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勇者と魔王のバカンス先がカブっちゃった話

作者: かすたどん

コンセプト : テーマが『禁断の恋』だけど明るく読める話。

文字数 7000前後。制作期間1ヶ月(同時進行だったので実質1週間くらい?)

 

 Q.バカンスに行って一番気まずいことは?

 A.知り合いとばったり出くわすこと。


 だとすれば。

 バカンス先で宿敵に出くわした時の気まずさはどれほどのものだろう。



 ★★★★★★★★★★



「ま、魔王! なんでお前がここに⁉︎」

「ゆ、勇者! あんたこそどうして⁉︎」


 青い空と白い雲をバックに少年と少女の驚きが重なった。

 場所は世界有数のリゾート地、マーリット。

 常夏の香りがする開放的なビーチで。

 先祖100代に渡る因縁の宿敵はバッタリ出くわしたのだった。


「ここで会ったが100年目! 今日こそトドメを刺してやる!」


 先に声をあげたのは、最近代替わりした新人少年勇者。

 古今東西の創作物と同じくこの世界の勇者も魔王の討伐を狙っている。

 現在は王からその功績と血統を讃えられ冒険者パーティでバカンス中。

 ちなみに、1番楽しみにしてきたのは夜のバーベキュー。


「ふん、やれるものならやってみなさい!」


 勇者の声で我に帰って睨むのは、こちらも最近代替わりした新人少女魔王。

 艶やかなボブの髪と人間離れした白い肌が、大胆な黒い水着によく映える。

 古今東西の物語と同じくこの世界の魔王も勇者を迎え撃つ役割がある。

 こちらは魔王城の職員と年に一度の慰安旅行。

 実は昨晩は寝巻きの下に新品の水着を着て寝ていたらしい。


「前回は俺たちの勝ちだったな」

「ふん、前のことなんて関係ないわ。大事なのは今だけよ」

「だから今回も俺たちが勝つって言ってるんだよ」

「1年前に3連敗して泣きながら帰った奴がなんか言ってるきもーい」

「大事なのは今だけって言ったのはお前だろ⁉︎」


 幼稚な口喧嘩をしながらも戦闘の準備を進めるあたり、2人とも手練れだ。

 勇者は魔王を威嚇するようにスイカ割りのバットを振りぬく。

 魔王は水晶に見立てたビーチボールを構える。

 どっちも満足に戦える装備ではないというのは置いといて。

 そしてそのまま宿敵同士、100代目の誇りと意地をぶつけ合ーー



「はいストーップ」



 と。

 どこからともなく声がして、次の瞬間には割って入られていた。

 現れたのは地元ギルドの受付嬢。

 1ミリも動かない張り付いたような笑顔がやたら怪しい。


「なんだお前邪魔するな!」

「そうよ! あんたから先に滅ぼすわよ!」

「なにをなさるかはお2人の自由ですけれど……」


 受付嬢は、紫外線と勇者と魔王の圧力を同時に受けても涼しい顔を崩さず。


「ここは『不戦協定』の敷かれた場所です」


 とだけ言った。

 古今東西の物語とは異なり、この世界のギルド受付嬢は細部まで説明しない。

 というワケで地の文で解説させていただく。

 不戦協定。

 それはあらゆる争いや戦闘を禁止する協定。

 老人から子供まで、農民から皇帝まですべての人が知っている掟。

 誰にも拒否権の認められない世界最大の理。

 もちろん、Sランク勇者パーティや世界征服一歩手前の魔王だって例外ではない。


「ここではくれぐれも穏便にお願いします。さもないと追い出しますよ?」

「くっ……」

「うっ……」


 2人は言葉に詰まりながら敵同士なのも忘れて目を合わせる。

 仮にも勇者・魔王と呼ばれる存在だ。

 当然、腕っ節は強い。

 しかし不戦協定を破って(受付嬢を怒らせて)無事でいられるほど強いわけではない。

 そしてお互い久々のバカンスは始まったばかりである。

 ここで追い出されてはせっかくの休暇がもったいない。

 2人は歯を食いしばって受付嬢の言葉に頷くしかなかった。



 ★★★★★★★★★★



 そして高い太陽が頂点に達した10分後……


「ちっ、なんで休暇に来てまで魔王と一緒なんだよ……」

「あーあ、マジ最悪。勇者がいるところで休まるもんですかっての」


 2人はパラソルを並べて居心地悪そうに肩をすくめた。

 ここは世界有数のリゾートビーチ、マーリット。

 砂浜は金持ち貴族やヒマを持て余した王族で大賑わいだ。

 お互いに離れようとしても他に空いている場所なんてどこにもない。


「どっか行けよ。仲間のとことか」

「できるならそうしたいわよ。ていうかあんたがそうしなさい」


 ちなみに勇者パーティのメンバーは、魔王からの刺客・巨大陸鮫の討伐を終えたばかりで、この暑い中外に出たくないとホテルでダラダラ過ごしている。

 一方の魔王陣営は陸鮫を勇者の元へ転移(ワープ)させるために魔力を使い果たし、回復するためにホテルでぐったりしている。

 お互いの因縁が生んだこの有様(お一人様×2)

