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昼過ぎには首都アクラに着いた。アクラはとても賑わっていた。様々な色合いの航空艦は勿論の事、正門の前に至っては長蛇の列が出来ていた。更に列の周辺には兵士や多砲塔戦車が警戒してるし、鬼畜艦も飛んでる有様だ。
「何か有ったのかな?」
俺は前に居る商人に聞いてみる。すると勇者のお披露目が有り、その姿を一目見ようと来てるらしい。通りで亜人や獣人も多数いる訳だ。普段なら見る事の無い光景だろうな。
それと関係無いが、今の装備はM16A4、サイガ12、M92。戦闘服にヘルメットとゴーグルとマウスガードだ。マウスガードは口元をガードする為に装備する。更に今回は牙を描いといた。かなりの力作で自信がある。
暫く待ち漸く正門まで来る。其処でギルドカードを見せてサッサと中に入って行く。そして、まだ空き地が目立っていた三層目の場所には仮設とは言え住宅や屋台などがあり賑わいを見せていた。
「プキャー!?」
「お?クロか「ベチッ」ムング!」
前にも似た様な状況になるが、迎えに来てくれるのは嬉しい物である。
「ぷはっ!クロただいま。二人と一緒なのか?」
「プキャ」
「お帰りなさいませ。ご主人様」
「うひゃ!お、おお…この流れも久しぶりだよ。うん、ただいまスピア」
其処には笑顔で佇んでるスピアが居た。今は気配が分かるから良いけど、もっと普通に迎えに来ても良いのよ?
「シュウ!無事に帰って来たのね!良かった〜。怪我とかは無い?変な人に騙されなかった?」
「何気に普通のお出迎えが新鮮に感じるよ!ローラありがとう!」
「ふえっ?ちょっといきなり抱き締めるなんて、恥ずかしいわ…///」
ローラの普通の対応に感動してしまい、つい抱き締めてしまう。だが、ローラは恥ずかしいと言いつつ抵抗はしなかったです。
「ご主人様、探索等でお疲れでしょう。先ずはゆっくりと休まれては如何でしょうか?」
スピアが何時も通りの表情で言ってくる。しかし、ウサミミが少し逆立ってる。
「そうだな。と言ってもギルドの仮眠施設だしな。この際だから宿に泊まるか」
「それならもう宿にしてるわ。ギルドの仮眠施設も一杯だもの。流石に彼処では寝泊まりは無理ね」
どうやら勇者発表によりギルドの仮眠施設が一杯になってしまったらしい。それに二人共美人だから色々視線を受けるだろうしな。この後宿に案内して貰いスピアに色々マッサージして貰いながら一息着いたのだった。
本当に色々有った。特に最後でカレンに拒絶されたのは考えさせられた事だ。だが、自分がやった事に後悔はして無い。いや、してはいけないと思う。それが俺が選んだ事なのだから。
……
side ???
「ふーむ。勇者のお披露目会ですか。いやはや、私も運が良いのやら悪いのやら。まあ、この際勇者諸共聖エルガー教国には沢山の犠牲者を出して貰いましょう」
其処にはタキシード姿の紳士姿の男性が居た。シルクハットを被り、片目眼鏡を付ていた。更に綺麗に整えられた八型の髭を弄りながら一人呟く。
「もう少し魔物を集める必要が有りそうですね。なら魔雲で此奴らを隠しておきますか。ついでに強化もされますし丁度良いでしょう」
周辺にある魔素と自信の魔力を集めて周辺に展開する。魔素が段々濃くなり肉眼でも見える形になる。濃い紫色なのは紳士姿の男性の魔力によるものだろう。
「飛行型の魔物は充分な数は揃えれましたが、地上型をもう少し集めましょう。雑魚でも数なら揃えれます。後は勇者がお披露目される辺りで襲撃しましょう。沢山の人間が死ぬのを想像するだけで血が滾って来ますな!」
その男性の肌は青白い色だった。更に額と手の甲には紅い宝石が埋め込まれていた。その宝石を撫でながら呟く。
「あの方から頂いたこの力。今ではしっかりと扱える様になれました。後は聖エルガー教国で多数の戦果を上げれば、きっと私の存在を認めて頂ける筈です。あの方にもっとも忠誠を誓ってる私にこそ、あの方の右腕になるのが相応しいと言えます」
男性はそう言って聖エルガー教国の首都アクラに視線を向ける。
「我々魔族が貴様ら劣等種に敗北する訳が無いのだよ。貴様らには此方側から消えて貰います」
魔族。そう、この男性は魔族だ。そしてこの男は圧倒的な自身の力で人間を滅ぼしたくて堪らないのだ。
「フフフ。楽しみで仕方有りませんね。さあ、早く始めたい物です」
一区切りついてから呟く。
「人間と魔族の戦争をね」
そう呟き、暫くの間不敵に笑うのだった。
……
side out
デートとは何か?それは恋人が人目を気にせずイチャイチャしながら楽しく過ごす事だ。場合によっては大人のアダルティーな事にも発展するが仕方がないだろう。
「それでは早速ご案内します」
「うん。まあ、宜しく?」
突然だが今日はスピアとデートする事になった。どうやら俺が探索しに行ってる間に二人はデートする計画を立ててくれていたらしい。そして最初はスピア。次にローラとデートだ。
スピアは何時ものメイド服を着ている。俺は昨日デートが有ると聞いたからデート様に少しお洒落した格好だ。
「まず彼方の建物ですが、此方側に来た聖エルガー教国が初めて建てた建造物になります。また、隣の像はユーニスム教の教祖のユーニスム・デル・アークルになります」
「ほ、ほう。中々、奥深い物を感じない事も無いかな?」
一応補強や清掃はされてるので綺麗な建物と言えば綺麗だがな。ただ、これは……。
「右手に見えますのが初代勇者と仲間達の像となっております」
「あー、うん凄いね。何か物語に出て来そうな勇者と仲間達だね」
この後勇者について色々説明をしてくれるスピア。だが、これは間違い無く。
(観光旅行のガイドさんとお客さんだよー!スピアちゃん!)
