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次の日、俺達はファステストには乗らずに馬車で次の町まで移動する事にした。今から出る商隊の人達が、俺達に直接護衛依頼をお願いしたのだ。次の町までは遠くは無いので受ける事にした。しかし、昨日と違い魔物と出会う事は無い。


「今日は魔物が見えないな。もしかして、夜も行軍したのかな?」


だとしたら、かなり強行してるな。夜中でも移動し続けるなんて無理矢理で無いと無理だろう。もしくは、より強大な力に引き寄せられているのか?


「それにサラさんの様子も気になるしな」


表面上はいつも通りだが、雰囲気は少しピリついてる。強力な魔物かSクラス級かそれ以上の魔族の存在。それにサラさんの様子。


「中々難しい状況になりそうだな」


厄介事に巻き込まれたく無いが、今回は色々有りそうな予感がする。唯の気の所為で終わるのは楽観的過ぎる。俺はM240G機関銃を握り締める。自身の不安を表に出さない様に。


次の町までは順調に進み昼前には到着する。それから町で昼ご飯を食べてからファステストに乗る。


「さて、準備は良いか?」


「勿論よ!さあ、早く行きましょう!」


ローラ達はファステストが楽しみだったのだろう。何かそわそわしてるし。まあ、普通は時速200kmなんて感じる機会は無いからな。


キュルルル ブワアアアアアアン!!!


エンジンを掛ける。相変わらず良い音だ。俺はアクセルを踏み加速させる。道が舗装されてればもっと速く走れるんだけどな。そのままファステストを走らせ、聖エルガー教国に向かうのだった。


………


夕方には聖エルガー教国の首都ユーニスムに着いた。ユーニスムは城壁が二重構造になっている。中心部は聖エルガー教国の此方側の本拠地らしく綺麗な城が佇んでおり、神秘的な雰囲気を醸し出していた。そして、その外枠に住居やお店などが多数ある。城壁の外にも町が形成されており、現在三層目の城壁建築がされてる様だった。更に余裕を持たせて広く作っており、城壁内での場所の確保は困らないだろう。ただ、三層目なだけ有って多少低く作られてる様に見受けられる。

それから城壁外には航空艦などが多数停泊しており、防衛力も高そうだ。


「おぉ、話では綺麗な場所と聞いていたが中々綺麗な場所じゃ無いか。明日は観光しようぜ!」


「畏まりました」


「別に良いけど、あんまり長居はしないからね」


スピアとローラは了承するが、あまり乗り気では無い。確かに差別が公然の秘密だならな。


「すまないが、私は此処で解散させて頂くよ。シュウ君、此処までの道のりは助かったよ。ありがとう」


サラさんはそう言って去って行く。


「サラさん!俺に何か手伝える事は有りますか?」


しかし遂我慢出来ずに聞いてしまう。俺が立ち入る事が出来ないのは重々承知だ。だが、このままサラさんを見捨てたく無い。あの時の戦いは危険なやり方だ。本当に一人で戦っていたのだから。


「……ふっ、気持ちは嬉しいがな。いかんせん、君は無魔だ。確かに古代兵器を扱えるが奴を倒すどころか足止めも出来んさ」


そう言って去って行くサラさん。サラさんから無魔と言われてしまいショックを受ける。


「ご主人様……」


「シュウ、その、サラもワザと言った訳じゃ無いわ。サラは自分の手で仇を取りたいの」


仇?つまり復讐したい訳か。


「その仇相手はそんなに強いのか?」


「ええ、強いわ。その強さはダークエルフの集落を相手に勝ったんだから」


「ダークエルフの集落?じゃあ、サラさんの故郷は……」


「そうよ。唯一の生き残りなの。それから私達エルフと縁が有ったからサラは私の家に来たの」


成る程な。だからあれだけ親しい訳だったのな。


「そうか。悪いなローラ。サラさんの過去を話して貰って」


「本当はダメなんだからね。サラには黙っててよね」


それから俺達は宿を探す。しかし、この聖エルガー教国の洗礼を受ける事になる。


「何でスピアを泊めれる事が出来ないんだよ!ふざっけんな!」


三件ぐらい探したが、どいつもこいつも「獣人は当店では泊めれません」だ!差別にも程があるわ!


