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あの後ベースキャンプに戻る事にした。先程助けた冒険者のベックと倒れていたザニーから情報を聞き出していた。まあ、助けた代わりと言うやつだ。
先ずはあの巨大植物。巨大植物は栄養や水を確保する為に人間を使っている。勿論他の魔物でも操れるだろうが、あの辺りは人間しか行かないからな。巨大植物は寄生者となった者達を自分の周辺を守らせる防衛部隊と栄養や水の確保しに行く派遣部隊に別れている。基本は近付かなければ無害だが、派遣部隊は廃墟街一帯を彷徨いている。然も力もかなり強く、動きも機敏だ。また、生前の動きも出来る様で剣士等は厄介な相手となる。
次に寄生花についてだ。コレは巨大植物が人間に種を植え付ける。体内に入れる訳では無く、身体か衣服に付着させて其処から根を生やして行く。後、直接触れるのも禁止だ。直接触れたら速攻で根に侵食されるからだ。ただ最初の段階ならまだ救えるが、根が深く侵食しているとダメ。最低でも五分以内に排除する必要がある。
他にも奥に行けば軍施設があるとか無いとか。
「それでさ、もし良かったらパーティ組まないか?流石に俺達も二人だけだと厳しいからさ」
「そうそう。シュウが居てくれると心強いし」
「まあ、別に構わないよ。これも何かの縁だしな」
(それに、以前のパーティの人達の事もあるしな)
前に一度探索した時に全滅したパーティを思い出す。もし俺が此奴らの誘いを断ると無理する可能性は高い。なら、偽善者でも構わないから一緒に行く。
「但し、無理な探索はしないからな。特に二人は防具服無いし」
「そう言えばシュウのは変な防具身につけてるよな。それ動けるのか?」
「動きは最悪だよ。だけど放射能、この辺り一帯の空気から護ってくれる」
「ほえー、つまり探索し放題か?でも、神官が無料で浄化魔法してくれるから意味なく無いか?」
「探索途中で倒れたら如何する?兎に角無理はしない。良いな?」
取り敢えず了承してくれる二人。この後は一度解散して明日集合する事になった。
……
小話
「「「あれ?」」」
晩御飯を食べ終えた後宿に戻ろうとしたら、宿の前でベックとザニーにばったり出くわした。
「もしかして同じ宿?」
「ああ、多分な。そうだ、今から宿で飲まねえか?」
酒瓶を見せるベックとザニー。特に断る理由も無かったから了承した。それから一時間ぐらい経っただろう。
「だーかーらー、やっぱり女は巨乳だよ!巨乳!」
「テッドは分かって無いな。貧乳こそ正義だぜ?」
「俺は巨乳派だな。と言うかパーティ組んでる連中が巨乳だから何時もお世話になってます」
「「チッ!勝ち組かよ!」」
この後スピアとローラの自慢をしたらテッドとザニーから罵声を大量に浴びたが、これっぽっちも痛くも何とも無かったです。
……
翌日。俺達は宿で集合してそのまま探索に向かう。
「よーし!今日こそはお宝見つけるぞ!」
「良い加減貧乏生活は御免だからな。ここら辺で一発デカイのを当てたいな!」
ベックとザニーは朝から気合十分だ。二人共Dランクらしい。
「Dランクはらボチボチな依頼受けれるだろ?何で金欠になるんだ?」
「そりゃあ、お前……」「決まってるじゃ無いか。なあ」
二人は顔を見合わせてから俺に向かって言う。
「「酒と女と博打で消える」」
真顔でそんな事言われても困る。
「後は魔道具に使う魔石だな。魔石は高いからな」
「その点シュウの古代兵器は弾代安いから羨ましいぜ。唯武器として信頼は出来ないがな」
信頼を取るか値段を取るかの違いだな。そんな風に喋ってると二十人ぐらいの冒険者が集まって居た。
「チッ、彼奴らか。シュウ早く行こうぜ。彼奴らに関わると面倒だし」
「彼奴らと知り合いなのか?」
「いや、違う。何方かと言うとこの辺りを仕切ってる連中だ。だから無闇に関わったり反抗すると痛い目に合うぜ」
「本当だよ。証拠は無いけど何人かの冒険者は彼奴らに嵌められたりしてるからな」
雰囲気は至って普通だがな。唯この二人が嘘を吐くとは思えん。なら二人を信じるか。
俺達はそのままそのグループを無視して先に進むのだった。
山頂を登り終えて探索を開始する。やはり難関と言えるのが寄生された人達とグール共だろう。それ以外の魔物等にも注意が必要だ。
「さて、もう出入り口付近は探索済みだからな。もっと奥に行けばお宝が有る筈だぜ」
「今日こそお宝見つけて夜にハッスルするぞ!へっへっへっ楽しみだぜ」
二人共自分の妄想を想像してだらし無い笑みを浮かべる。そんな二人を見てふと思う。俺もスピアとローラとハッスルする時もあんな顔になるのかと。いや、俺は大丈夫だ。普段フェイスガード付けてるし!