いやね、凄く頑張って計画立ててくれたと分かるよ?でもさ、これってデートじゃ無いよ。主従の関係だよ?いや、間違って無いけどさ。これはデートでは断じて無い!
「スピア!ストップだ」
「はい?…他の場所に行きますか?」
「違うよ。取り敢えずスピアは着替えようか。そうと決まれば服屋に行くぞ!」
俺はスピアの手を取り服屋に直行する。そして、何かピンクやら黄色やらの服屋が有ったので入って行く。
「すみませーん!この子をお洒落美少女にお願いします!お金は心配しなくて大丈夫ですから!」
「あの、ご主人様?私はその…」
スピアが何か言いたそうにするが無視しちゃう。
「いらっしゃ〜い。あら!中々可愛らしい子じゃない!この子をお洒落美少女にしちゃっていのかしらん?」
其処にはオネエが居た。普通に無精髭が有るし、お洒落とは無縁そうなオネエだった。
(しまった!オネエが店長かよ!しかし、店内は中々センスある配置なんだよな。何だろう、昔を思い出す)
店内は様々な服が有り、その並べ方や魅せ方は昔の服屋の様な感じだった。オネエなのは不安だが仕方がない。
「あの、この服の魅せ方や配置は貴方が?」
「そうよん。お客さんには良い服を買ってお洒落して欲しいもの〜」
悪い人じゃ無さそうだ。なら、任せるか。
「貴方のセンスに賭けます。スピアをお願いします」
「良いわよん!それにしても可愛らしいお嬢さんね?そのウサミミもとってもキュートね!なら、そのウサミミももっとキュートにしちゃいましょう!」
「あの、私は…ご主人様!」
僅かに助けを求めるスピア。だが、俺は敢えてこう言った。
「スピア、君のお洒落姿に期待している」
「っ!畏まりました。お任せ下さい!」
そう言ってスピアはオネエ店長と一緒に奥に消えて行った。
「先ずは寸法からね。皆!手伝って頂戴!今日は大物を綺麗に可愛らしくするわよん!」
「「「は〜い!」」」
その後色々な声が聞こえる。やれ胸が大きいだのスタイルが良いだのウサミミと尻尾は出して行くのは必須だの。兎に角賑やかな感じになっていた。
それから三十分が経過。その間様々な意見を出し合いながらスピアを弄っていくオネエ店長と従業員達。従業員は普通の女性でホッとしたのはご愛嬌だ。
「お待たせ〜。バッチリ綺麗で可愛らしく仕上げたわ!さあ、彼氏さん!見て上げて!」
「よし、バッチリ見せて貰おうか!」
そして、試着室のカーテンが開かれる。
「あの、私にはこの様な服は」
「……良い」
言葉が一瞬出なかったが、出た言葉もチープ過ぎた。だが、それぐらい綺麗で可愛らしいのだ。
所謂ゴスロリと言うやつだ。白と黒のツートンカラーでリボンがお腹辺りで締まっており、胸元の谷間がちょっと見えるのもポイントが高い。更にスカートも短めであるが、下品な短さでは無く適切な短さである。右のウサミミにも銀色で挟むタイプのハート型アクセサリーが付いており、左のウサミミにはフリルの付いた耳輪が付いてる。更に尻尾の方にも少し大きめに蝶々結びされた白のシンプルな紐が結ばれてる。そして黒のニーソックスにガータベルトのセットが眩しい。極め付けが首輪にも銀の鎖が付いており、ゴスロリと連結されていた。
「良いよ。凄く良いよ!綺麗だし!可愛いし!もう、最高だよ!皆さんありがとうございます!」
「良いのよん。私達も久々に熱く語り合っちゃったもの。ね?皆」
「そうよ。だから気にしないで」「寧ろこっちがお礼を言わなくちゃね」「本当その通りね」
「因みに、この子はメイド服に凝ってたから一応それに近い様に選ばせて貰ったわ。やっぱり本人が納得して初めて映える様になるものね」
そうか。それはそれで全然有りだよ!この後お会計を済ませて早速デートに向かう。勿論スピアが考えてくれたルートに沿って行く。但し……。
「じゃあ手、繋ごうか」
「っ!それは、私はその…立場上……奴隷ですし」
「今はデートだ。つまり恋人な訳だ。なら手を繋ぐのも腕を組むのも問題無い!それとも、スピアは俺と手を繋ぐのは嫌?」
「その様な事は絶対に有りません!」
直ぐに手を握ってくれるスピア。そして、俺達はそのまま歩き出してデートを再開する。
「しかし、これはなんと言うか凄いな」
街を歩いてると男女関係無くスピアと俺を見る。最初にスピアを見て、手を繋いでる俺を見る。男性は憎しみの篭った目で見てくるし、女性は吃驚した様に見てくる。
「やはり、似合って無いのでしょうか?変に見られてますし」
「いやいやいや、普通に似合ってるから見られてる…あ、コラ!サイレントモード禁止」
スピアは恥ずかしくてサイレントスキルを発動するがそうはさせない。このままデートを続行するから価値が有るのだ!
