2
森の中を暫く歩き続けて気付いた。PDAなんだからマップ機能とか無いのかと。勿論調べた。そしてそれっぽいのはあった。地図と言うより自分が歩いた場所は表示されるパターンだったが。
「えぇ、でもGPS起動中てありますやん」
なら地図の一つや二つ出でもええんちゃう?ただ、これで迷子にならなくて済みそうなのは助かったかな。暫く森の中を歩くと水が流れる音が聞こえた。音が聞こえる方へ走って行くと小川が見えた。
「これは幸先運が良いぞ!川沿いに行けば人に出会えるかも!」
俺は意気揚々と先を歩く。相変わらず腹は減ってるがな!
道中ゴブリンやウェアウルフにも出くわした。このウェアウルフは灰色で獰猛な生き物だった。中々すばしっこかったが、シールドで防御しつつタックルして鼻先をヘコませてやりながらニューナンブM60で仕留めていった。途中ヒヤヒヤする戦闘もあったがニューナンブM60とシールドのお陰で何とかなった。
更に歩き続けると、釣り堀らしき物が見えた。間違い無い、人が居る痕跡が有る。
「助かった!コレで空腹とはおさらばだ!」
然も人が通っただろう道もある。俺はその道に従って走った。そして、廃村を見つけた。
「ええ…コレは無いわー」
廃村と言うより、襲撃された村と言った方が良いだろうな。所々焦げた跡があったからだ。仕方なくその村を探索する事にした。どの家は荒らされていたり破壊されたりしていたが、全ての家が燃えた訳では無かった。ただ、襲撃されて間もないのだろう。血の跡は普通に残っていた。序でに保存食と銅貨と銀貨も手に入れれた。
「銅貨に銀貨。どう見てもファンタジーにしか無さそうな貨幣だな」
確かに出てきた化け物もファンタジーに出てくる様な連中だった。だが自身の装備を見て思う。
「じゃあ何で銃が有るんだよ?」
普通は剣とか魔法が装備される物だろう?正直よく分からない状況だ。それでも村を探索したがお金と食料しか手に入らなかった。だが、普通強盗とかならお金は回収されたりするんじゃ無いか?
「もしかして、あの化け物共に襲撃されたのか?」
それなら村の死体が無い事にも説明が付く。
「まあ、食料が手に入っただけでも良しとするか」
俺は村長宅であろう家にお邪魔して一晩過ごした。でも寝る途中で気づいたが、ここの村人は此処で全滅したとしたら幽霊とか出てこないよな?
「ゆ、幽霊とか非科学的なのは存在しな「パキッ」ひっ!ごめんなさい!出来心なだけです!」
ラップ音に対し取り敢えず謝りながら布団を頭まで被り直ぐ寝たのだった。
……
朝日が眩しいぜ!
「うーん!よく寝た。ふん!幽霊なんぞいる訳「パキッ」…まあ、全てを否定するのはダメだな。うんうん」
取り敢えず保存食を食べつつ出掛ける支度をする。
「さて、こんな物かな」
特に準備する物は無かった為先を急ぐ事にする。良い加減人に会いたいんだよな。何で廃村何だよ。縁起が悪いにも程がある。
暫く歩くと大きな道に出た。左右に別れているが右を選ぶ事にした。右を選んだ理由?コイントスをして裏が出たからさ。道を歩き続けて2時間位経っただろう。目の前に村が見えた。
「今度こそ人に出会えるな。長かったがこれで一安心だよ」
誰かに会えると確信しながら村に向かったのだった。
……
村に入り多数の馬車が停まっていたので御者に聞いた。
「この馬車は乗れるのか?」
「ん?いや、そういう馬車じゃ無いよ。何だ?乗りたいのか?」
俺は頷く。
「ふーむ、銀貨3枚で次の町までなら乗せてやらん事も無いが?如何する?」
幸い銀貨はある。なら決まりだ。
「なら先に払います。自分はシュウと言います。宜しくお願いします」
「おう!俺は商人のバンクだ宜しくな」
バンクさんはまだ1時間後村を出るからそれまで好きすると良いと言われたので適当に散策する。
「ようやく人に会えて良かった。この先不安しか無いがやるしか無いよな」
村を散策してると直ぐに時間が来た為急いで馬車に戻った。
「すみません。お待たせしました」
「大丈夫だよ。さあ、出発!」
バンクさんは馬を走らせ馬車を動かした。
如何やらこの馬車は隊列を組んでるみたいだ。
「あの馬車に派手な鎧を着た人がいましたけど」
「ん?あぁ、この辺は安全だ。ただ、やはりどんな輸送にも冒険者の護衛は必須だよ」
冒険者あるんだね。
「冒険者ですか。大変そうですね」
「なーに、気にする事は無いよ。金払ってるんだ。その分は働いて貰わないとな」
バンクさんは中々陽気な方で特に聞いても無いけど色々話しをしてくれた。
「お前さんの武器、もしかして古代兵器か?いや、中々珍しいもん使ってんな」
古代兵器?
