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エリス《睡眠時間の不足を確認。直ちに寝て下さい》
作者「うん、そうするわ」
土日休みなのを忘れてた←
午後1時を少し過ぎた頃だろう。遂に魔物が山を越えて攻めて来る。最早肉眼でも確認出来る程に近づいていた。
「おいおい、かなりの数じゃ無いか大丈夫なのか?」
「へっ!何言ってんだよ。こっちには勇者様が付いてるんだ。余裕さ余裕」
「そうだぜ。それにAランクの冒険者も何人か居るしな」
そんな風に話しながら冒険者達は気を紛らわす。それでも魔物の群れは山を覆って行く。その光景を見てしまうと流石にビビってしまうのも仕方無い事だ。
「魔物の量は半端じゃ無いな。これは三万超えてるな」
「私も同感です。これで艦隊が壊滅状態に成ったのも乱気流では無い事が証明されましたね」
「ああ、艦隊もかなり傷付いていたからな」
俺はスピアと話しながら情報操作されてる事を推測する。
「これは敵の飛行型の魔物も結構居るだろな。全く、嘘の情報を流しやがって。ローラ、危ないと感じたら直ぐに車内に入れよ」
「分かったわ。でも、何で私達に嘘の情報を教えたのかしら?」
「大方俺達冒険者をこれ以上減らしたく無かったんじゃ無いか?唯でさえ最初の召集の時に減ってたしな」
身から出た錆びだってのにな。全く、良い迷惑だよ。これは生き残ったとしても直ぐにこの国から逃げた方が良さそうだな。色々厄介事が来そうだ。
「ご主人様、間も無く砲撃が開始されます」
「そうか。艦砲射撃でどの位減らせるかが勝負だな」
そう思っていると魔雲の中から何かが出て来る。アレは!
「マジかよ!ワイバーンに……何だあれ?よく分からんが敵だ!然も大量に艦隊に向かってる!」
俺は急いでM10ブラッドレーの30㎜機関砲の照準を合わせる。
「艦隊はやらせんよ」
そう呟きながら引き金を引いたのだった。
……
同時刻 アーカード帝国航空巡洋艦マルゲータ 艦長
「レイス艦に通達。砲撃は交互撃ちにする様にしろとな。成るべく砲撃を途絶えさせる訳にはいかんからな」
「了解です」
私は前方を見る。今の光景を一言で言うなら魔物の海だ。様々な魔物がアルクに向かって来ている。この波に対抗出来る防波堤は足並みが揃っていない。
「冒険者達はどうなるかな?」
そんなのは分かり切ってる。だが、それでもやるしか無いのだ。
「僕は生き残る方に賭けるよ。艦長は何方に賭けます?」
「……殿下、余りその様な事は言わないで下さい」
私の横には好青年が座って居る。正に王子風前としているこの方はアーカード帝国第5王子のセーファス・アーカード様だ。そして巡洋艦マルゲリータに同乗されている。今回首都アルクに来た理由は勇者の存在を確認する為の使者として来ているのだ。
「だって此処には彼が居るんだよ?そう『古代兵器使い』がね。現にあの戦車も古代兵器なのだろう?我々の所有する戦車とは形が全然違う」
『古代兵器使い』。セーファス殿下この冒険者をいたく気に入っている。何故かと聞いてみた所。
「彼は兄上の計略を破ったそうだ。おっと、どんな計略かは秘密だよ」
と良い笑顔で仰った訳だ。そして、今回冒険者側に支援砲撃をする事もセーファス殿下が決めたのだ。そして、古代のテクノロジーを解析して出来た魔導画面を見る。其処には一風変わった戦車が居る。
「さて、そろそろ砲撃開始です。準備は宜しいですか?」
「勿論だとも。存分に彼等を援護してくれ給え」
「主砲照準開始!目標、左翼側魔物群!」
「主砲照準開始……全砲門準備良し!」
「撃ち方「前方にワイバーン接近!更に、ガーゴイルも居ます!」ッ!対空砲戦闘!ワイバーン隊にも対処させろ!敵を近づかせるな!」
だが魔物の数が多過ぎる。聖エルガー教国のワイバーン隊が対処するが物量の差が有り過ぎる。
しかし、突如ワイバーンが爆発する。然も一体や二体では無い。何匹も爆発しては落ちていく。それはガーゴイルも同じだった。
「な、何が起きた!報告しろ!」
「艦長、慌てないで。味方だよ。ほら、彼だよ」
魔導画面を見る。其処には一風変わった戦車が空に向けて撃っていた。
「まさか、対空…戦車なのか?」
「ほらほら、ぼーっとし無い。戦車の分析も後々!折角お膳立てして貰って何もし無いのは失礼じゃ無いか?」
「そうですね。主砲!交互撃ちで撃ち方始めええー!!!」
そしてレイス艦、巡洋艦マルゲリータが最初の砲撃を開始するのだった。
side out
side シュウ・コートニー
(何あのワイバーンとガーゴイル、硬いんですけど。えぇ、30㎜弾だよね?弾種間違えたかな?)
