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あの後、ローラも来たのだが何故助けに来なかったのかとプリプリ怒りながら聞いて来た。
「ローラなら自力で解決出来ると信じていた」キリッ
とキメ顔で言ったら顔を赤くして納得してくれた。何この子チョロインですか?その後は皆んなでスピアの手作り弁当を食べつつ談笑する。因みにローラも料理は出来るらしい。ただ味見をしたスピアに感想を聞くと、
「独創的な料理でした」
と笑顔で感想を述べた。だが俺はスピアのウサ耳がクルンと丸まってしまっていたのを見てしまった為、それ以上追求出来ませんでした。一体ローラはどんな料理を作ったんだ?怖いもの見たさで気になるけど、後処理がヤバそうだな。
食事が終わり再出発をする馬車。しかし、魔物との遭遇は何度かあった。流石に冒険者達も連戦となると厳しいものが有る。
「また魔物か?何か随分と魔物が活発化してるな」
俺はAKMを構えながら馬車の外に居る。敵はウェアウルフの集団。流石にのんびりした旅を満喫してる暇が無くなった訳だからな。
「私がアレ吹き飛ばそうか?」
ローラがウェアウルフの集団を指差しながら言う。
「いや、魔力は温存した方が良い。それにウェアウルフ位なら大丈夫さ」
ウェアウルフに対して冒険者達が魔法や弓矢を放つ。だが、魔法の数が大分少なくなって来てる。魔法と矢の攻撃を潜り抜けて来たウェアウルフは冒険者達に詰め寄る。
「ま、近寄らせ無いんだけどな」
AKMの引鉄を引く。7.62㎜弾の重音が辺りに響く。そしてウェアウルフは銃声と共にバタバタと倒れて行く。弾が無くなれば直ぐにリロードする。その間にもスピアとクロはUMPを撃ちまくる。
圧倒的な攻撃力と弾幕によりウェアウルフは一定の距離から近寄る事無く死んでいったのだった。
……
「しかし、魔物の種類がバラバラで攻めて来るな」
今回はウェアウルフだけだった。だが、その前の戦闘ではゴブリンだけだった。次はオークとか来そうだな。
「しかし、此れだけの魔物の襲撃は異常です。それに、魔物は全て一定方向から来てます。憶測ですが、聖エルガー教国に向かってる気もします」
俺達は聖エルガー教国に向かってる。偶々魔物が一定方向から来たと済ませれば良いんだけど、生憎其処まで楽観視出来ないね。
「取り敢えず銃で対処出来る魔物は、なるべく銃で殺そう。それ以上にヤバイのが来たらローラとサラさん頼みます」
「勿論よ!任せなさい!」
「ああ、心得た」
このまま何事も無く次の町に着ければ良いんだけどな。最悪途中の町で降りた方が良いだろう。
「今は周辺警戒するしか無いな。魔物が見つかり次第戦闘が有ると考えた方が良いだろうし」
「そうだな。今回の魔物共は妙に好戦的だしな。全く、嵐の前触れで無ければ良いのだがな」
サラさん、そう言うのは口にしちゃダメよ。本当になっちゃうから。
それから馬車は目的地に向かって発車する。そして次の町が見えた時、魔物が町を襲撃していた。
「マジかよ。町は……まだ生きてるな」
他の冒険者達も口々に町の光景を口にする。俺は双眼鏡を取り出し、町を覗きながら状況を確認する。一応町には壁が有るから魔物の侵入は防げているが、突破されるのは時間の問題だろう。だが、妙な事に一部の魔物だけが町を襲撃して残りは町を無視して先に行ってしまっていた。
「もしかしたら他の町や村も同じ様な目に?」
「分からん。だが、可能性は高いだろうな。兎に角町の人達を助けないと話にならん」
俺は銃をM240G機関銃に切り替える。サイガ12はそのままだ。全員馬車で町の近くまで接近する。そして、有る程度の距離で馬車から降りて魔物に接近する。魔物の種類は多種多様だ。だが、全て低ランクに位置する魔物だ。だが、数が多い為油断は出来ないだろう。
「先ずは私から殺らせて貰うよ。『敵を滅せよ ヴァスティン!』」
サラさんの手に炎の塊が収縮され、一気に魔物に向かって行く。
ドオオオオオオンンンン!!!!!
魔物の集団の真ん中辺りで大爆発を起こす。しかもキノコ雲が出来てますし。オーバーキル過ぎません?
