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32

翌朝


俺は朝食を頂き、その後弾薬、食料等の装備を整えてから直ぐに工業都市メイフィスに戻る事にした。


「それでは、色々お世話になりました」


「コートニー君、道中気を付けたまえ。達者でな」


「はい。スピアさんもありがとう」


「コートニー様、ご無理はなさらぬ様に」


バイクを出しエンジンを掛ける。


キュルルル ヴオオオオオン!!!


「今は多少の無理はしないと駄目なのさ。それじゃあ!」


バイクを加速させる。さあ、行くぞ!俺は再び工業都市メイフィスに戻るのだった。


「メイフィスにはレイスガーディアンズが居るから、ローラも居る訳だよな。見つかったら怒られるかな?」


それとも無視されるかだな。いや、多分見つかったら怒られるな。その時は素直に謝ろう。せめて軽い怒られ方が良いなぁと思いながらバイクを走らせるのだった。



……


工業都市メイフィスまでは半日もしないうちに着いた。ついでにレイスガーディアンズの戦艦も停泊していた。俺はそのままギルドに向かう事にした。まだ夕方前の時間だった為、ギルドには人は少なかったのは好都合だ。


「すみません。突然ですけど、ギルドマスターと話がしたいのですが」


「サイラス様にですか?如何言ったご用件でしょうか?」


「ギルドの床下にあるアンダーグランドの件について。自分の名前はシュウ・コートニーです。多分それで通じます」


「分りました。少々お待ち下さい」


余り待つ事無くサイラスさんの部屋に呼ばれた。


「まあ、そこに座り給え。さて、アンダーグランドについての話か。つまり、君は今の状況を多少なりとも知ってる訳だな?」


「はい。まだ通路確保が出来ていないんですよね?」


俺はウィリスさんから聞いた事を軽く話す。


「その通りだ。現在レイスガーディアンズは戦力補充の為身動きが取れない状況だ。然も外部に情報が漏れ始めている事を考えると、他の旅団や高ランクの冒険者、もしくはラリア連邦上層部が直々に出張って来る可能性がある」


つまり時間がない訳だ。よし!今がチャンスだ!


「俺は利権は要らない。それに他の通路もあるから迷う可能性も有る。だけど、俺なら平気だ」


「成る程な。流石は二度のアンダーグランド経験者は違うな。なら、何が目的だ?」


「最低でも金貨500枚は必要」


その言葉を聞いてサイラスさんは顔を顰める。


「金貨500枚か。以前は金貨600枚だったな」


サイラスは席を立ち窓から外を見る。


「金貨500枚なら用意出来る。最悪私の私財から出せるからな。だがこれ以上は出せんし、何としても通路確保して貰わなくてはならん。分かるな?」


俺は頷く。


「なら決まりだ。灯り用の魔石を用意しておこう。そして、何時に行ける?」


「今夜にでも」


「宜しい。なら、ギルドの仮眠室を貸そう。そこでゆっくりと休むが良い」


俺はギルドの仮眠室を借りて寝る事にする。


「クロ、この先厳しい戦いになる。それでも付いて来てくれるか?」


「プキャ!」ポヨン


多分大事だろう。なら、ゆっくり休むとしよう。


……


自然と目が覚めた。


「はぁ、やっぱり緊張してるよなぁ」


いや、きっと緊張では無く。その時、ノックの音が聞こえる。


「コートニー様、そろそろ準備をお願いします」


「あ、はい。分りました」


俺はクロを連れて行く。アンダーグランドに再度突入する為に。


……


「おはよう。よく眠れたかな?」


「お陰様で」


「ならこの照明用の魔石を持って行くと良い。その灯りがあれば我々でも探索、調査が可能になるからな」


大量の魔石を渡される。よく見ると全ての魔石が同じ大きさだったから、人工的に作ったやつだろう。


「よし。クロ、魔石を収納してくれ」


「プキュ」


クロは全ての魔石を収納する。よく収納出来たな。自分の装備を再度確認する。M16A4を持ち、モスバーグM500を背負う。M92にサバイバルナイフ、ヘルメットにフェイスガードに防具も良し。ライト等の明かりも大丈夫だ。後は手榴弾が1個と閃光弾が2個だけなのが心許ないけどね。


