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食事をした後王都ミスティに向かおうとする。しかし、中々上手く事が進まないのが悲しい。何故なら昨日アンダーグランドに入ったイケメン青年とバッタリ出会ってしまったのだ。


「シュウ・コートニー!俺と勝負しろ!お前が教官に相応しい奴か見てやる!」


そう言うが否や剣を抜き此方に剣先を向ける青年。


「まあ落ち着けよ。そんなに鼻息荒くしても良い事無いぜ。それよりもだ、あの店に行って来いよ。結構ご飯美味かったぞ?腹が減ると苛つくのは仕方ないからな」


「朝食ならもう食べ終えている!」


「じゃあちょっと早いけど昼ご飯にしない?」


「要らん!」


全く聞く耳を持とうとし無いな。どうしよう?


「兎に角、お前がローラ教官を誑かしたのは知っている!無魔なのに教官を誑かした罪は許せん!」


ん?ローラ教官?


「まさか、エルフのローラの事言ってる?」


「それ以外に誰が居る!さあ、俺と勝負しろ!」


まさか此処に来てローラの名前を聞く事になるとはな。あ、でも新人教育してると言ってたしな。しかしローラの奴モテモテだな。こんなイケメン青年から慕われてるんだから凄いよな。


「なら先にギルドの訓練所を予約しておいてくれ。俺はまだやる事があるからな」


「良いだろう。今の内に首を洗っておくんだな!」


そう言って行ってしまったイケメン青年。ん?やる事って何かって?決まってるじゃ無いか!


「さて、王都に向かうか。万が一にも奴隷オークションに間に合わなかったら目も当てられんからな」


そう言ってサッサと城門に向かうのだった。


……


バイクを走らせながら思う。ローラは今どうしてるのかと。Sランク並の力を持つ様になったのだから、きっとあっという間にAランクになるのだろう。


「俺もせめてCランク。いや、Bランクまで行きたいな」


とは言うものの中々ランク上げは難しいのも事実だ。万年CランクやDランクの冒険者は珍しく無いからな。つまり、ランク上げは簡単に行くものでは無いと言う事だ。


「まあ、なる様になるしか無いかな?あ、燃料が少なくなってるな。しかも予備の燃料も全部戦車に入ってるんじゃなかったっけ?」


仕方無く途中で止めて水素製造機を出す。そして水を入れてから自家発電機を出す。


「さあ、行くぞ!!」


この後メチャクチャ自家発電機を回した。


「ゼェ…ハァ…ゼェ…ハァ、あ、相変わらず疲れる作業だぜ」


後は自動で水素を作ってくれるから良いけどさ。暫く休憩がてらのんびりするのだった。


……


水素を補給した後はアクセル全開で王都に向かう。道中は特に何かがある訳も無く順調に進んだ。毎回毎回厄介ごとに巻き込まれるのも如何な物かと思うけどね。そして夕方頃には王都ミスティに到着したのである。しかし、ミスティの周辺には航空艦が5隻停泊していた。恐らく旅団とか貴族辺りが停泊させてるのだろう。どの艦も鮮やかな色合いで、戦闘があった場合には速攻で狙われそうで心配だ。

航空艦を暫く見た後は、ミスティに入り適当な宿に泊まり奴隷オークション開始まで待つ事にした。


「さて、やるべき事はやった。金貨1392枚何とか用意できた訳だが」


普通こんな幸運は無いだろう。いや、普通に死ぬ一歩手前まで行ってたし幸運とは言えんかな?


