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暫く王都を観光してるとスピアと合流出来た。正直、直ぐに終わらせるとは思わなかった。
「よく俺達の場所が分かったな」
「私は常にご主人様の事を考えております。ですので大体の行動は予測出来ます」
スピアちゃん凄いし嬉しいけど、ちょっと怖いよ?この後は夕食を適当な店で食べた後は宿に戻り、明日に向けてしっかりと休むのだった。
小話
「ご主人様、明日の為に心身共にリフレッシュした方が宜しいかと」
「ス、スピアちゃん…ゴクリ」
そ、そうだよなぁ〜。明日の為にリフレッシュは必要ですよね〜。
「では、早速!」ワキワキ
「はい…どうぞ」
俺はスピアちゃんに飛び込む……
「ダメに決まってるでしょう!!!」バターン
ローラが扉を破壊して乱入する。
「また貴女ですか。毎回毎回私達の営みを邪魔しないで下さい」
「これ以上シュウに色目を使うならタダじゃおかないわよ!」
「ローラさんに私を止めれると?」
「なら、試してみる?」
2人は睨み合う。俺はクロを持ち上げ枕にする。
「やっぱりクロを枕にするのが一番気持ちいいな」
「プキュプキュ」
段々眠気が増して来たので、俺はそれに身を委ねたのだった。
……
翌日、バイクを出して未探索地に向かう。今回はローラ、スピア、クロはお留守番。放射能塗れの所に連れて行くわけにも行かないからな。
「なるべく早く終わらせる様に頑張るわ」
「あまり危険な所には行かない様にお気をつけ下さい」
「無理はしちゃ駄目だからね。絶対よ!」
「プキュ…」
全員心配してくれる。クロも触手を出して心配してくれる。
「クロ、2人のボディガード頼むぜ。出来るか?」
「プキャ!」
よい返事だ。俺はクロをひと撫でしてバイクに跨りエンジンを掛ける。
「じゃあ、行ってくるよ」
バイクを加速させ目的地に向かうのだった。
……
北の門から出て先に向かう途中、航空戦艦の艦隊を見つけた。何処に向かうかは分からないけど、訓練目的で出航したのかも知れない。
「しかし、軍の戦艦はカッコいいよな。特にデカイ主砲なんて大艦巨砲主義の象徴だからな」
暫く艦隊を見ながらバイクを走らせて行く。そして1時間ぐらいで目的地に着いた。しかし検問所が出来ており、其処には兵士と冒険者に更に犯罪奴隷が居た。取り敢えずバイクを収納して、検問所に行き兵士に話をする。
「すみません。冒険者のシュウ・コートニーと言います。ギルドのランク上げ試験の為に未開発エリアの探索に来たのですが」
「何?ランク上げ試験だと?ちょっと待て、今確認する」
暫く通信石と話をする兵士。そして、直ぐに中に入る許可が得られた。
「入って構わんぞ。こんな事を言うのは余計なお世話だが、たかがランク上げ試験だ。無理するんじゃ無いぞ。死んだら試験所では無いからな」
兵士の目には若干の同情が見られた。多分俺のランク上げ試験の内容が合わないと思ってるのだろう。
「はい、ありがとうございます」
俺は未開発エリアに入って行く。武器はM16A4を構える。M249軽機関銃は背中に背負う形だ。未探索地は結構賑わっていた。出店や簡易宿もあるし、色っぽい服装をしたお姉さん達が道行く冒険者達を引き止めていた。しかし、そんな活気がある中に犯罪奴隷を20人程連れて行く兵士達を見つけた。どうやら探索に出させる様な感じだ。