 仲間がいたり戦闘中であったりすれば間が保つものだが……


「…………なんだよ」

「…………なによぅ」


 敵対してはいけないこの状況でなにをすればいいのか。

 戦いに狂っていた2人が答えを見つけることはできなかった。

 バカンス中とは思えない、梅雨のように窮屈な雰囲気がじとーっと流れる。

 しばらくだんまり戦術を突き通していた2人だったが……。

 先に沈黙を打開したのは魔王の方だった。


「うわ、鉄串に木炭って……バーベキューする気満々ね。ベッタベタじゃん」

「わ、悪いか。海と言ったらバーベキューだろ」


 魔王が勇者の荷物にツッコミを入れる。

 戦闘を禁じる不戦協定だが、舌戦はその限りではなかったはず。

 そう思い出した魔王はこれでもかとばかりに勇者を煽り始めた。


「どうせ戦いでも美味しいとこ持っていくあんたのことだから、バーベキューだって肉ばっか食べてんでしょ?」

「そ、それは違う!」

「へー、じゃあ肉なかったら何食べるのー?」

「……ソーセージ」

「うっわぁ、バカっぽい答えー! てゆーか子供舌ー!」


 勇者の方も言われっぱなしでは気分が悪い。

 彼も負けじと魔王の荷物にケチをつける。


「そういう魔王は……派手な黒い水着だな。いつも引きこもってるクセに」

「べ、別にいいじゃん。いつも外出しない分、ちょっと頑張ったのよ」

「薄暗いジメジメした魔王城に住んでるクセにバカンスがビーチって……」

「ち、違うわよ! 行き先は魔王城職員の多数決で……」

「嘘つけ! 遊びたくてビーチボール持ってウズウズしてるクセに!」

「べ、別にあんな輪になってキャッキャするだけのスポーツなんて……」

「そんなこと言いながらビーチボール3つも持って」

「え? あたしが持ってるの1つ(コレ)だけよ?」

「…………」

「…………」

「…………すまん、あまりにも大きかったから」

「み、見るな! 見るなこの不健全勇者! 滅びろ!」

「世界征服を目論んでる魔王に不健全って言われたくねえよ!」


 そうは言っても、黒ビキニの魔王から目が離せない勇者(健全なお年頃)だった。

 しばらく険悪なにらみ合いが続いて。


「……ぷっ、あはははは」

「何がおかしいんだよ魔王」

「別に。あたしたち敵同士なのにこんなところで何やってんだろって思って」

「仕方ないだろ不戦協定なんだから」

「それにしてもこんな風にお互いをディスり合うしかないっておかしくない?」

「……まあ、滑稽中の滑稽だな」

「でしょ⁉︎」

「それによく見りゃ周りはこんなにキャッキャウフフしてる中でな」

「そうよ。このリゾートで恐い顔してんの、多分あたしたちだけよ」


 その言葉をきっかけに、さっきまでの重苦しい沈黙はなくなる。

 代わりに2人の空気が楽しげなビーチの雰囲気と調和を始めた。


「今日、仲間は?」

「いるんだけど全員バタンキューしてる。そっちは?」

「今日くらい宿屋でゆっくりしたいんだってさ」

「やーい、ぼっちー」

「お前こそ」

「仕方ないわね。ホントはイヤだけど、寂しいあんたのために遊んであげるわ」

「素直に『あたしの相手して!』って言えない魔王のために1日使ってやるか」

「スイカ持ってきたんだけど食べる?」

「おお、立派なスイカが3つも」

「え? あたしが持ってるの1つ(コレ)だけーーってまた見てるぅ⁉︎」


 それから2人は……

 どちらからともなく、裸足で駆け出した。



 ★★★★★★★★★★



 透き通るように青い空。


