46 ラリア連邦内乱3
side アトリー公爵 私兵
アトリー公爵の私兵達はラリア連邦の王城の離れにある司令塔を占拠する為に行動していた。元々彼らはアトリー公爵の私兵と言う事もあり、スムーズに司令塔内部に侵入する事が出来た。そして、司令塔内部に居る者達にAK-47の銃口を向けながら言う。
「全員死にたくなければ両手を上げろ!一度しか言わないからな!」
私兵達は次々と銃口をラリア連邦の兵士達に向ける。最初数人が抵抗しようとしたが、AK-47の銃口を突きつけられてしまい大人しくする他無かった。
「隊長、司令塔を全て占拠しました」
「直ちに各駐屯部隊に通達を出せ。『現在情報収集を行なっている。現地点にて待機されたし』とな」
「了解です!」
その瞬間、各駐屯部隊に連絡が行き渡る。中には自主判断により行動を起こす部隊も居るが、半数以上の部隊がその場に留まる事になってしまったのだった。そんな中、ある部隊が自主判断で行動を起こしていた。
side ラリア連邦所属 航空駆逐艦「アーレイ」
「司令部からの情報はどうなっている!」
「『現在情報収集中との事。現時点にて待機されたし』との事です」
それを聞いた駆逐艦アーレイの艦長ら椅子を叩く。
「そんな悠長な事を言ってられるか!直ちに発艦準備をしろ!非番の連中も叩き起こして来させろ!」
「し、しかし司令部から待機しろと命令が」
通信士が艦長に苦言を伝える。しかし、艦長はバッサリそれを否定する。
「なら司令部が何か言って来たら『臨機応変に対応する』と返信しとけ!」
艦長はそのまま艦橋から外を見る。王都のあちこちから黒煙が出ているのが見える。そんな中、何も出来ない自分自身に苛立つのだった。
「何をモタモタしている!早く艦の発艦準備を急がせろ!」
駆逐艦アーレイの艦内は一瞬にして慌しくなるのだった。
side out
side シュウ・コートニー
ギルドの前で敵を迎撃していると、いつか見た黒フードの連中共が見えた。
「スピア!あの黒フードの奴を1人でも良いから捕らえるぞ!」
「畏まりました」
俺は240G軽機関銃で黒フード共に対し撃ちまくる。黒フードの連中も防御魔法を展開したり、回避したりする。しかし相手も手練れな為、反撃を受ける事になる。互いに弾丸と魔法の応酬を受ける事になるが、此方にはサラさんにローラも居るんだぜ?
「何よ彼奴ら。どう見ても怪しい連中じゃない!『ライトニングボルト!』」
「ふむ、シュウ君の言う通り数人でも構わないから捕らえるべきだな。『ファイアブレス!』」
ローラとサラさんのダブルコンビの攻撃魔法が黒フードの連中に突き刺さる。そして大爆発が起きる。
「て、あれじゃあ捕らえる事が出来ないじゃん!」
どう見ても大惨事です!早く敵さんを助けないと!
「サ、サラの攻撃が爆発したのよ。私じゃ無いわ!」
「いや、ローラの攻撃魔法の方が若干威力が高かったな」
「何よ!私の所為だと言いたいの!」
「どう見てもローラの威力が高過ぎたんだ!」
2人共互いに大爆発した事を押し付け合う。どう見ても貴女達2人共の威力が高過ぎたんです!
「ご主人様、賊を2人捕らえて来ました」
しかし、あの大爆発の中敵を捕らえるとは素晴らしい!