「さて、此れで大半の魔物は此方に来るだろう。さぁて、魔物狩りだ」
サラさんの表情が狂気的な笑みになる。何時ものクール美人なダークエルフは其処には居ない。其処に居るのは魔物を蹂躙する存在だった。そのままサラさんは魔物に突っ込んで行き魔物を斬り殺して行く。
「おお、流石サラ様だ。なんと美しい戦い方だ」
「俺達も続け!サラ様に遅れを取るな!」
「我が力の解放を……今此処に!」
冒険者達もサラさんに続いて魔物に突撃する。
「サラさん、何が有ったんだ?」
サラさんの豹変は気になるが、今は目の前の敵に集中するべきだ。俺はM240G軽機関銃で魔物共を撃ち始めた。
……
戦いは一方的な物になっていた。魔物には飛行型が居ない上、殆どは接近戦をする奴等ばかりだ。然も前後で挟まれてる形になってしまっている為、身動きが出来ない状況にもなっていた。
町の兵士達も壁の上から矢を放ったり、更に戦車を展開し始めて居た。
「おお!多砲塔戦車だ!そう言えばラリア連邦も多砲塔戦車だったな」
多砲塔戦車はロマンが有るからな。運用したい気持ちはよく分かるぜ。防衛隊の多砲塔戦車は魔物が此方に寄って来た隙に展開。そのまま各砲塔から撃ち始める。主砲は砲弾を撃ち込んでる様だが、副砲は魔法の塊を撃ち出してる。しかし、多砲塔で一斉に撃ち始める姿は中々圧巻だな。
「魔物相手ならかなり心強いみたいだな」
少しだけ戦車を眺めた後、直ぐに目の前の敵に射撃をする。スピアも姿は見えないが、敵に突撃してるのだろう。ローラも精霊魔法を放ち、クロもUMP2丁で攻撃してる。他の冒険者達も接近戦で魔物を倒して行く。そんな中、サラさんは魔物を次々と斬り殺して行く。その強さは圧巻だ。至近距離で魔法を放ち、そのまま連続して魔物を斬り倒す。ただ、一つだけ気になる事がある。相変わらず狂気的な笑みは出ている。だが、
「何か辛そうな目してるな」
それとも泣きそうな目だろうか。サラさんに何が有ったのかは知らない。無理に聞いても意味は無いだろう。
「結局、待つしか無いのだろうか……」
サラさんに対して、どうする事も出来ない無力感が俺を包み込むのだった。
……
魔物は全て掃討した。今回一番活躍したのはサラさんだ。魔物に対して無双を誇って居たからな。寧ろ、周りに居た冒険者達は邪魔になって居ただろう。それでも、誰よりも活躍していたのだから凄い。
俺達も町の人達からも凄い歓迎をされた。他の冒険者達も満更では無い様で、皆ニヤニヤしていた。
「なあ、ローラ。サラさんは魔物に何か恨みでも有るのか?」
「確かに有るわ。正確に言うなら魔物では無いわね。ただ、今回の魔物の行動にはサラが動く理由が有るわ。私が言えるのは此処までよ」
駄目元でローラに聞いたら少し教えてくれた。魔物の行動ね。確かに不自然な感じはあった。まず一つ目。組織的な物を感じた事だ。この町を襲う時、二手に分かれていた。一つは先に進み、一つは町に止まり攻撃していた。然も、先に進んでいた方の魔物が多かった。
二つ目は魔物の種類だ。ゴブリン、オーク、リザードマン等の多種多様な魔物が居たのだ。こんな事は普通無い。
「考えても分からんな。スピアに聞くか」
「お呼びでしょうか?」
「うわ!びっくりした!」
いつの間にか側に居たスピアに吃驚する。
「ゴホン。あのさ、あの魔物の大群について分かるか?」
「はい。それはボス、首謀者が居ます」
「ボスと首謀者?」
「ボスはリーダーとなる魔物が部下を養う為に他の魔物を襲うか人里を襲います。そして、首謀者はSランク級の魔族が魔物を率いて人間を襲います。そして、その魔族を率いているのが魔王だと言われてます」
成る程な。まだボスの方がマシな感じがするな。首謀者ならSランク級の魔族が相手になるのか。然も冒険者のAランクですら圧倒的火力が有るのに、それ以上の可能性も有るのか。
「ですがご安心下さい。ご主人様は私が守って見せますので」
「ありがとうスピア。でも無理はするなよ」
気持ちは有難いけど、死んでしまったら意味が無いからな。しかし、サラさんは魔物か魔族に恨みでも有るのだろう。
町は歓迎ムードで盛り上がっている。ローラにサラさん達は民衆の歓声を笑顔で応えている。賑やかなムードの中、俺はサラさんを見ながらどうすれば良いのか考える。見て見ぬ振りをするべきか、それとも何かしら協力したいのか。今はまだ答えは出てい無いのだった。
……
俺達は宿に泊まり休憩を取る。明日はファステストを使って、聖エルガー教国に向かう。道中魔物と接敵する可能性は高い。
「クロ、お前にAKMを2挺やろう。多分大きくなれば使える筈だ」
「プッキャ!」ポヨン
俺はクロにAKMを渡して使い方を教える。クロならAKMをしっかり扱えるだろう。後はスピアの武器もどうするかだな。
「スピアー来てくれー」
駄目元で呼んでみる。
「お呼びでしょうか?」
「ふあ!?マジで吃驚した!!」
ドア閉まって……あれ、開いてる。いつの間に?
「ま、まあいいや。実はスピアの武器をどうするか考えててね。AKMとか使ってみるか?」
俺はAKMをスピアに見せる。だが、スピアは首を横に振るう。
「私は接近戦が主体となります。その銃だと銃自体が敵に当たってしまう可能性が有りますので」
「成る程。サイガ12とかも厳しいかな?もしくはもう一丁UMP使う?」
「そうですね。でしたらUMPを頂けますか?」
「勿論良いよ。それでサイガ12はどう?」
俺はスピアにUMPを渡しながら聞く。
「いえ、結構です。その、此方のショットガンの方が……好きなので」
スピアはモスバーグM500を持ちながら目を伏せ気味で言う。ウサミミはピコピコ動いてる。
「別に良いんだよ!それにポンプ式の方が信頼性は高いしね!」
俺は少し感動していた。まさかスピアにも好きな銃が有ったとは!実用性を求めそうだったけど、コレは嬉しい反応だ。
この後ローラにもAKMとサイガ12を見せたが、
「私にはSR-25が有るから平気よ。それにコッチの銃の方が私には合ってるものね」
と言いつつSR-25を撫でながら言った。如何やらAKMとサイガ12はローラの中では気に入らなかったらしい。こうして俺達の中で多少装備が変わったのだった。
スピア
UMPサブマシンガン×2
モスバーグM500ショットガン
M92ハンドガン
サバイバルナイフ
クロ
AKM×2
UMPサブマシンガン×2
M92ハンドガン
ニューナンブM60ハンドガン
サバイバルナイフx2