「さて、行きますか」


俺はギルドの床下に入って行く。そう、緊張や興奮などは無く恐怖をを抱きながら。


……


アンダーグランドは照明が点いており明るかった。俺は通路を見る。片方は塞がっており、もう一方は塞がってなかった。


「つまり、その先が未探索な訳か」


どうやら最初に来た通路の確保を優先しているみたいだ。まあ、俺ももう一度ローラと脱出した方に行ってくれと言われても拒否したいがな。まだ路線には明かりが点いている。恐らくレイスガーディアンズの二軍メンバーの救助の為に付けられたものだろう。そして、暫く先に進むと明かりが無くなり暗闇だけの世界になる。


「すう、ふう…。よし、行くぞ。クロ照明用の魔石を頼んだぞ」


「プキュ!」


フェイスガードとヘルメットをしっかり固定してヘルメット、M16A4、左肩に付けてるライトを点ける。ライトの光だけが頼りになるこの世界。誰も好き好んで行く奴は居ない。だが、行くしか無い。幸い一度通った道だからPDAにはしっかりと記録されてる。それだけでも迷う事は無いだろう。

暗闇をライトの光を当てながら歩く。以前はしっかりと見る事は無く来たが、今回はある程度見た方が良いだろう。じゃないと色々問題が起きそうだしな。こうして俺とクロは路線を歩きながら魔石を落として行く。


「しかし、相変わらず不気味な所だよな。音楽でも聴きながら行く?いやー、そうしたいけど無理だよな」


いきなり敵が出て来たら対処に遅れるしな。


「早く魔石置いて、探索も済ませて行くぞ!」


「プキュ!」


俺は気合を入れて行くのだった。


……


暫く先に進むと通路は二手に分かれいた。片方は通った事のある通路だ。なら、もう片方の通路に行くしか無いだろう。慎重に前に進んで行く。今の所気配も無いし順調と言っても良いだろう。


(このまま何事も無く済めば最高だけどな)


しかし、周りを見渡すと所々に穴があるのだ。つまり、この区域は恐らく敵のテリトリーの可能性が高い。


「クロ、警戒をしっかりしろ。此処は結構ヤバイぜ?」


「プキュ」


警戒しながら歩き続ける。そして、遂にその時がやって来た。


「プ!プギュ!!」


「ッ!後ろからか!」


俺はしゃがみながらM16A4を構える。クロもUMPを2丁構える。そして多数の唸り声と足音が此方に近付いてくる。


「毎度毎度!お世話になってるなネズミ共!くたばれ!」


俺は連中が見えた瞬間引き金を引いた。それと同時にクロもUMPを撃ちまくる。M16A4とUMPの合計3丁の弾幕は凄まじい物だった。敵はジリジリと迫って来てはいたが、M16A4の威力の前に為すすべ無く死んで行く。そして、UMPの弾幕により足止めされてる流れになっていた。


「よし、これならイケるぞ!殲滅するぞ!」


「プキャ!」


俺達は敵の攻撃を食い止めた。間違い無くM16A4とUMPの火力のお陰だろう。


「この調子なら…いや、デカイ奴は無理かな?」


油断して死にましたなんて洒落にならんからな。それに、また敵が攻めてくる前に先に進んだ方が良いだろう。そのまま暫く歩き続けると駅のホームに着いた。


「コッチも結構近かったんだな。敵はグールが数体居るだけだな」


ライトの光に釣られて呻き声を上げながらやって来る。しかし、此方の一方的な戦いになり呆気なく終わってしまった。一応駅のホームも探索するが何も無かった。精々瓦礫や埃が積もってるのと、電車が脱線してホームに突っ込んでるぐらいだ。仕方無く先に続く通路も有ったので進む事にする。しかし、ある程度キリをつけないと時間が無くなるだろう。例え金貨500枚を手に入れたとしてもオークションに間に合わなければ意味は無いしな。オークションまで後1ヶ月も無いのだからな。

先に進もうとした矢先……それは突然起きた。いきなり周りの光景が変わった。


ガヤガヤ ガヤガヤ


「間も無く、2番線に電車が通ります。黄色の線までお下がりください」


プアアアアン


意味が分からなかった。だが、間違い無くこの光景は知っている。俺の周りには会社員や駅員に学生が沢山居たのだ。これは朝のラッシュ時間か?その時、突然振動と爆音が響いた。


「きゃあ!何?」「一体何の振動だ?」「おい、今から仕事なんだぞ!」「押すなよ!危ないだろ!」「皆さん!落ち着いて下さい!駅員の指示に従って下さい!」


その時、電車が走って来る。しかし、音が妙に荒れてる音だ。


「電車が突っ込んで来るぞ!?」


誰かがそう言った。その瞬間周りはパニックになる。何処から突っ込んで来るか分からない。


(確か2番線から電車が来る筈!)


