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……ッ……ッー……ビー ビー


「う…んあ?一体、何が?スピア、ローラ、クロ無事か?」


「プキュウ!」


クロの返事は聞こえたが二人の返事が無い。視線をローラに向けると頭から血を流して意識を失っており、スピアは無傷みたいだが同じく意識が無い。兵員室の方では呻き声が聞こえる。


「メイさん、生きてますか?」


「ええ、何とか。今の衝撃は一体?」


「分かりません。唯、敵の攻撃だと言う事は間違い無いです。後、スピアとローラに回復魔法をお願いします」


「分かりました。此方に二人をお願いします」


メイさんはこの状況でも、直ぐに怪我をしている冒険者達に回復魔法を始めていた。そして、その中にスピアとローラを寝かせる。


「先ずは車両チェックをしないとな」


モニターを見ながらM10ブラッドレー歩兵戦車の状況を確認する。30㎜機関砲と対戦車ミサイルは使用不可。各部にもエラーが出ている。だが、エンジンとキャタピラは問題無さそうなので走行可能だ。俺はキューポラを開けて外の様子を見る。そして最初に目に入ったのは焼け野原だった。防衛線の柵や塹壕等は無くなっているし、冒険者達も軒並み倒れていた。だが、魔物も同じ様に吹き飛ばされた様でイマイチ動きが悪い。更に爆心地視線を向けると地面が抉れており、戦車や野砲は軒並み破壊されていた。そして、中央に居た兵士達はかなりの被害を出した事は間違い無かった。つまり、それだけ高威力のある魔法が使われたと分かる。


「あ、M240G機関銃は無傷なんだ。ラッキー」


実はM240G機関銃はお気に入りの銃なので無事で良かった。M240G機関銃を回収して再度周りを見渡す。中央陣地の上空に大型のワイバーンが降りてくる。その上に誰かが乗っていた。


「ハッハッハッハッハッ!何と人間は脆い事か!こうも簡単に倒されてしまうとは実につまら無い物ですね」


其奴は間違い無く敵であった。紳士姿の男性だが、肌の色が魔族特有の青白い色をしていた。


「く、薄汚い魔族め」


「おやおや?其処に居るのは今代の勇者の一人かな?勇者と言えども所詮はこの程度の存在でしたか」


魔族の男性は大袈裟にやれやれと肩を上げる。


「僕は……勇者なんだ。お前達魔族を倒す為に」


「なら死んで下さい」


魔族は勇者の言葉を最後まで聞く事なく魔法陣を展開する。勇者も急いで回避しようとするが、圧倒的実力差が其処には有った。


「それでは、さようなら」


魔族が攻撃しようとした瞬間だった。


『ファイアブレス!!!』


「むっ!何者!?」


突如魔族の真横から炎が迫る。だが、魔族は直ぐに反応して回避する。


「やっと……やっと貴様と出会えた。家族と仲間達の仇を取らせて貰うぞ!!!アルヴァ!!!」


銀髪が己自身の魔力の影響で舞い上がる。そして、何時ものクールな表情は何処にも無く憎悪により歪んでいた。


「はて……何方ですかな?生憎と私は弱者と言う存在を覚えてい無いのでね。よって、私より弱かった連中は覚えてる価値は無いのですよ」


「貴様!!!『滅べ!!!ヴァスティン!!!』」


サラさんの攻撃が魔族に直撃する。そして爆発。その爆発に乗じて剣を抜き斬りかかる。


「アルヴァ!貴様だけは必ず殺す!例え刺し違えとしても!!!」


「ふん、その意気込みと攻撃は認めましょう!」


サラとアルヴァはお互い接近戦を行う。そして、その勢いのまま魔物の居る方へ突っ込んで行く。その影響で周りの魔物が宙を舞う。


「に、逃がすか!皆!立てるか?」


勇者が仲間に声を掛ける。すると何人かが立ち上がる。恐らくあの人達が勇者なのだろう。だが、そんな彼等に大型のワイバーンが行く手を遮る。確かに勇者は魔族には強い。だが、魔物に対してはどうなんだろうか。