「まあ、後は奴隷オークション開催日まで王都の観光と冷やかしでもするかね」


宿から見る景色を見ながら呟くのだった。



……


奴隷オークション開催日

遂にこの日がやって来た。朝から王都全体が盛り上がっておりお祭り状態だ。更に開催日1週間前辺りからお祭り状態になりつつ有ったので当日はかなり盛り上がっていた。この日の為にどれだけの人達が節約生活を送っていたのだろうか。考えて見て欲しい。奴隷とは即ち自分の物になるのだ。つまり奴隷とイチャコラしても誰も文句は言わないのだ!更に相手も満更でなければ、そのままゴールインな訳だ。そんな訳で会場付近の熱気が半端なくヤバイ。何というか金を握り締めた多数の男女が目をギラギラさせながらオークションが開くのをまっているのだ。


「俺はこの日の為に3年間酒も博打もやめて貯め続けたんだ!絶対に落としてやる!」


「早く開催しろよ!待ち遠しいぜ!」


「少年を私色に染め上げるのが楽しみなのよ」


「ふぅ……ふぅ……あ、暑いんだな」


何というか、俺もあの人達と同類なんだなと思うとかなりヘコんだ。


「しかし、熱気と体臭が酷いな」


恐らくだが、お風呂に入る事すら我慢した奴が多数居るのだろう。だからかなりキツイのだ。


「まあ、ガスマスクあるから別に良いけどね」


安定のガスマスクを付けていざ入場場所に並ぶ。場所は王都で一番広い場所の訓練所になる。普段は此処でラリア連邦所属の騎士や兵士に魔法使い達が切磋琢磨して居るのだが、今日に限っては周りの警護に当たってる様だ。


「次の人どうぞ」


俺は招待状を見せる。受付の厳つい男性は招待状を見た後人を呼んだ。


「どうぞ此方に。席まで案内致します」


別の人が来て案内してくれる。訓練所の中は天幕が掛かっており薄暗い雰囲気が出ていた。そして、奴隷が紹介される場所には舞台が用意され光が当たっていた。俺は招待状効果により前の席に座れる事が出来た。周りには既に何人かが座っていた。豪華なフルプレートを着込んだ人、紳士風な男性、でっぷりと太った男性、妖艶そうなマダム、他にも何人も座って居るが全員雰囲気が一般人とはかけ離れていた。


「此方が本日出品されるパンフレットになります。どうぞ」


「うん、どうも」


場違い感があるが仕方ない。俺も雰囲気だけそれっぽく見せる様にする。尤も、効果は薄い様だが。それからボニフェース・アトリー公爵も付人を連れて来た。そして全員の席が埋まる頃には奴隷オークションが開催時間になっていた。舞台の所に1人の男性が現れる。そして、自分の口に魔法陣を展開する。


「レディース & ジェントルマン!長らくお待たせしました。これより奴隷オークションを開始致します!!!」


ワアアアアアアアアアアア!!!!!!


凄まじい歓声と共に奴隷オークションは始まったのだ。奴隷達にとって運命の日となる。買われた人が善人か悪人かによって様々な運命を辿る事になる。だから奴隷達は必死に良い人に選んでもらう為にアピールをするのだ。まあ、悪人にもアピールする事になるから何とも言えんがな。

様々な欲望と生存競争が渦巻く奴隷オークションが開始されたのだった。


……


最初は普通の奴隷達が競りに掛けられる。しかし、どの奴隷達も様々な客達にアピールしていく。女達は扇情的に、男達は力強く主張してる。そして、その姿を見て誰もが熱くなる。そして、お互いの熱気に当てられた人々は次々と値段を跳ね上げていく。中には犯罪奴隷もいるが、容姿が良いとか戦闘力がある者達しか居ないため普通に売れていた。

そして、遂に限られた人だけが買える高級奴隷オークションに入った。


「さあ、皆さまお待たせしました。本日のメインイベントで最大の目玉商品達がやって参ります!全ての奴隷に礼儀作法に文字の書き取りなどが備わっています!更に貴方の欲望を快く受け止める器量の広さも備わっております!!!」


ワアアアアアアアアアアア!!!!!!

ピュー!!ピュー!!


