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第35話 デリバリーダンジョンブレイクで届ける 終



トーキョーエリア支部、完全勝利。

実感が湧いてきたところで、俺は崩れ落ちるように地面にへたりこんでしまった。


「やったか?」

「いや、ナルシストを逃がされたのだ」


巨大落とし穴を覗き込みながら、ミーナはため息をついた。

俺も中を確認する。中にいるのは剛力だけだ。

落下する最中に逃がされてしまったらしい。


「追うか?」


見失ってしまったものの、近くにいることは間違いない。

探そうと思えばすぐ見つけられるはずだ。

しかしミーナは。


「いや、その必要はないのだ。まだ利用価値があるでの」


と意味深に答えて、再び落とし穴の底に目を移した。

剛力が観念したかのようにあぐらをかいていた。トレードマークのモジャモジャヘアーには木の枝が何本も刺さっている。

盆栽みたいだ。

ミーナが大きな声で剛力に話しかける。


「剛力よ、リタイヤするのだ。そうすれば引き上げてやらないこともないぞ?」

「ふん、敵にそんなこと頼むか」


怒気を孕んだ声で吐き捨てながら、剛力は唾を吐くマネをした。

あくまでプライドの高い剛力。

武士は食わねど高楊枝、の体現である。

自分ではリタイヤしない、という固い意志が伝わってきた。

力づくで押させようと俺たちが穴に入れば、またバトルが始まるだけである。

ここは交渉術にも長けた卯衣にお願いするとしよう。


「卯衣、どうにかできないか?」

『一応どうにかできますけどー。こういうのはミーナの方が慣れてますー』

「へえ、まあ確かに不得意そうには見えないけど」

『駆け引きと搦め手の扱いは一級品ですよー』


間髪入れずに卯衣が『「搦め手」という言葉はなんだかえっちぃですねー』とド下ネタに走り出したので、無視してミーナの出方をうかがう。

しばらく重い沈黙を守っていたミーナが、独り言みたいに口を開いた。


「お主だけの問題ではないのだぞ?」


意味深な呟きが、剛力の注意を一気にミーナに向けさせる。


「何だと……?」

「ふむ、聞こえてしまったかの」


わざとらしく自分の口をふさぐミーナ。

真隣にいる俺にはすぐ演技だと伝わったが、剛力は疑うことなく食いついた。

こうやって自分のペースに持っていく技術は、卯衣が一目置くだけある。

聞かれたからには言っておくかの、と前置きをしてミーナは続ける。


「これから我らは全力を尽くして、あのナルシストを狩りに行くのだ」

「なんだとっ!?」

「当然ではないか。お主は手の届く場所にいる敵をみすみす逃がすかの?」


鋭いツッコミを受けて、剛力は押し黙る。

不確定要素を早めに消すのは定石だ。

そして剛力も、その定石に従って俺たちを襲ったのである。

文句は言わせない。


「あの体型からすると、あまり運動は得意ではないと思うのだが、どうかの?」

「何が言いたい?」

「お主、ういちょんをバカにしたのう。カケルを何発も殴ったのう。そして何より、我を網で吊った。信じられないのう、まったくもって失礼だのう」


ミーナは問いかけに直接答えず、くるっと落とし穴に背を向ける。

そのまま近くに生えている手近な木の前で仁王立ち。

そして……。


バキイッ!