 シミひとつないまっしろな雲。


 降り注ぎ照りつける暑い日差し。


 2人の汗が、真夏の空を舞う。


 照りつける太陽がそうさせた、マーリットの夏。



 ★★★★★★★★★★



 それから日が暮れるまでひとしきり遊び尽くして。

 2人は何をするでもなくぼんやりと、真っ赤な夕日を見つめていた。

 やがて珍しく勇者の方が「なあ」と話を切り出す。

 先ほどまでの刺々しい雰囲気は……少し、緩和したかもしれない。


「ちょっとお願いがあるんだけどさ」

「なによ?」

「うちのクリス(治癒魔法使い)がそっちの……四天王の2番目にホレたんだってさ」

「こっちの四天王の2番目、黒魔術使いよ? なにその禁断の愛」

「紹介してやってくんね? クリス童顔だけど、もうちょっとで童貞のまま30歳(別の意味で魔法使い)になるんだよ」

「いやよ、本人同士で話し合わせて。あたしは干渉しない」


 魔王が冷たく突き放す。

 冷たく、といっても鉢合わせしたばかりのような鋭い敵意は見られない。

 ただ単純に本当に干渉したくないという拒絶。もしくは投げやりな態度。

 しかし。

 勇者はそれを受けて満足そうにニヤッと笑った。


「言ったな?」

「い、言ったって……何を?」

「『あたしは干渉しない』って。じゃあ本人同士がいいなら口挟まないんだな?」

「そうだけど?」

「もう付き合ってるんだよ、あいつら」

「はぁ⁉︎」


 素っ頓狂な声を出して思わず立ち上がる魔王。

 反射的に勇者を張り倒しそうになるが、不戦協定を思い出して踏みとどまる。

 しかし何か殴らないと気が済まなかったのか、八つ当たり気味に砂浜を叩いた。


「いつから⁉︎ いや待って……もしかして2ヶ月前?」

「よくわかったな。その辺りで俺も聞いた」

「やっぱり! 2ヶ月前から『魔王様、ちょっと迷宮のトラップ甘くしません?』ってやたらと進言してくるからどうしたのかと思ってたのよ! 男か! 男だったのね!」

「おい、どこ行くんだよ?」

「四天王の2番目のところよ!」

「干渉しないんだろ?」

「あ」


 そこまできて魔王は、自分が罠にはめられたことに気づいた。


「まさか今になって『あれはナシ!』とか言わねえよな、魔王さんよぅ」

「……最悪。まさか勇者に言質取られるとか」

「勇者だって悪知恵働くんだぜ」

「滅びろ」


 今日初めて聞いた衝撃の事実に頭を抱えた後「はぁぁぁ……」と深いため息を吐く魔王。

 どうやら半分諦めたらしい。


「温かく見守ってやろうぜ」

「ムリ。結婚でもしたらどうするの。治癒魔法遣いと黒魔術師の禁断の愛よ?」

「そういうのは本人たちが乗り越えるもんだろ。当事者が諦めなければどこにも禁断の愛なんてないさ」

「…………」

「どうした?」

「あんた顔に似合わずロマンチスト?」

「ああ。新たな冒険と出会いが、自然と俺をロマンスにわかる男にしたのさ」

「きも」

「うっせぇ引きこもり」


 お互いを軽くdisり合ったのを最後に会話が途切れる。

 どちらも何も言わないまま、ただ夕日を眺める持久戦。

 先に耐えられなくなったのは……魔王の方だった。


「……じゃあさ」

「ああ」

「あたしたちもそうなる可能性……あるのね?」

「は?」

「禁断の愛なんてないんでしょ? だったらあたしたちも」

「はぁ?」

「付き合う可能性……ゼロじゃないじゃん」

「……はぁっ⁉︎」


 そこまで言われてようやく『そうなる可能性』の意味に気付く勇者。

 次はこっちが砂浜をドン! する番だった。