内心言い訳しつつ探索を開始するのだった。
廃墟街中心に来るとグールや寄生者達に何度か遭遇するも撃退する。音で敵が寄って来るが、他の所でも戦闘音が聞こえるので特に問題は無いだろう。
「しっかし何にも無いな。此処まで来たんだから何か見つけないと割に合わないぜ」
「そうだよな。だけど毒の空気も厳しくなって来たしな」
二人共少し苦しそうだが諦める様子は無い。仕方無いがもう少ししたらRADディフェンダーとRADキャンセルを売ってやろう。無料で上げても受け取らないだろうし。
それから更に歩くと骨董屋を見つけた。店内は誇りを被っていたが荒らされた様子は無い。
「おいおい!コレってお宝じゃないか!?スッゲー!古代の芸術品とか貴族とかに売れるじゃねえか!」
「俺達も遂に億万長者かよ!最高かよ!」
「喜んでる所悪いが敵さんが来たぜ?お前らは早く回収する物は回収しろよ。マジックポーチとか有るだろ?」
UMPに切り替えて、此方に迫って来るグール共に照準を付ける。
「いや、マジックポーチは持ってねえよ。あれ高いし買えないし」
「俺もだ。クソッ!何度か来るしか無いか……」
マジかよ此奴ら。まあ良いや。取り敢えず目の前の敵を殺すだけだ。UMPで寄生者を撃ち殺す。それでも此方に接近してくる。UMPだけでは対処にも限界がある。サイガ12に切り替えて骨董屋に入る。
「探索は一旦中止だ!目の前に敵が迫ってる!このままだとお宝は無意味になるぞ!?」
「うお!マジかよ。ならやるか!」
「おうよ!任せな!」
テッドはスナイパー型の魔導具を構え、ザニーは身体強化を行う。
「先ずは俺からだ!喰らえ寄生者共!」
魔導具の先端が光るのと同時に氷の矢が飛んでいく。それは寄生花を貫き寄生者を倒して行く。
「うおおお!漲って来たぜ!?」
ザニーは自分の拳に魔力を集め一気に寄生者に接近する。
「オラオラオラ!俺の拳ラッシュを受け取りな!」
寄生者を一方的に殴り倒して行く。そして的確に寄生花を潰して行く。
「この距離から近づかせるかよ」
サイガ12の弾をリロードしながら再度撃ちまくる。寄生花諸共頭部や腕等を吹き飛ばす。
シュウ達は非常に上手く敵を倒して行く。自然と前衛ザニー、中衛シュウ、後衛ベックで構成される。また戦地も丁度良かった事もある。骨董屋を後ろにしている為、背後からの攻撃は心配無い。又左右が建物に囲まれてる為真正面の敵に集中する事が出来た。
こうしてシュウ達は即席パーティとは思えない戦果を挙げたのだった。
……
「いやー、まさか此処まで上手く行くとはな。正直吃驚だぜ」
「ああ。俺達結構良い感じじゃ無いか」
「そうだな。一方的に倒せたのは中々出来る事じゃ無いしな」
敵を殲滅した後はお宝回収タイムだ。俺はPDAに次々と収納して行く。
「しかし、シュウがマジックポーチ持ってて助かったぜ」
「本当だよな。これで俺達億万長者だぜ!」
「分配は三分割で良いんだよな?それが一番平和的に解決出来るけど」
「「当たり前だ」」
二人は声を揃えて言う。この二人はまともな人達で助かったな。
「しかし、こんだけお宝ゲット出来たから……冒険者も廃業だな」
「そうだな。俺達は運が良い。なら、その運が逃げない内にサッサと足洗った方が良いしな」
「そうか、冒険者辞めるのか」
「ああ、俺も自分が弱いとは思わねえ。けど強くも無いからな」
「自分の実力は自分自身が良く分かってるからな」
俺は如何だろうか?今は冒険者を辞める気はサラサラ無い。だが、これから先如何だろうか?
「ま、冒険者は四十代が限界なんて言われてるしな。俺は二十五だから結構早いけどな」
「良いんじゃねえか?それで自営業でもやれば万々歳だろ?手元金はあるわけだしな」
ベックとザニーはこれからの将来に夢を抱いていた。これから先如何なるかは全く想像付かない。今でもファンタジーな世界に驚く事は沢山有る。だったらファンタジーな世界を見て回るのも悪く無い。それにあっち側の世界にも行ってみたい。
「ほらほら、将来についてはベースキャンプで聞くからさ。そろそろ撤収準備に入るぜ。また寄生者が群がって来たら嫌だからな」
俺達は上手い具合にお宝を手に入れてベースキャンプに戻ったので有る。ただ、この結果が後々足枷になるとは考えもしなかったが……。