「ほら、恥ずかしいなら腕組もう?」
紳士的に言うが内心はと言うと。
(スピアのお胸様の感触をしっかり味わうチャンス!然も街中で味わえるなんて滅多に無いし!)
下心MAXですが何か問題でも?
「はい。それでは…失礼します///」
恥ずかしそうに腕を組んでくるスピア。うひょー!最高だぜ!
この後スピアと一緒にデートをする。流石にこの状況に慣れて来たが説明などはせず一緒に楽しんだ。
「そう言えば昼食がまだだったな。御飯は如何する?」
「あ、はい。お弁当が此方にあります。彼処の公園で食べようかと思いまして」
「お!スピア特製弁当か!これは楽しみだな!」
俺の言葉にスピアは笑顔になる。うん、やはりスピアの笑顔は最高だね。
丁度良い木陰があり、そこの地面に大き目の布を敷いてからお弁当を広げる。お弁当の中身は俺の好物で一杯だ。
「おお!では早速頂きます!」
「はい、どうぞ召し上がって下さい」
俺達はお弁当を食べながら談笑する。とてもゆっくりとして暖かな時間を過ごした。しかし、お腹が膨れると段々眠くなって来てしまう。
「ご主人様、どうぞ横になって下さい」
スピアは自分の太ももを叩く。それは膝枕だった。
「良いのかい?俺は許可が下りれば遠慮はしない男だぜ?」
「はい。さあ、どうぞ」
俺はあっさりとスピアの太ももに頭を乗せる。
爽やかな風が吹いている。公園には親子連れや老夫婦が居る。そんな和やかな雰囲気に、涼しい木陰。更にスピアの優しい香りも合間って瞼が段々閉じてくる。
「〜♪〜LaLaLaL〜♪」
誰かの歌声が聞こえる。懐かしい様な気分になりながら、ふと思い出す。
(そう言えば、子供の頃にも似た様な事あったっけ……)
そんな懐かしくも暖かな存在を思い出しながら意識を手放したのだった。
side out
side スピア
今日はご主人様とデートに来ています。ご主人様が楽しめる様に色々計画を立てましたが、結局私自身も楽しむ事になりました。恐らくご主人様が気を利かせていたのでしょう。
この服も恥ずかしいですが、ご主人様に喜んで頂けたのは嬉しいものです。それに何時も奴隷としてでは無く、一人の女のスピアとして扱って頂いてるのも嬉しく思います。
「……かあ……さ…ん」
ご主人様の頭を撫でてると寝言を言います。如何やら母親の事を思い出してるのでしょう。
そんなご主人様を見ていると、ふと疑問に思う時があります。ご主人様は何処から来たのかと。
最初見た時は世間知らずの青年かと思いました。ですが、知識や礼儀はあります。ですので無知では有りません。寧ろ高等な知識を持ち合わせています。ですが余りに合わないと言いますか、今の世の中と一致しない様に感じます。最近は徐々に世間に慣れて来てる様ですが、まだ甘い所が多々有ります。
私はそんなご主人様を見て思います。シュウ様は私がお守りします。例え世界が敵になろうとも、私は貴方を見捨てません。
「私はいつでも貴方の側に居続けます」
例え、この命尽きようとも……。
side out
……
………
「ん……んん?んあ。あれ?」
「お目覚めになられましたか?ご主人様」
顔を上げると胸の向こうから顔を覗かせるスピアと目が合った。
「ああ。今何時ぐらい?」
「三時過ぎですね。一時間程寝ておりました」
「そっか、スピア膝枕ありがとう。最高だったよ」
俺はスピアの太ももから離れる。懐かしい夢を見た気がする。そのお陰か妙にホッとしてる気分だな。
「この後は如何致しますか?」
「勿論デートの続きをするさ。それに、折角色々考えててくれたんだろ?なら一緒に行こう」
「ご主人様……」
俺は立ち上がりスピアに手を差し出す。スピアも俺の手を掴み立ち上がる。
「じゃあ、行こっか」
「はい!ご主人様!」
俺達は再びデートを再開する。スピアはとても嬉しそうな笑顔を見せながら。そして、ウサミミに付いてる銀のハートのアクセサリーが大きく揺れて輝いていた。
デートって……なんですか?←おい




