11.キミのこと
暑くてパソコンとともにダウンしていたmiaです。何とか復活しました。
もう生きていても、意味が無いと思ってたんだ
誰からも自分の存在を認められることはなく、必要とされることも無いんだと
でも――
キミと出会って、キミの素顔に触れて、俺は淡い期待を抱き始めた
俺は、キミに恋をしてしまったんだ
「うわっ!この猫、すっげぇ汚れてる!」
突如上がった声にうっすらと目を開けると、こちらを見ている小学生男子が2人いた。
黒のランドセルを背負って白い通学帽子を粋がって斜めに被っている。下校途中のようだ。
俺は身体を動かそうとしてすぐに諦めた。疲労と空腹が限界にまで達して立ち上がることすらままならない。
「こいつ死にかけてるよ。どうする?」
ちょっと頭が悪そうな方の男子は俺を心配してくれているのか、横にいた友人に尋ねた。
「どうするって…。どうしようもないだろ。お前ん家で面倒見れるのかよ」
眼鏡をかけて秀才の雰囲気を醸し出している男子は冷静に答えた。
俺の事は放っておけばいいから。君たちは早く家に帰らないと
そう伝えたくても口から漏れてくるのは人の言葉ではないし、鳴き声さえ喉の渇きで出てこない。
「…そうだよな。連れて帰ったら絶対母ちゃんに怒られる。『戻して来なさい!』って」
顎に手を当てて悩む体勢を取る男子。その時の俺から見たら探偵の真似事でもしてるのかと思った。
だいぶ後になって、ああいった年頃の子供は大抵考える際に似たような仕草をするものなのだと知ったが。
「ごめんな。助けてやれなくて…」
結局、小学生二人は去って行った。
不思議と悲しさを感じることはなく、むしろ嬉しかった。
ありがとう。こんな俺を一瞬でも気にかけてくれて
俺は最後の力を振り絞って芝生に埋もれた顔を上に向けた。
視界いっぱいに広がっているのは、澄み渡った青空。
――ここで死ぬのも悪くない
あの家で生きるより、利用され続けるより、マシだ
意識が薄れていくのに身を任せて、俺は目を閉じた。
「だいぶ弱ってる。何とかしないと…」
何…?
「にゃぁ…?」
耳に届いた微かな呟きの後、俺は自分の身体が浮上して何か温かいものに包まれたことに気づき、重い瞼を無理やりこじ開けた。
「もう大丈夫よ」
宝物を扱うみたいに丁寧に撫でられる。
肩で切り揃えられた黒髪。白くきめ細やかな肌。熟れた果実のように赤い唇。長い睫毛が際立つ、黒のアーモンドアイ。
美人だな…
頭が固くて神経質そうだけど……
色々と失礼なことを考えながら、俺は再び意識を手放した。
多少強引なやり方だったかもしれないが、紆余曲折を経て俺は彼女のペットになった。
猫にも人間にもなるという、極めて特異な体質の俺を最初は受け入れようとしなかった彼女も、今ではすっかり順応している。
すごく嬉しいけれど…
それを素直に喜べないのは、逃げているから。
そして何より、彼女の優しさを利用している自分が許せない。
――同じだ。俺が死にたくなるほど嫌っていたあの人たちと、俺は
自己嫌悪に陥ることは少なくない。
祥子と過ごす平穏な日々を続けたくて、余計なことを考えずに、ただ飼い主に忠実なペットでいようと決めた。
それが到底無理なことだとは、最初から分かっていたにも関わらず――
『あなたの名前、英にしましょうか?』
俺のためにキミは悩んで、素敵な意味を持った名前をつけてくれた
『…お弁当、美味しかったわ』
俺が単なる気紛れでしたことをキミは認めて、感謝してくれた
『明日からは私が洗うわ。飼い主として、当然の事なんだから』
戸惑いながらも、キミは俺の気持ちを理解しようとしてくれた
『……紛らわしいのよっ馬鹿!!』
恥ずかしがり屋で、すぐに顔を真っ赤にするのが可愛くて
『よそ見してると切れちゃうわよ。集中しなさい、ほら』
そばにキミがいると思うと安心できて、幸せで
『…ごめんなさい』
本当は怖がりで、泣き虫なキミを守ってあげたいと思った
『すぐ、る…』
これ以上近づくのは駄目だと頭では分かっていても、心が言うことを聞かない
もうどうしようもないくらい
――俺はキミが好きなんだ
回想というほどのものではありませんでしたが、今後のために書いておきたかったのです。
よく分かりませんが、藤ヶ谷を登場させてから夢見が悪くなりました。
…気のせいであることを願います。




