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44 ラリア連邦内乱

病院から戻る頃には日は傾いていた。今日も簡易宿に泊まる事にする。そして夕方になれば放射能を浄化する為に神官の元に浄化しに行く人々が列を作る。しかし、その行列は昨日より大分少なかった。やはり総合病院に行って、そのまま帰って来れなかったのだろう。


「でも、何で病院1つでそんなに必死になって行ったのだろう?危険は承知の筈なのに」


俺は素直に疑問に思ってしまった。この時俺は知らなかったが、放射能の無い周辺区域は既に探索し尽くしているのだ。残っているのは放射能に汚染されてる場所だけだ。放射能は身体を蝕みそのまま死ぬリスクが高いのだ。そんな中で何も見つける事無く金貨1枚を払って浄化するのは割に合わない。だから俺が指差した方に誰もが向かって行ったのだ。何も手掛かりも無く探すより、少しでも何かがある方に行くのが当然だった。


「結局選んだのは彼等だったわけだ。運が無かったとしか思えないけどさ」


今更俺にはどうする事も出来ないしな。それでも黙祷ぐらいはやりたくなる物だ。俺は総合病院の方に向きながら静かに目を瞑るのだった。


……


次の日、朝早くに王都に向かう。ほんの少しだけ皆と離れ離れになってしまったが、結構寂しいものである。なので早く戻って会いたいのだ。バイクを出して直ぐに走り出す。そして一気に加速させて行くのだった。

途中魔導列車が走ってるのが見えた。走る方向は一緒なので王都に向かっているのだろう。線路に沿って走ってると若い女性達が此方に手を振ってるじゃないか!だから俺も手を振り返す。すると嬉しそうに互いを見合う。そして他の窓からも子供達が手を振ったりするので振り返す。ただ、魔導列車結構スピードあるんだな。時速100km出てるし。


「それでもバイクの方が速いけどね」


更にバイクを加速させる。何時迄もゆっくりするつもりは無いからね。魔導列車を抜き去りそのまま走り去る。後ろから汽笛が聞こえるが気にしない。


小話


俺は新人の魔導列車の運転士だ。この度憧れの魔導列車の運転士として操縦出来る事を誇りに思うと同時に嬉しく思う。


「どうだ新人。魔導列車の操縦桿を握った感想は?」


「はい!とても感動しています!」


「そうかそうか。この魔導列車は最新のやつには負けるが速度は速いんだ。もう直ぐ直線に入るから最大出力で走って良いぞ?」


先輩の車長が悪戯小僧みたいな表情をする。多分俺もにやけた表情してる筈だ。そして、遂に直線に入る。そして魔導列車を加速させる。力強く魔導エンジンが唸りを上げる。


「凄い。この魔導列車は最高ですよ!」


「そうだろう?はっはっはっ!」


素晴らしく爽快な気分になる。この魔導列車に追い付けるヤツは居ないだろう。


……ォォォヴォンォォオオオ!!!


「何だ?この音」


車長が後ろを見る。そして車長は硬直する。


「車長?何が居るんです?」


「魔導車だ…小さい魔導車が魔導列車と並走してる」


「そんな訳無いでしょう?魔導車がこんな舗装されてない道を速く走れる訳無いですよ。それに、元々魔導車は其処まで速く無いですよ?」


しかし車長は俺の言葉を無視して此方に来る。そして俺から操縦桿を奪う。


「見せてやる。この魔導列車の奥の手をな!!!」


車長は操縦桿のスイッチとレバーを動かして行く。すると魔導列車が加速し始める。


「どうだ!これこそ魔導列車の真骨頂!燃料を無駄に消費する事によって最大出力を上げる!そして圧倒的な速さを手に入れるんだ!!!」


「す、凄い。魔導列車にこんな装置が付いてるなんて!凄過ぎる!」


俺は感動したよ。だって大好きな魔導列車がこんなにも力強く走るのだから。しかし、俺は見てしまった。此方に手を振りながら走り去って行く小さな魔導車を。


「え?……嘘だろ?」


俺は今見た光景が信じられなかった。その魔導車は煩い音を出しながら走り去って行く。


ポオオオオオ!!!!!


