再び青の貴公子 04
トルネーダはサーザントを追い詰めると、手に持っていた白銀の剣の腹の部分でぴたぴたとサーザントの頬をたたきました。肌からその冷たさが伝わり、サーザントの顔にじっとりと冷や汗がにじんできます。
トルネーダは、その場にしゃがみサーザントに目線を合わせると、優し気な声でいいました。
「この私に、すこしでも傷を負わせた事は誉めてさしあげよう」
サーザントは、無言でトルネーダを睨みました。まだ、勝負はついていないとでもいうように。しかし、次の瞬間、腹に物凄い衝撃が走りました。トルネーダが思い切りサーザントの腹を蹴ったのです。サーザントは口から泡を吹いてその場に崩れ落ちました。
「ふん!」
立ち上がると気を失ったサーザントの顔を思いきり踏みにじりました。
「殺さないだけありがたいと思え! 出来損ないが…」
それから、彼はアドリアナに視線を移しました。
「なによ。あたしにまで危害を加えるというなら、この洞窟にすむ魔物達が黙っちゃいないわよ」
「お前などと闘う気はない」
トルネーダは言いました、。
「ただ、その宝玉をそのままにしておくわけにはいかん。魔王の命令だ返せ」
「お断りよ!」
そういうと、アドリアナは宝玉を守るように手の中に包み込みました。
「これは私が王子様からもらったもの。魔王なんてクソクラエだわ」
しかしその言葉を最後まで聞かず、トルネーダはアドリアナに向かって手を広げ「はっ」と気を入れました。その途端に無数の風がアドリアナに襲いかかります。
「きゃ! 何よ」
風はアドリアナの手元を中心に猛烈な勢いで吹き上げ、アドリアナの握りしめた宝石を舞い上げました。
「ああ!」
アドリアナが叫んだ時には、すでにトルネーダの手の中に宝石は奪われた後でした。
「な……なんなのよ!」
「動くな! 動けがお前も魔王の反逆者として魔界へ連れて行く事になるぞ」
「もう!」
アドリアナは悔しがりました。しかし、これ以上トルネーダといざこざを起こすのは得策ではありません。
「勝手にしなさいよ! でも、これじゃすませないんだから!」
捨てゼリフを言うと、ぷいっと横を向いてしまいました。
「それでいい」
トルネーダが満足げに言います。
そして、槍を片手に叫びました。
「外にいる兵士達よ。王子を縛り上げろ! そして、魔王の前に引きずり出すのだ!」
すると、洞窟の入り口から続々と鱗の鎧を纏った兵隊が現れ、サーザントとシーラを縛り上げると、さっさと魔女の同口を後にしたのです。その後を金色のミリオンが追いかけていきましたが、もちろん誰も気付くものは居ませんでした。