何とか数発撃ち込めば落とせる。だが、レイス艦とアーカード帝国の巡洋艦を守るので精一杯だ。お陰で聖エルガー教国と他国の艦隊はとんでもない状況になってる。
「シュウ、あのワイバーンとガーゴイル普通じゃ無いわ!きっと魔雲で強化されてる筈よ!」
「マジかよ。それでもやるしか無いよな!」
先ずは俺達の上空に居るワイバーンとガーゴイルをある程度落とす。それから中央にいる連中を叩き落とすしか無い。
そうこうしてる内に艦砲射撃が開始される。魔物の群れに砲弾が突き刺さり多数の魔物を巻き込んで爆発する。
「流石艦砲射撃だぜ!あの圧倒的火力に惚れそうだ!」
絶対に魔物をあの二隻には近づかせ無い。あの二隻が落ちれば俺達も死ぬ。暫くすると中央と右翼側も砲撃を開始する。空の戦闘もワイバーン隊と航空艦の連携により何とか盛り返している。
そして気が付けばゴブリンやオーク等の魔物が射程内になる。そして城壁に設置されてる大砲と魔砲も砲撃を開始する。
「これ以上お前達を近寄らせてたまるか!」
地上に居る魔物に照準を向ける。そして引き金を引く。
ドンッッ!ドンッッ!ドンッッ!ドンッッ!ドンッッ!ドンッッ!
30㎜弾の嵐の様な凶弾が魔物に向かう。そして魔物を吹き飛ばして行く。
「はっ!ミンチと同じになってるな!」
だけど引き金を引くのを止めない。そのまま引き続ける。しかし、魔物はジリジリと迫って来る。ゴブリンやオークの様な連中は何とかなっている。だが、ウェアウルフの様にすばしっこい奴やリザードマンの様な地味に硬い奴が問題だった。
「くそ、ちょこまかと動く」
「援護します」
「私も撃つわ!」
スピアとローラも近くの魔物を撃ち始める。他の冒険者達も魔道具や弓矢で矢を放ち始める。つまり、それだけ近付いてるという事だ。そもそも左翼側という広範囲をカバーすると言うのが土台無理な話だったのだ。
「よおし!お前ら!此処からが俺達冒険者の見せ所だ!魔物が何だってんだよ!」
「そうだぜ!俺達の力見せ付けてやろう!」
「おしゃあああ!掛かって来いや!!」
ウェアウルフと冒険者達が接近戦をする。その後ろにゴブリン、オーク、リザードマンが続く。しかし、妙に魔物の耐久性が高い。特にリザードマンの硬さは異常だ。
「何で魔物があんなに強いんだよ」
「恐らく魔雲の影響でしょう。そして、あの魔雲も人工的に作られた物の筈です」
「まさか……魔族が居るの!?」
「その可能性は充分高いです」
「でも、高位の魔物の可能性は?」
「それでも魔雲の中にワイバーンやガーゴイルを配置してます。それにガーゴイルが存在してると言う事は魔族の可能性は非常に高くなります」
魔族。人間と敵対している種族。その殆どは未知な存在と言われてる。彼方側の世界でも不透明な部分が多過ぎるらしい。その魔族に対する存在が勇者なのだ。勇者は分かり易く言うなら対魔族兵器と言える存在だ。つまり魔族に対しては滅法強い事だ。
「例え魔族だとしても目の前敵が多過ぎる!」
そうこうしてる内に弾切れになる。俺は急いで車長席から兵員室に移動して後部ハッチから出る。
「二人はそのまま攻撃続行!兎に角撃ちまくるしか無い!」
「畏まりました」
「その通りね!これ以上近付かないでよ!」
俺は後部ハッチから出てM10ブラッドレーの上に乗る。そしてM10ブラッドレーの30㎜の弾倉を出す。本来なら専用の機械を使ってリロードするが、そんな機械は無い。だからウォールで手動リロードさ。
「ウォールが無かったら詰んでたよ。よっこらしょっと!」
空の弾倉を収納して新しいのを出す。弾詰はPDAがやってくれるから助かる。流石最高の相棒だね。片方をリロードしてもう片方もリロードする。普通に時間が掛かるから色々ヤバい。
「あれは…人?いや、違う」
弾の装填を終えて後部ハッチに向かおうとする。だが、その時に見てしまったのだ。
