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俺が高級奴隷オークションで大金払った事は王都全体に瞬く間に広まった。何と言っても過去最高額を大幅に超えた金額だったからだ。だが、実際に俺を見て納得する奴と怪しいと思う奴の半々に分かれていた。まあ、現在の装備がM249軽機関銃でヘルメットに髑髏フェイスガード、更にしっかりとした防具に身を包んでいる為そこそこマシな感じなのだ。だが、現実は虚しいものだ。今の俺の所持金は銀貨15枚という哀愁漂う金額しか入ってない。だが…。
「どうかされましたか?」
スピアがいるから超余裕で〜す!
「いや、俺勝ち組になったんだなと実感しててね。それより宿に戻るか。確か今日まで大丈夫だった筈だし」
時間が余り無かった為大して稼げなかった様に見えるが、実際にはたった2時間足らずで銀貨15枚稼げたのだ。然もスピアの気配探知や気配遮断により一方的に倒していたのだ。この後、食事をしてから部屋をもう一部屋予約しようとしたらスピアに止められた。
「今は節約した方が良いでしょう」
「そうすると俺と一緒に寝る事になりますよ?正直自分の理性が耐えれる気がありません!」
「…構いません。行きましょう」
そう言って俺の手を掴み部屋に向かう。
(え?マジで良いのか!本当に良いのか!狼になっちゃいますよ?いや、なります!ならせて頂きます!)
部屋に入り暫くお互い沈黙する。そして…。
「頂いても宜しいですか?」
「………」コクリ
若干頬を赤く染めながら静かに頷くスピア。
「それじゃあ…頂きま〜す!!!」
こうして、俺のモラルはあっさり瓦解した。そして美味しく頂きました♡
……
気が付けば明け方になっていた。
「あー、もう直ぐ朝か」
「そうですね…んっ」
いやー、もう最高の夜を過ごしたよ。然もこれから毎晩最高の夜を過ごしても良いんだろ?色々頑張っちゃうぜ!
「先ずはもう少しマシな宿にしたいよな。多分隣に声とか聞こえてると思うし」
「っ!…すみません」
「そんな謝らなくても良いんだよ!」
俺は再度スピアを抱き締めながらベッドに転がる。うーん、かなりヤバイかもな。こうして俺達はイチャコラしながら寝る事にしたのだった。
……
スピアを奴隷にしてから1週間が過ぎた。そして俺は…ダレていた。考えてみて欲しい。気立ては良し、家事は完璧、然も床上手と来たもんだ。それで最低限の稼ぎが有れば問題無くなる訳だ。つまり働くよりイチャコラしたいのだ!!!
「じゃあ今日も適当に稼いでくるよ」
「畏まりました。私は買い物を済ませておきます」
「プキャ」
あの安宿から多少はマシな宿に泊まってる訳だが、あんまり防音効果は無さそうだった。なにせ毎回毎回男性客が俺とスピアを見ると俺を呪い殺すと言わんばかりに睨んで来るのだからな。俺はクロを頭に乗せて適当な場所で狩りをする事にする。そして音楽を聴きながら王都の広場に来た時、後ろから誰かに肩を叩かれる。
「ん?…あっ、えっと、久しぶり?」
「うふっ。覚悟は良いかしらシュウ?」
其処に居たのは満面の笑みを浮かべていたローラが居た。ただし目は笑って無かったけど。そして、危険を察知したのかクロは頭から直ぐに降りる。ローラは俺の肩に手を乗せながら呟いた。だからせめてもの情けを乞う事にした。
「えっと…や、優しくしてね」
「ライトニングボルト♡」
「ぎやあああああああ!!!」
その瞬間俺の身体に物理的に電撃が走る。そして煙を出しながらゆっくりと地面に倒れ込んだ。
「あ…ああ…き、効いたぜ…ガク」シュウウウウ
「プ、プキュ?」ツンツン
クロが心配そうに突っついて来る。そして、そんなクロを抱き上げる人物が居た。
「久しぶりだなシュウ君。元気そうで何よりだ」
「さ、サラさん…お久しぶり…です」
そしてサラさんも居た。どうやら2人で行動して居たようだ。
「さて、シュウ?言い訳が有れば聞くけど?尤も、私が納得しなかったら…分かるわよね?」
手のひらに電撃を走らせながら言う。
「いや、そのな。えっとね?」
「ん?何か言い訳するのかしら?」バチバチバチ
「身勝手な事をしてしまい大変申し訳ありませんでした!?」
俺は土下座した。うん、言い訳は良く無いよね!俺もそう思うもん!しかし、場が更に混沌と化し始めた。そう、スピアがローラの背後に現れた。
「ご主人様に何か御用でしょうか?」
「なっ!いつの間に?」
サバイバルナイフをローラの首に当てながら問い掛けるスピア。て、敵じゃ無いからナイフは締まって!