「やっぱりね。諦めて外周にある宿を探しましょう。そこならまだマシよ」


「スピア、すまんな。俺がこんな場所に来たいと行ったばかりに」


「お気になさらず。この国がこんな状態なのは知っておりましたので」


しかし、まさか面と向かってはっきりと言われるとは思わなかったな。彼奴ら客商売舐めてるだろ。


「ふんだ!こっちからあんな宿なんか御免だな!例えスピアを連れてなくても絶対泊まら無いよ。と言うか泊まってたまるか!そう言えばローラはスピアに比べてまだマシだったな」


「代わりに多目にチップを渡さないと嫌がらせされるけどね」


えー、嫌がらせとか子供じゃ無いんだからさ。


「安宿でも良いから皆んなで普通に泊まれる場所探すか」


「そうね。ただ、私達に関しては諦めなさい。じゃ無いと野宿かギルドの仮眠施設にお世話になる筈よ」


「ギルドの仮眠施設?そんなのも有るのか?」


「仮眠施設と言う名目で有るのよ。勿論無料だし、私達みたいな亜人や獣人は利用するわ」


「なら其処にするか。まだスペースが空いてれば良いんだけどな」


そう行ってギルドに向かう。ギルドもかなり綺麗になっているが、他の建物と違い何処にでも有るギルドが建っていた。こんな場所でも通常営業しているギルドを見て少し感動した。俺達はそのままギルドに入り仮眠施設の利用をしたいと伝える。


「はい大丈夫ですよ。場所も空いておりますので何処でも大丈夫です。荷物も此方で預けれますがどうしますか?」


「じゃあお願いします」


俺達は荷物を受付に預けて寝る場所を確保する。中はかなり広くて寝るスペースは簡単に確保出来た。ただし、仮眠施設なだけ有って壁などは無く本当に寝るだけの場所だった。


「まるで此処は治外法権だな。そのお陰で全員で寝れる訳だから良いけど」


「ご主人様は宜しいのですか?宿にも普通に泊まれますが」


「いいのいいの。あんな宿に泊まるぐらいなら野宿の方がマシだわ。それにしても暫く滞在する事になっちまったな」


俺は聖エルガー教国に来た目的を思い返す。未探索の軍施設の探索とパワードスーツのバッテリー充電装置の確保だ。だが、探索すると言うことは時間が掛かる訳だ。


「私達は着いて行く事は出来ないのでしょうか?」


「無理だな。放射能の中に突っ込む訳だからな。危険過ぎる」


一応パワードスーツも耐放射能は高い。だが、三時間ぐらいしか起動出来ないんだよな。


「そんな危険な場所行くの?やっぱりやめた方が良いんじゃない?」


「いや、行くよ。俺自身を守る為でも有るし、皆んなを守る為でも有るからな」


俺の意思が固いのを分かったのか二人共目を伏せる。


「早く戻って来るからさ。その後に観光でもしようぜ?」


成るべく明るく言うが二人共伏せたままだ。


「早く戻って来るのは勿論よ。だけど……無事に帰って来て」


「一週間は待ちます。ですが、それ以上ですと私達も追いかけます」


「いや、追いかけちゃ駄目だよ」


俺は放射能の危険性を簡単に伝える。それに、その場に囚われてるで有ろう霊の存在も伝えておく。


「でしたら聖水などを持って行っては如何でしょうか?」


「やめておくよ。一体二体なら何とか成るかも知れんが、その穴埋め役に抜擢されたく無いしな」


下手に刺激したら俺は間違いなく呑まれるだろうな。取り敢えず二週間を目安にする。軍施設は二箇所有るし、場所も程々に近いから行けるだろう。

こうして夕御飯を食べに行きながら今後の話や道中の魔物群について話したのだった。そして、適当な店に入ったら聖エルガー教国なりの歓迎を受けた。俺の料理の値段は普通だが、スピアとローラの料理の値段までぼったくり掛けて来たのだ。因みにクロは俺と同じだった。だが、俺は遂にキレてしまい店に対してM240G機関銃を向けてこう言ってやった。


「大して美味くない部分使うんだろ!知ってんだよ!それでスピアとローラの値段までぼったくるならこの店穴だらけにしてやるわ!」


流石に店側も人間の俺が歯向かうから対処に困り、値段は通常に戻されたのだった。但し、料理はあんまり美味くなかった。きっと店内の雰囲気が最悪だったからな。ま、別に反省も後悔もして無いけどな。

尤も色んな意味で聖エルガー教国を知る事が出来て良かったがな。本当に観光するだけなら良いんだろうけどな。観光だけならな!


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