先は殴る蹴るの応酬だ。お互い全力で殴り合う。其処に戦略等は無く、唯相手をブチのめす事しか無い。


「うおおおおお!!!」


「があああああ!!!」


この殴り合いによりお互いダメージが蓄積して行く。


《各部に多数損傷確認。フレームに歪みを確認。これ以上の戦闘続行は危険です。撤退を推奨します》


「此処で退けるかよ!いや、退いて堪るか!?」


アルヴァと俺の右手の拳がぶつかり合う。しかし、此処に来て種族差が出てしまう。


バキベキピキィ


「ッッッ!?!?ぐうううう!?!?」


《右腕骨格に損傷確認。緊急処置作動》


エリスが有無を言わせず右腕と右手を固定する。だが、それどころでは無い。俺の動きが鈍くなった隙をアルヴァは的確に突く。


「人間、これで終わりだ!はあっ!!!」


アルヴァの蹴りがモロに胸部に直撃する。


《胸部の損傷大。これ以上の戦闘続行は危険です。直ちに離脱して下さい》


「ゴボッ……ごえ……」


膝が地面に着いてしまう。そして、アルヴァはゆっくりと此方に来る。


「はあ、はあ、良くもまあ私に恥をかかせてくれたな。貴様は万死に値するのだ!!!」


アルヴァは俺の顔面を蹴り上げる。そして、遂にバイザーが割れる。


「このっ!私にっ!刃向かうっ!事がっ!罪そのものなのだ!!!」


動けない俺を何度も踏み付ける。そして、首を掴み持ち上げる。パワードスーツの重量を物ともせず持ち上げるのは流石としか言えん。


「ぐっ…ぐあ……くっ………あ」


「フフフフフ、苦しいか?苦しいだろう?なら徐々に締めてやろう。そして、絶望の味をじっくり味わいながら死んで行くと良い!フフフ、ハハハハ、ハッハッハッハッハッ!!!」


段々力が入って首が締まる。最早逃げれる術が無い。


《警告。搭乗者の生命に危険を確認。直ちに離脱して下さい》


最早言葉も出せ無い。だが、最後にアルヴァの腕を軽くタップする。伝えたい事が有るからな。


「ほう?命乞いか。やはり所詮人間はその様な惨めな姿がお似合いだな。さあ、己の弱さを見せてみろ。そうすれば助かるかも知れんぞ?」


「くふ……はあ、はあ。ククク…フハハハ」


思った通りの展開に笑ってしまう。


「ちっ、遂に狂ったか。なら死ぬと良い」


「お前さ…色々……勘違いしてるぜ」


「何?」


アルヴァは眉を顰める。


「お前の、本当の敵は……俺じゃねえ」


「貴様、何を言っている?」


何も分かってない奴に後ろを指差し教えてやる。アルヴァはゆっくりと背後を振り返る。其処にはサラさんが立っていた。顔は俯いていて表情は見えない。だが、その手にはR-20パイルバンガーを持っていた。


「き、貴様……まさか」


「お前に聞くわ。魔力足りてる?あんだけバカスカ撃ちまくっててさ、然も俺の攻撃も無駄に魔力使って防いでたよな?」


そう、アルヴァの攻撃は確かに強力だ。現に俺の後ろにある城壁なんかは吹き飛んでるし。だが、そんな威力は必要無い。アルヴァがそれだけ考える頭が有ったら、俺はとうの昔に死んでいた。


「そして、俺はまだ……やれるんだよ!!!」


左手でアルヴァの腕を掴む。そして一気に力を入れる。


バキバキベキャッ


「うごああああ!?!?貴様!良くもおおお!!!」


アルヴァは俺を手放す。その隙を逃がす程、俺は甘く無いぞ。一気にアルヴァに近付き服の襟を掴む。


「っ!?は、離せ!劣等種が!」


「取り敢えず手前はあの世に行って色々懺悔して来いやあああああ!!!」


俺はそのままアルヴァをサラさんの方に投げる。サラさんはR-20パイルバンガーを構える。


「アルヴァアアアアアア!!!」


「や、やめろおおおおおお!!!!!!」




ドゴオオオン!!! ガコン ゴン ゴン




そして、R-20パイルバンガーの鈍重な音が戦場に響く。それと同時にアルヴァの悲鳴も途絶える。それもその筈。アルヴァはサラさんがR-20パイルバンガーで串刺しにしたからだ。然も口から胴体に掛けて貫いた為かなりエグい状態になっていた。


