51 ラリア連邦内乱7
side 無名の兵士達
「重機関銃設置完了しました!」
「此方も射撃準備よし!」
「よーし。敵さんはもう直ぐ此処に来るだろう。例え来なくとも他の弾薬庫にも仲間が防衛に向かってるからな。然も此方には古代兵器のブローニングM2にMG3が有るんだからな!来るなら来い!歓迎してやるぜ」
ブローニングM2重機関銃
12.7×99㎜NATO弾使用
ベルト給弾方式
ラインメタルMG3
7.62×51㎜NATO弾使用
ベルト給弾方式
彼等が持つ最大火力が堂々とした姿でシュウ達を待ち受けていた。暫く待っていると爆音や銃声が響いていたが、現在は静かな状況になっていた。
「敵、来ませんね」
「ああ、あの近衛の奴がやっちまったんじゃ無いか?」
兵士達はそう呟きながらも銃や魔道具を握るのを止めなかった。そして、通路の奥から人影が現れる。
「アレは……近衛じゃ無いか?ほら、パワードスーツだし」
「本当だ。何だよ、倒したなら早く連絡して欲しいもんだぜ」
しかし、近付くにつれて様子が変だと気付き始める。そして再度武器を握り始める。
「なあ、あのパワードスーツ……色が赤く無いんだけど」
「まさか、敵にもパワードスーツを持ってるのか?そんな馬鹿な!」
そのまさかだった。色気も何も無い無骨なパワードスーツがゆっくりと彼等に迫っていた。然も、手には厳ついM63バルカン砲を持ちながら。
「た、隊長、如何しますか?我々の武器では太刀打ちは無理では無いかと……」
「馬鹿野郎!コッチにはブローニングM2とMG3が有るんだ!撃て!撃ちまくれ!?」
隊長の号令と共にブローニングM2重機関銃、MG3、AKM、AK-47が火を吹き魔導具と魔法が様々な属性を纏いながらパワードスーツに迫る。
ガン!ガン!ガキン!ガキン!ガン!ガン!
だが、その全ての攻撃を物ともせず迫って来るパワードスーツ。
「こ、こんなの無理だ!」
「あんなのに勝てるかよ!」
「兎に角撃ちまくれ!!!」
攻撃が全く効いて無いのを見た兵士達は悲鳴を上げる。そしてM63バルカン砲の砲身が回転し始める。
「っ!?こ、後退!急いで走れ!」
その瞬間、兵士達は我先にと逃げ出しす。そして……
ブヴヴヴヴヴヴヴヴン!!!!!!
一瞬にして兵士達が居た場所が穴だらけになったのだった。
side out
side シュウ・コートニー
《敵性勢力撤退を確認》
「コレは凄いな。パワードスーツが此処までの物だったなんて」
銃や魔法を撃たれた時は流石にビビったが、ウォールは全ての攻撃を防いだのだ。確かにパワードスーツは兵器革命を齎した代物なだけは有るな。
「お?ブローニングM2が有るじゃん。まさか俺、此奴にも撃たれたの?それでも耐えれるウォールは凄いな」
近くには壊れた軽機関銃と放棄されたAKM、AK-47に魔道具が転がっていた。取り敢えず使えそうな武器は拾っておく事にした。
「この先に弾薬庫が有る筈だ。しかし、ただ爆破させるのは勿体無いよな」
俺は後ろに居るスピア達に合図を送る。そして、そのまま前進して弾薬庫の扉を蹴破る。中には大量の弾薬が有った。砲弾から銃弾まで大量に置いてあった。
《12.7㎜弾の補給を推奨します》
「エリスもそう思う?俺も12.7㎜の弾は欲しいなと思ったよ」
こうして弾薬庫に有る12.7×99㎜NATO弾を大量に手に入れたのだった。そして、M63バルカン砲の発射速度を毎分2000発に上げる。ドラムマガジンも交換する。
「それではサラさん、お願いします!」
「まあ、構わないが。その言い方は何か変だぞ?」
サラさんは俺に突っ込みを入れながら弾薬庫に火炎魔法を打ち込んだのだった。
ドオオオオオオオオオオオン!!!!!!