「スピア、大丈夫だからナイフはダメ。良いね?」
「畏まりました」
素直に言う事を聞いてくれるスピア。やだ!この子凄く素直な子!
「ちょっと!誰よそいつ!然も、高級奴隷用の首輪してるじゃない!」
「左様でございます。私はご主人様の奴隷のスピアと言います。以後お見知りおきを」
「ど、ど、奴隷ですって!?シュウ!あんた奴隷買ったの!?然も高級奴隷なんて一体幾らしたのよ?」
「金貨1392枚、銀貨25枚、銅貨253枚で落札されました」
その金額を聞いてローラとサラは目を見開く。
「驚いたな。シュウ君、一体どうやってそれだけの金額を集めたのだ?」
「えっと、アンダーグラウンドに再突入したかな?」
「シュウ。まさか、またアンダーグラウンドに入ったの?」
「正直二度と入りたく無い。見えるんだよね…色々さ。は…ははは…」
乾いた笑いを出しながら暗い雰囲気を出す俺に対して、若干引き気味になるローラとサラ。しかし、そんな俺を抱き締めようとするスピアより早くにクロが俺の顔面にダイブしてフェイスガードの隙間に進入する。
「ムグ!ムームー!?」ペチペチ
「プキャ!」ポヨン
「ぷは!ふう…よし、復活」
こうして俺達はゴタゴタしつつ再会を果たしたのだった。
……
あの後冒険者ギルドに向かいながら話をする。
「それで今は無一文な訳?」
「そうだよ。贅沢な暮らしは出来ないけど、慣れるもんだよ」
「そう言う問題じゃあ無いでしょう?スピアは女なのよ?ガサツなシュウとは違うのよ!」
ズビシと人差し指で俺を指すローラ。しかし、言われてみれば確かにそうだ。今までウィリスさんの屋敷で生活していたのに、俺に買われたらばっかりに貧乏生活に。
「私は特に不都合などは有りません」
「いやいや、ローラの言う通りだよ。今までダラけてた自分が情け無い!爛れた性かっ…もとい生活から脱却せねば!」
「今生活の言葉に違和感が…」
「ああ、何やら良からぬ事をしていた感じがするな」
エルフコンビが怪しむが無視する。
「と言う訳で指定討伐依頼を受けようかな?寧ろ低ランクの俺にはそれぐらいしか受けれないだろうしな」
「ご安心下さい。私も助力致します」
「プッキゥ!」
パーティが即結成された。いや、これはパーティと言えるのか?
「なら私も混ぜて貰うわよ?嫌とは言わないわよね」
「良いのか?その、俺は…勝手にローラを置いて行っただろ?」
「その事に関しては後でゆっくり話しましょう?それに、シュウは私が居ないとダメなんだから!良いわね?」
「分かった。改めて宜しく頼む」
「任せなさい!私が敵を一網打尽にしてやるんだから!」
ローラがパーティに加わり戦力が上がる。
「ローラ良かったな。今度は逃さないようにな?」
「うん。サラは如何するの?一緒にパーティ組む?」
しかし、サラさんはローラの誘いに首を横に振るう。
「すまんな。私にはやるべき事がある。例え、もう意味が無くとも。私は必ず果たして見せる」
「サラ、まだ両親の事を」
サラさんは真剣な…少し危うい雰囲気になってしまう。そしてローラはそれを知ってる様だ。
「ではなローラ、それにシュウ君達も。此処でお別れだ。だが、また生きて居たら会えるだろう」
「サラさん…はい、また会いましょう。その時はパーティ組みません?」
するとサラさんは軽く笑顔になる。
「そうだな。考えておこう」
そう言って颯爽と去って行くサラさん。正直そんな姿も絵になります。
「サラ、無茶しないでよ」
「ローラ俺が聞いても良い事では無いのは分かるけど、サラさんに何かあったのか?」
ローラは目を瞑りながら頷く。
「有るけど言わないわ。この話はサラが話す事だもの」
「そっか。なら大人しくしようかね」
「私が聞くのもアレだけど、気になら無いの?」
勿論気になる。だけど知られたく無い、探られたく無い気持ちはよく分かるつもりだ。
「誰にだって秘密の一つや二つは有るさ」
(勿論俺にもな)