「はあ、はあ、はあ……や、やった。私……遂にやったんだ。父さん、母さん、皆んな……仇は取ったよ」


サラさんの表情は憑き物が落ちた様な表情をしていた。だが、今は惚けてる場合じゃ無い。魔物は未だに健在だし、助けに来る味方は居ない。サッサとこの場所から逃げないと。


「サラさん、兎に角今は逃げますよ。全部終わったら色々報告すれば良いかと」


「そうだな。シュウ君、君には助けられた。それに仇も自身の手で取れた。礼を言うよ」


俺はサラさんに手を貸して立ち上がらせる。だが、魔物がどんどん迫って来る。


「俺が前に出ます。その後ろからコレで援護を」


俺はサラさんにベレッタM92と弾倉を渡す。そして、一気に走り出す。まだウォールは動く。流石被弾に強く頑丈な第一世代のパワードスーツだ。

だが、魔物の壁は思ったより厚かった。そして何より此方の方が深刻だった。


「クソ…むっちゃ身体が痛い」


と言うか熱い。特に右腕は感覚が無い代わりに更に熱いのだ。


「シュウ君、あと少しだ。私を見捨てて行くんだ。君ならあの魔物ぐらいなら突き破れるだろう?」


サラさんは自分を囮にしろと言っている様な物だった。確かに行けるだろう。それに、魔物の向こうには冒険者と兵士達が戦っている。彼処まで行けば俺は助かる。


「そうですね。確かに助かりますね」


「なら行くと良い。私は魔力を使い果たした。だが、復讐は果たす事が出来た。君には感謝しても仕切れんな」


「なら一緒にパーティ組みましょう。今度はちゃんとしたパーティをさ。きっとローラは喜んでくれるさ」


「ふふ、そうだな。この戦いが終わったら一緒にパーティ組もう」


なら……決まりだな。俺はサラさんの服の襟を掴み持ち上げる。


「シュウ君!?何を!」


「先に行って待ってて下さい!後から直ぐに追い付きますから!うおりやああああ!!!」


俺はサラさんを掴みながら三回転してから勢いを付けて高くぶん投げる。サラさんは何か言ってるが良く分からない。サラさんは無事冒険者達の方に投げれた。なら、後は俺だけだな。


「エリス、残り稼働時間は?」


《稼働時間2分42秒です。バッテリー交換を推奨します》


魔物がジリジリと迫って来ている。どうやら交換する時間は無さそうだ。


「来いよ。お前らを道連れにする事ぐらい造作も無いんだよ!」


俺は魔物に突撃する。手前に居るゴブリンを殴り飛ばす。そのまま体当たりをしてオークを吹き飛ばす。オークの持つ棍棒を拾いそのまま手近な魔物を潰す。

だが、物量の差は圧倒的過ぎた。四方八方から攻撃を受ける。更に装甲が剥がれた部分にナイフや牙が刺さる。


「っ!?まだだ!まだ、俺は生きてるぞ!!!」


俺は吼えた。最後まで諦めるつもりは無い。だが、サラさんを助けるにはこれしか方法が無かった。だが、現実は非情だ。


ウイイイィィィン…………


《バッテリー残量が0になりました。直ちに離脱して下さい》


「仕方無いか。ウォールをパージ」


《了解です。パージします》


しかし、ウォールから出る事は出来なかった。


《開閉装置に異常発生。フレームの歪みにより開閉装置が作動しません。現戦闘区域は危険てます。直ちに離脱して下さい》


「そっか……無理か。畜生、こんな所で死ぬのか」


多分苦しみながら死ぬと思う。装甲が剥がれた部分だけズタズタにされると思うとマジで嫌だ。死にたく無いし、まだまだ生きて行きたい。


「年貢の納め時か。自爆装置が無いのが残念だ」


魔物が迫って来る。もう、抵抗する事も逃げる事も出来ない。覚悟は決まって無いが目を瞑る。正直ちびりそう。そして、俺に影が走る。


ドドドドドドドドッ!!!


突如銃声が聞こえる。目を開けると周りの魔物が次々と倒れて行く。俺は上を向く。其処にはアーカード帝国の巡洋艦が低空で停滞していた。更に其処から何人かが降りて来る。それは白と黒のツートンカラーのパワードスーツに青色のパワードスーツだった。


「総員に通達。これより現区域の安全を確保しつつ救助を行う。全機攻撃開始!」


「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」


白黒のパワードスーツは思い思いの攻撃をする。特に機動力が違った。三次元戦闘を軽々と行なっており、魔物を翻弄していたのだ。三次元戦闘は普通出来ない。だが、白黒のパワードスーツを良く見ると背部の部分に魔石が付いていた。いや、魔石と言うより。


「浮遊石?成る程、それであんなに動けるのか」


「動けるか?」


「え?いや、バッテリー切れで動けない。然もフレームが歪んで開閉装置もダメだ」


「そうか。なら引っ張り上げるぞ」


巡洋艦からワイヤーが降って来る。そのワイヤーに固定される。


「あの、助けてくれてありがとう。だけど、もう少しマシな方法で」


「此方メビウス1より巡洋艦マルゲータ。対象を確保した。引き上げてくれ」


『マルゲータ了解』


「全隊員に通達。マルゲータの離脱が完了次第我々も離脱する。本来なら我々はこの戦いに参加する訳には行かないからな」


そんな会話を聞いてる内に段々地面が遠くなる。ああ!何気にワイバーンがまだ生きてるー!俺ピーンチ!色んな意味でピーンチ!て言うか動けないから尚更怖い!

まるでクレーンゲームの景品の様に巡洋艦マルゲータの中に引き上げられて行く。しかし、何とか助かった事に変わりは無い。下を見ると戦況が良く分かる。魔族のアルヴァを倒したからだろうか、魔物の統率力が無くなった感じがする。更に魔物同士攻撃しあうし、逃亡する魔物も居る。戦力差はまだ有るが、魔物は最早烏合の衆だ。対して人間側は隊列を組み魔物に的確に攻撃していた。


「はあ、何とか……成りそうだな」


何か安心して気を抜いたら瞼が重くなる。きっと今まで気を張っていたからだろう。俺は危ないと思いつつ、どうせ動けないと開き直り瞼を閉じたのであった。


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