「因みに高級奴隷にはしっかりとした立場が有りますので、拷問など無闇に暴力がされた事が発覚した場合には没収される可能性が有りますので悪しからず。それでは…高級奴隷オークションスタート!!!」


その言葉を境に次々と出てくる高級奴隷達。一目で分かるぐらい一般奴隷とは格が違うのだ。そう、立ち振る舞いや雰囲気が全然違うのだ。そして、俺の周りの人達が一気に動き出す。それと同時に値段も文字通り違った。そもそも桁が違うのだ。


「それではNo.6の此方の奴隷!珍しいハーフエルフになります!末端価格は金貨145から開始です!!!」


「金貨150!」「170だ!」「180……いや、200だ!」


とまあ、次々と値段が跳ね上がるのだ。正直に言おう。緊張し過ぎてトイレに行きたいっス!そして終盤になり最後の高級奴隷が紹介される。


「さて、本日最後の高級奴隷になります!皆様も何となく聞いてはいるでしょう。そうです、あの悪名高いサイレントラビットが今回の最後の高級奴隷になります!!!」


スピアさんが壇上の前に姿を見せる。いつも通りのメイド服姿だ。そして、その姿を見た人々は静かになる。


ザワザワガヤガヤ


「あれがサイレントラビット…しかし、何と美しい」


「綺麗だ…欲しい…欲しいぞ!」


「悪名?とんでもない!あれは最高の奴隷だ!」


「くそ!高級奴隷を買う権利なんて持ってねえぞ!」


会場に居る人々の声が大きくなる。


「それでは、最後の高級奴隷スピアの競りを開始します!!!」


その瞬間、怒号の様な歓声が瞬く間に会場に広がる。


「さあ、末端価格は…何と、破格の金貨300からスタートになります!!!コレは最後のオークションに相応しい価格帯だあああ!!!」


そして高級奴隷を買う権利を持つ人達が値段を次々上げる。


「350!!!」「370!!!」「400!!!」


そしてあの人も動き出した。


「金貨500」


ザワッッッ!!!


値段が一気に跳ね上がるの。だが、この中で俺も参加するの?正直……キツイよ。


「金貨500来ました!!!他はおりませんか?」


今しか無い。


「き、金貨550!」


その瞬間、俺に一斉に視線が向かれる。うはっ!ヤバすぎ!


「金貨570」

「金貨600!」


アトリー公爵が此方を睨むが無視する。そして段々と値段が釣り上がっていく。


「金貨…900」

「金貨1000!!!」


オオオオオオ!!!!!!


「す、凄いです!!歴代過去最高額の金貨950枚を上回りました!!!」


ワアアアアアアアアア!!!!!!


司会の言葉に観客は歓声を上げる。


「くっ…貴様!!!そんな金が有るのか!!!嘘を言うなら私自らが叩斬ってやるぞ!!!」


アトリー公爵が俺に対して怒鳴ってくるが知った事か。それに文句があるなら黙らせるだけだ!!


「…1392枚」


大して大きな声を出した訳では無い。だが、周りの人達が一斉に静かになる。


「えっと、今何と言いましたか?もう一度お願い致します」


「金貨、1392枚!!!銀貨25枚!!!銅貨……ええい!適当だあああああ!!!」


そう吠えながら金貨100枚単位で入った真袋を13個と92枚入った真袋を1個舞台に投げる。更に銀貨と銅貨も投げてやる。


「こ、コレは…少々お待ち下さい!!!」


係員を呼んで数え始める。そして、


「ほ、本物です。全て本物の金貨1392枚です!!!他に!!!他に誰か居りませんか!!!」


誰も彼もが沈黙する。そして遂に。


「落札です!!!金貨1392枚、銀貨25枚、銅貨253枚で落札されました!!!過去最高額を大幅に上回りました!!!」


ワアアアアアアアアアアア!!!!!!