「ちょっと待てよ、それはかなり飛躍し過ぎって言うか……」

「諦めなければ禁断の愛なんてない、ってドヤ顔で言ったのは誰かしら?」


 さっきのお返し、とばかりに挑発的な上目遣いで魔王はまくしたてる。

 夕日に照らされている分を差し引いても、その顔は赤い。


「それとも何? 自分の言葉に責任持てない甲斐性なしなの?」

「ぐぅっ……」

「それか世間体気にして身動きとれなくなる臆病者?」

「ぎくぅっ……」

「そりゃそーよね。あんた国の姫様に養われてるヒモだもんねー」

「ば、バカ言え。俺はやる時はやる男だ。勇者なんだからな」

「あっそう。じゃー動かないで」


 その軽い口調で言い終わった瞬間。

 魔王は自分の顔を、勇者の顔に近づけた。

 ぐうっ、と。

 思い切り身を乗り出すように。


「え……ええっ⁉︎」

「別にいいわよムリしなくて。やっぱ怖いんだー勇者のクセに」

「ち、違う。決して怖気づいたとかじゃなくて……」

「じゃあ目をつぶる」

「や、や、やってやろうじゃねえか!」


 言われるままに目を閉じると、その他の器官が敏感になる。

 潮の香りに混ざる優しい匂い。

 かすかに聞こえてくる呼吸音。

 勇者の顔を撫でる生温かい吐息。

 ただでさえ近い顔と顔の距離がどんどん縮まっていく。

 見えてはいないが、それは容易に想像できた。

 じっとりと、焦らすように時間が過ぎていく。

 そして『ええいどうにでもなれ!』と勇者が投げやりになった瞬間ーー





 空間が、転移した。





 ふわっと、地面が消えたような感覚。

 目を開ける。

 勇者が最初に見たのはキス顔魔王ではなく、燃えるような太陽の赤。

 魔王の呼吸音をかき消して響く、大量の水がぶつかり合う音。

 魔王の甘い匂いをしょっぱく染める、夏の予感覚える潮の香り。

 2人が現れたのは……真っ赤に燃える海の、真上。

 それは魔王お得意の転移(ワープ)魔法。

 一瞬の浮遊感の後。

 勇者は聞いてみた。


「おいこれってどういうーー(ざっぱぁーんっ!)」


 が、時間が足りなかった。


「が、がぼっ、お、おひっ! マジで、げぼげぼっ!」

「落ち着きなさいよ。足、付くから」


 不意打ちを受けて盛大に水を飲んでしまう勇者。

 軽く溺れかけるが、心の準備ができていた魔王に助けられる。

 しかし魔王の救助は善意からではなかったらしく……。


「あはは、引っかかってるー! 本気にしちゃってバカみたーい!」


 勇者が落ち着いた瞬間を見計らって、ゲラゲラ笑いだした。

 一瞬理解が追いつかなかった勇者もさすがにハメられたことに気付く。


「お、おまっ、俺の純情を……っ」

「じゅんじょっ、純情だって! あはははっ、あはははははっ!」


 よほどツボにハマったのだろう、魔王は涙を浮かべながら真っ赤な海に笑い声を響かせる。

 笑われている勇者は反論できず、笑い声が収まるまで黙っていた。


「ひひっ、あー、お腹痛い。いいリアクションしすぎでしょあんた」

「……で、なんのつもりだったんだよ」

「別に。一応ハッキリさせとこうと思って」

「ハッキリ?」


 魔王がハッキリさせたいことが何なのかハッキリしない。

 そのまま魔王はもったいつけるように勇者から2歩、3歩と離れて。


「あたしとあんたは敵同士ってことよ」

「っ……」


 打って変わって真剣な眼差しの魔王に、勇者は息を飲む。

 それは、絶対に忘れてはいけないこと。

 勇者と魔王は敵同士。