「良くやったスピア!流石頼れるスピアちゃんだよ!」
「お褒めに預かり光栄です///」
俺が褒めると少し笑顔になりながら頬を染めるスピアちゃん。しかし、そんな様子を見るローラは面白く無さそうにする。
「ふん!あれぐらい私にもできたわよ!ただ、ちょっと力が入り過ぎたと言うか……その、良い所とか見せたくて」
どうやらローラはローラなりに考えていた様だ。
「ローラ、大丈夫だよ。お前もしっかり戦ってるのは見てるからさ。だから無理に力を入れる事は無いさ」
「シュウ……うん。ありがと///」
暫くローラと見つめ合ってると後ろから声を掛けられる。
「ゴホンッ、今はこの捕虜に対して尋問をすべきでは無いのかな?」
「おっと!そうだった。すっかり忘れてたよ」
「ご、こめん。それで捕虜から何を聞くの?」
俺達は2人の黒フードを囲い込む。しかし、相手は動じる事は無かった。
「無駄な事だ。我々から聞き出せる事は無い。諦めろ」
「…………」
どうやら敵さんの口は堅そうだ。少し頭を悩めているとクロが捕虜に近付く。
「何だ?スライムを使って尋問でもするのか?滑稽だな!アッハッハッ!」
「……ふっ」
クロを笑う捕虜2人。そして1人の顔面に飛び付きへばり付く。
「ッ!ッッッ!?ッッ!!!……ッ!……………」
「な!お、おい!そこのスライム!何をしている!」
そして完全に力を失った捕虜から離れるクロ。そして此方に寄ってくる。俺はクロを持ち上げて聞く。
「どうした?お腹減ったの「ベチャ」ふぶっ……」
クロが俺の顔面にへばり付く。そして……映画の様な景色が見えた。
【作戦は簡単です。先ずキメラ・スネークを使い………荒らします。中には手強い……も現れるでしょうから、その相手を……するのが我々の役目です。何か質問は?】
【我々の………は?】
【……が来る時に……します。勿論列車を使って……しても構いません。その辺りは各自の判断に任せます。但し、我々の………をバラす…………下さい】
【………の到着時刻は?】
【この……はスピードが重要です。昼過ぎ……到着…………射撃が来ますので注意して下さい。まあ、殆どは駐屯…………が狙われ…………】
【作戦が……した時は?】
【それは勿論、……して下さい。それが無理なら……アーカード帝国の為に死んで下さい】
…
……
「プハッ!はあ、はあ、はあ……マジか?お前ら、アーカード帝国の人間なのか?」
「ッ!?貴様何故それを!」
捕虜が暴れるが無視する。だが、さっきの映像?いや記憶か?あれが本当ならこの暴動は……立派な侵略戦争じゃないか?
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「シュウ平気?何か凄く体調が悪そうに見えるわよ?」
「さっきアーカード帝国と言ったな。何故アーカード帝国の名前が出て来る?」
3人が心配してくれる。しかし、先程の映像が本当なら不味い事になりそうだ。
「俺は大丈夫だ。もう捕虜は必要無いからギルドに預けておこう。それよりこの後の事を話すよ」
俺は先程見た映像を思い出しながら話す。所々途切れていたが重要な所は覚えていた。
「つまり、まだ何かが起こる訳ね?でもそれが何なのかは分からないのよね?」
「ああ、だが昼過ぎに何かが来る。そして、その何か来たのに乗じて脱出するんだと思う」
「成る程な。だが、その何かが来た時が鍵となりそうだな」
キメラ・スネークは囮で本命が別に来ると言うのだからな。全く厄介な事この上ないな。
「ですが、クロにこの様な能力が有るとは驚きです。普通のスライムとは最早別と考えたら良いでしょうか?」
「プキュ?」
スピアはクロを抱きながら言う。うーん……ま、別に良いんじゃない?だってクロは、
「大切な仲間だからな。別に何でも良いさ」
「プキャ!」ポヨン
スピアの手から離れて俺の胸に飛び込むクロ。うんうん、相変わらず可愛いヤツだな〜。
「そうでしたね。失礼しました」
「気にするなよ。スピアの考え方が普通だと思うよ」
俺はクロを頭に乗せながら言う。普通とは違う存在は異端視されるのが世の常だからな。
「だが、今は軍の兵士が来るまで耐えるしか無いだろう。まだギルドには多数の民間人が避難しに来ている」
「そうよね。次いでなら周りの敵も倒して、避難出来てない人達も助けましょう?」
ローラの提案に全員が頷く。
「他の冒険者達にも協力して貰おう。そうすれば沢山の民間人を助けれるだろうし」
「なら私から言おう。そう言えば、ギルドマスターは居ないのか?
