35
退路を断たれてしまった状態での戦闘を余儀無くされてしまった訳だが、90㎜の砲弾は亀の化け物には充分対抗出来る筈だ。
「来るなら来い!吹き飛ばしてやる!!」
照準を亀の顔面に向ける。狙いを定めようとしていたら、亀の甲羅のクリスタルがまた輝き出した。
「やらせるか!」
亀の顔面に向けて発砲。だが、クリスタルが更に輝き雷が亀全体を包み込み砲弾を弾き飛ばした。
「何っ!?なら連続射撃だ!!」
次々と砲撃する。だが、全ての砲弾が弾かれてしまう。更に亀のクリスタルが輝き出し、雷が勢いを増す。
「さっきの攻撃か。クロ合図と同時に左に切るんだ!」
「プッキャ!」
そして亀の攻撃をしっかりと見る。いつでも合図を出せる状態になる。だが、亀の攻撃は先程とは違っていた。
「グガアアアアアアア!!!!!!」
咆哮と共にトンネル全体に雷が迫って来たのだ。つまり、逃げ場は無い。
「っ!?クロ伏せろ!!!」
次の瞬間凄まじい衝撃と共に意識を失った。
……
「ん…はっ!?ど、どうなってる!?」
目が覚めたら警告音が鳴り響き、車内は非常灯で赤色になっていた。更に火花が散ってるし、煙が車内に充満していた。多分気絶して10秒ぐらいだろう。
ズシン……ズシン……ズシン……
そんな中、亀の近づいて来る足音が聞こえた。
「も、モニターは?敵はどうなってる?」
モニターは若干荒れ気味だったが何とか見える状態だった。しかし、ライトが消えしまっており何も見えない。暗視装置に切り替えると画質は荒れていたが亀の化け物がゆっくりと近づいて来ているのが見えた。どうやら勝者の余裕と言うやつだろう。
「クソ!エンジンが止まってる。サブシステムで起動出来んのか?」
モニターで確認して起動する様にしても動く気配は無い。どうやらサブシステムのバッテリー出力不足の様だ。
「なら、直接メインバッテリーに繋げるまでだ」
蓋を開けると煙が大量に出て来たが構うもんか!エンジンのバッテリーシステムのコードを見る。
「コレがこのコードで?それで、コレを繋げるのか」
サブバッテリーのコードを切り離しメインバッテリーに繋げる。だが、動く気配が無い。
「何で動かない!畜生!動けっての!?」
エンジンを蹴り飛ばすがウンとも動かない。そして、戦車越しでも振動が大きくなってるのが分かる。分かるからこそ動けよ!?
「だったら直接動かすまでだ!」
自家発電機を出してバッテリーシステムに繋げる。そして一気に自家発電機を回しまくる。
「この野郎おおおおおお!!!動けええええええ!!!」
兎に角我武者羅に回した。こんなピンチな時はな気合いと根性と勘に頼るしか無いんだよ!!!
「根性見せろやあああ!!!戦車の名が泣いてんだよおおおお!!!そんなんだからパワードスーツに負けてんだよおおおおおお!!!」
そう叫んだ瞬間、奇跡が起きる。
ウイイィィィン ブオオォン!!!
エンジンが掛かり、車内も通常照明に戻る。
「クロッ!起きてるか!」
「プ…プゥ」
ダメージを受けてる様だが意識はあるみたいだ。そしてモニターを見ると敵は目と鼻の先に居た。
「ロトを前進させろ!!!全速前進だ!!!」
「プ、プキャ!?」
その瞬間ロトは一気に走り出す。敵との距離がみるみる縮まる。敵は大口を開けて咆哮を上げる。だが、そんな咆哮は効かん!そして衝撃がロトに走る。モニターを見ると主砲が亀の口の中にモロに入ってしまっていた。そしてそのまま主砲を喰おうとしていた。
「ロトの主砲を喰おうとするんじゃねえ!!この暴食亀が!!そんなに食いたければ、俺がたらふく食わせてやるよ!!!」
弾をHE弾に切り替える。
「サービスだ!!!特盛で食えやああああ!!!」
俺は発射速度をコンマ0.5秒に設定して主砲のトリガースイッチを押した。主砲から90㎜弾が次々と発射される。然も、主砲は奴の口の中。そして、奴の内部でHE弾が炸裂する。次の瞬間、大爆発をしながら亀が思いっきり爆散した。そしてロトや周りの壁に大量の血や肉辺やらが飛び散る。主砲は湯気を出しており、モニターを見ると発砲不可の表示とアラームが鳴っている始末だ。だが、それよりもだ。
「勝てた…のか?」
俺達は生き残る事が出来た。それを実感したら身体の力が抜けた。
「はぁ、死ぬかと思った。クロ無事か?」
「プキュ!」
クロも平気な様で良かった。この後暫くロトの中で脱力してしまっていたのは仕方無い事だった。
「あ…ロトが血塗れじゃ無い?うわぁ、コレどうしよう?」
ロトの修理や血も洗い流さないといけないなと考えながら。
……
暫くロトの中に居たが外に出て見る事にする。しかしPDAから強い放射能反応が出た為、急いで耐放射能防具服を身に付ける。
「クロは外に出るなよ。危ないからな」
クロを車内に残して亀の死体まで見に行く。
「うわー…頭が砲身に付いたままじゃん。これどうしよう?」
物の見事に砲身を咥えた状態で頭だけが残っていた。この頭剥製に出来るかな?それから死骸に近付くが、はっきり言ってかなり惨い状態だった。体内でHE弾を何発か撃ち込んだ為、その爆発力で一気に破裂したのだ。
「まだミンチの方がマシだよ」
因みに甲羅とクリスタルはほぼ無傷だった。しかし、放射能がバンバンに出てるのをPDAで確認出来た。
「取り敢えずPDAに収納しておくか。じゃ無いとずっと放射能を撒き散らすだろうし」
仕方なくPDAに甲羅とクリスタルを収納する。すると、PDAからメッセージが流れた。
《パワードスーツ用のバッテリーの充電には充電装置が必要です》
どうやらこのクリスタルは原料になるらしい。つまり、充電装置を見つけて直してバッテリーにクリスタル内ののエネルギーを移せばパワードスーツの着用も夢では無い!