「て、このままだとサラさんが不味いよ」


如何する…助けに行く?でも、そんな事出来るのか?勇者は大型のワイバーンにより足止めされてる。更に艦隊は先程の爆発で浮き足立ってる。

他の冒険者達も最早満身創痍だ。そしてスピアやローラもまだ目を覚まさ無い。動ける奴は誰も居ない。


「いや、俺が動ける」


なら、やるしか無い。俺はパワードスーツの奥の手を使う事にした。俺はウォールのバッテリーを新しいのと交換する。


「クロ、此奴はまだ動く。今の内に後ろに下がるんだ」


「プキャ!?プキャ!?」


「安心しろ、死ぬつもりは無いさ。それに、後方には傷付いた人達が沢山居る筈だ。メイさんの回復魔法は必要な筈だ。さあ、早く行け!」


俺は後部ハッチから出る。クロは中々動かなかったが、ゆっくりと動き出した。


「クロ頼んだぞ。エリス、パワードスーツのリミッターを解除しろ」


《了解。搭乗者に負荷が大きくなりますが宜しいですか?》


「構わん。やってくれ」


ウォールの背中から唸り音が大きくなる。それと同時に稼働時間も短くなる。


《稼働時間は30分間になります。稼働時間には注意して下さい》


そして、M63バルカン砲と耐物シールド5型を装備。更にR-20パイルバンガーを腰にセットする。そしてM63バルカン砲の弾倉を背中に背負うランドセルタイプにして、装弾数は脅威の1万発だ。そして発射速度も毎分2000発に設定する。

サラさんと魔族の方を見る。先程まで有った爆発は最早無い。しかし、死んだと言う保証にはならん。


「待ってて下さい。今、行きます」


俺は耐物シールド5型を構えて魔物群に向かって突撃する。パワードスーツのリミッターを解除したパワーにより走ると地面は抉れる。無謀や無茶と言われようとも知った事か。俺はサラさんを助けたいから行くだけだ。


side out


side サラ・ブロードハット


私は遂に仇を見つけた。家族を仲間を笑いながら殺した憎き相手。奴を殺ろす為に生きてきた。奴を殺ろす為に強くなった。だが、足りない。


「ぐっ……貴様だけは、必ず」


「素晴らしい意気込みですねぇ。ですが、その程度の力で私を殺せると?私はこの力を授かってから様々な場所に行きましてね」


「様々な、場所に?」


「ええ、この力を授かった後にね。あの方からの期待に添えなければ意味が無い。使いこす為の犠牲等大した物では無い」


その言葉を聞いて私は目の前が赤くなる。そんな事の為に私から全てを奪ったのか。


「だから、私の故郷を…仲間達を……両親も殺したのか?」


「さあ?覚えていませんね。先程も言いましたが弱者は覚えては……」


アルヴァは少し考える。そして指を鳴らす。


「ああ、思い出しましたよ。ダークエルフの里を潰したのは一度だけでしたからね。確か、貴女はまだ子供でしたね。貴女の両親は確かに私が殺しましたよ。その剣はその男の物でしたね」


アルヴァの言う通りだ。この剣はあの場所に落ちていた。両親の死体は無く、唯剣だけが残されていたのだ。


「しかし、考え深い物です。貴女を生かす為に散った両親。それも無駄死になるとはね」


「ふ、ふざけるなっっ!!!」


勢い良く剣を振るう。だが、剣はアルヴァの拳により弾かれてしまう。そのままアルヴァの拳が私のお腹に入る。


「あがっ!?くふっ…ごほ」


「ふむ、まだ反抗する力があるとは。幾ら復讐心が有ろうとも、実力差が分からない訳では無いでしょうに。しかし……貴女は何と言うか、色々成長したのですねぇ」


アルヴァが私の身体を舐めるように見る。間違い無く下衆の視線と同じだ。


「決めました。貴女は私の物にしてあげましょう。これで貴女の両親は報われる訳です」


「ふ、巫山戯るな……誰が、貴様の物にガッ!?」


アルヴァは私の顔を蹴り飛ばす。


「貴様?ご主人様と呼びなさい。貴女はこれから私の子を孕む為の存在になるのです。言葉使いには気を付けなさい」


私は空を見る。紫色の魔雲が漂っている。


「紳士然として……いようとも、貴様の本心は、屑以下だな」


「気に入りましたよ。貴女は徹底的に教育してあげましょう。泣き叫び喚こうが手加減は一切しない」


アルヴァが私の首を掴み持ち上げる。呼吸が出来なくなる。そんな時、ふと思ってしまった。

あの時は両親が命を賭けて私を助けた。絶望的な状況下で有るにも関わらず、父と母は私を助けた。だが、もう両親は居ない。勇者や兵士、冒険者も助けには来ない。それはそうだろう。この絶望的な状況で助けに来る奴は唯の死にたがり屋だ。