手近な木にその小さな拳を打ち付けた。

風流さをカケラも感じない音で揺れる木。

誰も何も言わない中、木がざわめく音だけが響く。

その衝撃は深い落とし穴の底までしっかり伝わったらしく、剛力が目を丸くした。


「我は今、ちょっと虫の居所が悪いのだ」


イイエガオで剛力を見下しながら、ミーナは何の罪もない木から手を離す。

めりめりっ、という音と共に木が倒れたのは、それとほぼ同時だった。

なるほど納得、確かに手慣れている。

とてもわかりやすい取引(キョウカツ)だ。


「縁が抵抗するなら荒っぽいことをしてしまうかもしれぬ、と我は言いたい」


これ以上なく有効なタイミングで、ミーナは先ほどの問いかけに答えた。

この取引を受け入れれば、仲間を復讐から守れるし、自分も無事で済む。

この取引を蹴れば、縁はもちろん自分だって何されるか。

選択肢を与えているようで、与えていない。

二択の形をとっているが、俺たちの求める答えはひとつ。


「押すのだ」


こんなに重い4文字の言葉を、俺は聞いたことがない。

剛力はしばらく迷ったように目を泳がせていたが。


「くそっ! 覚えておれ!」


やがて、やけっぱちになったみたいに自分のボタンを殴った。

瞬間『ウウウウウウーッ!』という甲子園の試合終了後みたいな音が響く。

剛力羽釜、リタイヤ。


「賢明な判断なのだ」


ミーナは満足げに呟いて、俺の宅配七つ道具から荷造り用ビニール紐を取り出した。丈夫そうな木の根元に結んで、穴の中に垂らす。

早速紐を握る剛力に「今上がってきたら蹴落とすのだ」と厳しく釘を刺し、俺の方を振り向いた。


「カケル、すぐに出る準備をするのだ」

「お、おう……いや、はい……」


俺への態度と剛力への態度のギャップに戸惑いながらも、俺は言われた通りすぐに出発の準備を整える。

ああそうだ、一応卯衣にも連絡しておこう。


「卯衣、そういえばそっちはもうゴールした?」


反応がない。

おかしいな、いつもなら『もちろんですー。ついでにわたしとも人生のゴールインをしましょうよー』とイラっとするジョークを飛ばしてくるはずなんだが。


「卯衣? おーい!」


やはり返事はない。

不思議に思ってスマホを取り出すと、通話切れの画面が表示されていた。

緊急事態かと思って一瞬肝が冷えたが『万が一のことがあればすぐ連絡しますので、無駄な心配はナシでお願いしますー』と言っていたのを思い出す。

便りなきは良き便り、ということだ。

一応通話が切れていたことだけミーナの耳に入れておく。


「ふむ、まあ心配はいらぬ。では出発なのだ」

「おうよ、剛力は?」

「5分後に出るよう言ったのだ。一秒でも早く出たら覚えておれ、とも言ってある」

「驚きの脅しクオリティだな」

「用心深い、と言ってほしいのう」


頬を膨らますミーナの頭をぽんぽんしてなだめる。

何か言いたげな顔をされたが、それ以上はお互い何も言わなかった。

さて陽も傾いて来たし、ちょっと急ぐか。

キズだらけかつ体力切れの近い体を引きずり、俺たちは山道を下っていった。

こうしてデリバリーダンジョンブレイクは、佳境を迎えるーー。



★★★★★★★★★★



ゴール地点が見え始めたのは、夕日が見え始めた頃。

結局、歩くにもかなり時間がかかってしまった。

主な原因は、後半になって罠の設置数が大幅に増えたことと、体力切れ。

ミーナもかなり消耗してしまったようで、今は俺の背中ですやすや寝息を立てている。

5kmくらい楽勝だ、と言っていた自分が恥ずかしい。


「ようやく終わりが見えてきた……」


わかりやすくGOALと書いてある旗と、その下でマイクを持っている司会者が、それを本物のゴールだと教えてくれた。

その旗の先には、命からがら山を下ってきたと思わしきデリバリストが座りこんでいる。その人数はざっと数えて10人もいないくらいだ。

制限時間も近づく中、この人数。

俺たちの通らなかった道もかなり白熱したのだろう。


「ミーナ、着いたぞ」

「ううむぅん……。かけるぅ……」

「寝ぼけてるし」


背中がよだれでべちゃべちゃなんだが。

そんなに気持ちいいか、俺の背中。


「カケルさーん!」

「おお、卯衣」


ゴールラインの内側で、卯衣が手を振っていた。

すぐ卯衣はこちらに駆け寄ってくる。


「大丈夫でしたかー?」

「なんとか、な。ミーナ、卯衣がーー」

「ああ、起こさなくて大丈夫ですー。寝かせてあげましょうよー」

「それもそうだな」


不思議に思って尋ねてみる。


「卯衣とリンゴはゴールしたのか?」

「いえ。最後くらいはカケルさんたちと一緒にゴールしたかったのでー」

「ふーん、そうか……。ていうか、リンゴは?」

「リンゴさんなら『あたしそーゆーのパス』って一人でゴールしちゃいましたー」

「あいつらしいな」


今頃暇を持て余してバイクの整備でもしているんだろうか。


「ああ、そういえばー」

「ん?」

「合言葉、確認してませんでしたねー」

「……………………」


そういえばそんなのもあったな。

今の今までほとんど意味なかったけど。