弾薬庫は物の見事に大爆発を起こした。たちまちサイレンが鳴り響く。
「さあ、艦橋に向かおうか。ただ、私はこれ以上魔法を使うと転移魔法の移動距離が短くなる」
「分かりました。なら、サラさんは自己防衛に専念して下さい。クロ、サラさんを護ってくれ」
「プキャ!」
「宜しくな、クロ」
「プッキャ!プッキャ!」
ついでにサラさんにAKMを渡す。
「サラさんは銃を扱えますか?」
「勿論扱えるよ。だが、この武器は……」
完璧に修理されてるAKMを見て眉を潜める。
「話は後です。使えるなら弾薬も渡しておきます。さあ、皆艦橋に行くぞ!」
俺は盾になる為に前進する。目標は航空戦艦の艦橋。そこを抑えれば指揮系統は無くなる筈だ。それでも無理なら最悪浮遊石を壊すしか無さそうだけどな。
……
side 無名の戦艦 艦長
艦橋内は騒がしくなっていた。
「弾薬庫の消化急げ!」
「現在消化中。しかし、誘爆が止まりません」
「敵はまだ見つからないのか!」
「敵はパワードスーツを所持していると情報が」
「近衛はどうした?殺られたのか」
艦長と副長は慌ただしくなっている艦橋を静かに見つめる。
「敵にも豪胆な奴が居たものだな」
「はい。あの駆逐艦と侵入者には驚きしか有りません」
「だが、我々の勝ちは決まってる。残り数分でアトリー公爵の所属艦が来る。その時に小芝居をして撤退だ」
残り時間は僅か。もう直ぐで、この争いの決着がつく。しかし、徐々に銃声が近付いて来る。
「艦長!敵です!パワードスーツを身に付けた敵が此方に接近してます!直ちにお逃げ下さい!」
「……ふん。どうやら敵は此方を狙う様だな。だが、艦長である私が逃げる訳には行かん。副長、後方の第二艦橋に指揮を取る様に通達しろ」
「了解。君、後方の第二艦橋に繋げてくれ」
しかし、彼等に不運が続く。
「艦長、第二艦橋と連絡が取れません。恐らく弾薬庫の爆発が原因かと」
「なら走って行くんだ!急げ!」
「了解!」
通信士がドアから出て行く。だが、暫くすると背中を向けながら此方に戻って来た。それと同時に鈍重な足音が聞こえる。
「チッ、あと少しだと言うのに」
そして、彼等が見たのはA-3dパワードスーツ ウォールがM63バルカン砲を持ちながら姿を現したのだった。背後にはエルフとダークエルフに黒いスライムが居たのだった。
side out
side シュウ・コートニー
「貴方が艦長ですね」
いつの間にか敵の艦長の首にナイフを突き立てるスピア。行動力が速い。
「その通りだ。それで、我が戦艦に何の様かな?」
「機関停止、及び武装解除をお願いします」
「在り来たりだな。だが、それよりもだ。その古代兵器のパワードスーツを何処で手に入れた?見た限り近衛の持つ物より状態が良い様に見える」
艦長はパワードスーツの出処を聞いて来る。だが、時間を稼ごうとしてるのは見え見えだ。
「やれやれ、会話をする事も許されんとはな」
その時、クロが敵兵士の1人にタックルをかます。どうやら何処かに連絡を入れるつもりだったらしい。だが、この時戦艦のレーダーがキャッチしてたのは3つの魔力反応だった。そう、小芝居をする為の巡洋艦が迫って来ていたのだ。だが、それに気付いたのはただ1人だけ。先程クロのタックルを受けた兵士だけだった。
「貴方達の負けです。大人しく投降して下さい」
「残念だが、それは出来ない。我々は死ぬ覚悟を持って此処に来たのだ。例え私が死んだとしても意味は無い。さあ、私を殺すなら殺したまえ」
「っ!こっちも本気だぞ?最後の警告だ。直ちに機関停止して武装解除するんだ!」
俺はM63バルカン砲を突き付けながら最後の警告を出す。
「答えは拒否だ。諦めたまえ」
この人……いや、この人達は本気なんだ。生半可な気持ちでこの場に居るんじゃ無いんだ。俺は周りの敵兵を見る。誰も彼も無言で此方を睨んで居る。そして……
「祖国に栄光あれええええ!!!」