(あれが犯罪者達の末路か)
中には高価な銃や未知のテクノロジーがあるかも知れない。しかし、探索に兵士を行かせれば被害が出てしまう。だから犯罪奴隷を使うのだろう。
「死刑にするより利用してから殺すのか」
俺は暫く犯罪奴隷達を見続けるが、先を進む事にしたのだった。暫く歩くと景色が変わった。出店とかは無くなり、代わりに崩壊してるビル群や草やツタまみれの建物に変わる。しかし、そこには俺の知っている街があった。然も未だに原型は留めているのには驚きだ。
「地下鉄もそうだけど、建物の耐久性高いな」
建物の壁を触りながら言う。しかし、手の平を見ると何かの粒子が付いてた。暫くするとその粒子は消えていった。
「まさかアレが魔素なのか?つまり、建物の表面に魔素が付着して酸化を防いでいるとか?」
自分で言って思うが有り得そうだ。それから廃墟に入って行く。廃墟の出入り口付近には兵士や冒険者達が多数居た。そして、グループになり廃墟を探索に行く。俺も廃墟の中を歩いて行くと髑髏マークの立て札が有り文字が書かれていた。
《この先毒の空気有り。注意されたし》
俺はRADディフェンダーを飲みながらガスマスクを装着する。耐放射能防具服はこの場所ではまだ必要無いだろう。
「さて、行きますかね」
M16A4を握り締めながら先を進んだのだった。
……
廃墟の中はとても静かだった。奥に進むとPDAから微弱な放射能反応が検知された。つまり、此処から先は未探索の可能性が高い訳だ。そして、そろそろ敵も現れる頃だろう。
「もう少し奥まで行くか。この辺りは探索済みたいだしな」
危険は承知だが仕方無い。しかし、廃墟の街並みを見てると懐かしさが込み上げてくる。この建物の並び方や無機質なコンクリート。俺が知ってる建造物だからな。
「故郷に戻れたとしても、此処と同じ様に悲惨な状況だろうな」
暫く歩くと人影を見つけた。3人ぐらいがしゃがみこみ何かを貪ってる。
「グールか、この距離なら余裕だな」
M16A4を構え照準を当てる。そしてグールに対して3点バーストでヘッドショットを決めて行く。そして倒したグールの方へ行き、何を貪ってるのか見に行く。
それは冒険者の死体だった。死んで2〜3日ぐらいだろう。丁度ギルドカードが落ちていたので拾っておく。そして警戒しながら先を進む。しかし、背後から話し声が聞こえた。俺は物陰に隠れて様子を見る事にした。
「確か、こっちの方で銃声が聞こえた筈だが」
「あの死体か?いや、違うな。グールが死んでる」
覗き見た感じ、どうやら犯罪奴隷達の様だ。多分この場所は危険だから犯罪奴隷だけで探索に行かせてるのだろう。
「グウウウ…」
「っ!?やば、此処めっちゃグールが居るやん!」
背後から唸り声が聞こえたから振り返ると路地からグールが15体程が走って此方に来ていた。
「狭い路地から来るとはな。やはりグールはグールだな!」
M16A4を撃ちまくる。次々と胴体、足、腕などに当たる。グールはバタバタと倒れていく。うん、バタバタと倒れてるな。ただ、起き上がって来てないか?
「グアアアアア…」「グウウウウウ…」
やっぱり起き上がってる。アンダーグランドのグールとは違うのか?