一応、卯衣としては確認しておきたかったんだろう。

しかし……。


「じゃあわたしからー。『クロネコ』」

「『ペリカン』」

「はい、おっけーです」


ニコッと笑って卯衣は安心したように手を出した。

繋げ、ということらしい。

俺は差し出されたその腕を無視して、ゴールに対面した。


「ああーん、カケルさん冷たいですー」

「うっせぇ」


素通りする俺を強引に引き寄せ、ゴールラインの手前で止まらせる。


「この一歩はトーキョーエリア支部躍進の一歩ですー」


宇宙飛行士みたいなことを言いながらはしゃぐ卯衣。

ゴールはみんなで踏む、ということらしい。


「じゃ、いっせーの、でっーー」




「ーーところで、お前誰だよ?」




一瞬、卯衣の表情が刃物のように鋭くなったのを俺は見逃さなかった。

その表情に確信を得て、俺は飛びつくように卯衣に襲いかかる。

それは結果的に正解だった。

卯衣の手が俺のリタイヤボタンに伸びかかっていたからだ。

腕をかわして卯衣の足を払い、押し倒すように乱暴に組み敷く。

突然のことに卯衣の抵抗が一瞬遅れた。

その隙に、俺は卯衣の胸からリタイヤボタンを奪い取る。

すぐさま俺は起き上がって距離をとった。


「ちょ、ちょっとカケルさん、何やってるんですかー!?」

「何って、見ての通りだ」


卯衣から奪ったリタイヤボタンを印籠のように突きつけ、近づくな! と威嚇。

ボタンを盾にされて、卯衣はおとなしく足を止めた。


「むぅーん、騒がしいのだぁ……」


緊張感のないミーナの声が響く。

そういえば、アクションついでに落っことしたんだった。

落ちた時にぶつけたと思われるお尻をさすりながら、立ち上がるミーナ。

それにいち早く反応したのは、卯衣の方だった。


「あっ、ミーナ! ミーナからも言ってくださいよー!」

「ふむぅ……。ういちょん……?」


俺と卯衣とのただならぬ雰囲気を感じ取り、ミーナは寝ぼけ眼を光らせる。


「どうしたのだ?」

「カケルさんがわたしのボタンを()ったんですー!」

「カケル、本当かの?」

「ああ、本当だ」

「早く返してくれないと、リタイヤになっちゃいますよー!」

「カケル、お主ーー」

「ミーナ」


俺の真剣な声に遮られ、ミーナは口の動きを止めた。


「まずこいつがホンモノかどうか確認してくれ」

「……冗談を言っている様子ではなさそうだの」


帽子を被り直しながら、ミーナは卯衣に向き直った。


「ういちょん、自分が本物だと証明できるかの?」

「もちろんですー! 合言葉は『クロネコ』!」

「……………………『ペリカン』なのだ」


ミーナは眉をピクリと動かしながら合言葉を照合した。

ドヤ顔で胸を張る卯衣と、反応に困る俺とミーナ。

俺はミーナに卯衣のリタイヤボタンを見せる。


「どうする?」

「我に貸して欲しいのだ」


後のことはミーナに任せることにして、俺は卯衣のボタンを手渡した。

それを右手に持って、卯衣に差し出すみたいに広げる。


「ういちょん。こっちに来るのだ」

「ミーナ、信じてくれてありがとーー」

「いや」


ミーナは、ボタンの乗った手をくるっと裏返して。


「ういちょんを騙るなど、極刑ものなのだ」


絶対零度の、冷たい声。

ミーナは伸ばされた卯衣の腕を厳しく払いのけた。

そのままリタイヤボタンを地面に叩きつけ、足の裏でサンドイッチ。

ばきり、という破壊音。

そして虚しく響く甲子園音。

一瞬のことに、卯衣は身動き一つ取れない。

これで実はこの卯衣ホンモノでしたー! だったらシャレにならないが、俺たちもミーナもそうではないと確信していた。


「確かに、合言葉は合っておる。しかしーー」


ぐりぐりぐり。

親の仇のように足裏でボタンをすり潰しながら。

ミーナは、死刑宣告を下すかのように言い放った。


「合言葉は競技中に確認しない(・・・・・)決まりであろう?」


ニセ卯衣が絶句したのを感じた。

それは、ホンモノの卯衣が用意した最大のギミック。

俺たちの合言葉は、目の前の仲間が本物かどうかを見分けるためのものではなく。

ニセモノを「自爆させる」ための仕掛け、言葉の罠だ。

確かにスタート寸前、合言葉は決めた。

メモパッドに書かれた文字はそれぞれ、クロネコ、ペリカンで間違いない。

しかしその肝心なのはその下に小さく書かれた文章の方。


『競技中、合言葉の確認はぜったいにしないでくださいー』


情報はどこから漏れるかわからない。

まして、四文字の言葉2つ。

情報収集に長けたオペレーターが大勢いる中で、そんなカギは無きに等しい。

だから卯衣は、漏れているかもしれない情報を逆手に取ることを選んだ。

正解かどうかなんて関係ない。

合言葉、と発音すること自体が「わたしは疑うに値します」という自白なのだ。

俺たちの真の合言葉は、合言葉の話題になった瞬間に口をつぐむ「行為」。

決めた時は「ちょっと慎重過ぎるだろ」と思ったが……。


「結果、卯衣の機転に助けられたな」

「まったくなのだ」

「お前もそう思うだろ、緑色(みどりいろ)