「シュウ、あれはアンデットよ。もう、彼等は人間じゃ無いわ」
「アンデット…。そうか、分かった。直ぐに戻るよ」
あのアンデットは兵士の格好をしていた。恐らく失った艦隊の犠牲者なのだろう。俺はまだマシな方だ。何故なら知り合いは居ない。だが、兵士なのだから軍人は結構キツイだろうな。
何せアンデットとは言え同僚に銃や刃を向けるのだから。
「俺に出来る事はこれぐらいしか無い。だから成仏しろよ」
再度車長席に座り照準を合わせる。そして引き金を引く。30㎜の弾が向かって行きアンデット共を吹き飛ばして行く。正直HE弾だったから爆発で見え難くなる。だが、それが有る意味良かったのだろう。
アンデットとは言え人に向かって撃つのは抵抗はある。だが、此処で逃げる訳には行かない。何故なら後ろには民間人が多数居るのだ。避難してる連中も居るだろうが、殆ど避難して無いらしい。この状況下でも勇者に頼るとはな。正直言って有り得ないよ。
「シュウ!そろそろ弾が無くなるわ!」
「ほら、足元に沢山出したぞ!空の弾倉は俺にくれ!」
「ご主人様!此方もそろそろ無くなります!」
「分かった!今出すぞ!」
兎に角目の前の魔物を倒すしか無いのだ。それから暫く弾幕を張り続ける。それでも防衛線を維持出来るのは難しくなる。そして他の冒険者達にも段々被害が出始める。
「クロ、今度は左に移動だ。魔物を轢き殺して構わん。冒険者達の救助を最優先だ」
「プッキャ!」
M10ブラッドレーを魔物と冒険者達の間に入れる。魔物の方も魔法や矢を放って来る連中がいるが、ダメージは殆ど無い。
「お前達!怪我人を早く中に入れろ!」
「お、おお。助かるぜ!然も神官様付きかよ!」
「ポーションも有るから使って構わんぞ」
最早十人ぐらいは怪我人で溢れてる。だが、偶々冒険者の神官職の人を拾えたのは良かった。お陰で怪我人を直して直ぐに戦線復帰させる事が出来た。然もこの神官の人はAランクの人らしい。
「私は回復と支援魔法、それに魔力に関しては自信が有りますから」
正に後方支援のエキスパートだった。因みに神官の仲間達も強者揃いだ。
「これなら何とかなりそうだ。神官の美人さん!また怪我人を見つけたらからお願いします!」
「任せて下さい。それから私はメイと言います。宜しくね」
「シュウ・コートニーだ。美人に名乗られたら名乗り返すのは礼儀だしな!」
ふんわりした笑顔になるメイさん。因みに同じパーティの人と結婚済みだとか。
冒険者達を助けては回復して戦線復帰させる。更に魔物を銃や機関砲、果てにはM10ブラッドレーで突撃しながらこの流れを維持する。しかし、更なる魔物が迫って来た。
「ご主人様!前方にオーガを確認しました!数は八体居ます!」
「オーガ?この前バレットM82A1で吹き飛ばした奴か」
バレットM82A1より大口径の30㎜弾なら余裕さ。唯のデカイ的が来ただけだぜ。照準をオーガに合わせる。
「はっ!唯のカモ撃ちになっちまうな!」
そのままオーガに対して撃ちまくる。そして次のオーガにも照準を向ける。
「シュウ!オーガはまだ生きてるわ!」
「馬鹿な事言うなよローラ。此奴は30㎜だぜ?あっという間に穴だらけのミンチに……うえ?」
変な声が出てしまったが、其処にはオーガが悠然と立っていた。多少はダメージを受けてはいるだろうが、まだまだ余裕そのものだ。そしてオーガは咆哮を上げながら此方に走って接近して来る。
「うおおおお!?近付かせるなー!?!?」
M240G機関銃、ブローニングM2重機関銃、30㎜機関砲でオーガを集中射撃する。流石にこれだけの弾幕を受ければオーガは止まる。だが、倒れる気配は無い。
その時だった。オーガの居る中心地点が一瞬白く光る。そして……。
ドオオオオオオオッッッ!!!!!!
