それは、呪いの剣から始まった 3
カランカラン…
古い木の扉を開けて店内に入ると、カウンターに40半ばの親父が座っていました。親父はサーザントを見ると、
「ヘイ、いらっしゃい。ここは武器屋だなんの用かね?」
と、言ってフリップを出しました。そのフリップにはこう書いてありました。
売りに来た
買いに来た
やめる
サーザントは、顔に縦線を浮かべながら言いました。
「いや、実はこの店の中から強い光を感じて、入って来たのだが…」
「強い光?最近ランプを買い替えたせいじゃないのか?」
親父は上を指差しました。そこには、新品のランプがぶら下がっています。
「ランプ?いや、もっと強い光だったような気がするが…?それとも俺の勘違いだったのかな?」
サーザントは首をかしげました。すると親父は、
「勘違いだよ。で、なんの用かね?」
と言って手に持っているフリップをポンと叩きます。あまりの親父の迫力にサーザントは
「まあ、いい。ついでに剣を見せてもらうか」
と、言ってしまいました。すると親父は、
「買いに来たんだね!よし、どれにする?」
…今度は別のフリップを出しました。それにはこうかかれています。
竹のやり 10G
ひのきの棒 20G
ブーメラン 50G
鉄の剣 100G
スマイル 0G
サーザントは、冷や汗を流して言いました。
「いや、そんなしょぼいのじゃなくてもっとちゃんとしたのが欲しい」
「そうかい、じゃあそっちの奥の方を探してくれ」
親父に言われて、サーザントは店の奥へと入って行きました。そこには、鋼の剣や防具などいろいろな武器が並んでいます。
「ちょうどいいから、新調するかな?」
サーザントが武器を選んでいると、カランカランと鈴の鳴る音がして誰かが店内に入って来ました。
「ただいま」
どうやら、この店の物のようです。
「おぅ、シーラ。こんな時間までどこほっつき歩いてた?この不良娘」
親父が言いました。
…そう、帰って来たのは先ほどサーザントが浜辺で会った少女シーラでした。
シーラはこの武器屋の娘だったのです…
シーラはふてくされた顔で言いました。
「別に、なんでもないわ」
「なんでもないって事はねえだろ?」
「なんでもないったら!」
シーラは怒ったように言うと、そのまま親父の前を通り抜けようとしました。
すると親父がするどい声で言いました。
「おい、お前、その腕の傷どうしたんだ?」
シーラの腕には、薄く引っ掻いたような傷が出来ています。それは、さっき浜辺でサーザントと戦った時に出来たものですが…シーラは慌ててそれを隠しました。
「お前、まさかそれ、喧嘩して出来た傷じゃ?」
シーラはそっぽを向きました。
「そうなんだな?驚いた。お前に傷をつけれるやつが居たとは…」
親父はそう言って首を振りました。
「少し油断しただけよ!」
シーラは、ますますそっぽを向きました。
「はっはっは。そうしょげるな。世の中広いって事さ」
親父は愉快そうに笑いました。
「それにしても、どんな奴にやられたのか…顔が見てみたいな」
親父がそうつぶやいた時、店の奥からサーザントが出て来ました。サーザント言いました。
「親父、すまぬが気に入ったものがなかった」
その声で、シーラがサーザントに気付きました。
サーザントもシーラに気付きました。
「あっ!」
シーラは、エメラルドグリーンの瞳を大きく開いてサーザントを見つめました。
「お前は…」
サーザントはくぐもった声でつぶやきました。
「何だ…?2人とも、知り合いか?」
と、親父が言た時には既に、シーラの鉄拳がうなりをあげてサーザントの右頬を打っていました…いや、打ったと思った時には、サーザントの体はシーラのろに移動していたのですが…
「速いわね…」
シーラは振り帰ってニヤっと笑いました。
「本気で行くわよ」
「よさぬか」
サーザントは制しました。
「シーラ、やめないか。お客さまに向かって」
親父も止めに入りました。
「いいのよ、父ちゃん!こんな奴お客でも何でもないんだから!」
シーラはそう言うと、ウィンドウに飾ってある剣を手にとり、サーザントに向かって行きました。
「よせと言うのに…」
サーザントはそれを、ひらりとかわしました。
その時…
キラリ…
視界の隅で何かが光りました。
それは先程店の外で見た光と、正に同じものでした。
…どこだ?…
サーザントは、シーラの攻撃をかわしながら、光の元を探りました。
やがて…
サーザントは光の元を見つけました。それは、ウィンドウに飾られている一本の剣から発せられていたのです。
…あった!…
サーザントは夢中でそれを手に取りました。
それを見た親父が立ち上がりました!
「その剣に触るな!」
しかし、既にそれを手にしたサーザントは、剣の鞘をゆっくりと抜いたのです。