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スピアとローラに暫く抱き締められて大分落ち着いた。


「二人共ありがとう。もう、大丈夫だ」


俺は涙を拭く。二人には結構助けられてるから、本当に感謝するしか無いな。


「宜しいですか?また何時でも頼って下さい。私はずっとご主人様の側に居ます」


「私もよ。シュウは私が守って上げるわ。だから無理はし過ぎないで」


こんな美少女二人に心配して貰える俺は何と果報者だろうか。然も心の器も大きいと来ている。勿論おっぱいもな!


「そうか。よし、そろそろ戻るか。今回のゴブリン・ロードの話をギルドにしておかないとな」


俺達はゴブリン・ロードの死体がある場所に戻る。頭部は完全に消滅していたが、身体は残ってる。討伐金は勿論の事、話も通し易くなるだろう。


「あれ?確か此処にゴブリン・ロードの死体が有ったよな?」


しかし、ゴブリン・ロードの死体は何処にも無かったのだ。然も他のゴブリンの死体も見当たらない。まさか、生き返ったのか?


「全員警戒!敵が居る可能性がある!」


M240G機関銃を構えてライトの光を頼りに敵を探す。しかし、敵はおろか影すら見えない。だが、そんな中咀嚼音か聞こえる。そっちの方にライトを当てる。そして、其処に居たのは……。


「プキュ?」モッチャモッチャ


ゴブリンの死体を食べていたクロが居た。俺はスピアとローラに視線を向ける。二人共苦笑いになる。そのままクロに視線を戻して呼ぶ。


「クロ、こっちおいで」


「プキャ!」


元気に飛び跳ねながら俺の目の前にくる。


「クロ、彼処に転がっていた死体食べちゃったかな?」


なるべく優しい声を出して聞く。頼む、食べてないと言って欲しい。


「プッキャ!プッキャ!」ポンポン


クロは触手を出して自身を叩く。それは間違い無く食べましたと伝えていた。


「そっかー、食べちゃったかー……美味しかったか?」


「プキャ!」


「そっかそっか。クロ……今日の晩御飯抜き!!!反省しなさい!!!」


「ッッッ!?!?!?」ガアアアンン!!!


物凄いショック反応をするが手加減はしません!今回は心を鬼にします。全く、これじゃあギルドに話が上手く通らないぞ。一応話はするが信じてくれるかどうかだな。


「取り敢えず攫われた人達を救助しよう。先ずはそれからだな」


「そうね。なら先ずは身体を洗ってあげましょう。幸い此処には水場があるわ」


「気配は感じませんので大丈夫かと」


俺達は攫われて傷付いた人達を介抱するのだった。


……


攫われた人達を外まで出す。しかし、このままでは攫われた人達を運んで街まで行く事になる。なのでパトカーを出す事にする。


「救助出来た人数は八人か。なら助手席に一人、後部座席に三人、屋根に二人、トランクに二人だな。悪いけどスピアとローラは車の上に乗って支えててくれ。クロは屋根の上でクッション代わりだ」


「分かりました」「構わないわ」「……プキュウ」


クロの元気が無いが許す訳には行きません。まあ、明日は御馳走にでも行くかね。

俺達は何とか車の上に載せる。後はクロが固定にもなってくれる。俺はエンジンを掛けてパトカーを走らせる。勿論徐行走行だ。


「さて、行くぞ。しっかり支えててくれ」


「畏まりました」「了解よ」


こうしてゴブリン討伐は一応完了した。しかし、ゴブリン・ロードが言った言葉。



『我が下僕の半分を渡したのだ。然も強力な者達ばかりをな!コレぐらいの力を貰って当然だ!!!』



力を貰ったと言っていた。なら別の勢力がいる訳だ。然も魔物を集める事に全力を出してる感じだ。少なくともローラの攻撃を防げる力を与える事が出来る奴が。


「どう考えても勇者発表の日に何か来るぜ」


逃げた方が良いのか?だが、逃げたらアクラに居る住人が被害に遭うだろう。最悪勇者を倒せる力の持ち主が居る可能性だって有る。そうなれば真っ先に使い潰されるのは、俺達冒険者だ。


「全く、人生とは儘なら無いとはよく言った物だな」


本当に儘なら無いからタチが悪い。パトカーを徐行で走らせながら考えるのであった。


……


side 第27飛行隊 ワイバーン乗り ティグリス1


「此方ティグリス1。目標地点に到着した。魔物の存在は確認無し、どうぞ」


『了解した。引き続き偵察に当たれ』


「ティグリス1了解。さて、魔物の集団規模は未だ見つからずか」


現在、我々第27飛行隊は各方面に分かれて偵察を行なっていた。他の飛行隊も首都アクラで厳重警戒中だし、航空艦も何時でも出撃可能状態だ。

と言うのも勇者発表が二日後に迫っている。更に各国の重役、重鎮、貴族が来ているのだ。少々急ぎ過ぎる発表に思えるが、前々から各国にはそれとなく伝わっていたので基本的には順調と言えるだろう。