何故だろう。魔導列車の汽笛の音がやけに悔しそうに聞こえた。


……


ようやく王都ミスティに着いた。やはりバイクを使うと速く移動出来るから最高だ。そのままミスティに入って行き冒険者ギルドに向かおうとする。しかし、城門を潜った時。


「プッキャー!」ベチ


「フグッ」


俺の顔にクロがへばり付いた。お出迎えしてくれるのは凄く嬉しいけど、顔にくっ付くと息が出来ないからね。


「お帰りなさいませ。ご主人様」


「本当に今日帰って来たのね。流石クロとスピアね」


「ぷはっ、ただいま。無事に終えて来たよ」


「ちゃんと探索は出来たの?」


「ああ、そこそこ回収出来たから多分大丈夫だろう。それに落ちたら落ちたで別の所で試験受ければ良いしね」


俺はランク上げ試験に対しては気楽に構えている。だってアンダーグランドの事がバレてるからこんな試験内容になったからね。普通だったら別の試験だろうし。


「取り敢えず今からギルドに向かうつもりだけど」


「私はご主人様に着いて行きます」


「なら私も行くわ。それに、そのまま依頼とか見て行きたいし」


スピアとローラも付いて来てくれるみたいだ。俺達はギルドに向かいながら未探索地の話をする。


「結構放射能が高かったからキチンとした装備は必須だよ。後、グール化した魔物とか店にある警報装置とかにも注意が必要なんだ」


「警報装置?何かあるの?」


「大音量の音が鳴るんだよ。そのお陰で周辺に居る魔物が押し寄せて来るし。然も耐久性があるから頭を狙わないと倒せないからな」


「うわ、消炭にすれば大丈夫かしら?」


「その前に魔力切れとか起こすなよ?兎に角数が多いからな」


暫く話しながら歩いてるラリア連邦の軍人とは違う服装の軍人達が前を歩いて行く。何処の軍人だ?


「あれはボニフェース・アトリー公爵の私兵で御座います。大貴族となれば私設軍隊を持っていますから」


「へぇ、なら航空戦艦も持ってるの?」


「はい。しかし大貴族と言えども巡洋艦級までしか所有出来ません。所有出来る数も限られていますから」


「成る程ね。謀反とか起こされたら堪ったもんじゃないからな」


私設軍隊を見ながら呟く。背中には魔道具もしくは銃を。腰にも剣かハンドガンを所持している。動きもシッカリとしており、正規軍と言われても違和感は無いだろう。


「ほら何時迄も見てないで、早くギルドに向かうわよ」


暫くアトリー公爵の私兵を見ていたがローラに急かされ冒険者ギルドに向かう。しかし、冒険者ギルドに入ると一気に周りの冒険者達に囲まれる。


「ローラさん!是非俺達とパーティ組みましょう!」

「サイレントラビットの貴女も一緒に来ましょう!」

「ランク上げに協力して下さい!お願いします!」

「あんな悪い男と一緒に居ると後悔しますよ」

「その胸に飛び込みたい!」


兎に角沢山の冒険者達が一気にローラとスピアの勧誘を行う。然も俺…悪者扱いじゃん。


「こ、コレが…需要の差なのか!ち、畜生!」


「あ、ご主人様!」「ちょっとシュウ!」


俺は自身の需要の無い悲しみを背負いつつ受付嬢の所に向かう。


「あ、すいません。ランク上げ試験を受けてたシュウ・コートニーです」


「はい。では、此方に成果の方をお願いします」


俺は宝石店で見つけた指輪やアクセサリーを渡す。


「これで全部です」


「では少々お待ち下さい」


暫く待つ事になる。その間にローラとスピアも側に来る。序でに他の冒険者達も付いて来る。


「そう言えばシュウは未探索地で何を見つけたの?」


「指輪とかのアクセサリーだよ。ただ、呪われてそうだから提出したよ」


だって500年もの間ずっと彼処に放置されてたしな。店主とかの亡霊が憑いてそうだし。


「そうなの?でも未探索地で見つけたんでしょう?なら上出来よ」


「そうです。もうCランクになれます」


「そうかな?Cランクになれれば嬉しいけどね」


しかし、そんな俺達の会話を快く思わない連中も居る訳で。


「なあ、彼奴がローラさんに寄生してるんだよな?」

「多分な。でも、彼奴1人で未探索地に行ったみたいだぞ?」

「どうせ向こうでも媚び売りまくったんだろ?」

「彼奴無魔なのに未探索地に行ってお宝を手に入れたのか?なあ、今度俺達も行ってみようぜ!」

「ローラちゃんとスピアちゃんの耳ハムハムしたい〜」


相変わらず俺舐められてるな。て言うか、さっきから変態発言してる奴誰だよ!