「銃の事ですか?」
「おうよ!普通は魔道具か弓矢が当たり前だからな」
更にバンクは話してくれる。何でも銃は威力はあるけど弾が詰まり動かなくなる事や部品が破損したりする事が多いそうだ。それでも威力は高い事から冒険者は切り札の1つとして使うのが普通だ。そして弾薬はどの武器屋やギルドに大量に売ってる。理由は時々古代遺跡から大量の弾薬が見つかったり、後は何処の国も弾薬製造機で大量の弾薬を作り無理矢理武器商人に売ったとか。
「国は弾薬製造機なんて持ってるんですか?」
「ああ、どの国も古代遺跡から見つけてな。それで昔に調子に乗って大量に作っちまったのさ。唯、弾を大量に作ったのは良いけど、肝心の古代兵器がコレじゃあな」
バンクさんは呆れた風に言う。しかし、古代兵器に古代遺跡ねえ。じゃあ、俺は古代人間かな?
「ははは…笑えねえ」
2つの意味でな!
「全くだ!はっはっはっ!」
それからもバンクさんは次々と話してくれる。人種も人間、亜人、ドワーフ、エルフ、更に敵対してる魔族等。宗教も色々あるがやはり1番規模が大きいのは、人間至上主義のユーニスム教らしい。バンクさんが気前良く話してくれてると突如笛の音が鳴る。
「これは?」
「魔物の襲撃だ!冒険者の皆さん!お願いしますよ!」
バンクはそう言うと派手な鎧の人や魔法の杖を持つ人が他の馬車から出てきた。
「俺達に任せな!相手はウェアウルフだ!大した事はねえ!行くぞ!」
「「「おおう!!!」」」
冒険者の人数は10人だ。しかし、ウェアウルフはどう見ても30匹以上いるんですけど?
「魔法!弓矢!放てえ!!!」
「我、炎の精に命令する。穿て!ファイアーボール!」
「水の精よ、その清らかな水で敵を屠れ!ウォーターアロー!」
それ以外にも様々な呪文を唱える魔法使いの方々。
だが一言言わせてくれ。呪文が長いよ。もう敵が目と鼻の先じゃん!
「ヤバくない?」
俺はニューナンブM60でコッチに来るウェアウルフを撃つ。何発かウェアウルフに当たり倒れる。その隙にリロードして撃つ。そして弾が切れたらまたリロードして撃つ。基本はその繰り返しだ。
ウェアウルフが此方に来る。だから馬車から降りてシールドを構える。ウェアウルフは飛び掛かって来るが問題は無い。
「せいっ!」
シールドで体当たりをしてウェアウルフを逆に飛ばす。そして地面に倒れた所に撃つ。他の冒険者がいたお陰で側面は大丈夫みたいだから正面だけに集中して行く。俺は目の前の敵にニューナンブM60を構え引き金を引き続けた。
……
気が付けばウェアウルフは退却して行った。俺は銃をしまいバンクさんの馬車に戻る。
「いやー!お見事でした!素晴らしい腕前で!」
「え?いや別に」
バンクさんは興奮していた。
「いやいや!ああも古代兵器を扱い更に敵をアッサリと撃ち倒していく姿は素晴らしかったですぞ!」
そうかな?魔法使いの方がカッコいいと思うけどな。
「それにシュウさんはウェアウルフを10体以上倒されてました!いやはや、さぞかし名のある冒険者なのですかな?」
「いやー、あのー俺冒険者じゃ無いんですけど」
「何と!いや勿体無い!それなら是非冒険者になると良いですぞ!次のイルステイの町には冒険者ギルド支部があります。そこで登録されてみては如何ですかな?」
冒険者ねえ?
「まあ、考えておきますよ」
「貴方のような方が冒険者になって頂けるなら此方としても嬉しい事です!ささ、コレはほんの謝礼金です」
バンクさんはお金を渡そうとする。
「いや、だからその」
「さささ!どうぞどうぞ!」
無理矢理押し切られ貰った。
(まあ良いか?お金は有るだけ楽だろうからな)
この時俺は知らなかった。ウェアウルフの群れはかなり危険であると。今回の襲撃は想定外の群れで、冒険者に重傷者又は死者が出て荷馬車に被害が出ても可笑しく無かった事を。
因みに魔法についても軽く聞いてみたら使い手次第と言われてしまった。キチンと訓練を受けた魔法使いなら1度の呪文で多数の魔法を放つ事が出来る。つまりファイアーボールを極めれば1度の呪文により10個以上のファイアーボールを出せる。
(銃もキチンと訓練しないと命中しないのと同じだな。あれ?そう考えると、やっぱりこのPDAは破格の性能じゃ無い?)
俺は自分が恵まれてるのだなと認識した瞬間だった。