『隊長!俺達何時まで偵察してれば良いんですか?然も魔物のまの字も無いですよ』


通信石からティグリス2の声が聞こえる。如何やら何も見当たらない任務に退屈してる様だな。


「ティグリス2、私語は慎め。もう少しの辛抱だ」


「まあ、そうですけどね。ただ、俺も勇者達を見たかったな〜。今回は五人も居るんでしょう?然も美少女が二人ですよ!』


ティグリス2は興奮気味だ。勇者で美少女と来ればテンション上がるのは仕方ない事だった。


『それより隊長、私達はこのまま現状維持ですか?』


もう一人はティグリス3の女性隊員であり、立派なワイバーン乗りだ。そこらのワイバーン乗りには負け無い肝っ玉の持ち主だ。


「そうだ。取り敢えず怪しい物が無いか確認だ」


『了解です。さあ、高く飛ぶわよ!』


「グワアアッ!」


『お?なら自分も行きます!』


ティグリス2、3はより高く飛ぶ。やはりワイバーン乗りなら高く速く飛びたいと思うのは仕方無いだろう。それに、この数日は魔物を探す偵察ばかりだったから多少の自由は良いだろう。

暫くワイバーンを自由自在に飛行させていたが、ティグリス3が違和感を感じた。


『ティグリス3よりティグリス1へ。北方面の山向こう側で微弱な魔力反応を感知しました』


「何?ならティグリス2、3は直ちに確認しろ。俺も直ぐ其方に向かう」


『ティグリス3了解です。行くわよティグリス2』


『ティグリス2了解!漸く仕事らしい仕事が来たか?』


ティグリス2、3はワイバーンを加速させて山を越えて行く。ティグリス1もそれに続く。


『あれは……何?霧かしら?』


『霧だとは思うが、紫色の霧なんて聞いた事ないぜ?』


「何が見えた?ティグリス3報告しろ」


『はい。紫色の霧が発生してます。恐らくあの霧から魔力反応があります』


ティグリス3の報告を聞いて理解した。そして、私もその光景を見る。


「如何やら魔雲の様だな」


『魔雲ですか?それは一体?』


「簡単に言えば魔素の塊だ。魔素は空気中にもあるが、それが目でも見える状態の事だ。だが、あの魔雲は妙だな」


私は魔雲を一度だけ見た事がある。普段見える訳でも無い魔素を目視出来る。つまり、それだけ魔力濃度が高いのだ。魔力濃度が高ければ魔力探知は容易な筈だ。初めて見た時も、見る前から魔力を感じる事が出来たからだ。

それに、紫色の魔雲も気になる。魔雲は魔素の属性によって変わる。火属性なら赤色、水属性なら青色だ。だが、紫色は一体?


「高速で近付き、そのまま魔雲周辺を確認する。ティグリス2、3行くぞ」


『ティグリス2了解」


『ティグリス3了解です』


ワイバーンを隊列を組み魔雲に近付く。


「何だこの魔雲は…。これ程の高濃度なのに反応が低い」


『ティグリス3からティグリス1へ。様子が可笑しいです。一旦引きましょう』


『おいおい、此処まで来て引くのか?勘弁してくれよ。俺達はワイバーン乗りだぜ。突撃してナンボだろ!』


「ティグリス2!待て!勝手な行動は止めろ!」


だが、ティグリス2は魔雲近くまで近付く。その瞬間、魔雲の中からワイバーンの群れが現れる。


「ティグリス2!逃げろ!」


『なっ!馬鹿な!魔物何てッ!』


ティグリス2はワイバーンに寄って集られる。最早助かる見込みは無い。


「くっ…ティグリス3撤退するぞ」


『りょ、了解。た、隊長!アレを!』


「何?ま、まさか……」


其処にはワイバーンに乗っている奴が居た。其奴は人間とは違う存在。そう……。


「魔族…だと?」


「これはこれは鼠が居るとはね。全く、此処まで連れて来るのには結構大変だったのですよ?」


私は魔族の言葉を聞く暇は無かった。それより、この事を急いで本部に伝えなくては。


「ティグリス3、逃げろ。絶対に振り返るな。兎に角魔族の存在を本部に報告しろ」


『隊長!それでは隊長が!』


「話してる余裕は無い!行け!」


私はティグリス3の返事を聞かずに魔族に突撃する。ランスを構えながら魔法を唱える。


「『敵を屠れ!ファイアーランス!』」


自分の持つランスに擬似的に属性を付属させる。そのまま一気に魔族に突撃する。


「やれやれ、闇雲に突撃しても意味は有りませんよ。それに」


パシッ!


「なっ!素手で!」


「この程度の攻撃なんぞ私には効かん」


ワイバーンの加速に加えて火属性も付属させた一撃をアッサリと掴み取る。然も逃げもせず正面からだ。


「まあ、その蛮勇に敬意は払いましょう。それでは、さようなら」


奴の左手から濃い紫色の塊が来る。そうか、この魔雲は此奴の魔素なのか。

私はこの魔雲が人工的に作られた事を理解した後、意識が無くなった。


side out


「ふむ、もう一人もワイバーンが仕留めましたね。しかし、これでバレた事に変わりはありませんね」


だが魔雲と魔物の存在がバレたなら構わない。行軍スピードを上げるだけだ。幸いにも戦力は十二分にある。更に私の魔雲により魔物も大分強化されてる。


「さて、始めましょうか。この戦いで私の力を存分にお見せしましょう」


尤も勇者や人間が何人来ようが、所詮は非力な存在だ。対して脅威にはならんさ。

強大な力を得ている魔族が、強力な魔物の軍団を引き連れて聖エルガー教国の首都アルクに向けて進軍を速めたのだった。


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