歓声が轟く中、アトリー公爵は立ち上がり此方に歩み寄る。そして、俺に対してこう言った。


「その悪名高いサイレントラビットが欲しければ貴様にくれてやる!無駄な金を使ったな!」


そう言って付人を連れて去って言った。


「無駄かどうかはアンタが決める事じゃ無いだろ」


こうして欲望渦巻く奴隷オークションは幕を降ろしたのだった。


……


奴隷オークションが終わった後は主従の儀式をする為、別の部屋に来ていた。其処にはウィリスさんが居た。


「おめでとうコートニー君。まさかアレだけの金額を用意したとは正直驚きだよ」


「自分でも良く集めれたなと思います。後は運が味方してくれていたのでね」


「そうか。スピア、君には感謝しているよ。短い様で長い間の護衛ご苦労様」


「此方こそ色々お世話になりました。ウィリス様もどうかお元気で」


ウィリスさんとスピアさんの間には、ちゃんとした繋がりが有るのだろう。お互いに握手しながら最後の別れを終える。


「さて、新しい主人が待っている」


「はい。それでは」


スピアさんはウィリスさんに頭を下げてから魔方陣の中に入る。


「えー、それでは主従の儀式を始めます。宜しいですかな?」


そして、遂に主従の儀式が始まる。


「まさか、本当に買って頂けるとは思いませんでした」


「まあ、俺に出来るのは此処までですけどね」


「?」


スピアさんは首を傾げる。


「スピアさん。俺は貴女と出会えたお陰で此処まで生きて来れました。未だに人を撃つ事には抵抗はありますが、それでも撃つべき時には撃てる様になれた。殺せる様になれた」


「コートニー様……」


「だから、俺に出来る事があるなら言って下さい。今なら、まだ間に合います」


結局、俺は奴隷を持つ事に抵抗が有るのだろう。確かに大金…と言うか無一文になったが、これから先の生き方からすれば安い物だろう。


「そうですか。でしたら…私を」


スピアさんは口を開いて俺に伝える。俺はそれを全て受け入れよう。例え解放してくれと言うなら喜んで解放しようじゃ無いか!


「貴方の奴隷として側に居させて頂きます」


「勿論!さあ、どうぞ!!!…あれ?」


「あ、では儀式始めますね」


その瞬間、魔方陣が輝き出して俺とスピアさんの間に糸らしき物が繋がる。そして、胸辺りで糸が消えていく。そしてスピアさんの首輪が一瞬光、紋章が刻まれた。


「コートニー様、これから末長く可愛がって下さい」


そう言うと、何処ぞの御令嬢の様にスカートの裾を持ち上げるのだった。



小話


ウィリスさんにお別れをして、奴隷オークション会場から出て俺はスピアさんに言う。


「さて、スピアさん。我々は今重大な「奴隷にさん付けは必要ありません」あ、はい。ゴホン!兎に角重大な危機に陥っています!」


「重大な危機ですか?」


「プキュ?」


スピアとクロはお互い首を傾げる。


「そうです。それは…お金が無い。完全に無一文です」


一陣の風が吹く。何だか申し訳なく思えて来てしまう。


「でしたら、今から稼ぎに行きましょう。幸いこの辺りでの仕事には事欠かさないでしょうし」


こうしてギルドに向かい仕事を探す。だが、結局常時討伐が1番簡単だと分かり直ぐさま討伐に向かったのだった。


……


side ボニフェース・アトリー公爵


「サッチ、この金を使い作戦の予定を速める」


「サイレントラビットは宜しいのですか?」


サッチがサイレントラビットについて聞いてくる。だが、手に入れるチャンスを一度失ったのだ。固着して手痛い目に合う事は無いだろう。


「ふん。手に入らないなら別に構わん。それに、何故だろうかな。あの無魔に関わると碌な事が無い様に感じるのだ。兎に角、サイレントラビットを買う予定が無くなった金だ。しっかり有効活用せよ」


「畏まりました」


サッチは影の中に消えていった。


「全く無駄な時間を過ごした。まあ、サイレントラビットは探せば他にも居るだろう。それを後々手に入れれば良いだけだ」


今はこの国、ラリア連邦全てを手に入れるのだ。私は改めてアトリー家の悲願を達成させる為に動くのだった。


side out


side サッチ


「やれやれ、思ってたより優秀な主人で助かりましたよ」


彼処でサイレントラビットに固着してれば見切る予定でしたがね。


「さて、折角の大金です。これは有意義に使いませんとね」


主人の目的を達成させる事は、我々にとってもメリットは大きいのですからね。私は別の部隊に召集命令を出します。そう、我等がアーカード帝国の為にね。


side out

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