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ベースキャンプに戻り骨董品を全て売る事に決めた。鑑定に五日程掛かるが俺達は気にせず酒場に向かったのだった。
「いやー、まさかこんな簡単にお宝が手に入るなんてな!今まで全然手に入らなかったからな」
「そもそも廃墟の中心街に行けたのが大きかったな。あの辺りは寄生者共が沢山居るし」
「それもこれも全部シュウのお陰だぜ!流石古代兵器扱ってるだけはあるよな!」
「そうだよなぁ。やっぱり古代兵器の殺傷力は強いからな。まともに動く古代兵器が有るだけで全然変わるからな」
二人は俺を褒めちぎる。おいおい照れちまうぜ!
「まあ、お前らの援護や足止めが有ったから上手く行ったのさ。銃一丁有っても意味は無いからな」
まあ、でも俺は謙虚な人間だからな。だが、そんな俺を見て益々テンションが上がるベックとザニー。
「おいおい!聞いたかよ!俺達のお陰だってさ!」
「この褒め上手め!すいませーん!一番良い酒を頼むぜ!」
それから俺達はテンションが高くなり飲みまくる。
「だ〜か〜ら〜、アンダーグランドはマジでヤバいんだって。ヒック!本当色んなもんが見えるもん」
「そんなにヤバいのかよ?」
「まずは〜、オバケが出る」
「「オバケ〜?」」
「おうよ!唯のオバケじゃねえよ?過去からずっとずっと居座ってる連中だぜ?そこら辺の悪霊の方が可愛いぜ」
俺は酒を飲みながら思い出す。過去の映像、悲鳴に笑い声、怒声に銃声。もしかしたら彼処は過去の栄光を忘れ事が出来ない連中が居座ってるのかもな。もしくは今の世界を認めたく無いのかも知れんな。
「でも何か見つけたりしたのか?お宝とかさ」
「見つけたも何もアンダーグランドその物がお宝だぜ?入り口一つギルドに報告すれば大金に早変わりさ。更に通路の安全を確保すれば倍プッシュだぜ!」
本来なら言ってはいけない事だったが、男だけで酒を飲むのが楽しくてついつい話してしまった。
「ほあ〜、凄いなそれ」
「因みにその金で何か買ったのかよ?」
「おう、買ったぜ。聞いて驚け!高級奴隷だ!」
「「うおおおお!?!?マジかよ!?!?」」
二人はめちゃくちゃ興奮してる。そりゃそうだろう。高級奴隷は冒険者達にとって欲しい存在だ。だが、手に入れれる連中なんてほんの一握りだ。
「俺達も買えるよな!お宝換金したら買えるよな!」
「買えるに決まってるだろ!ウヘヘ〜今から楽しみだぜ〜」
「なら来年まで節約頑張ってね。高級奴隷オークションは来年もラリア連邦でやるだろうし」
俺の節約と言う台詞に固まる二人。
「因みに……シュウくんは幾らで買ったのかな?」
「俺達友達だから勿論教えてくれるよな?」
ベックとザニーは顔は赤いが酔いは醒めたのだろう。凄い真顔です。
「確か、金貨1300枚以上は払ったな」
「「…………は?」」
圧倒的な金額に唖然とするベックとザニー。うん、完全に酔いは醒めてるな。
「まあ、俺が買ったのは例外的な奴だったからな。普通は確か……最低でも金貨200枚以上はするな」
「そ、そうか。金貨200枚か」
「吃驚したぜ〜。しかし、どんな高級奴隷を買ったんだ?」
「ん〜、サイレントラビットだよ。しかしな、コレが凄く可愛いんだよ〜。普段はクールビューティなんだがな、二人っきりになると甘えてくるの何の〜」
この後スピアの自慢話をしてお開きになる。特にベッド・インの話の時は真剣に聞いていたので笑った。
「じゃあな〜、お休み〜」
「おう。明日は如何する?」
「多分二日酔いになるからパス」
こうして俺達は部屋に戻ったのだった。
……
side 冒険者達
シュウ達が食堂から出て行った後、冒険者達はさっきまでの会話について話していた。
「おい、さっきの話本当かよ?信じられ無いぜ?」
「だがアンダーグランドの話は本当みたいだぜ?ほら、メイフィスで『旅団レイスガーディアンズ』がアンダーグランド探索してるだろ?」
「なら、彼奴が噂の『古代兵器使い』か?確かに古代兵器を持ってたが」
意外と『古代兵器使い』の名前が定着しつつあるみたいだ。
「それに高級奴隷の話もさ。最初はAランクのローラさんが買ったと思ってだが違うみたいだぜ?」
「なら、奴は……本物か?」
三人が居なくなった後冒険者達はお互い話し合っていた。
「明日は探索はしないみたいだな。なら明後日誘ってみるか」
「おいおい、そいつは俺達が誘う予定なんだよ。横からチャチャ入れられたら堪んねえぞ!」
「んだとう?嘘を吐くならマシな嘘を吐けよ!能無し野郎!」
段々険悪な雰囲気になり始めるが、厨房から女将さんが出てきてこう言った。
「此処で暴れたら料金倍プッシュだよ!序でにギルドに報告ドンッ!」
そう言って厨房に消えてく女将さん。後に残った冒険者達は静々と御飯を食べたのだった。
side out
次の日の朝、やはりと言うべきか二日酔いになったシュウ達。
「うう…気持ち悪い」「頭痛い…」「何も食べたく無い」
揃いも揃ってダウン状態である。