だからあの少年を思い出してしまった。あの時、ローラを助ける為に一人だけアンダーグランドに戻った少年を。


「ふふふふふ、良いですねぇ。その表情。正に絶望と諦めが入り混じった感じは堪りませんね」


悔しい、そして怖い。だが、それを表に出す訳には行かない。いや、出したく無い!


「さて、先ずは……私の為に豊かに育った身体から調教しましょうかね」


来る!私は最後の抵抗で目を瞑る。


「では、早速」


ドチャア!!!


何かが私達の横に落ちて来た。私は目を開けて見る。それはゴブリンと思われる死体だった。だが、何故?

アルヴァが振り返る。魔物の群れから鈍重な音と同時に悲鳴と肉が潰れる音、更に魔物が宙を舞う。そして、魔物の群れから一人だけ突き破って来た。

それは、魔物の血塗れであったが古代兵器の象徴と言える物だった。パワードスーツと呼ばれるそれは、古代兵器と大楯を装備していた。そして、私はあのパワードスーツを知っている。


「シュ……ウ君?何故……君が?」


「ほう、知り合いかね?態々助けに来た様だな。だが、勇敢と無謀は違う物だよ」


アルヴァは私を放り投げる。そのまま魔法陣を展開して魔法を放つ。そしてシュウ君に直撃して爆発。周りの魔物も巻き込む大きな爆発。


「っ!?シュウ君!!!」


「ハッハッハッ!ああもあっさり死ぬとは歯応えが無……何?」


煙が晴れる。其処には悠然と立っているシュウ君が居たのだった。


side out


side シュウ・コートニー


《シールド損耗率20%。パワードスーツ損傷無し》


「もっと近付く。確実な距離まで行くぞ!」


地面を蹴る。その度に抉れるがどんどん加速して行く。


「私の攻撃を受け止めるとは大した物だ!だが、所詮脆弱な人間風情だ!」


更に魔法陣が展開される。今度は先程より大きい。


「受け取ると良い!我が力の威力を!」


キュイイイイン ギュウウウウンンン!!!


先程より圧倒的な魔力の濁流が来る。耐物シールド5型を斜めに構えて防御姿勢を取る。そして奴の攻撃と俺の盾がぶつかる。


《シールド損耗率上昇中》


「ぬおおお!?耐えてくれー!!!」


そして二度目の攻撃を耐え切る事が出来た。しかし、シールド耐久度は20%を切る。


「まだまだ!新しいのと交換だ!」


そのまま新しいシールドを出して突撃する。もう少し近付く必要がある。全弾奴にプレゼントする為にな!


「っ!?……フ、フフフ、この私の攻撃を二度も防いだだと?そんな蛮行を許せると思うか?否!許せる訳が無かろう!跡形も無く消し炭にしてやろう!!!」


魔族は魔法陣を再度展開する。真ん中に大きな魔法陣が一つ、その周りに六つの魔法陣が展開される。これはどう考えても不味い!?


