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緑の惑星
その惑星は、全土が緑で覆われていた。
水のように重い大気の中、
無数の枝をしげらせる大樹が、何本も惑星の地表からのび、
緑の葉をしげらせながら、複雑にからみあう。
緑は伸び、伸び続け、
やがて、〈海〉と呼ばれるようになる。
大樹は、多くの命を枝に、幹に住まわせ、宿した。
地表近くの湿った大気は、うねりを起こし、
緑の葉を揺らし、波を起こす。
緑に浮かぶ枝々のからまりは、時に島となり、
そこに命を集わせた。
生え出でた緑の先、天空に近づくほどに大気は薄く、軽くなる。
その場所に暮らす者も、また存在した。
魚たちは、にぎやかに鳴き交わし、
翅を生やし、風に乗って、緑の合間から、天空へと飛び立ち、
また緑の中に戻る。
惑星の住民も、軽い体に翅を生やし、
島で暮らし、時に空を行き交った。
彼らは緑の葉でできた〈海〉に船を浮かべ、
あるいは潜り、
歌い、踊り、生きて死に、
日々を営み、子らへと命をつなぎ続けた。
命の樹の〈海〉が広がる、大いなる緑の惑星で。




