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魔界へGO! 02

 サーザントが振り向くと、そこには…

「勇者!」


 月の光と同じ金色の髪を揺らせ、勇者ミリオンが、あの悪戯っぽい微笑みを浮かべて浮かんでいたのです、

「魔界に乗り込む計画を立てているんだろ?」

 ミリオンは、先ほどと同じ言葉をもう一度繰り替えしました。

「バカな!」

 サーザントは、そっぽを向きました。

「なぜ私が魔界に乗り込まなければならん?」

 すると、ミリオンはまるで最前のサーザントの物想いを見すかしているかのようにこう言いました。

「だって、愛するヴェロニカを助けなくちゃ!」

「なんだとー!」

 サーザントは、真っ赤になって振り返りました。

 そして、その手を剣の柄にかけ、今にも切りかからんばかりの勢いで

「もう一度言ってみろ!」

 と、叫びました。すると、ミリオンはいいました。

「照れる事ないだろ? 彼女に魅かれる気持ちは僕だって分かるもの」

「なんだと?」

「はっきり言って、ヴェロニカって理想のタイプなんだよね。美人だし、優しいし、大人だし、賢いし…。一目惚れなんだよね。ただ問題は、かなり姉さん女房になっちゃうって事かな…。ヴェロニカって、確か今年で20歳のはず。僕は14才だから、年の差6才になっちゃう。あ、てことは、君とは恋のライバルになっちゃうんだね……悲しいなあ」

「こ……恋のライバルだと? ふざけるな!」

 サーザントは真っ赤になって怒りました。誇り高き魔界のプリンスが、人間に恋するなどあってはならない事だからです。

 すると、ミリオンがいいました。

「じゃあ、僕がヴェロニカとつき合っちゃってもいい?」

「う……」

 サーザントは絶句します。

「ほらほら〜」

「黙れ」

「でもさ、今魔界に乗り込むって言うのは、どう考えても得策じゃないだろ?」

「だから、誰が乗り込むと言った……くどいな」

「でも、僕には君の声が聞こえたよ。『魔界に行ってヴェロニカを救いたいって』いう潜在意識からの叫び」

「せ……潜在意識?」

「そうだよ。僕にはそういうの聞こえちゃうんだ。本人も気付かない本当の気持ちみたいなの。だから君と僕の間に隠し事はできないよ。それからエロ妄想も筒抜けだから」

「な……」

 あまりの事にサーザントは言葉を失いました。しかし、次のセリフで再び怒りのスイッチが入りました。

「でも、やっぱり今すぐ魔界に乗り込むのは早計だよ。だって、君めちゃめちゃ弱いから」

「なんだとー!」

 瞬間的にスイッチオンになったサーザントは、勇者の剣を振り回しながら言いました。

「私のどこが弱い! 言葉に気をつけぬとこの場で叩き斬るぞ!」

 すると、ミリオンは、サーザントの攻撃をよけようともせず(幽霊なので、斬られても死なないからなのですが、この時サーザントがそれを覚えていたかどうかは、謎です)、まるで数学の証明をやるかのように、鮮やかにこう答えたのです。

「弱いさぁ。だって、たった一回ホワイトクロスをうっただけで10月10日も寝込んじまったじゃないか」

「えっ!?」

 サーザントは、驚いて次の言葉を失いました。

「なぜ、君があんなに寝込んだと思う?ホワイトクロスをうって、魔力どころか、体力まで失っちまったからだよ。それを回復させるのに、10月10日かかったんだ。もし君が、もっと強かったなら、あんなに寝込まなかっただろうから、この町が襲われた時にも助けに出ていく事ができたはずなんだよ」

 ミリオンの言葉で、サーザントは(なぜか)目の前が真っ暗になるような気がしました。そのサーザントに追い討ちをかけるかのようにさらにミリオンはこう言いました。

「言っておくけど、ホワイトクロスが光魔法の最高峰だなんて大嘘だからね。あんなもの、勇者の入門の入門。僕なんか、君が腰抜かしてぶっ飛んじゃうような技をいくつも隠し持ってるんだ。ついでにいうけど、君のお父さんの魔王だって、ホワイトクロス程度の技なら、鼻毛を抜くより簡単に使っちまうんじゃないかなぁ?」

「鼻毛!?」

 最後のセリフでサーザントは、とうとう絶句してしまいました。

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