「ああ、こんな時にスピアたんとローラたんが居てくれればきっと……」
そう言ってシュウはスピアとローラに看病して貰う妄想をする。
『ご主人様、大丈夫でしょうか?』
『う〜ん、スピアたんが膝枕してくれたら元気出るかも』
『さあ、どうぞ』
シュウの我儘に直ぐに慈愛の笑みを浮かべながら答えるスピア。
『ねえ、本当に大丈夫なの?』
『そうだな。ローラたんは添寝してくれると元気出るかも』
『も、もう、しょうがないわね。今日……だけよ///」
頬を染めながら快く添寝してくれるローラ。
『ほら、果物とか食べる?』
『頭が痛いから食べさせてくれると嬉しいな』
『仕方ないわね。はい、零さない様にね』
ローラに食べさせて貰うシュウ。そしてスピアにもお願いする。
『何か耳掻きとかして欲しいな』
『お任せ下さい。余り動かないで下さい』
そう言って耳掻きを始めるスピア。最早何処ぞの石油王である。
「でへへへ〜、今度やってもらおっと!?あっ痛たた。最高の妄想でテンション高くなったらめっちゃ頭痛い」
「そのまま痛みが継続します様に」
「この野郎に呪いにかかります様に」
「待て待て。何物騒な事言ってんだよ。まあ〜確かに〜俺は〜勝ち組ですけど〜嫉妬はいかんな〜」
ドヤ顔でベックとザニーを煽っていくシュウ。如何やら昨日の酔いがまだ抜けて無いご様子。
「クソッタレ。俺だって来年には高級奴隷買うからな。絶対買うからな!」
「その為なら節約は苦にならないぜ!」
「でも高級奴隷だから不自由な暮らしは受け付けないだろうな。頑張って稼げよ」
「うっ…暫く冒険者稼業頑張る事にするよ。それで俺達は今回のお宝をオークションに掛けようと思ってるだ。如何だ?シュウもやるか?」
ベックとザニーは高級奴隷を買う為に冒険者を続けるみたいだ。そしてオークションね。確かにギルドを通してオークションやれば持ち逃げされる事は無いだろう。
「いや、遠慮しとくよ。そもそも俺の目的はお宝じゃ無いからな」
この後、お互いの行動を話し合う。結果としてベックとザニーは探索を止める事にした。これ以上欲張って死んだら、死ぬに死にきれんだそうだ。シュウはまだバッテリー充電装置を探す事を伝える。
「なら、もう少し奥に行くと軍事施設っぽい所があるらしいな」
「ああ。半壊したドーム型の建物が有るらしいからな」
「そうか。だけど奥に行くと放射能が高くなりそうだな。そうすると流石に防具服でも無理だな」
シュウは少し考えて直ぐに結論を出す。
「取り敢えず行くだけ行くよ。無理なら即撤退。そして反対の軍事施設に行く。この予定で行くよ」
「無理はすんなよ。折角知り合えたんだから死ぬんじゃねえぞ」
「そうだぜ?それに待ってる奴等が居るんだろ?なら尚更無理は駄目だぜ」
それから暫く喋りながら段々馬鹿な話になる。やはり男同士だと気が楽なのだろう。何時もとは違う明るさを見せるシュウだった。
……
side シュウ・コートニー
次の日、俺は探索に行く準備をする。銃はサイガ12とUMPにする事にした。敵は寄生者とグールしか居ないので、弱点を確実に当てれる銃にした結果だ。
宿を出て探索に向かおうとすると数人の冒険者達から声を掛けられる。
「おい。お前今一人何だろ?なら俺達と組まないか?」
おや?探索のお誘いかな?珍しいな。
「待てよ。俺達が先に目を付けてたんだぜ?如何だ?俺達と組めば均等に山分けするぜ?」
「どう?私達と一緒に行かない?こっちにはBランクの人も居るわ。きっと学べる事は有る筈よ」
それから次々と冒険者達に囲まれる事になるが、周りの連中はお互い牽制し合ってて段々険悪なムードになって行く。
「俺達が最初に目を付けたんだ!横から出しゃばってんじゃねえよ!」
「低ランクが粋がってんじゃねえぞ!お前ら潰されたくなけりゃあ黙ってろや!」
「私達にはBランクの冒険者が居るのよ!譲りなさいよ!」
「だったら今直ぐ呼んで来なさいよ!嘘なのはバレバレなのよ!」
お互い牽制し合いすぎてガチの睨み合いに発展する。何でサラさんやローラの時みたいにモテモテ感がこれっぽっちも無いのだろう。俺はスピア直伝のサイレントスキルを見様見真似で使い静かに離脱する。
「結局憧れも尊敬も無いからな。唯利用しようと見え見えだよな。はあ、ベックとザニーの時は利用するとか無かったからな」
あの時は生き残る事が一番大きかったからな。また気の合う奴とか見つかると良いな。
そんな事を考えながら探索に向かうのだった。
……
廃墟街を探索するが相変わらず寄生者が居る。
「数体相手なら何とかなりそうだな」
幸い周りには寄生者は居ない。なら少しでも削って行きたい所だ。一体ずつ確実に始末して行く。銃声で此方に走って寄って来るが、間合いに入る前に仕留める。
しかし、銃声によって引き寄せられる寄生者はいる。有る程度銃声で引き寄せたら逃げる事にする。そうすれば道に穴が出来る筈だ。兎に角先に進む事にする。だが、その跡を付けている連中が居たのに気付かなかったのだった。
side ???