「お待たせしました。先ずは此方に換金されたお金になります。金貨72枚と銀貨55枚です」


「おお、妥当な金額で逆に吃驚した」


「それからランク上げ試験の結果ですが、おめでとうござます。Cランク昇格です」


周りの冒険者達は騒つく。まさか俺がCランクになるとは思わなかったのだろう。俺はローラとスピアを見る。そしてVサインをする。


「やったぜ」


「おめでとう!シュウ!」ガバッ


「おめでとう御座います。ご主人様」ギュッ


「プキュ?プッキャ!」ペチペチ


ローラとスピアが抱きついて来る。ウホホーイ!最高だぜ!クロも頭の上でペチペチしてくれてる。


「なら今日はお祝いしましょう!勿論シュウのお金でね!」


「ありがとう、ローラ…ん?今俺のお金って言った?」


「さあ行くわよ!今日は豪勢に高級レストランにするわよ!」


「お、おう。別に構わないけどさ。でもさっき俺のお金って…」


俺の呟きは無視されながら高級レストランに赴くのだった。


……


side 無名の戦艦乗り達


「艦長。アトリー公爵の領地に侵入しました。これより最後の補給を行います」


「うむ、分かった。さて、あと数時間飛べば王都に着くか」


「現在アトリー公爵の私兵達が王都に入城したそうです。後は合図が有り次第直ぐに動けます」


副長の言葉に艦長は頷く。


「なら、その時まで自由時間にするとしよう。尤も上陸は出来んがな」


「了解しました」


副長は艦内放送で自由時間を伝える。艦長はそんな姿を見ながら外を見る。


「我々の行動でラリア連邦の歴史が変わるか、終わるかだな。ふっ、何と罪深い事だろうな」


艦長は目を瞑り呟く。


「だが我々は軍人。ならば、祖国の為に死力を尽くすのみだ」


目を開けながら前を見据える。そして己の迷いを断ち切ったのだった。


side out


side ボニフェース・アトリー公爵


「そうか、遂に来たか。領内の混乱はどうだ?」


「問題有りません。事前に連絡して有りました通り『王都に向かう途中で補給の為立ち寄る』を信じておる様です」


私はサッチの報告を受ける。そして遂に作戦を実行させる事にする。


「なら明日実行に移す。『キメラ・スネーク』に連絡せよ。明日王都で暴れ捲れとな」


「畏まりました」


サッチはそのまま闇の中に消えて行く。作戦と言うが単純な事だ。キメラ・スネークで王都内を混乱させる。そしてその混乱に乗じて王族を全て捕らえる。更に航空戦艦を王都に来させて駐屯している航空艦を全て潰す。そして、私が所有する航空艦で不明航空戦艦を追い払う。遅くに王都防衛艦隊が戻って来た時には全てが終わってる。最後に王族の不正を全て民衆の前に晒し、捕らえた王族全てをその場で処刑する。そして私が新しい国王になるのだ。


「民衆も頼りない国王より私を選ぶ事になる。そして私は全てを手に入れるのだ」


私は勝利を確信している。例えアーカード帝国に借りを作ったとしても貿易関連で譲歩すれば済む話だ。ワインをグラスに注ぎながらチーズを食べる。いつも通りの味で満足だ。


side out


……


「んんー!美味しかったわね。流石王都一の高級レストランだったわね!」


「値段も王都一だったとは思わなかったわ!然もいつの間にか予約済みだったし」


「そこはスピアに協力して貰ったわよ?じゃないと戻って来るタイミングが分からないもの」


スピアちゃん?俺はスピアちゃんを見つめる。


「申し訳ありません。しかし、お父上が悪いかと」


「スピア、謀ったな!スピア!」


て言うか、何でそのネタ知ってるの!


「今夜別のモノ用意してるから…あ、安心しなさい」


「別の物?何かサプライズ的なプレゼントが有るのか?」


「んん〜…内緒よ」


何故か頬が赤くなるローラ。チラリとスピアを見るがニコッと軽く笑顔になるだけだった。


「まあ、期待して待ってるよ」


「う、うん…」


だから何故ローラは俯き赤くなる?しかし、その意味が夜になったら分かった。


夜 20:00頃


風呂上がり。自分の部屋に戻ったら…ローラが居た。しかも、何と扇情的な服装なんだ!?薄い青色のネグリジェに包まれており、下着とか見えてるんですけど!?然もエロい下着なんですけど!?


「ロ、ローラたん?ま、まさか…サプライズ的なプレゼントって」


「……い、言わせる気?」


プツンッと俺の頭の何か切れた。


「良いんですか?僕、我慢出来ませんよ?良いんですね!」


「うん。その、優しく…してね」


ローラたんは潤んだ瞳を上目遣いをしながら此方を見つめる。それだけで、もう!我慢出来ません!


「い、頂きまーす!!!」


この後ローラたんに覆い被さった後は…秘密な♡



……


「なあ、スピアとかに止められなかったのか?」


「最初は渋られちゃったけど、最後は協力してくれたわ。だってシュウを1人にすると色々危ないもの」


俺は危険人物か?いや、そう言う意味じゃないだろうな。


「まあ、アンダーグランドに未探索地とか色々突っ込んだのは悪いと思うよ」


「分かってるなら気をつけてよ…もう」


ローラたんの「もう」とか、ちょっと萌えた!


「ローラたん!もう一回戦イキマス!」


「え?ちょっと!きゃっ…もう」


この後イチャラブしまくった。


しかし、この後で波乱に満ちた戦場に放り込まれるとは思わなかった。敵も味方も入り混じり、空では航空戦艦通しの撃ち合いが始まるとは。この時には微塵も思っていなかったのだった。

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