サラさんは受付嬢にギルドマスターの所在を聞く。すると、珍しい工芸品を自慢しに隣町やそれ以外の場所に出掛けたらしい。然も経費を使ってらしい。
「まさか……あの宝石とかアクセサリーを自慢しに行ったとか?なら俺のせいになっちゃう?」
自分自身を指差しながら言う。その場に居る人達は全員苦笑いになってしまったのだった。
……
その後暫く周辺の敵と戦いながら民間人を救出して行く。ラリア連邦の兵士達も何人か応戦して居るが、組織的な動きでは無い感じだ。
「ちょっと!何なのよラリアの兵士達は!全然戦おうとしないじゃ無い!何が『現在情報収集中』よ!目の前に敵が居るじゃない!」
「ああ、幾ら何でも可笑しい。此れだけの騒ぎだぜ?普通なら軍が動いても良い筈だがな」
まさかアーカード帝国が何かしたのか?それとも他に何かが起こって居るのか?PDAを見て時間を確認する。気が付けば時間は昼頃になっていた。だが、兎に角今は目の前の敵に対処するしか無い。
「仕方無い、現状維持で何とかするしか無いな。幸い弾薬はギルドから提供されてるから豊富に有るし」
しかし、誰からの返事が無い。周りを見渡すと全員が空のある一点を見ていた。俺も其方に視線を移すと……
「マジか……航空戦艦まで用意したのかよ」
その漆黒の巨大な船体を空中に浮かせながら此方に迫って来ていたのだった。
……
side 無名の戦艦乗り達
漆黒の航空戦艦は最大戦速でラリア連邦に向かっていた。最早姿を隠す意味が無い為だ。
「艦長。目標、ラリア連邦王都ミスティを目視で確認しました」
「攻撃目標の狼煙は出ているか?」
「はい。王城周辺と離れた場所に赤色の狼煙が見えます」
「宜しい。なら面舵一杯!艦を横に向け終える前に目標に照準せよ!」
「了解!面舵一杯!砲撃手は直ちに目標に照準を合わせよ!」
戦艦が風を切りながら右舷に船体を向ける。それに合わせて主砲全5機か目標に向けて稼働する。
「艦長!前方に航空艦を補足!数は1、駆逐艦クラスです!」
「ほう、少しはマシな軍人が居たようだな。1番駆逐艦に向け照準!残りは目標に向けさせろ!」
船体が右舷に曲がり切る。そして主砲の動きがゆっくりと止まる。
「全主砲照準良し!艦長、いつでも撃てます!」
「この砲撃が我々の勝利にならんとする!全主砲一斉射撃!!!撃ち方始めえええ!!!」
艦内に警報が鳴る。
「撃ち方始め!!!」
50口径3連装35.6cm砲、全5機が轟音と共に火を噴いたのだった。
side out
side 航空駆逐艦「アーレイ」艦長
「艦長、まだ機関士、整備士が未到着です。恐らく外に出れない状況か若しくは……」
「くそ、全くなんて付いてない日だ」
朝の騒動からもう5時間以上は経過しているだろう。しかし、機関士不足により駆逐艦は未だに動かせそうに無い。だが、まだ外からは爆発音が聞こえたり銃声が聞こえる。恐らく市街地では戦いが続いているのだろう。
「仕方無い。機銃座に配置してる者を機関室に回せ。兎に角空に上がらなければ話にならん」
「了解です。唯ちに通達します」
それから暫く待つ。だが、負の連鎖は止まる様子が無い。
「艦長!レーダー9時の方角から高魔力を探知!この反応は戦艦クラスです!」
それを聞いて左の方を見る。其処には……我々の領空を堂々と飛行している漆黒の航空戦艦が居たのだ。
「っ!な、何をボサッとしている!早く艦を空に上げろ!上がらなければ唯の的だぞ!!!」
「り、了解です!」
「それから離陸マニュアルは全て省略だ!兎に角艦を空に上げろ!!!」
艦内が慌ただしくなる。その間にも漆黒の戦艦は近づいて来る。
「僚艦ナッシュビルから通信です!何処の部隊の航空戦艦かと!」
「んなもん敵に決まってるだろうが!兎に角飛び立つ事を最優先だ!!!」
そして漆黒の戦艦は舵を面舵に取る。それと同時に戦艦の主砲が動き出す。
「艦長!準備整いました!飛べます!」
「浮上せよ!後は……祈れ!」
最早神頼みだ。だが、私は最後まで敵戦艦の主砲の動きを見る。そして火を噴いたのを確認したのと同時に命令を下す。
「下げ舵一杯!!!」
操縦士は条件反射で艦を下げる。艦が地面に当たるが構うものか。そして、駆逐艦アーレイの頭上に敵戦艦の砲弾が通る。次の瞬間窓にヒビが入る。更に爆発音が聞こえる。
「被弾箇所報告!!!」
「被弾は有りません!しかし、僚艦ナッシュビル艦橋と船体に直撃「ドオオオオオオン!!!!!!」ナ、ナッシュビル轟沈!!!」
「くっ!船を上昇させろ!周りの被害状況を確認せよ!」
「現在確認中!……あ、ワイバーン、グリフォン隊の兵舎に直撃です!」
「待機中の艦隊にも被害多数有り!」
「地上部隊の戦車隊にも被害確認!」
それらの情報を聞いて確信した。
「全て、計画されていたのか……」
最初の暴動、司令部からの待機命令、そして終いには不明航空戦艦からの的確な砲撃。
「だが……我々が退く訳には行かん!諸君!ラリア連邦の駆逐艦乗りの意地を見せるぞ!!!」
この瞬間、戦艦に対して駆逐艦で対応するという無謀な事する。だが……誰かがやらねば更なる被害が出て来る。これ以上好き勝手されてたまるか!
私は眼前に堂々と飛行している漆黒の戦艦を睨み付けるのだった。
side out
本格的な戦闘開始