1人の兵士が此方に拳銃を向ける。それと同時に敵兵が動き出す。だが、彼等の近くにはクロとスピアが居た。クロはUMP、M92、ニューナンブM60を即座に撃つ。スピアはサバイバルナイフで次々と斬り捨てて行く。銃声、悲鳴、叫び声が木霊する艦橋内。俺もM63バルカン砲で撃つ訳にはいかず敵を殴る。だが、これはほんの一瞬の出来事だった。
艦橋内は静かになった時には、敵兵は全て死んでしまったのだ。そして大きな問題に直面してしまう。
「流石に戦艦の操作なんて分からんぞ」
そう、この航空戦艦を如何するかだ。砲撃は止まっているが普通に動いてるからな。
「ねえ、如何するの?このままだと不味いんじゃない?」
「そうだな。浮遊石って破壊出来るかな?」
「破壊は難しいだろう。航空艦の要の場所になっているから、かなり頑丈に作られてる筈だ」
「駆逐艦の時みたいに魔力を使うのも無理そうですね」
「ああ、同じ様に頑丈に作られてる筈だ。最悪弾薬庫を何箇所か誘爆させる必要があるかも知れんな」
此方の被害はまだ無い。だが、かなり疲弊してしまっているのも事実だ。それにウォールのバッテリー残量にも限りがある。俺達が悩んでいると戦艦に衝撃が走る。
「何だ!?攻撃されてるのか!」
外を見ると3隻の航空艦が砲撃しながら此方に来る。大きさからして巡洋艦クラスだろう。しかし、戦艦も主砲を動かし始める。
「不味いわ。このままだと私達も巻き添いよ!」
「くそ……此処まで来て何も出来ないなんて」
「ご主人様。今は撤退した方が良いかと。少なくとも、この戦艦の指揮系統は無力化しました。後は正規軍の仕事です」
「私もスピアに同意見だ。私達が出来る事は此処までだ。さあ、逃げよう」
スピアとサラさんの言う通りだな。
「仕方無いか。脱出艇で逃げよう」
俺達は脱出する為に行動する。途中敵兵士と交戦する事になる。だが、巡洋艦からの砲撃が次々と着弾している。そして、お返しだと言わんばかり戦艦の主砲が巡洋艦を吹き飛ばす。何方も砲撃戦を繰り広げる。更に巡洋艦からミサイルらしき物が大量に此方に接近して来る。
「不味いわ!魔導誘導弾よ!」
戦艦から迎撃の為の銃を撃ち始める。だが、散発的に撃ってる為効果は薄い。そして着弾……爆音と振動が戦艦を襲う。しかし、戦艦も主砲と副砲で残りの巡洋艦を叩き落とす。だが、戦艦の被害は大きく左に傾斜して行く。
「おい!ダメコン急げ!」
「何で巡洋艦の接近に気付いてないんだよ!」
「ぐああああ!火が!だ、誰か……ダズゲデぐれ……」
「衛生兵!衛生兵!居ないのか!」
「戦艦が落ちるぞ。脱出しないと」
「脱出艇は無いんだ。何とかして艦の復元するんだ」
「艦橋に連絡が繋がらないぞ。誰が指揮を執ってるんだ!?」
今脱出艇が無いって言わなかったか!?色々不味いんじゃ無いか?
「仕方無い。兎に角、地面に近付いたら私が転移魔法を使う。そしてその後は全力で走るんだ!」
「ねえ!それって間に合うの!?寧ろサラは如何するのよ!」
「私の事は良いから。兎に角準備はするんだ!」
漆黒の航空戦艦が黒煙を上げながら、徐々に左に傾斜しながら高度を落とす。兵士達は何かに捕まるが、間に合わない者達は地面に落ちて行く。更に最後の1隻になった巡洋艦も駄目押しの魔導誘導弾を撃ちながら爆散する。
「誘導弾来るぞ!迎撃!?」
「ダメだ間に合わない!」
「クソッタレ!!!こんな所で死ぬのかああああ!!!」
ドカアアアアアアアン!!!
着弾。航空戦艦の推進力と姿勢制御用のプロペラを吹き飛ばす。
「そろそろ転移するぞ!私に掴まれ!」
俺達はサラさんを囲む。そして一瞬光に包まれると同時に地面に降り立つ。だが、上を見上げると航空戦艦が落ちて来る。
「は、早く……行くんだ」
「ダメよ!サラを見捨てるなんて!」
(何か!何か無いのか!何でも良いから!)
PDAを弄ると……有った。スポーツカーのファステストが。急いで修理する。材料を色々使うが構わない!塗装とか色々出て来たが無視する。そしてウォールをPDAに収納してからファステストを出す。
「皆んな!こいつに乗るんだ!急げ!」
ファステストを出しながら乗り込みエンジンを掛ける。
キュルルル ブワアアアアアアン!!!