因みに甲羅とクリスタルを収納したら放射能が段々下がって来ていた。やはりあのクリスタルが原因だったらしい。更に亀の死骸を漁ってると、かなり大きい丸い魔石を見つけた。恐らく亀の体内に入っていた物だろう。両手で一杯になる大きさなのは吃驚した。
「この魔石は良い手土産になりそうだな」
流石に通路確保しただけではインパクトが無いだろう。なら、この魔石を渡せば確実に金貨500枚は確実に貰える筈だ。後はロトに戻る。そしてロトを見ると案の定血塗れだ。
「全部終わったら洗車するからな。もう少し頑張ってくれ」
ロトに語り掛けながら外付けライトをPDAに収納して直す。そしてライトを取り付けてから車内に入る。因みに頭も収納しました。
「よし、戦車前進」
エンジンが唸りながら走り出す。走行には問題無さそうだ。この後は平和な探索でアンダーグランドを進んだ。そして俺がクロの代わりに魔石を置いて行く。まあ、適当に放り投げてるんだけどね。それから暫く走り続けて出口に着いたのだった。
「太陽の光が身体に沁みる〜。ん〜最高!」
こうして俺達はアンダーグランドに安全な道を作る事に成功した。後はギルドマスターのサイラスさんに任せれば大丈夫だろう。少なくともサイラスさんに不利な状態じゃ無いしね。暫く太陽の光と外の新鮮な空気を堪能したのだった。
……
一方その頃のローラとサラはと言うと、ローラは旅団を抜ける準備を終えて出て行く所で、レイスと他のメンバーに引き止められていた。
「本当に出て行くのかな?今ならまだ間に合う。考え直さないか?」
「遠慮するわ。それに私これからシュウを追わないとけないから。それで一発殴るわ!」
レイスの引き止めには応じる事無くシュウを追う事を選ぶ。そして握り拳を作る。
「だが、ローラ。今旅団を抜けると、やはり戦力的に厳しい所があるんだ。だからもう少しだけ在籍して貰えないだろうか?」
「悪いけど無理よ。貴方達全員が悪い訳では無いのは理解してる。けど、気持ちはもう離れてしまってるもの。逆にそんな状態で旅団に残ったら迷惑以外何物でも無いわ」
ローラは今の自分の気持ちを素直に伝える。それを聞いてレイスと他のメンバーは諦めた表情をする。
「そうか…分かった。これ以上無理に引き止めないさ。だが、また戻りたくなったらいつでも戻って来るといい」
「ありがとう、レイス」
レイスとローラは最後に握手しながら別れる。
「所でサラはどうだい?我々の旅団に入らないか?」
「私も遠慮するよ。私は基本はソロ活動なのでな。まあ、それに今回はローラの付添いみたいなものだしな」
「ちょっと、付添い付いてどういう事よ」
「ローラが誰かに騙されたり、悪い奴等に連れて行かれないか心配なのさ」
「そんな事無いわよ!それに、私は強いんだから逆に痛めつけてやるわよ!」
サラの言葉に反論するローラ。しかし、サラはやれやれと大袈裟なジェスチャーをするに止まる。すると、向こうの方から誰かがやって来た。
「教官ー!ローラ教官!待って下さい!」
ローラにゾッコンの青年と仲間達がやって来た。
「ローラ教官、本当に旅団を抜けるんですか!?そこまでして追う価値のある人物なんですか!?」
「そうよ。私にとっては大切な人だもの。それに、シュウ1人だけだと色々心配なのよ。だから…私が一緒に居てあげるのよ」
その瞬間乙女になるローラ。そんなローラを間近で見た旅団メンバーは思わず見惚れてしまう。
「っ!教官!俺、俺!ローラ教官が好きです!だから一緒に居て下さい!!」
「え?無理よ。私シュウを追うもの」
青年玉砕!?そして容赦無く切り捨てるローラ。
「なっ!あ…あう」
青年はショックで膝をついてしまう。まさか即答されるとは思って否かったのだろう。そんな彼に誰も声を掛けれない。まあ、彼処までバッサリ切り捨てられたらフォローしようが無いけど。
「それじゃあ私達行くから。サラ行こう?」
「はぁ。まあ、元気だせ青年。それではレイスガーディアンズの諸君。元気でな」
こうしてローラは旅団を抜けサラと一緒にシュウを追うのだった。
「ローラはシュウ君の居場所に心当たりはあるのか?」
「ええ。この前門番の人に聞いたら教えてくれたわ。首都の方に歩いて行ったそうよ」
ローラは今まで諦めず聞き込みをしていたのだ。そして遂にシュウが首都の方向に向かった事を突き止めたのだ。因みに最初に門番に訪ねた時はシュウの事を知らなかったのだ。
「そうか。なら馬車乗り場にでも行くか」
こうしてローラとサラはシュウを追う事にしたのだった。ただ、サラの場合はローラの付添いなのだが。