縁色(えにしいろみ)だっ! …………ハッ!」


予想はついていた。

案の定、顔に被ったマスクの中から悔しそうに歯噛みする縁の顔が出てきた。

さすがの芸術鬼(アーティスト)クオリティーである。

マスクと地肌の境目すら化粧でしっかりカモフラージュされており、身長、声、雰囲気までほぼ完璧に再現されていた。

これが、芸術鬼(アーティスト)の本気。

合言葉の一件がなければ確信は持てなかっただろう。


「いや、合言葉のことがなくても怪しいとは思ってたか……」

「なんだと、ボクの華麗なる変装は完璧だったハズだ!」

「だろうな。外見だけなら全然わからなかった。でもな……」


噛み付いてくる縁を制するように、その言葉を遮る。

俺はもっと早い段階から、卯衣を警戒していた。

具体的言うと、ゴール手前で卯衣の姿を見たその瞬間から。

俺は卯衣を怪しんでいたのである。


「合理主義の卯衣が、ゴールもせずに俺たちを待つなんてあり得ないんだよ」


卯衣の仕事は、俺たちを勝たせること。

そのためにはどんな自己犠牲もいとわない。

感動を分かち合いたいとか、一緒にゴールしたいとか。

仲間であれば誰もが願わずにはいられない、自然の感情。

しかし。

卯衣は仕事中、そういう感情さえ徹底的に排除している。

自分の感情をさえ押し殺す完璧な自制と鋼のような意志。

それらを持ち合わせるプロフェッショナルが、敵に襲われるリスク上等でゴールラインの内側にいるワケない。

よって、俺は最初からかなり怪しんでいたのである。

種明かしが終わった瞬間、縁はがっくりとうなだれた。


「ところで、ういちょんもリンゴも無事かの?」


気になることを問い尋ねるミーナ。

その目つきはちょっと怖い。


「……二人ともゴールしてる。その後仲間にちょっと誘拐してもらっただけさ」

「手荒なマネしてないだろうの?」


していたら許さない、と言わんばかりにボキボキ拳の骨を鳴らすミーナ。


「していないさ。むしろボクが化けた方は『やーん、お・か・さ・れ・るー♪』って目を輝かせてたよ」

「ああ、そいつはホンモノだわ」


恥ずかしげもなくへらへら笑う卯衣の姿が頭に浮かぶ。

まだ何か言いたげなミーナの袖を「もういいだろ」と引っ張る。

俺を見上げて不服そうな顔をするミーナだったが、自分に課された使命を思い出したのかくるりと回ってゴールに向き直った。


「最重要事項を思い出したのだ」

「だな。こっちが先だ」


ゴール手前で足を揃える。

別に打ち合わせをしていたわけじゃないが、一斉にゴールするらしい。

ミーナは間違いなくホンモノだとわかるので、安心して横に並ぶ。


「じゃ、いっせーの、でっ!」


たん、と。

俺たちの足がゴールラインを越える。

その下にはでっかい落とし穴が! なんてオチはなく。


『トーキョーエリア支部、2選手ゴール! トーキョーエリア支部はこれで全員帰還となります!』


その声を聞いた瞬間、疲れがどっと押し寄せてくる。

大笑いする膝に喝を入れながら少し歩き、俺たちは芝生に座り込んだ。

卯衣・リンゴ組の救出に向かいたいところだが、あいにくその体力は残ってない。

手荒なマネはできないはずだから、自力で頑張ってもらおう。


「ハードな1日だった……」

「うむぅ……」


それはミーナも同じだったようで、俺にもたれかかって眠りこけている。

しかし決勝進出の瞬間をその目で見たいからか、頭をブンブン振って眠気を飛ばそうと四苦八苦していた。


「うー、ううー、なのだ……」