エンジンは唸り声を上げる。全員が疑問を表情に出すが、今はそれに構っている余裕は無い。
「説明は後だ!兎に角乗るんだ!!!」
そして全員が乗り込んだのと同時にアクセルを踏む。一気に加速するファステスト。上からは戦艦の破片やら銃座やらが大量に落ちて来る。だが航空戦艦の浮遊石が生きてるからだろう、落下速度はまだマシだ。
「一気に抜けるぞ!!!舌を噛むなよ!!!」
破片を避けたり、前方の障害物を回避して行く。そして航空戦艦は轟音と共に墜落したのだった。
……
「た、助かった。死ぬかと思った」
「ねえ、これも古代兵器なの?」
ローラが聞いてくる。
「いや、兵器じゃ無いよ。強いて言うなら速く走るための乗り物さ」
「へえ〜、なんか色々ゴチャゴチャしてるわね」
ローラとスピアは物珍しそうにメーターや車内を見る。サラさんは魔力枯渇により気絶してる。そしてクロは枕代わりになってる。
「まあ、後で塗装とか色々やらないとなぁ。じゃないとカッコつかないし」
塗装がボロボロなのが残念である。だが魔導車が有るんだから、そこで塗装とかやって貰おう。
「取り敢えず戻るか」
俺はファステストを走らせて王都に戻る事にしたのだった。
side out
side ボニフェース・アトリー公爵
最初報告を聞いた時は頭が真っ白になった。私が所有する航空巡洋艦3隻が全て破壊された。然も航空戦艦も墜落したらしい。このままあの航空戦艦を調査されてしまうのは不味い。だが、それを止める術を私は持っていない。
「公爵様、王都防衛艦隊も間も無く到着します」
「ここまで来て我が悲願を叶えられんとはな」
遅かれ早かれ墜落した航空戦艦は回収されるだろう。そうなれば私がアーカード帝国と繋がりが有る事がバレる可能性は高い。それに、王族を処刑したとしても私自身もいずれ処刑されるだろう。
「王族を別の場所に待機させておけ。私は少し席を外す」
「了解です」
私はそのまま王城の一室に向かう。そして、1人になると奴が現れた。
「これは主人様。これから如何なさいますかな?」
「ふん。如何も何も無いな。私は賭けに負けたのだ。なら、最後に貴様等との繋がりを出来るだけ処分するだけだ」
最悪私1人の犠牲でボニフェース家の被害は多少は抑えられる筈だ。
「それよりもだ。貴様等アーカード帝国の連中は口を割らないだろうな」
「勿論でございます。元々主人様との繋がりを知っている人物は限られております」
それを聞けて安心した。私はマジックポーチからワインとグラスを取り出す。
「なら良い。それに、私が死ねば今回の真相は誰も知らないだろうからな。全く、ラリア連邦の情報部は全然ダメだ」
ワインと安楽死剤をグラスに入れる。
「貴様も飲むか?尤もグラスは無いがな」
「別に構いません。頂きましょう」
お互い思う事はあるだろう。私は死ぬ事になり、此奴もこの後の脱出。更に本国に戻れば後処理と責任が待っているだろうからな。
「まぁ、精々過労死しない事だな」
「冗談に聞こえないのは何故でしょうかね?」
「私は本気で言っているからだ」
此奴は胡散臭い所が多々ある。だが、それ故に私は結構気に入っていたがな。出来れば同国人で有って欲しいかったがな。
お互いワインを飲む。そこそこ値が張る安楽死剤なだけはあるな。無味無臭であるからワインの風味を邪魔しないのが良い。
「中々美味いワインですね」
「40年物だ。その年は実に良いワインが出来ていたからな」
徐々に身体の力が抜けて行く。余り死ぬという気はしない。いや、実感が湧かないだけだろう。
「ボニフェース家の夢……次世代に任せるしか無いとは。実に情け無い物だ。だが、案外その夢は……破滅を……導く物だったかも………知れんな」
視界がボヤける中、今までの人生を振り返る。この国の全てを手に入れる。その為に生きて来た。後悔はしていない。だが、もう少し視野を広げても良かったかも知れん。
「ふっ……ボニフェース家の……夢は……案外、叶える物では……無いかもな」
瞼を閉じる。さて、漸くゆっくり休める様だ。全く、こんな時でなければ休めんとはな。
私は自身の身体の力を抜いたのだった。
side out
side サッチ
「やれやれ、最後までプライド高い死に方をするとはね。中々出来る事では有りませんよ」
一応アトリー公爵の死亡の確認は取れました。ですが、この後は中々大変そうですね。
「過労死は嫌ですね〜。全く、死ぬ間際に現実を思いっきり突き付けられるとは思いませんでしたよ」
普通なら罵声やら何やら来ると思っていたんですがね。寧ろ此方の方がダメージがデカイですね。
「さて、後は航空戦艦の様子でも見に行きますか。生存者はなるべく始末しなくてはいけませんからね」
そう、絶対にアーカード帝国が関与した事がバレる訳には行かない。内密に処理しなくてはね。
「やれやれ、早速心労になりそうですよ」
この後の事を考えたく有りませんね。本当に過労死しそうですから。
「しかし、叶える物では無い……ですか。まあ、国を手に入れる前に自分の領地で好き勝手やってた方が楽と言えば楽ですからね」
あくまで目標止まりにすべきだったかも知れませんね。そうすれば長生き出来たかも知れませんし。私は影に溶け込みながら部屋を後にしたのだった。
side out