 古今東西あらゆる物語がそう決め、実際に100代に渡る因縁がある。

 不戦協定のせいでなんとなくうやむやになっていたけれど。

 不戦協定の境界を一歩出ればまたお互いがお互いの宿敵に戻る。


「なんか、ヘンな感じね」

「そうだな……」


 この数時間だけは、意識の外だった。

 それほどこのバカンスは開放的で。

 意外と気が合って。

 なんだかんだ楽しかった。

 敵同士だって半分忘れてしまうほどに。

 だから。

 勇者は聞かずにはいられなかった。


「なあ、なんで俺たちって争ってるんだ?」

「…………」

「ずっと昔に因縁があったとか?」

「…………さぁ?」

「初代同士の仲が悪かったとか?」

「…………あたしが知るわけないでしょ」

「それともただの成り行きでーー」

「あたしが言えることは1つ」

「……なんだ?」

「あたしたちは、そうやって、生きてきたのよ」


 ーーこれからも、そうやって、生きていくのよ。


「…………」

「…………」

「…………首」

「え、何?」

「首……洗って待ってろよ」

「そっちこそ。せいぜい殺されに来なさいな」


 そんな答えでお互いに納得できたのか。

 いや、無理やり自分を納得させたのか。

 2人が背を向けてしまった今、確かめようがないけれど。


「でもそーね。次バカンス先が被ったらまた遊んであげなくもないわよ?」

「ああ。ちょっとだけ相手してやるよ、仕方なく、渋々、必要に迫られて」


 そんな軽口を叩けるくらいに2人の関係は変わった。

 99の世代が踏み出せなかった1歩を、2人は刻んだ。


「なあ」

「何よ?」

「冬はどこに行く?」

「言うワケないでしょバーカ。じゃあね」

「バカって言う方がバカなんだよ、バーカ。またな」


 不戦協定が結ばれた地で唯一許された口による戦闘(disり合い)を最後に。

 宿敵同士のバカンスは、終わった。



 ★★★★★★★★★★



 劇的な夏が、色彩豊かな秋を超えて。

 静けさ漂う冬の到来に。


「ま、魔王! なんでお前がここに⁉︎」

「ゆ、勇者! あんたこそどうして⁉︎」


 起きなくてもいい奇跡が、再び起きていた。

 真っ白なパウダースノーの山に勇者と魔王の驚きが重なる。

 1人は大自然の雪山でどこか頼もしく見えてしまう勇者。

 イエティ討伐を片付けた後のスキーリゾート満喫中。

 もう1人はスキーウェアで3割り増しに可愛く見える魔王。

 魔王城完成1000周年記念旅行の第1日目。

 そして……


「ここは不戦協定の敷かれた場所です。争いはご法度ですよ?」


 立ちはだかる受付嬢と、不戦協定。

 2人は激しい既視感を覚えながら、いつかそうだったようにdisり合う。


「またお前かよ⁉︎ いい加減うんざりなんだが……」

「こっちのセリフよ。不戦協定さえなければ今すぐ滅ぼしてやるのに」


 しかしその舌戦の裏には、どこか素直になれない戸惑いが隠れていて……


「……まあでも、全然知らない人間ばっかりよりはマシだな」

「……そうね。敵でもいないよりはずっといいわ」


 2人は同じことを悩んでいる。

 古今東西、そして100代続く戦いの因縁をまだ続けていくべきなのか。

 運命みたいな偶然の再会を受け入れ、『新たな関係』を築くのか。


「…………」

「…………」

「遊ぶか」

「うんっ」


 これは、もしかしたら実るかもしれない、恋の話。


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