それは、呪いの剣から始まった 4
サーザントが、鞘を抜いたとたんに剣が光り、そこから電流のようなものが体に流れこんできました。
それから、
…待っていたよ…
と、誰かがサーザントに語りかけました。
「誰だ!?」
サーザントは辺りを見回しました。しかし、誰の姿も見えません。気のせいか? サーザントは思いました。が、
…君の力を貸してほしいんだ。
また、声がします。
サーザントはもう一度辺りを見回しました。
しかし、やはり声の主らしいものの姿は見えません。
「姿を見せろ!」
サーザントが叫ぶと返事のかわりに剣が光り、さっきよりずっと強い電流がサーザントの体に流れ込んで来ました。その衝撃で、サーザントの体は後ろに吹き飛ばされ、剣を持ったまま床に倒れました。
「あーあ」
店の親父がため息をつきました。
「だから言わんこっちゃねえ。その剣は呪われているんだ。今までその剣を手にした奴は、みんな、頭痛や吐き気に襲われて丸一日は動けなくなっちまう。そのたんびに俺が面倒見るはめになるんだ。全く町長もめんどうなもん押し付けやがって…」
親父はなかば愚痴のように言うと、床に倒れているサーザントに向かって「大丈夫か?」と、手を差し伸べました。
しかしサーザントはその手を振り払い、肩をふるわせて笑いはじめたのです。
「どうした?客人。頭でもやられたか?」
親父は、訝し気な顔をして聞きました。
すると、サーザントは首を振りゆっくりと立ち上がると、
「これはいい。物凄いパワーが溢れ出してくる。こんな爽快な気分ははじめてだ!」
そう言ってて、手にした剣をブンと振りました。すると、横に置いてあった鋼鉄の甲冑が、ガチャンと音をたてて倒れました。
「おい!なんて事するんだ!?客人」
親父があわててそれを立て直そうとして手に取ると、甲冑がまっぷたつに割れました。
「ひいっ!鋼鉄の甲冑が…!」
親父はその場で腰を抜かしました。
「さがってて、父さん!」
シーラが言いました。
「こいつは、魔族なのよ!私見たの。こいつがデビルフィッシュに乗って海の彼方からやってくるのを」
「魔族!?」
親父はさらに腰を抜かしました。
「その通り」
サーザントは、浅黒い顔に冷酷な笑みを浮かべて言いました。
「私の名は。サーザント・ローゼンクロイツ。魔族のプリンスなり」
なんと、サーザントは彼の魔界帝国の第一王子だったのです!
「ま…魔族の王子~~!?」
親父は、ショックのあまり気絶してしまいました。
「ふん、ちょっと驚かせ過ぎたかな?」
サーザントは、親父を見て冷笑しました。
そして、シーラは…
シーラは剣を構えてサーザントを睨み付けています。
「気丈だな…」
サーザントはシーラを見て言いました。
「良いだろう。もう一度勝負してやろう」
シーラはその言葉を聞くと、ゆっくりと剣を構えなおしました。
サーザントは、手に持った剣をブンと振りました。すると、物凄い風が巻き起こりサーザントの周りの武器や防具が部屋の隅へ吹き飛びました。
「まったく凄い威力だ…これはいい!」
サーザントが満足気に笑うと、シーラが叫びました。
「どこ向いてるの?あんたの相手は、私よ!」
「ふん、生意気な小娘め…」
サーザントはシーラの言葉に眉をしかめました。
「まあ、言い。そこまで言うなら相手をしてやるが、今度は手加減せぬぞ」
「望むところよ!」
シーラは剣を、まっすぐに構えました。
「はぁっ!」
サーザントは、気合いを入れると今度はシーラに向かってブンと剣を振りました。物凄い風がシーラに襲いかかって来ます。しかし、足に力を込めてシーラは踏み止まりました。…が、次の瞬間にはサーザントはシーラの目の前に立ち、シーラめがけて剣を振り降ろしていました。
「死ね!」
…斬られる!
シーラがそう思った時…