俺は2番線から急いで離れる。そして、次の瞬間……


ギイイィィ!!!ガジャアアアアン!!!ガジャアアアアン!!!


電車は多数の人を巻き込みながら駅のホームに突っ込んだ。そして、光景は元の暗いホームに変わった。


「ッ!な、何だ?今の光景は…駅に、乗客に電車まで。え?まさか今の過去の光景だよな」


つまり…ホラー展開に突入ですか?


「本当にやめて下さい!」


塩とお札を大量に買っておけばよかったと思った。


(あ、ちょっとトイレに行きたくなった。でも、せめて此処から離れた場所でやろう)


急ぎ足で駅のホームから離れたのだった。


……


あの後、用を足して急いで先に進む事にした。どう考えてもあの場所に留まらない方が良いだろう。それにしても、過去の光景を見る事になるとはな。もしあの時、2番線から離れなかったら俺は…死んでた?


「マジかよ。勘弁して欲しいね」


独り呟きながら先を見据える。しかし、クロのやつは平気そうだ。あの光景を見ていないのか?それとも『女神の加護』の影響で平気なのかも知れないな。それから暫く歩き続ける。中々探索も敵の対処も順調な感じだと思っていた。しかし、アンダーグランドの化け物達は甘くは無い。


ズウウウゥゥン……


「何だ?地震か?」


俺は周りを見渡す。すると振動は何度も繰り返す。しかも徐々に大きくなってる。


「何処から来る?クロ!背後を警戒しろ!」


「プキュ!」


俺は前を、クロは後ろを警戒する。そして化け物が牙を剥く。

突如目の前の壁が爆発した様に弾け飛ぶ。しかし、土煙で何も見えない。だが何かが居る。


「グルルルル」


土煙の中唸り声が聞こえる。そして、徐々に土煙は晴れていく。そして、ライトの光に反射して赤い目が見えた。それと同時に巨大な姿も確認した。一言で言うなら亀だ。甲羅にはクリスタルが大量に付いている。そして、凶悪な顔に強靭そうな顎。


「な、何だ…此奴は」


「グガアアアアアアア!!!!!!」


巨大な亀の化け物は俺に向かって吠えたのだった。


……


その頃のローラ


「はぁ…」


「ローラ、何時迄も溜息を吐くな。此方まで気分が下がってしまう」


「ごめん…はぁ」


ローラはサラと一緒に晩御飯を食べていた。この2人、実は昔からの腐れ縁という奴だ。


「後少しで旅団を抜けれるんだろ?そうしたらシュウ君を探せば良いじゃ無いか」


「分かってるわよ。兎に角、早くシュウを探しに行きたいのに」


「まぁ、なんだかんだと言ってシュウ君の言葉を律儀に守ってる辺り偉いよ」


「ふん!別にそんなんじゃ無いわよ」


シュウが居なくなった後も旅団の新人の指導は辞め無かった。


「私は大人なのよ。途中で投げ出す訳ないでしょう」


「以前なら人間の面倒なんて嫌!とか言ってそうだがな」


「ふん…」


この2人は仲が良いのだろう。しかし、そんな中話し掛けてくる連中が居た。


「あっ!ローラ教官!今お食事ですか?自分達もご一緒に良いですか?」


中々のイケメン青年がローラに話し掛ける。如何やら旅団の補充メンバー達の様だ。


「遠慮するわ。私は静かに食べたいの」


「そう言わずに。ほら!皆んなも机と椅子を持って来てくれ!」


イケメン青年の言葉に苦笑い気味になるが、机と椅子を用意し始める。そして、イケメン青年はローラにお熱のご様子だ。


「はぁ…最悪」


「しっかりと断れば良かろう?」


「断ってるわよ。何度もね」


それを聞いてサラは肩をすくめるしか無かった。この後、旅団の補充メンバー達はサラとローラに話し掛けながら食事をする。特にイケメン青年はローラに話し掛けまくる。


「はぁ…早く旅団抜けたい」


如何やらシュウを探すだけでなく、本当に旅団から抜けたい様だった。


「シュウに会ったら絶対に殴るわ」


「程々にな」


流石のサラも止める気は無い様だった。

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