「マジかよ。ゾンビじゃ無いんだからさ」
次は頭を狙って行く。グールは頭に風穴を開けていき、倒れていく。これでグールになった人達も、ちゃんと死ねただろう。
「意外としぶといんだな。鮮度の違いか?」
グールなのは同じだろうけどな。強いて言うなら死んでから時間の経過が違うのだろう。アンダーグランドは何年も経ってるから脆くなっているのだろう。逆に地上の方は耐久性があるのだろう。
「ほう、中々良い装備持ってるじゃないか」
其処には先程の犯罪奴隷達がいた。ただ、友好的な態度では無さそうだけどね。
「なあ、あんたも何かしらやらかしたんだろ?つまり俺達は似た者同士な訳だ。どうだい?こんな救いも無い場所なんだ。お互い協力しないか?」
協力しないか?と言う割には随分と高圧的な態度だよな。うん、絶対無理!最後の方で殺されるのが簡単に想像ついたわ。
「遠慮しておくよ。じゃあな!」
俺はそう言って回れ右して走り出す。
「あ!待ちやがれ!お前ら、奴の武器を奪え!」
(やっぱり想像通りじゃないか。畜生、もっとマシな連中は居ないのか?いや、そもそも犯罪奴隷に期待した時点で間違いか)
内心愚痴りながら更に奥に走って行くのだった。
……
更に奥に走って行くとゴブリンとオークの集団を見つけた。しかし、何方も争う訳でも無く適当に彷徨ってる感じだ。まるでグールみたいに。
「まさかグール化したのか?もしかしたら、放射能と魔素が何かしらの科学反応を起こしてるのかも知れないな」
流石にあの集団に攻撃をする気にはならないな。PDAを見て放射能濃度を確認する。多少放射能濃度が高くなってるがRADディフェンダーの効果でまだ抑えられてる。周りを見渡すと宝石店を見つけたから、そこに入って行く。大分奥に来たから手付かずの宝石やアクセサリーが少し飾られていた。
「これは、正に成果と言うやつじゃないか?」
俺は全ての宝石を回収する。しかし、この宝石とかアクセサリーは呪われてそうだな。
「ローラやスピアに渡すのは止めておこう。渡すなら、キチンとした物の方が嬉しいだろうしな」
店の裏や二階も探索すると昔の紙幣や硬貨、宝石やアクセサリーを見つけた。それらも全て回収する。
「さて、そろそろ帰るかな。こんなに沢山のお宝をゲットしたんだ。もう合格だろ!」
逆にこれで不合格なら別の所で試験受け直すわ。ルンルン気分で宝石店から出ようとする。しかし、その瞬間警報が鳴り響いた。
ジリリリリリリリリリ!!!!!!
その警報は宝石店の非常ベルだろう。音はとても大きく、辺り一帯に鳴り響いた。
「っ!?や、ヤバい!ヤバすぎる!?」
そう言ってる間にも、先程のゴブリンとオークの群れは此方に走ってくる。M16A4で撃つが、数が多過ぎた。俺はM249軽機関銃を装備して弾幕を張る。5.56㎜の弾幕を受けて敵は崩れて行くがジリジリと迫って来る。
「げっ!後ろからも来てるじゃないか!」
グールやオークの群れが背後から迫って来る。この一帯の魔物が一斉に押し寄せて来ている。
「と、兎に角逃げないと!」
俺は再度宝石店に入る。相変わらず非常ベルが鳴り響いているので撃ち壊してやったわ。そのまま二階に行き窓から別の建物に移る。
「グガアアアア!!!」
「邪魔じゃああああ!!!」
思いっきりグールを殴り飛ばし先を進む。早く此処から離れないと食い殺される。楽に終わると思ったが、簡単には終わりそうに無いなと思ってしまった。
……
あれから走ったり、這いずり回ったりしたながら何とか敵を振り切った。そして、大分奥地に来てしまった様だ。放射能はまだそこまで高くは無いが、いつ迄も浴び続けて良いものでは無いだろう。
「先ずはRADキャンセルを打ち込もう。これで体内の放射能は浄化される筈だし」
RADキャンセルを打ち込む。んん〜…何か変な感じがする。
「しかし、此処は何処だ?」
周りを見渡すが全く分からない。PDAを見れば元の場所に戻れるには戻れるが、危険過ぎる。偶々標識が目に入る。500m先に総合病院が有ると示されていた。
「コレは、ヘルスチャージとかの補充が出来るかもな」