「寝てろよ。なんかあったら起こすし」

「ちゃんと起こしてくれるかのー?」

「もちろんだ」

「では、任せるのだー。むにゅむにゅ……」


ミーナは俺の許可も取らず、俺の膝を枕にして眠りについた。

周りの人の目が気になるが、今は何も言わないことにする。


「頑張ったもんな……」


ミーナの背中にくっついた芝を取るように、ちょいちょいと撫でる。


「あ、カケルさーん!」

「カケル、おっかえりー」

「おう。二人とも」


トーキョーエリア全員帰還、最大の立役者たちが帰ってきた。

ミーナが縁にさんざん脅しをかけていたので、カゴシマエリアの後方支援部はすんなり解放してくれたらしい。


「無事だったか」

「なんとかね。さすがに麻袋で誘拐された時はちょーー」


リンゴが何か言おうと俺たちに近づいてきたところで。

空気が、凍りつく。

その両目が捕らえるのは、俺と、俺に膝枕されたミーナ。

ああ……ジェラりタイムですね、わかります。


「へぇ…………。あたしらが捕まってる間、2人でお楽しみってワケ……?」

「森の中でえっちぃことしてたんじゃないですかー? やーん、ケダモノー♪」


嫉妬の炎に油が注がれる。

リンゴの舌打ちが止まらない。


「なあ二人とも。今日はとってもおめでたい日なんだ。だから、争いは避けて穏便に済ませていただけると……」


穏便に済むわけないよなー、と心の中で冷や汗垂らしていたのだが。


「…………ふん、わかったわよ」

「しょうがないですねー」


似たような仕草で肩をすくめる二人。

二人の背中に「許してやる」という雰囲気がにじみ出る。

あれ、意外と平和的に解決した?

なんて考えるのは甘すぎて。

平穏を覚えた一瞬の隙を突かれ、卯衣とリンゴは俺の膝に頭を預けた。

逆膝枕 × 3。


「あ、あの二人とも……」

「おめでたい日なんだから、つべこべ言わないの」

「ミーナがよくて、わたしたちがダメってことはないですよねー?」

「ごもっともです……」


論破された。

しばらくそんな恥ずかしい状態で公開処刑されていたが、やがて日が暮れてデリバリーダンジョンブレイク終了を告げる銃声が暗い空に響く。


『デリバリーダンジョンブレイク、時間切れです! そして同時に今年のデリバリスト競技会本戦の全行程が終了を致しました! 残るは明日の決勝! 勝ち上がった2支部はどこなんでしょうか、注目です!』


大半が山から帰ってこない中ではあるが、このまま結果発表に移るらしい。


「ミーナ、結果発表だぞ」

「むううううん、我は現社長派なのだぁ……」

「寝言でお家騒動に物申してる!」

「あたしはニ◯リ派なんだけど」

「ノっかるな!」

「捕まってた時に考えてたんですけれど『マンホール』って絶対下ネタですよねー」

「シリアスな状況でなんてこと考えてんだよ!?」


ていうかお前ら、俺の膝から降りろよ!

ーーと言っていると、司会者に睨まれていることに気づいた。

慌てて居住まいを直してうつむく。


『今年のデリバリスト競技会、決勝に進むのはオーサカエリア支部と……』




『トーキョーエリア支部でーすっ!』




歯切れのいい声が俺たちの勝利を告げた瞬間。

大画面モニターに、美少女三人を膝枕ではべらす高校生の姿が映し出された。

嫌な意味での注目度を上げてしまった。


なろうコン一次選考でダメでしたー。

反省点がたくさんありますので、次回に活かしたいです。

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