そもそも俺は何者なのか。PDAを取り付けたあの日から銃や兵器の扱い方が分かる様になったのだ。そもそも過去に一体何が有ったのか。そして何故あの施設に居たのか。一番知りたいのは俺自身だからな。
「さて、パーティ登録に行くか。それから依頼でも探そうぜ」
「そうね。なら早く行きましょう」
「私はご主人様に着いて行くだけです」
「そう言えばスピアには冒険者ガード作って無いよな。よし!今から冒険者登録しちゃおうぜ!」
「宜しいのですか?奴隷には登録する必要は有りませんが」
え?そうなの?俺はローラを見る。しかしフェイスガード越しなので伝わら無いと思う。
「確かに奴隷に冒険者登録させるのは無いわね。でも、登録しちゃダメなんてルールは無いわよ。スピア、なら登録しちゃいましょう?」
「分かりました」
あれれ?意外に伝わってしまった。はっ!まさか、俺のフェイスガードも色々リアクションが取れる様になったとか?
「ほらシュウ!バカな事考えて無いでサッサと行くわよ!」
いや、ローラが鋭いだけだったわ。ちょっと残念。こうして俺達はスピアの冒険者登録をした後、パーティ登録をしたのだった。
小話
「ローラ…お前Aランクになったのか?」
「ふっふ〜ん!そうよ、さあ見なさい!コレがAランクのギルドガードよ!」ババーン
効果音と共にローラは金色のガードを見せてくる。
「おお!何か俺の茶色ガードと違う!金色になってるじゃん!ゴールドカードじゃん!」
「そうよ。凄いでしょう!まぁ、大船に乗った気分で居なさい!」
「ならアンダーグランドも1人でも余裕だな?」
「それは無理よ!」ババーン
効果音と共にローラは胸を張って言ったのだった。
……
パーティ登録しに冒険者ギルドに向かう。王都のギルドは市役所みたいに綺麗で内装も落ち着いた雰囲気がある。そして中に入ると冒険者達が一斉に此方を見る。いや、何方かと言うとローラとスピアを見ている。
「まさかローラさんじゃないか?ほら、最近Aランクになった」
「本当だ。間違い無いよ!背中に古代兵器背負ってるし!」
「隣にいるのはラビット族か?随分と別嬪さんじゃ無いか。然も奴隷……いや、高級奴隷だ!」
「あの人サイレントラビットじゃない?この前の奴隷オークションで競り落とされたんじゃ?」
「え!?まさかローラ様があの大金で買ったの!?」
どの冒険者達も2人を見て興奮気味になる。確かにローラとスピアを見てるだけでも目の保養になるもんな。
「うわー、凄いペアを見たな…で、隣の奴とスライムは?」
「知らね」「興味無えや」「荷物持ちじゃ無い?」
そして、俺とクロに関しては…解説するのはやめとくよ。ただ、どの冒険者達からも眼中に無かったとだけは言えたよ。それからスピアの冒険者登録とパーティ登録する為に受付に向かう。
「先ずはスピアの冒険者登録からだな」
「ならその間にパーティ登録しちゃいましょう」
スピアを別の受付に行かせて俺とローラはパーティ登録しに行く。
「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用件でしょうか?」
「この2人とパーティ登録したいの。お願いね」
「畏まりました。それではギルドカードをお願いします」
ギルドカードを見せる。すると受付嬢の顔が少し困り顔になる。
「ブルフォート様はAランクですが、パーティ登録されますとBランクパーティになりますが?」
「あ、新しく登録する人も入れるから」
ザワッ!!!
周りが騒つく。Aランク冒険者が低ランクと新人とパーティを組むのだからな。
「そうなりますとCランクパーティになりますけど、宜しいですか?」
「ええ、構わないわ」
しかしローラは気にする様子は見せず。そのままパーティ登録する。
「さて、これで私達はパーティメンバーになったから気合入れて行くわよ!」
こうして周りが若干騒つく中でパーティ登録が完了した。