オーガが居た場所に大爆発が起きる。そしてその爆発の余波で何人かの冒険者が吹き飛ばされる。
「な、何だ?今の攻撃は?」
「……サラよ」
「ローラ、今何て言った?」
爆発ね余波が終わり爆煙が徐々に晴れる。そして、オーガだった何かがバラバラになっていた。
「だからサラがやったのよ。今の魔力は間違い無いわ」
ハッチを開けて頭だけだして外を見る。そしてサラさんが再度呪文を唱えていた。
『我が命ずる。敵の全てを屠れヴァスティン!』
サラさんは再度呪文を唱えて魔法を放つ。そのままオーガをもう一体消滅させる。然もオーガを消滅させた後に、凄い衝撃波とキノコ雲が出来てるし。どんな熱量なんだよ。
「シュウ、私もやるわ。火力だけなら私だってサラに追い付いてるもの」
ローラはキューポラから出て呪文を唱える。
因みに余談だが、俺はキューポラから出れない。理由はパワードスーツがキューポラより大きいからさ。だから後部ハッチから出入りするしか無いのさ。
『精霊よ、私に力を貸して!ライトニングブラスター!!!」
ローラの手から魔法陣が出現する。其処から白く眩しい一筋の光が魔物を巻き込みながらオーガに迫る。オーガも咄嗟の防御姿勢を取るが、そのまま貫通してオーガを一撃で葬ってしまう。
「ほえ〜、何と言うかちょっとした戦略兵器だね」
もう、このエルフコンビに魔王退治して貰った方が早いんじゃ無いかな?そんな事を考えるが、まだオーガは六体居る。流石に連発で攻撃をすれば二人が危ない。
「仕方無いか。出し惜しみして死んだら死ぬに死に切れんしな。ローラ、一旦中に戻ってくれ」
「分かったわ。でも、如何するの?」
「此奴を使うのさ」
M10ブラッドレー歩兵戦車にはもう一つ兵装が有る。それは対戦車ミサイルだ。有線式だが確実に当てれる事が出来る。俺は対戦車ミサイルを起動させてオーガに照準を合わせる。
「よーく狙って……行ってこい」
バシユウウウウウウ!!!
対戦車ミサイルを発射させ誘導する。先ずは一体目にぶち当てる。直ぐに結果を見る為車外カメラで確認する。そしてオーガの腕を吹き飛ばす事が出来た。
「もう一発だ!遠慮すんなよ!」
オーガは避ける事も出来ず吹き飛んだ。対戦車ミサイルは残り2発。
「此奴らもサービスだ!受け取れ!」
今度は上空に向けて発射させる。次のオーガは中央寄りだからだろう、此方の対戦車ミサイルに気付いていない。そのまま頭部に直撃させる。
「ラスト一発だ。ああ…切り札終了しました」
もう一発も発射してオーガを吹き飛ばす。サラさん、ローラ、俺でオーガを六体倒す。
「私もまだまだイケるわ!」
ローラも遠くに居るオーガに直撃させる。如何やら精霊が修正してくれてるらしい。そして残るオーガは一体のみとなる。そのオーガに対して砲撃や魔法が集中する。
「よし、此れなら何とか成るだろうな」
この後も戦いは続く。途中ベックとザニーが負傷したので回収する。
「おおお!?あ、あの!お名前は何と言いますか!自分はベックと言います!」
「ベック、てめえ抜け駆けすんなよ!俺はザニーと言います!宜しく!」
「クスリ、私はメイと言います。さあ、先ずは治療しますからね」
結構な傷を受けていた二人だが、神官のメイさんを見て元気になる。せめてもの情けで、今だけはメイさんが結婚済みなのは黙っててやろう。
左翼側は順調に防衛出来ていた。だが、30㎜弾の弾薬は底を尽き掛けていた。更にレイス艦とアーカード帝国の巡洋艦の艦砲射撃が止まる。代わりにゆっくりと降下しながら魔砲と銃を撃ち始める。
「だが、此処で引くわけには行かないんだよな」
そう呟いた瞬間、上空から濃い紫色の何かの塊が見た。そして……。
ドゴオオオオオオン!!!!!!
防衛線の中央付近で大爆発が起きる。それはサラさんよりも大きな爆発で、その爆発の余波によりM10ブラッドレー歩兵戦車は吹き飛ばされるのであった。
いつから現代兵器や近代兵器がファンタジーより強いと錯覚した?
ファンタジーも十二分に強いのだよ!!!