「私の絶大なる力の前に平伏し、怯えて死んで行け!『滅べ、滅べ、滅べよ。世に存在する全てに絶望を。ジェノサイド・バーストストリーム!!!』」


周りの魔法陣から魔力が中央に集まる。そして、そのまま一気に解放される。その威力と大きさは先程よりも桁違いだ。だが、俺は敢えてこう言ってやった。


「無駄な魔力使ってくれて最高だよ!!!」


だが、その言葉と同時に圧倒的魔力の濁流に飲み込まれる。


《シールド耐久度急激に低下しています。ウォールにも負荷が掛かっています》


「っ!〜〜〜!?魔法…何ぞに……負けんな!!!根性見せろおおおお!!!」


シールドの端が削れて行く。ウォールの装甲にも次々とダメージが入る。そして、爆発を装甲越しに感じる。だが……。


シユウウウウウ…………


《各部装甲、関節に損傷確認。尚戦闘続行に支障無し》


「耐えれたのか……オーケー、上出来だ。シールドパージ!」


《了解、シールドパージ》


パシュウ ドゴオン


そして一気に間合いを詰める。いま、奴との間には砂煙が舞い上がりお互い見えない状況だ。これに乗じて一気に近付く。


「っ!?馬鹿な!何故生きて!」


奴は魔法陣を再度展開しようとする。だが、やらせてたまるか。


「仏の面も三度まで何だよ!四度目があるとか甘っちょろい事考えてるんじゃねえ!!!」


M63バルカン砲を構える。奴との距離は20メートルも無い。スピンアップが最大になった瞬間こう言ってやった。


「魔力は足りてるか?あんだけ無駄な魔力を使いまくったんだ。精々死ぬ気で防御するんだな!」


「っ!?貴様!!!」


そして引き金を引いた。


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ!!!


毎分2000発の12.7×99㎜NATO弾が光の嵐となって魔族に迫る。魔族は咄嗟に障壁を展開して毎分2000発の12.7㎜弾を受け止める。

凄まじい音を出しながら金属と障壁が打つかる。装弾数1万発を撃ち切るまで絶対に引き金は離さない。


《砲身温度上昇中。安全装置起動します》


「安全装置解除!絶対に止めるな!」


《了解。安全装置解除します。暴発の可能性が有ります。注意して下さい》


M63バルカン砲の耐久性には定評がある。其処に賭ける!


《砲身温度更に上昇。機関部の熱量上昇》


まだ残弾は半分有る!それを全て撃ち切るまで撃ち続けるんだ!

12.7㎜弾が魔族の障壁により弾かれる。そして、その弾かれた弾は魔物に当たったり地面を抉る。そしてパワードスーツにも被弾する。だが、元々攻撃を受けて反撃をするがコンセプトの第1世代のパワードスーツだ。障壁により弾頭が凹んでる弾なんぞダメージに入らな


《跳弾により損傷確認。戦闘続行可能》


「おう!流石ウォールだな!うんうん!」


多少損傷しても平気だから問題無い。だが、M63バルカン砲は更にレッドゾーンに突入する。ウォールから武器の状態をチェックする。砲身、機関部共にいつ壊れるか分からない状態だ。


《これ以上の射撃は危険です。武装をパージして下さい》


エリスからも再度警告が出される。そして遂に機関部から炎が出る。砲身は最早真っ赤になってる。そして残弾も2000発を切る。


「後一分間だけだ。頼む、堪えてくれ」


機関部から更に火花が散る。M63バルカン砲から異音が聞こえる。


「古代兵器なんて言われてるだ。だったら、古代兵器の意地を見せろ!魔法が何だ!ファンタジーが何だっ!こちとら今でも現役兵器だ!!!」


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ!!! カチン ウイイイイン


遂に残弾0になる。魔族の障壁は未だ健在。


「ランドセル(弾倉)パージ!R-20パイルバンガーセット!」


《了解、ランドセル(弾倉)パージ。R-20パイルバンガーセット》


M63バルカン砲を地面に落とす。その瞬間、役目を果たしたM63バルカン砲は機関部と砲身部分がバラバラになる。良く耐えてくれた、ありがとう。

更に右手にR-20パイルバンガーを装備する。そして、更に接近する。


「くっ……人間風情が。この私に泥を塗りおって」


魔族が何か言ってるが無視する。そして、R-20パイルバンガーの射程に入った。


「お前さ、色々無駄が有り過ぎたんだよ」


「貴様何を言っている?」


「簡単な事さ。人間を殺すのにバカみたいな魔力なんて要らないんだよ。トリガーを引く。それだけで充分なのさ」


R-20パイルバンガーの引き金を引く。


ドゴオオオンッッッ!!! ガコン


障壁を穿つ為に更に攻撃を続ける。


ドゴオオオンッッッ!!!ドゴオオオンッッッ!!!ピシイイィ!!!


「っ!?!?や、止めろ!それ以上は!」


奴の障壁にヒビが入る。このまま一気に押し通す!


「うおおおおお!!!貫けええええ!!!」


「こんな奴に!私の魔力が負けるのかああああ!!!」


更にR-20パイルバンガーを穿つ。そして…。


ドゴオオオンッッッ!!! バギイイイイイン!!!


奴の障壁が砕け散る。そしてパイルバンガーが奴の横っ腹を貫いたのだった。


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