「此方、目標の追尾継続中。現在巨大植物を避けてる模様。尚寄生者は順調に排除しています」
『了解した。そのまま追尾を続行しろ。いつも通り奴が戻って来る途中で狩るぞ』
「了解。そのまま追尾継続します」
通信石でのやり取りを終える。しかし、フードで顔を隠しており表情は伺えない。
「運が無かったわね。でも、コレが貴方の運命だったのよ」
慣れた口調で一人呟きながらシュウの後を追うのだった。
side out
廃墟街の奥に来れた。すると敵がまたグールに変わる。しかし殆どのグールはボロボロで脆く、弾丸一発でかなりのダメージを与えていた。
「しかし、この辺りはかなり渋滞してるな。逃げるつもりだったのか?」
恐らく大通りに出れたのだろう。だが、車が大量に止まっていた。車を一つ一つ見て行くと、白骨死体が大半で風化していた。
「やっぱり核弾頭でも落ちたか?だが建物は無事だから違うか。なら何故こんなにも放射能が高い?」
逃げようとしたが、高濃度の放射能で死んでしまったのだろう。だが、一体何が原因なんだ?
その時だった。見える景色が変わる。
プップー!パッパー!うわあああん!
「おい!早く動けよ!放射能が来てんだよ!」
「さあ、皆落ち着いて。大丈夫、父さんが付いてるから」
「走れ!このままだと死んじまうぞ!」
「クソッタレ!何処の国が核を発電所に撃ち込んだんだ!」
一言で言うなら大混乱だ。大量の放射能が大衆を包み込んで行く。車のクラクション、悲鳴、怒声が響き渡る。
「何で…何で、こんな事になったんだよ?」
一人の青年が俺の横で呟く。その呟きが妙に心に残った。
次の瞬間景色が戻る。そして一体のグールが車の上に立つ。俺はサイガ12を向ける。そのグールは他のボロボロのグールと違い、しっかりしていた。更に手には鉄パイプを持っている。
「グウウウ、グガアアア……」
此方を威嚇する様に吠える。暫くグールと睨み合いが続く。その時だった、後ろからガンッと物音がした。
「グガアアアア!!!」
「っ!クソ!」
物音に気が行った隙にグールは此方に迫って来る。サイガ12で応戦するが、軽快な動きで射線から隠れたりズラしたりする。
「ダメだ、照準が合わない!本当にグールかよ?」
ドバァン!ドバァン! ドバァン! カチン
弾切れになりリロードする。だが、グールはその隙に一気に接近する。そして、鉄パイプを投げつけて来た。咄嗟にサイガ12で防ぐが手放してしまう。
「グガアアアア!!!ガアアアア!!!」
「離せ!この野郎!て、うおわあああ!」
グールに思いっきり投げ飛ばされる。まさかグールに此処までの力が有るなんて!更に倒れてる俺に馬乗りになり殴り掛かってくる。その拍子に耐放射能防具の強化ガラス張りの所を殴る。
「止めろ!割れたらどうすんだよ!こんな所でお前らの仲間入りなんざ御免何だよ!畜生が!」
咄嗟にM92を抜き一気に連射する。流石に至近距離から撃たれたらグールも溜まったものではないだろう。呻き声を上げながら逃げて行く。
「はあ、はあ、かなり強くない?本当にグールかよ」
しかし、倒れてる暇は無いだろう。先程の銃声で他のグールがワラワラと寄って来る。急いで立ち上がりサイガ12を回収して走る。流石に囲まれてしまうのは危険過ぎる。俺は走りながら更に奥に向かうのだった。軍事施設を目指す為に。




