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颯爽と現れた勇者。だがしかし……

 むかしむかし、この世界は邪悪な魔王に支配されておりました。

闇の世界から産まれた魔物達が世界中にはびこり、人々は神に守られたわずかな聖域で声を殺すように生きていたのです。



 そんなある日、神は地上に一人の勇者を遣わしました。



 その日、海辺の町サンマリーネは盛大なお祭りで賑わっていました。港には漁師達が色とりどりに飾り立てた船が並び、海岸に続く道には甘いお菓子や風船、フルーツ、海でとれた珍しい魚などを売る露店が続いています。町の広場では花飾りをつけた娘達が踊ったり笑いさざめいたりしています。そして、沿道にはたくさんの人が集まり、町の入り口の方を今か今かと見つめていま した。

 人々の目は、みな一様に希望に満ちた光で輝いております。


 どれくらい、待ったでしょうか…?

 突然、歓声が上がりました。

「おお、見えたぞ!」

「勇者様が、来なさった!」

  それと同時に、一斉に花火が上がりました!

  花火は、ポーン、ポーンと弾けて青空に色とりどりの煙りを作ります。


  …やがて、街の入り口に見えたのは、14,5才の少年でした。

  肩までのびた金色の髪にサファイヤの美しい瞳。華奢な体を白銀の鎧で包み…

  そのあまりの神々しい姿に街の人々は息を呑みました。何より目を惹くのはその右手に携えた剣です。それは、ルビーやエメラルドの小さな宝石で装飾が施 され、その鞘のまん中あたりには水晶のような丸い石がはめ込まれています。

  その、光の中で七色の光彩を放つ石こそが勇者の証である『約束の石』であり、その石が剣を持つ者を選ぶのだと伝説は伝えています。

  ミリオネスは、街一番のホテル「マンデリン」の大広間に案内され、そこで町長をはじめとする人々の歓待を受けました。

「ようこそいらっしゃいませ。勇者さま。私はヤン・バルクイーナ。 この街の町長です」

  町長のがうやうやしく跪いて挨拶すると、ミリオネスはニコニコ笑って礼儀正 しく答えました。

「初めまして。僕はミリオネス・ホワイトウィンドです。ミリオンって呼んで 下さい」

「ミリオン様の各地での御活躍のうわさは、かねがね聞いております。ドラゴンを一撃で倒されたとか…!まだお若いのにすばらしい!」

蝶ネクタイをした、眼鏡の紳士が勇者の強さをほめたたえました。

 ミリオンは首をかしげました。

「あなたの名前はなんですか?」

「ああ、申し遅れました。私は当ホテルのオーナーのマイク・スミスです」

 紳士は右手を前にして深々と頭を下げました。

「マイク・スミスさんこんにちは。ぼくは素晴らしくなんかありません。人として当たり前のことをしているだけです」

「おお!なんと謙虚な!」

 町長が叫びました。それから、町長はミリオンの手を取り、

「どうか、そのお力で魔王を倒し、この世界に平和を取り戻して下さい!」と、手のひらにキスをしました。するとミリオンは、礼儀正しく答え ました。

「はい、きっと僕は魔王を倒し、この世界に平和を取り戻してみせます」

 それから、会食の時間が始まりました。

 マイクスミスが、手を叩くと正面の大きな扉が開き、2人のシェフがぐつぐつと煮えた鍋を運んで来ました。マイクスミスは、満面に笑みをたたえて言いました。

「勇者様。これは当地名産のふぐ鍋でございます。どうかたくさん食べて、明日への活力にして下さい」

「わあ」

 勇者はこの上なく嬉しそうな顔をすると「イタダキマース!」といってふぐ鍋をがっつきはじめました。

 マイクスミスは感歎を漏らしました

「いやー、勇者さまは食べっぷりがいい!」

 その時、鍋を運んで来た顔色の悪いシェフが「あ!」とつぶやきました。

「どうした?」

 仲間のシェフが尋ねると、顔色の悪いシェフが答えました。

「ふぐの毒抜くの忘れた!」

 

  …勇者ミリオネスホワイトウィンド、ふぐの毒に当り死亡。

享年14才


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