唐突だが、俺は自分の名前を思い出せない。しかし、記憶はある。両親の存在、友達、学校のクラスメイト等キチンと覚えてる。だが、不思議な事に顔はうる覚え状態。ただ、周りの情景も記憶にある。最後の記憶にあるのが普通に自分の部屋で寝る瞬間…だと思う。
「で、此処は何処なんだ?」
結局、記憶を溯ろうとも今いる場所には見当が付かない。そもそも今座ってる所も変だ。カプセルから出てこれた感じだ。俺の横にもカプセルはズラアアと並んでるが、中は空っぽ。
「取り敢えず腹減ったな」
こんな状況でも腹減るんだなと感じてしまった。
……
自分の居る薄暗い部屋を調べてみた。人一人が入るカプセルは全て空っぽ。ただ、タッチパネルがあり見てみた。すると如何やら冷凍保存されていたみたいだ。空のカプセルのパネルを見てみると、破棄されたと書かれてた。
(破棄?カプセルの中に居た人は死んだの?)
俺は怖くなって部屋に繋がってる扉に向かう。カプセルは10個並んでる。その内俺を除いた9個が空っぽ。兎に角部屋を出る事にした。ドアは自動スイッチ式で軽い音と共にアッサリ開いた。俺は廊下に出て周りを見渡す。部屋もそうだが廊下も明るいがお世辞にも綺麗とは言えない状況だ。
どう見ても争いが有りましたと言わんばかりの状況だ。右側は机や椅子、ロッカーが積み上げられて通れそうに無い。仕方なく左のへ行く。しかし、無人の廊下に争いの形跡。
「あの、俺ホラー系とか苦手なんですけど?」
今直ぐ元の部屋に戻りた…いや、彼処も大概だからダメだ。へっぴり腰で歩きながら他の部屋を見ていく。だが、どの部屋も荒れてる状況だ。
「せめて誰か居ないかな?本当に怖いんですけど」
床に誰かが倒れていた。しかし白骨化していた。
「死体かよ!無理だって本当に!あれ?白骨?」
俺は白骨死体に近づく。どう見ても数年以上経ってる死体。つまり、この事から考えられる事は。
「俺しか居ないの?…マジで?」
白骨死体を見ながらそう呟いた。
死体には銃と警棒があった。リボルバータイプの銃であったが撃った事も無いし触った事も無い。しかし持って行く。警棒ならただ振り回せば良い訳だから気楽だ。
「出来れば新品の靴が欲しい。死体から靴を取るのは無理です」
それから施設内を探索する。今居る階層は2階で全部で2階、1階、地下1階、地下2階ある。そんな中ある部屋に入ると厚さ5cmぐらいで液晶画面の何かとリボルバータイプの銃、サバイバルナイフが置かれてた。多分この部屋はメカニックっぽい人の部屋だろう。
「昔の携帯か?如何すれば動くんだ?」
携帯だと思われる物を弄ってると、横にスイッチがあり押す。
ピピ……ピコーン♪ピキーン♫
「え?何この起動音ちょっとカッコいいんですけど!」
すると携帯から指示が出た。
《腕に取り付けて下さい。取り付けたらタッチして下さい》
指示がある通り左腕取り付けてタッチする。すると腕に痛みが走り、次の瞬間頭に激痛が走る。
「な!痛っ!なんだこれ!」
更に身体にも一瞬痛みが走りビクッとする。
「イタタ、何だこれは不良品か?…ん?次の指示か?」
《武器の取扱い、整備のアップデート完了》
《文字、語源の最新版をアップデート完了》
《身体状態の確認ステータス同期完了》
《戦闘補助機能スタンバイ完了》
《収納機能スタンバイ完了》
「な、何だコレは?携帯じゃなくPDAか。それに、この銃はニューナンブM60?」
武器の取扱い方が分かる。つまりそういう事ね。でも出来れば痛みがある事を言って欲しかったな。
暫くニューナンブM60を構えたり、リロードしたりとやってみたがスムーズに出来た。序でにこのPDAを作った奴の日記帳を見つけたので読んでみた。
6月11日
シェルターの外出部隊が全滅した。だから早期に内部の引き篭もり連中を使える人材を育てあげろと言われた。んな事出来るか!馬鹿じゃねえの?
6月15日
彼処まで馬鹿にされたから適当に作ってやった。全員が身に付けてるPDAから脳に直接データを移す。簡単な事だが…まあ、副作用として味覚が無くなったり下半身の機能が無くなったりと色々あるが知ったことか!
6月21日
軍事用PDAなら上手くいった。でも内緒にしておく。あのハゲ散らかした監督官のドヤ顔なんて見たく無い。
6月29日
何か一部の住民が暴れてる。アレか?下半身の機能が無くなったから絶望したか?今更、外の世界も絶望的なんだ。下半身ぐらい絶望したぐらいでギャーギャー喚くんじゃねえ!
日記を読み終え暫く目を閉じる。つまりこのPDAを取り付けると不能になるのか?
「俺の下半身大丈夫か?大丈夫だと言える確証を得なくては!」
俺は不安になりエロ本を探しまくる事にした。
……
結果は白だったよ。良かった本当に。どうやら軍事用PDAだった為無害だった様だ。かなりホッとしたよ。因みにエロ本はPDAの収納機能を使って大切に保管しました。それからPDAの収納重量を見ると∞だった。
「バグったのか?でも、収納重量が∞は普通は無いだろう」
取り敢えずPDAの収納に関しては一端保留にして置いて、ニューナンブM60装備して先に進む。2階に関しては通路が殆ど潰れてしまっていた。しかし、1階に繋がる階段は半壊していたが何とか降りて1階の探索をする。
「しかし、本当に酷い有様だな。こんな狭い所で争ったのか?」
もしかして、あのPDA事件により起きたとか?
「いやいや、無いわー」
更に探索し続けると遂に靴を見つけた。それだけでは無くこのシェルター内部警備部隊の服装とヘルメットを手に入れた。ヘルメットの顔部分はマジックミラー仕様で表情が見えなくなってる。そして服装は防刃チョッキに肘、膝、肩にプロテクターがある。色は紺色で警察官の制服みたいだな。それからガスマスク、ライト、ニューナンブM60、サバイバルナイフ、暴徒用シールド等多数見つけたのは良かった。更に体力回復のヘルスチャージ、対放射能用のRADディフェンダー、浴びた放射能を下げるRADキャンセルを少し手に入れた。しかし問題も有る。
「食料が無い。お腹空いたな」
そう呟くと虚しく腹の音が響いたのだった。




