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洗濯女子が悪役令嬢に転生した  作者: 南蛇井


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第14話 内部の黒

地下洗濯工房に、ざわめきが戻ってきた。


だがそれは活気ではない。


混乱だった。


「基準通りにやったのに、白が戻らないんです!」


持ち込まれた布は、くすんでいる。


フィオレは工程表を受け取る。


そこに記された水質調整値は――微妙に違う。


湿度管理基準も、魔素分解の時間も、

ほんのわずかに改変されている。


「これは、私たちの基準ではありません」


リリアが顔を上げる。


「でも王宮印が……」


文書の末尾には、確かに王宮の印。


だが筆致が違う。


「改変された偽基準です」


地下の空気が冷える。


公開した管理技術が、

誰かによって書き換えられ、外部へ流された。


意図的な混乱。


白の信頼を揺らすための。


上級侍従長が呼び出される。


彼は即座に否定した。


「私は関与していない」


その声音に偽りはない。


だが王宮内部で、誰かが動いている。


名が浮かぶ。


若手貴族の一派。


白の公開に強く反発していた者たち。


彼らの主張は明快だ。


「白の公開は国家を弱体化させる」


「白は統制すべき資源だ」


白を特権に戻す思想。


共有ではなく、管理の独占。


王子は沈黙を守っている。


公式には、まだ動けない。


政治の空気が重い。


地下では、北部水の分析が続いていた。


フィオレは波形を見つめる。


「逆位相魔素は、感情を固定しません」


リリアが首をかしげる。


「じゃあ?」


フィオレは静かに答える。


「強制的に整列させる」


波形は滑らかすぎる。


揺らぎがない。


怒りも、喜びも、悲しみも。


すべて均される。


「白を“揃えすぎる”波形です」


リリアの背筋が寒くなる。


「整ってるのに……白くならない」


「整列は、均衡ではありません」


フィオレの声は低い。


「完全統制です」


揺らぎを許さない白。


揃いすぎた秩序。


それは一見、美しい。


だが――


息ができない。


北部水路から、追加報告が届く。


現地の布が持ち込まれる。


広げられた布は、灰色だった。


斑ではない。


まだらでもない。


均一な、完璧な灰。


自然ではありえない。


水は揺らぐものだ。


布は個体差を持つものだ。


それが、同じ色に染まっている。


リリアが小さく呟く。


「……揃いすぎてます」


フィオレは布を指でなぞる。


ざらつきもない。


ただ、生命感がない。


「これは……意図です」


白を汚すためではない。


白を、無力化するため。


内部の黒は、

感情ではなく、思想だった。


地下の灯りが揺れる。


誰かが、王宮の中から、

白を“揃えすぎる”世界を望んでいる。


物語は、

外部の攻撃から、内部の対立へと移り始めた。

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