危険度は高いだろうけど行く価値はあるだろう。そうと決まれば病院に向かい歩いて行くのだった。因みにバイクは脱出する時に使う予定だ。じゃないと敵が音で寄って来るからだ。
病院付近に来たがグール化した人や魔物がかなりの数居た。流石にこれだけの数を相手にしたら、間違い無く弾切れになる前に嬲り殺されるだろう。
「諦めるか。命あっての物種ってな」
バイクを出してエンジンを掛ける。マフラーから景気の良い音が廃墟に響き渡る。
「じゃあ行きますかね!」
グールは此方に向かって来る。だがそれら全てを無視して走り出す。幾ら数が居ようとも追い付けないなら脅威では無いのだから。
…
side ボニフェース・アトリー公爵
「ふむ、艦隊は予定通り出航した様だな」
「はい、王都に残る残存艦隊は駆逐艦と重巡洋艦になります。それから主人が所有重巡洋艦も3隻配置に付いております」
「宜しい。なら戦艦を我が領地に通させる。そして『キメラ・スネーク』にも通達しろ。最後の仕事の準備をする様にな」
「畏まりました。戦艦が到着するまで約1週間程掛かります」
「ふん。その時の王都防衛艦隊は模擬弾と艦隊行動の演習中だろう」
全ては我が一族の悲願の達成の為。そして、国を民を救う為だ。例えアーカード帝国の力を頼るとしても、今の緩い国を根本から変えなければ成らない。この国を滅びさせる訳にはいかんのだ。
「では、早速連絡致します」
「サッチ。今度は失敗は許さんぞ」
「はい、承知しております」
サッチはそう言うと闇の中に消えていく。
「さあ、始めよう。このラリア連邦の全てを賭けた戦いを」
その時に出る犠牲は目を瞑る。この選択は正しい選択だ。私は瞼を開けて今の王都を見る。惰性と堕落に満ちたこの国を私が今一度正すのだ。
side out
side アーカード帝国 特殊艦
時刻は深夜。誰もが眠りに就いてる時間だ。
「艦長、指令本部から連絡です。『日を沈ませよ』との事です」
「そうか。総員を外の方に集合させよ」
「了解です」
暫くすると戦艦の外に3000人程の乗組員が集まる。艦長はその前に立ち演説を始める。
「諸君!本時刻を持って我々はアーカード帝国軍人では無くなる。我々の存在は公式の中から抹消された。しかし、我々の存在は間違い無く祖国の為になる事は他ならない!!!」
艦長の演説に全員が姿勢を正し静かに聞いている。そう、全員が覚悟している事だからだ。
「これより階級章、及びアーカード帝国軍の紋章を剥がす。我々の存在がアーカード帝国との繋がりになる事を残してはならない」
その瞬間、全員が階級章とアーカード帝国の紋章を剥がす。
「我々は名もなき戦艦乗りだ!しかし、この作戦が無事成功すれば我々の生活は安泰なのは約束されている!また、家族に対するお金は我々が失敗しようとも随時支払われ続ける。そして生き延びれば再度軍に復帰する事も可能である!」
艦長は乗組員を安心させる為に言う。
「この戦いは厳しいものになる!しかし、君達百戦錬磨の兵士がいれば作戦可能なのは間違い無い!諸君達の奮戦に期待する!!!」
艦長は敬礼をする。それに対し全員が一糸乱れぬ答礼をする。
「総員、乗船!」
戦艦に乗り込む名も無き軍人達。そして、航空戦艦に火が入る。徐々に唸り声を出し始める戦艦。そして、秘密基地からゆっくりとその船体を出す。主砲は3連装を上部に3機、下部に2機。副砲も多数搭載されている。更に対空様に小銃や重機関銃も装備されている。全体的に鋭角状の船体は速度を速く出す為のものだろう。更にプロペラも大型の物を艦尾に4機付けており、速度低下を防ぐ設計だ。正に最新鋭戦艦である。
そして、艦首には番号も名前も無い。国旗も無く無名の漆黒戦艦が夜空を飛ぶ。誰にも声援も受けず、誰からも敬礼を受ける事なく夜空に消えて行く。3000人の名も無き兵士達を乗せ死地に赴くのだった。
side out
絵とか上手く無いからパワードスーツ、バイク、車、戦車、戦艦とか想像するしかなくてゴメンね。
何とか皆さんの想像力でカバーしてくれると嬉しいです。




